VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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会話で意思疎通を




人よ、竜よ、英雄よ 其の三

「こんばんわ、SOHO-ZONEさん」

「やぁ、ペッパー君。いきなり呼び出された時は一体何だと思っていたが、サバイバアルにヤシロバードどころか、ディープスローターにイムロンまで居るとはね…………。サンラクやペンシルゴンからもさっき聞いたけど、まさか赤竜ドゥーレッドハウルをブッ飛ばそうとは、斜め上の答えが飛んで来るとは正直思わなかったよ」

 

苦笑しつつも特に恨み節を放つ訳でも無く、ジークヴルムのユニークシナリオに関係するターゲットの一体を倒せる上、未だ謎が多い勇者武器(ウィッシュドウェポン)の秘密に迫れるともなれば、俄然やる気に満ちている様子だ。

 

ならば其のやる気を更に高める為、ペッパーはインベントリアから以前に依頼された『完成品』を取り出し、獅子奮迅の活躍を期待するべく手渡しにいく。

 

「SOHO-ZONEさん、依頼していた物が出来ましたよ。大事に扱って下さいね?」

「おぉ………!おおおおぉ…………!」

 

ベヒーモスにて彼から渡された『冥王鯱の照鏡骨』をビィラックに預け、彼女の手により『冥王の鏡盾(ディス・パテル)』となった其れは、地下都市ホルヴァルキンにて姿を見せ。

 

ペッパーから送られた譲渡申請により、所有権がSOHO-ZONEへと移った事で受け取られた円盾を手に、彼は何処ぞの部族じみたキャンプファイヤーダンスの如く踊れば、何だ何だと他のプレイヤー達が集まる。

 

「此れが冥王の鏡盾…………!魔法を反射し、魔法を吸収する事によって強化を齎す盾………!武器種はやはりというか盾…………ん?盾、じゃなくて大盾…………?どういう──────あ、いや、成程解ったぞ!持ち手を強く握る事で装甲が展開・反射可能なレンズ部分が露出するギミックか!凄いなコレは………展開方法といい、搭載された能力といい、ガンスミスライセンスを取る為に象牙(ゾウゲ)の授業で遺機装(レガシーウェポン)甦機装(リ·レガシーウェポン)に関する知識を知ったが、其れでも実物を見たから解る………!神代の鍛冶技術の果ては、とてつもなく深いッ…………!」

 

ガシャコンガシャコンと弄り倒す勢いで調べ、遂には其の展開ギミックに気付いた辺りから早口で語り出した旧友が、シャンフロで『武器狂い』と呼ばれる異名の断片にペッパーが若干ながら引いていると、イムロンとジョゼットが興味津々な様子で神代由来の盾を見ている。

 

「イムロンさんとジョゼットさんも気になりますか?」

「わた、コホン。……俺ァは古匠になればアレを作れるだろうし、知りたいのは『盾の素材』だな。見た感じは随分とレアな鉱石やらも、あの盾に使ってるみたいだが…………」

「一応タンクとして魔法吸収からのバフに転用出来る観点から、やっぱり注目せざるを得ないって感じだねー。複数作れるなら聖女ちゃんの供回りをしてる人数分確保して、より魔法攻撃に対して防衛をガチガチに…………って思ってる」

「成程……………」

 

クランとしても聖女ちゃん………慈愛の聖女 イリステラの護衛に対魔法部隊が居るとしたなら、確かに冥王の鏡盾の持つ魔法反射と吸収及び強化転用は魅力的な物。魔法範囲攻撃にファランクス態勢で弾き返して焼き払ったならば、敵には「御愁傷様」と言いたくなる。

 

だが真実を言えば、冥王の鏡盾の能力自体は魔法の反射と強化転用、破損しても素材を確保すれば元通り使える()()であり、其れ以外は『普通の盾と何ら変わらない』というのがミソなのだが。

 

「あの盾はSOHO-ZONEさんが倒したモンスターの素材を、此方が製作依頼を請け負ったので、モンスターの名前や特色は彼に聞いた方が早いかと」

 

天将王装と反転都市ルルイアスの環境が味方していたとはいえ、海中であの超火力高機動重装甲の巨大遊泳戦艦を相手取るならば、余程の策が無ければ先ず勝つ事は難しい。

 

海中で動きが鈍った状態の中、全方位に放出される雷と一点収束された超速超火力のビーム、普通なら『あんなんクソな攻撃をどうやって避けろと!?』と、他のプレイヤーが運営に異議を申し立てる未来が見える。

 

某狩ゲーに例えて攻略法を組み立てるならば『雷と火の両属性に耐性を持つ防具を製作、水圧耐性防具と水中呼吸手段を手にし、アトランティクス・レプノルカを発見して近くにアーコリウム・ハーミットかスレーギウン・キャリアングラーが居る事を御祈りし、深海三強同士のMVMを誘発させて弱った所を討伐する』というのが、照鏡骨を手っ取り早く入手する方法だろうか。

 

流石に乱数の女神が上機嫌じゃないと絶対にやりたくない、確率は100%じゃないと安心出来ないのは事実、そうなるとやはり乱数の女神は信用出来ないのだ。

 

