VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サンラクが成してきた事




人よ、竜よ、英雄よ 其の十五

同調連結(ハイコネクション)システム…………其れは技能剪定師(スキルカーデナー)によってレベルかマーニを支払う事により、プレイヤーが保有する様々なスキルや魔法を連結させて、新たなスキルや魔法を産み出せるレベル100以上のプレイヤーが利用出来るコンテンツである。

 

好きな数だけの連結や属性が異なるスキルや魔法の連結を可能にし、任意のタイミングで解除が出来るという其の特性はサンラクからしても奥深い物では?と考えていた。

 

そもそも此のゲーム、シャングリラ・フロンティアはスキルと魔法を用いて戦うハイサイエンスファンタジーのVRゲームであり、ペッパーの話によれば魔法は解らないがスキルに関しては『覚え直し』が可能であると銭ゲバ(エルク)に献金した事で判明、其の情報は掲示板を通じて拡散された事で多くのプレイヤーが知る事となったのである。

 

そしてサンラクが使用した機動系同調連結(ハイコネクション)スキル『臨界速(ブラディオン)』は、彼が培った機動系スキル達を連結させた事で完成へと至った物であり、其処に至る迄に様々な事が有ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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時は今より遡り、ベヒーモスにてレベルキャップを解放した後、サンラクは一度ラビッツに戻ってエフュールの元でアクセサリースロットを解放。エムルを御留守番からのエイトルドにファストトラベルで向かったのは、表向きはカフェ『蛇の林檎』、そして己の職場にして賞金狩人(バウンティーハンター)が集う裏稼業のギルド兼カフェの『彷徨う剣』に来ていた。

 

言われるまでも無く聖杯で性別を変更し、女物の衣服を来た彼女()は仇討人として教授を受けるティーアスへ流れる様にメニューを注文してから、彼女へと言った。

 

「時にティーアス先生、一つ『御願い』があるのですが」

「……(なぁに)?」

「先生の絶技──────サバイバアルや其の周りの者が高らかに言う、噂の『超越速(タキオン)』というスキルを、是非とも拝見したく思っております。後学の為……一度、俺と手合わせ願えないですか」

 

同調連結スキルは様々有れど、其れを完成させるには兎にも角にもプレイヤーやNPCにモンスターを問わず、目的とするスキルのイメージを固める為には『実物の観測』が必要不可欠だと言う。

 

エルクは『斬撃の同調連結スキルの最高峰はペッパーが作り出し、今の鳥の人でも作れる条件は揃ってる』と言っていた事から、少なくとも『墓守のウェザエモンの最終奥義:天晴(てんせい)を見ている事』が条件であると把握している。

 

「弟子は師を越える者では有りますが、其れ以前に師の背を見て育つ者です。賞金狩人最速の背中を、今の自分でどれだけ追う事が出来るのか……そう考えてしまうのです」

「……いいよ」

 

パチンと指を高らかに鳴らせば、カフェのマスターが二段重ねのケーキを持ってきて。其れとは別にケーキを一切れ皿に乗せてやって来るや、テーブルの上に置いたのだ。

 

「サンラク、其処(そこ)()って」

「うっす」

 

椅子から立ちつつも、警戒態勢を厳にして身構えた瞬間。

 

 

 

皿に乗せられたケーキが消えており、自分の頬にホイップクリームが付いていた。

 

 

 

「…………は?消えた?しかもクリーム………うん甘いわ」

「…………()えなかった?」

「へ?」

 

其処にはティーアスが立っていた。

 

「…………仕方(しかた)ない。サンラク、スキルやアクセサリーを使()かって、『全力(ぜんりょく)』で(わたし)()かまえて」

「えっ、此処で?」

「そう。()ったトゥールが(あば)れようと、此処(ここ)(こわ)れない。(なに)より後手(ごて)でも(わたし)(ほう)(はや)い」

 

