VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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乱入者に胡椒は如何なる判断を下す




機構より翼は宿り、願いは蒼天に向かう

何故此処に居るのだ、其れがペッパーが抱いた疑問である。サードレマで出逢い、フレンド登録を結んだ青の魔法使いの少年プレイヤー・レーザーカジキは、ブルックスランバーによって危うく火口に放り込まれそうになった所だった。

 

敏捷にステータスを振って、何とかペリカンダチョウを首チョンパで倒し、彼を救出したまでは良いものの、どうした物かとペッパーは対処に困っていた。

 

「………ほぇ!?あ…ブルックスランバー……あれ?」

 

そんな折、目覚めたレーザーカジキが声を上げたが、目の前にはサードレマの宿の天井は無く、澄み渡った青空と綿飴に似た白い雲が浮かんでいる。そして其の近くにはペッパーとアイトゥイル、ビィラックが覗き込むように座っていた。

 

「おはよう、レーザーカジキ。色々言いたいや聞きたい事は有るけど、取り敢えず助けられて良かったわ…あっやべ」

「あ……ペッパー、さん。もしかして、助けてくれ……ふえっ!?」

 

ペッパーは自分がやらかした事に気付く。レーザーカジキを助ける事に必死で、アイトゥイルをマントの中に、ビィラックをファーコートへ擬態させるのを、完全に忘れてしまった。が、時既に遅く。

 

「ヴォーパルバニー…!?しかもオシャレして、る…………!!?」

 

バッチリとアイトゥイル&ビィラックを見られてしまった。嗚呼コレどうしようかと、頭の抱えて悩むペッパー。しかし彼は、レーザーカジキの思わぬ一面を目の当たりにする事に。

 

「はわわ…!可愛い…可愛い…!さらさらの毛並みに、ふわふわの肉球…!動物特有の温もりにパッチリオメメ…!はわぁ~!!!!!此方のヴォーパルバニーは和装なんですね、唐笠と着物が似合った風来坊ならぬ風来兎でしょうか!対して此方は洋風、オーバーオールとサラシを着けてるんですね!其れと大きな手袋が似合ってて、かっこかわいいです!ほひゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

2羽の黒兎の頭や耳に肉球を撫でまくり、別人じみた奇声を上げるレーザーカジキ。ハッと我に返った時、ペッパーとアイトゥイル、ビィラックは彼のあまりの豹変っぷりにドン引きしており、レーザーカジキは顔を真っ赤に染め上げた。

 

「火口湖に身投げしてきますッ!!!!」

「待て待て待て待て、早まるなァッ!?!」

「拾った命は大事にせんかいワリャァ!!?」

「そんな事、絶対駄目なのさぁ!?!」

 

恥辱で火口湖バンジージャンプを強行しようとするレーザーカジキを、1人と2羽のパーティーが何とか引き留める、端から見ればツッコミ所だらけの光景が出来ていたのである………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お恥ずかしい所を見せました、本当にすいませんでした…!」

 

身投げバンジージャンプを何とか止め、落ち着いたレーザーカジキが深々と頭を下げる。其れにしても、何故彼は此の登山ルートに居たのだろうか?

 

疑問を解決する為、ペッパーは問い掛けてみる事にした。

 

「其れにしてもレーザーカジキ、何故に登山ルートを通ってきたんだ?あのペリカンダチョウに頭丸呑みされてたようだけど……」

「あ、其れは…その……。ペッパーさんがサードレマから走って、栄古斉衰の死火口湖へ向かってたのと、山を登っているのが見えたので追い掛けてきました。其れとブルックスランバーの生態を『姉さん』から聞いて、前々から気になっていたので……」

 

どうやらレーザーカジキなるプレイヤーはモンスターの生態に興味が有るようで、自分を追い掛ける次いでに其れを確かめたかったのだと、心の中で察した。

 

「後は…そう……」

 

 

 

ペリカンに狩られた魚の気持ちを(・・・・・・・・・・・・・・・)味わいたかったのがあるんです(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「…………んんんん?」

 