「今回呼ばれた皆さん、今からメインターゲットとなる赤竜ドゥーレッドハウルの事について、鉱人族の皆さんから聞いた情報を御話しますので注目を御願いします。作戦決行の時間は迫っていますので、手短に解りやすく纏めましたので傾聴よろしく御願い致します」

 

ドゥーレッドハウルが戻って来る前に奴の特徴や、鉱人族に赤系竜人族(ドラゴニュート)に何をしてきたか、性格や身体の構造を含めてペッパーが説明を行い。一通り話し終えた所で起きた質問の嵐にもある程度答えつつ、今は赤竜討伐に集中して欲しいとの御願いをして、遂に一同は動き始めたのである…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤竜ドゥーレッドハウル討伐連合軍となった開拓者(プレイヤー)達一行と征服人形(コンキスタ・ドール)二機に、四羽のヴォーパルバニーと瓜坊一匹とリュカオーンの分け身一匹、ドゥーレッドハウルに家族を焼かれて殺された鉱人族の有志達が進む。

 

戦闘領域として適切な場所への案内と、鉱人族と同じく虐げられ、叛逆の機会をずっと窺い、此の時の為にと牙を研ぎ続けてきた赤系竜人族も合流した事により、総勢『百三十人余』の大軍勢と化し。

 

彼等彼女等が辿り着いたのは、此れ迄にドゥーレッドハウルが必ず通る道筋の中に有る、グレイブヤード積竜火山(せきりゅうかざん)の御膝元、草木が焼け焦げて裸の平地となったエリアだった。

 

「此処が決戦の地か…………」

「我等も鉱人族と同じく、赤竜によって同胞の命………愛した番の命を奪われた。ヤツに奉仕する形で殺意を欺き、此の時の為に叛逆の牙を研ぎ続けてきたのだ」

 

赤い鱗を全身に纏い、コンバスティッカーメレオンの体皮で織った腰当てを巻き、鉱人族が作った肩当てと胴当て、武具で武装し骨のネックレスを巻いた竜人族の一人…………或いは叛逆部隊隊長にして、現在の赤系竜人族の長とも言うべき『ドゥルガ』が声を上げる。

 

今回の戦いに置いて彼は、鉱人族の連絡を受けてから僅かな時間で有志を集めたというらしく、此の軍勢のおよそ三割五分が彼と志を共にする同志達である事からも、ドゥーレッドハウルのヘイト具合やドゥルガのカリスマの高さが伺える。

 

何よりもドゥーレッドハウルによって赤系竜人族達は自身の名前に必ず、ドゥーレッドハウルの中から『一文字以上』を入れなくてはならず、更には『入れた文字が必ず頭に来る様にする』他、月に一度赤系竜人族の中で『最も美しい者か最も強い者を、生贄としてドゥーレッドハウルに差し出さなければならない』なる、前時代的な掟を強いられた。

 

そしてドゥルガの恋人の『ルミル』も、掟に従ってドゥーレッドハウルに差し出され、骨一本のみになって帰って来た事で、彼は当時の族長達を密かに暗殺し、新たな族長の座に就き彼女の仇を──────ドゥーレッドハウルを必ず討つと心に決めたのだという。

 

「皆さん!注目して下さい!」

 

ペッパーが声を上げ前に出て、続く形で旅狼の所属メンバーと関係するNPC達も前に出る。

 

「今日此の場に集まり、団結してくれた事!心より御礼を申し上げます!!本当にありがとうございます!!!」

 

深々と頭を下げて御辞儀をし、彼は簡潔ながらも成すべき事を見定めて、此処に高らかに宣言する。

 

「ジークヴルムのユニークシナリオに関係する五色の竜!俺達は鉱人族と竜人族と共に、今日!此処で!!ドゥーレッドハウルを討ち取ります!!!此処に集いし猛者は皆、強き者達であると確信しています!!!吹き荒れし赤と炎の厄災に、俺達の牙を叩きつけましょう!!!」

『『『『『『『『『『応ッ!!』』』』』』』』』』

 

集った開拓者達はペッパーが知ってか知らずか、一癖二癖どころか下手をすれば空中分解すら有り得る面子である。そんな彼等彼女等の事情なんぞ何処吹く風とばかりに、此の場に流れる空気が『熱く』なり。

 

「来たぞ!ドゥーレッドハウルだ!!」

 

ドゥルガの側近たる『ドナハト』が声を上げた事で、一同が其の方角を向けば。視線の先で赤い炎をジェット噴射の如く噴き出し、明らかに『怒り』を露わにした状態のドゥーレッドハウルが猛スピードで接近。

 

『貴様等ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』

「鉱人族と赤き竜人族の長き弾圧を、俺達が終わらせに来たッッッッッッ!!!!」

 

突撃するドゥーレッドハウルに対し、ペッパーが飛び出すや否や、空中疾走からのタンク一式装備に全身換装を行い。超重厚の巨大盾で真っ向から激突する形で、開戦の火蓋は切って落とされる事に成ったのだった。

 

 

 






時は来る


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