ドヤ顔で宣ったティーアスに、サンラクもまた無言でレベルキャップ解放によって進化した、数多のスキル達をベルトコンベアで流れて来る荷物をイメージしながらに、連続で起動していく。

 

数秒間に限り使用者の敏捷・器用を二倍にする『リミットオーバー・アクセル』。

使用者に発生する重力作用を軽減する『重律踏覇(エクシードグラビティ)』。

鞍馬天秘伝(くらまてんひでん)より進化した事で、強化倍率が大幅に上がった『韋駄天権現(いだてんけんげん)』。

使用者の任意で重力の方向を変更する『無重律の恩寵(スペースチャージ)』。

一定時間もしくは被弾するまで空中疾走を可能にする『ヘルメスブート』。

雷の如き加速を発揮する『迅雷刹華(じんらいせっか)』。

複数の同系スキルを起動すると筋力・敏捷を強化していく『ボルテージ・ブースター』。

十秒という効果時間終了の代わりに敏捷を三倍にする『リミットオーバー・アクション』。

百秒間空中に踏み止まりスケートの様に三次元の滑走を可能にする『カルマティール・フロート』。

地上から空中に両足が離れている状態が長い程に敏捷が上がる『アナザー・リステンション』。

体力が10以下になった()()()に応じた全ステータスに強化を加える『危狂闘魂(ききょうとうこん)』起動で、空中に浮き上がって踏み止まり。

 

そして駄目押しに使用者に最適な攻撃ルートを視界に示す『星幽界導線(アストラルライン)』と思考加速による高速の領域を見定める『真界観測眼(クォンタムゲイズ)』。プレイヤーの身体に最も馴染んだ動きをする事で、自身を強化する『パラベラム・ルーティーン』で補強を掛けた、封雷の撃鉄(レビントリガー)(ハザード)及びベヒーモスにてプレイヤー初の宝石匠となったラピスとの取引で手に入れた、封星の撃鉄(エイセイトリガー)(ハザード)起動で準備を整え。

 

「──────いざ!」

「──────『超越速(タキオン)』」

 

 

 

 

 

 

サンラクが一歩目を踏み込んだ瞬間に、世界の流れが止まった。

 

「………………は?」

 

身体が動かない、声は出せる、即ち思考は出来る。まるで思考のみが先へと進み、身体だけが自分から置き去りとされた様な感覚が、今のサンラクを襲っており。

 

もしゃもしゃもしゃもしゃ……………

 

「──────あ」

 

音が聞こえる方に目を向ければ、其処には()()でケーキを食べているティーアスの姿が在り。其処で漸く、自分の身に起きた事に気付いたのだ。

 

(周りの速度を遅くして、自分だけが速くなってるのかコレッ──────!)

「…………はい、おすそわけ」

 

りんごの一切れが口に突っ込まれ、世界は再び元の流れに戻って。

 

「うぉご!?ぶべら!?」

 

顔面から壁に突っ込んで、其処から背中を強打。幸運の御陰か死ななかった物の、ティーアスの…………シャンフロ運営最強の賞金狩人の実力を、骨身に染み込み犇々と感じ、そして知る事となり。

 

感想(かんそう)は?」

「一生付いていきます、ティーアス先生!」

 

三桁スキルを用いて辛うじて『自覚』出来るだけで、其処からのフルボッコにはどう足掻いても対応出来ない。此れが最強の賞金狩人かと、改めて認識させられたのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「よぅ、エルク。最速の世界を見て来たぜ」

 

水晶巣崖(いつもの場所)水晶群蠍達(マブダチ)との殴り合いをしてデスポーンし、ラビッツに帰還したサンラクはエルクの下へと訪れた。

 

「あらぁ〜、早速始めちゃう〜?」

「応よ、()()()で七億マーニだ!やれぇい、エルクぅ!」

「あっはぁ!毎度あり〜!!!」

 

