初撃の激突
突然だが問題です。超スピードでの疾走中に足元にいきなり岩が生えて躓いた場合、人間はスッ転んで大怪我を負うのが『常識』である。
では超スピードでの疾走中に、チタン合金の壁に避けられずに顔面から突っ込んで衝突した場合、一体どうなるか?答えは『顔面崩壊か頭蓋骨粉砕による脳損傷が原因の死』だ。
片や当代の赤竜ドゥーレッドハウル、其の性能や能力値は■■■■や■■■■に比肩し得るレベルに調整された、ユニークシナリオEX【来たれ英傑、我が宿命は幾星霜を越えて】の中で登場する『五体の色竜の一角』であり、アメンボの身体に竜の頭部・首・尻尾が付いている。
身体の各部から炎を噴き出しジェット機の如く加速、出力を調整して回転しながらの飛翔、長い脚を広げて胸部からの火炎放射によって下に在る物を焼き尽くす等、高機動と高火力を両立した存在なのだ。
超重量
フォルトレス・ガルガンチュラとフォルトレス・ガルガンチュラ・エンプレスの素材を用いて作り出した大盾と籠脚は、高い筋力値を装備要求としている代わりに満たしていない状態でも装備可能だが、代償として攻撃による対抗判定に失敗すると其の重量に押し潰されて、装備者は死ぬ事になる。
其の重量による自滅を防ぐ為、ビィラックの手によって敏捷を犠牲として筋力と耐久に衝撃耐性に富んだ、タンク用一式装備こと『
要塞城の厳壁凱鎧には一式完全装備が出来た場合、耐久は40000加算される他に『敏捷を10で固定して筋力と肉体耐久値を2.5倍と衝撃耐性:極』、蜘蛛城の重剛脚は要求ステータスを満たした状態で装備したなら、装備者の脚へ『衝撃耐性:極と物理的ノックバック完全無効』が、女帝城の顕壁盾は装備要求値を満たしている場合に『物理攻撃:完全耐性と衝撃耐性:極』を、装備者は獲得する。
つまり現在のペッパーは物理攻撃と衝撃に対する強力無類の耐性・ノックバック完全無効を持っているに等しく、仮に地面に踏ん張った状態でぶつかれば、敵
ではそんな状態に在るペッパーが、疾走系スキルを全開にしてドゥーレッドハウルに突っ込み。かつ思考加速とモーション高速化によって、対物理攻撃最高峰のタンク装備一式と大盾に籠脚を装着して砲弾となった場合、一体どうなるのか?
其の答えは────────────
『ゴブェエ!?!?ヌグオァ!?!?』
「ぐんぬぁ!!!!」
自身の加速によるエネルギーと、ペッパーの空中疾走の加速のエネルギーが激突、ノックバック完全無効化と物理ならびに衝撃耐性によって反動ダメージを脳天に食らったドゥーレッドハウルが、
本来なら真正面からの激突と反動ダメージも加算されて吹き飛んでいる所だが、物理的ノックバック完全無効化によって其れは起きず。激突の衝撃がドゥーレッドハウルにのみ齎され、ペッパーは地面に落下していく中で両脚をくっ付けての『兎跳び』の状態で着地する。
「ふんすッッッ!!!」
ズドォン!!!と一際大きな衝撃と共に着地し、両脚が地面に深く深く減り込む中で、彼は落下ダメージによる体力減少を調べるも、其の減少数値は一割程度という極めて僅かな物に留まっていたのである。
「おぉう…………衝撃耐性って『落下ダメージ』にも影響与えるのか。取り敢えず落下死しそうになったら『インベントリorインベントリア装着』で一瞬装備出来るように、配置やら色々変える事にしよう」
籠脚を解除から地面に埋まった脚を引き抜き、再び装備し直せば地面に罅が迸る。敏捷を初期値まで下げる代わりに、壁タンクとしての役割を遂行するだけの力を与える此の装備は、今後に置けるタンク職の『新たなトレンド』になるだけの力を持っていると、此の瞬間もペッパーは『確信』している。
そして何よりも。
あの瞬間に飛び出し激突して、生き残れた『確かな成果』は。此の一戦に臨んだ者達の心に、闘志という名の火を点けた。
「
「遠距離攻撃と強化魔法持ちの者は、後方から支援を!タンクはドゥーレッドハウルの動きを制限する事を念頭に、近接職は斬・突・打の攻撃から奴に何が効くかを調べてくれ!!」
「あまり攻め過ぎるなよ!竜人族が秘伝の火属性耐性強化魔法を付与するから、出来た者から攻撃開始!切れたら直ぐに入れ替わりで受けてくれ!」
赤竜に一番槍を突き立てたペッパーに続かんと、ペンシルゴンとサイガ-100とカローシスUQの声に、プレイヤーやNPC達が殺到からの陣形を組み立てる。
竜人族達からの火耐性のバフを受けたSF-Zooのタンク五人衆・ジョゼット・オイカッツォが、打撃武器を持った鉱人族と竜人族と共にマッシブダイナマイトを守りながら、前へ前へと突き進み。
上空を見上げればルストが朱雀を、サイナが青龍を其々纏い、灰を含んだ雲の夜空へと羽搏き舞い、走り昇る姿。遠くではディープスローターや竜人族の魔法職の者達による魔法攻撃が見えた。
「良いぶちかましだ、ペッパー。スタートにしちゃあ上々じゃねぇか」
「凄い勢いで激突して大丈夫なんですわ…………?」
「カカカ、こりゃあ負けてらんねぇなぁオイ!」
「ペッパーはーん!」
『ワゥン!』
「
「サンラク、エムルさん、サバイバアルさん、アイトゥイル、ノワ。まぁ此の防具自体が、物理攻撃に対してとんでもない耐性を持ってるから出来たと思うけど、此方の予想以上に性能が凄かったよ」
アラドヴァル・リビルドを鞘から抜き放って獰猛な笑みを浮かべるサンラクと、肩に乗ったエムルとアイトゥイルに、ガチな装備で身を固めてメイスを握るサバイバアル、ノワを抱えて低空飛行による運送をしたヒトミが合流する。
全身の装備を要塞城の厳壁凱鎧一式に大盾と籠脚収納から、マクティスシリーズ一式に切り替えたペッパーは、右手に回復ポーションを掴んで飲みつつ、聖盾イーディスを取り出し左手に握り締めて言い放つ。
「此れから辻タンクするので、思う存分暴れちゃって下さい!アイトゥイルとノワとヒトミさんは、俺のサポートを頼みます!」
「ッシャア!竜狩りの時間だぁ!エムル、行くぞ!」
「は、はいなぁ!!」
「久方振りの巨大モンスターだ、腕が鳴るぜぇ………!」
「はいさ!」
『ワン!』
「了解」
昂り滾る開拓者・仇討ちに燃える鉱人族と赤系竜人族達は、其々の役割と研ぎ澄ました牙達を、ドゥーレッドハウルに突き立てるべく動き出す。
未だ竜との戦いは幕を開けたばかりなのだから。
──────『其れ』は喰らえども、喰らえども、決して腹が満たされる事は無い。
──────『其れ』は未だに、酷く……酷く飢えていた。
──────『其れ』は数多の命を喰らい、己を補強し続けていた。
──────そして『其れ』は……………火山の場所に『上質な食い物が集まっている事』を、此の大地の………………■■■■■『■■■■』を通じて
──────『其れ』は動き出した、辺り一面に転がった『命の全てを喰い尽くし』、新たな
──────其の異様は『赤い血』の如く流れ、向かって行く──────
『赤』が来る