サラッと最後にとんでもない発言が飛び出して、ペッパーは自分の耳を疑った。魚の気持ちを味わう?は泳ぐなりで体験出来るが、捕食される魚の気持ちになるとは、一体どういう事なのか。

 

「レーザーカジキ………?」

「あ、えっと…自然界は弱肉強食じゃないですか。食べる者と食べられる者が居るように、動物や魚、鳥にしても食べられる側が居るからこそ、自然は廻っているんだと思うんです。だから僕は、強者だけでなく弱者の視点からも動物を知りたい…そう考えているんです」

 

モジモジと、両手の人差し指を突っつきながら、レーザーカジキはそう言った。人は時として、物事を一面しか見ていない時がある。普段スーパーで何気無く購入している鶏肉も精肉されて、パック詰めされて並んでいる『結果』だけを捉え、其所に至る迄の『過程』を見ていない。

 

レーザーカジキは、其の動物が食べている生物にも『ドラマ』があり、其れを知る事によって自分が好きな動物を、更に知りたいのだと思い。そして少年に向けて言った。

 

「………『深いな』、其の考え方」

「そ、そうです……か?」

「此の世界に生きる開拓者も、NPCも、モンスターにも、皆が各々の『ドラマ』を持っている。俺も、ビィラックさんも、アイトゥイルも。そしてレーザーカジキにもね」

 

生きる事は『戦う事』だ。其の命が狩り取られて尽き果てるまで、寿命で瞳が光を失って息の一つが切れて無くなるまで、人も動物も、誰も彼もが戦い続ける。

 

「人の価値観は各々違う。レーザーカジキの『考え方』が、他の人に受け入れられない事も有るだろう。だが、そんなものは『気にするな』。自分は自分だ、己を信じて、貫き通せ。自分を曲げない人間に『信念』は宿り、其の信念は必ず、誰にも負けない『強さ』に成るんだ」

 

昔のギャルゲーで、此迄一緒に戦ってきた仲間が敵に寝返るイベントが起き、男ヒロインが悲しみに打ち拉がれて、生きる意味すら失い掛けた時、女主人公が彼に対して言っていた台詞が有る。

 

自分の信念さえ信じられなくなった彼を、女主人公が上記の台詞を放ち、其の心を再び立ち上がらせた。其れを自分なりに『アレンジ』した物が、ペッパーがレーザーカジキに送った言葉だった。

 

「ペッパーさん…ありがとうございます!」

「気にするな、楽に行こう。あと、レーザーカジキはこの後どうする?このままじゃまた、ブルックスランバーに火口湖に放り込まれる可能性が有るけど…」

「えっ…あ。じゃあ…其の……同行させて、ください……」

 

モジモジしながらも、小さな声で申し出てきたレーザーカジキを、ペッパー達はパーティーに迎え入れる。

 

「わちはビィラック、此方は呑んだくれの妹のアイトゥイルじゃけ。よろしくな、レーザーカジキとやら」

「ペッパーはんとビィラック姉さん共々、ワイもよろしくさね~」

「は、はい…!よろしくお願いしましゅ!…しゅゅし!!」

 

最初に出逢った時と同じように、緊張からまたしても舌を噛んだレーザーカジキ。魔法使いにバックパッカーから成る後衛陣、軽量風来兎と重量鍛冶師兎の前衛陣から成る、バランスの取れた2人と2羽に増えた一向は、火口壁面に存在するであろう、空を飛ぶ為の答えたる機構を探して、再び歩き始めたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死した火山の山頂、其の巨大な火口の円上を行くパーティーは、壁面の何処かに在るだろう機構を探して歩き続ける。アイトゥイルは先程と同じ様に、一眼望遠鏡で火口の壁面を観察し続け、ビィラックはペッパーがレーザーカジキの護衛を頼んだ。そんな名匠鍛冶師たる黒兎は、現在少年の腕に包まれながら、ぬいぐるみのように抱っこされている。

 

「ペッパーさん…あの、ずっと気になっていたのですが…。えっとその……『何を探して』いるのですか?」

 