此方が何を求めているのか、其れとも金の匂いに惹かれたか。何にせよ話は早いとカウンターに七億マーニの山を置けば、テンションが跳ね上がったエルクが飛び乗り頬擦りし、匂いを嗅いで暫く後に手をぽふぽふと叩けば、着物姿のヴォーパルバニー達がマーニの山をワッセワッセと運んで行った。

 

「うふふ〜、サンラクさんはお金が成る木ねぇ〜………。其れじゃあ、此方に来て〜」

「あいよ」

 

エルクに案内されてやって来たのは店の奥、床には大きく刻まれた『八芒星』と、奇妙ながらも神聖な空間で。エルクがぽふぽふと手を叩き、やって来たのは七つの盃を持ったヴォーパルバニー達。

 

そして八芒星の角部分に一つずつ置いて、サンラクとエルクに会釈して帰って行ったので、サンラクもまた会釈を返した所でエルクの声が聞こえる。

 

「───それでは開拓者よ、繋ぎ紡ぐ技を想起せよ」

「……………リミットオーバー・アクセル、重律踏覇(エクシードグラビティ)韋駄天権現(いだてんけんげん)、リミットオーバー・アクション、ヘルメスブート、迅雷刹華(じんらいせっか)、ボルテージ・ブースター」

 

七つのスキルを言霊に乗せて紡げば、エルクが七つの言霊を以って述べる。

 

 

「───(くびき)を砕く決心」

「───世界の律より解きたれしもの」

「───神速への挑戦」

「───(くびき)を砕く鳴動」

「───軽やかなる神足の律動」

「───雷の覇速を越える脚」

「───重ねて繋ぐ、無尽蔵の衝動」

 

 

用意された盃に赤い水が湧き上がる、其れはサンラクの身体を流れる血の如く。溢れた赤い水は魔法陣を赤く染め上げて、サンラクの足元へと這い寄っていく。

 

 

「───底の底の果て、遠き空をも孕むもの。無垢なる慈悲に語り乞う、捧ぐは対価、価値の輝き」

 

 

其の赤も軈て混ざって黒となり、サンラクの身体に染み込み、彼の中で其の力と己が一つとなる感覚を覚えて。

 

 

「───繋げ、紡げ、混ざる事なく重なり合って、別離の定めを受け入れて尚結び束ねよ。──────七つ輝き、重なり光るは唯一つの光。【剪定秘法(プラニング・ロウ): 同調連結(ハイコネクション)】」

 

そして彼は力を束ねて一つにし、新たなる力である『七連結同調:臨界速(ブラディオン)』を獲得。他のスキル達も合成を行い、ラビッツのヴォーパルコロッセオにて臨界速を試運転。其の結果は何十は愚か、百をも越えて二百にも迫る死を糧に力を理解し、其の挙動をある程度制御可能となり。

 

臨界速は一歩を踏むモーションを行う度に、爆発的な加速が発生する事、発動した瞬間に体力が1まで削れる事。臨界速の効力は五歩目まで適用されて、初手最高速に一歩毎に乗算累積される極端な加速強化、空中ジャンプや壁走りに天井走りも同様、更には着地時などの反動無効や加速中のダメージ軽減といった、擬似的な無敵状態になる事を理解し、修練を積み重ね続けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其の努力は(むさぼ)大赤依(だいせきい)との戦いに置いて、冥王の鏡盾(ディス・パテル)×2の【吸転換(コンバート)】による強化+封雷の撃鉄(レビントリガー)(ハザード)過剰伝達(オーバーフロー)封星の撃鉄(エイセイトリガー)(ハザード)のモーション強化+兇嵐帝痕(イデア=ガトレオ)(スペリオル)の加速+黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト·イン·パーケ)の強化+臨界速の五歩目によって放たれて。

 

称号【最大速度(スピードホルダー)】という前人未到の偉業を成し得る形となり、遂に成就と至ったのだった。

 

 






其れはサンラクの切札


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