ビィラックの温もりに、表情がほわほわしているレーザーカジキが、ペッパーに質問してくる。此処での受け答えによっては、色々と面倒な事に発展しかねない。

 

只でさえビィラックとアイトゥイルを見られた上に、空を飛ぶ為の装備のパーツを探している等と、口を滑らせ喋ろうものなら、収集が付かなくなる。

 

「此方のクエスト関係で、必要なアイテムが此の山の火口壁面の何処かに在るらしくてな…。全部揃えると、スゴい事が起きるらしい。……何だが、俺にも全容は解らない」

 

特殊クエストに関わる事をぼやかす形で伝えつつ、ペッパーはレーザーカジキにこう言った。

 

「其れと…ビィラックさんとアイトゥイルの事、そして此れから手に入れるアイテムに関して、くれぐれも『他者や君のお姉さんとやらを含めて、一切のプレイヤーに対して情報を口外しないでくれ』。此の約束を守れるなら━━━━━『2人をたっぷり時間一杯、愛でて、撫でる権利を進呈する』けど………どうする?」

 

交渉とはメリットとメリットの天秤が釣り合い、均等に成る事で成立するのが『常識』だ。

 

「ペッパーはん、ワイはお人形じゃなさよ!?」

「そやぞワリャ!?見せ物とちゃうんぞ!!」

「本当にごめんなさい……!協力してくれたら御二方が望む報酬を、必ず御渡し致します!!なのでどうか、どうか今回だけで良いので、御願い申し上げます!!」

 

日本人が世界に誇る、御願いの最終極致たる『土下座』を行い、ビィラックとアイトゥイルに頼むペッパーだったが、レーザーカジキが「あ、あの!」と其の間に入るようにして、土下座をしている彼に言ったのだ。

 

「僕はその……『ペッパーさんと普通に会話がしたい』……です!ビィラックさん達の事は…撫でてみたい、ですけど……。其れよりも、ペッパーさんとお話が出来れば……僕は其れだけで、満足……なんです」

 

普通の話がしたい━━━━そんなレーザーカジキのシンプルで、しかし純粋な想いは、1人と2羽のくすんだ心を真っ白な洗濯物のように洗い流し、心を温かいモノでゆっくりと包んでいく。

 

「レーザーカジキお前、本当に良い子……」

「純心無垢な童なのさね………」

「ヴォーパルバニーなら家族にしたいけぇ…」

 

心を浄化され、押し寄せた感情と共に、1人と2羽はレーザーカジキの頭を撫でた。死した火山の火口に、優しい空間が一時的に形成され、再び一向は探索を再開。

 

時計回りに火口を進み続けて20分が経過し、距離にして1/3程を歩いた頃━━━━━

 

「!ペッパーはん、彼処に何か在るさね!」

 

一眼望遠鏡で火口壁面を見続けていたアイトゥイルが、遂に『機構』に繋がるであろう手掛かりを発見する。

 

「アイトゥイル、其れは何処に在りますか!」

「距離は大体2㎞くらい先に!岩肌と擬態するように『茶色で塗られた階段』が見えたのさ!そして其の先に『不自然に出っ張った終点』みたいな場所も!」

「ナイスじゃ、アイトゥイル!」

 

期待が高まる中、2人と2羽は走り出して其の場所に辿り着く。其所には山肌の色で完全に擬態しながら、嘗ての火山活動が起きていた頃の熱と風化で、今にも崩壊しそうな階段。

 

其の階段を補うかのように人が漸く1人、壁に張り付いて通れるような、人為的に掘られた横凹状の通路が在った。

 

「こりゃあアレじゃな…階段使(つこ)うたら、漏れ無く落下死するヤツじゃけ」

「そうなると…進むのは一択しか無いのさね…」

「あぁ。皆、落下しないように慎重に進むよ」

「は、はい…!頑張り、ます…!」

 

ペッパーが先頭に立ち、風によって飛ばされる可能性を無くすため、自身の旅人のマントを解除し、アイトゥイルの唐笠を預かり、横に掘られた道を指先足先の感覚を頼りにしながら、罠がないかを慎重に確かめ、其の後をビィラック、アイトゥイル、レーザーカジキが続く。

 

「皆!此の先、少し通路が歪んでるから注意して!」

「はい!ありがとうございます!」

 

1歩1歩少しずつ前に、2人と2羽は進み続け、途中でビィラックがバランスを崩して、落ちそうになる危機に見舞われたり、強風でレーザーカジキがパニックになったのを落ち着かせたりと、ハプニングは有ったものの、何とか終着点たる場所に到達出来た。

 

其所は如何にも、罠とおぼしき正方形のフィールドで、目の前には山肌に擬態する程までに錆び付いた、長方形の扉が1つだけ存在しており、突如として4人に向けてスピーカーを通じて喋ったかの様な声が、扉から聴こえてくる。

 

 

 

『ザザザッ━━………汝等の、業……測る━━━━。人を殺める罪、業の重さに━━━……裁きを、降す………━━━━━』

 

 

 

「一体どういう事…なのさ?」

「業の重さじゃと…わちは悪い事なぞしちょらんが?」

「ぼ、僕も…他のプレイヤーさんに迷惑は掛けて、ません…!」

 

レーザーカジキやビィラック、アイトゥイルが其の声に疑問を抱き、首を傾げる中で、ペッパーは此処に存在する罠は『カルマ値を参照にした全員落下死ギミック』だと感じ、万が一に備えて、ビィラックとアイトゥイル、そしてレーザーカジキを纏めて抱え、錆び付いた階段で上に避難出来るように備えた。

 

しかし………。

 

 

 

『内なる業、産出………規定値、クリア。トラップ及び最終ロックを解除………━━━━━━。翼を紡ぐ、心正しき『勇者』よ。其の……道に、幸……多からぬ事……を、祈る………━━━━━━━』

 

 

 

スピーカーの声は断絶し、重い扉が開かれた。一向の前に顕れるは、ペッパーが神代の鐵遺跡の隠し部屋にてレディアントシリーズ一式と籠脚を厳重保管していた、タイムカプセル味の在る鋼鉄の箱に酷似した物。

 

ピーというSEが響き、白い蒸気を吐き出して開かれ。中に納められていたのは、大小異なる真っ白な箱形のユニットが合計で7つ、其の1つずつに英語表記で各々の対応箇所が印されていた。

 

ペッパーはアイテムインベントリの中に、此の純白なユニット達を仕舞って、アイテムの内容を確認する。

 

 

 

 

 

 

 

翔陽顕翼命晶機構(ライジング・フォルクス・ギア):レディアントシリーズの四肢と胸部と背面へのエネルギー循環、及び飛翔能力を制御する為の機能。天を舞う答えの1つたる『核』より流れ溢れ出す力により、答えたる『器』を壊さぬ為に必要となる存在。

 

各々が背より巨翼を、四肢より羽根を、鎧より水晶を顕わし、全身に渦巻く生命の奔流は、其の身を蒼空へと導き、装者を阻む全てを祓い、彼方の果てまで舞い上げる。

 

(しか)して此れは、答えの『機構(きこう)』であり、分かたれた『(うつわ)』と『(たましい)』を揃える事無くして、目覚める事は叶わず。

 

 

 

 

 

 

 

(あ~あ~あ~………。レーザーカジキを連れた状態で、レディアントシリーズの機構(ギア)を入手しちゃったよ。我ながら、色々抜けてるよ全くさぁ……。まぁ、こうなったのは自業自得。自分の不注意が招いた事……)

 

後悔先に立たず。起きてしまった事実は、もう変える事は叶わない。

 

ならば。

 

ならば。

 

其れすらも、此の背に背負ってやる。ヴァイスアッシュに宣言した、虚言を現実に変える本物の勇者に至る為に。

 

ペッパーは目を閉じて、見開いた。其の瞳の内に宿った焔は強く、雄々しく燃えていたのである………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勇者は別たれし歯車を見付けた』

『曇らぬ魂が、崩落の罠を封じ込めた』

『特殊クエスト:【颶風を其の身に、嵐を纏いて】が進行しました』

 

 






遺されしは魂のみ



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