VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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終わったら、やる事は一つ




脈動を鎮め、後に残るは報酬確認

「おーう、お疲れさーん」

右に同じく(おつかれー)

「ペッパーはーん!」

『ワォーン!』

「御疲れ様でした、契約者(マスター)

「ペンシルゴンしゃん!」

「サイガ-0〜!」

「ブルルゥ!」

 

赤竜ドゥーレッドハウル、そして立て続けに発生した(むさぼ)大赤依(だいせきい)との連戦を終え、戦いに参戦したプレイヤーやNPC達が歓喜に湧く中、夜空の彼方へ吹っ飛んで行ったサンラクや旅狼(ヴォルフガング)メンバーに関係するNPCが戦場にやって来た。

 

「やぁやぁ、サンラク君。最大速度(スピードホルダー)獲得おめでとう〜。其れは其れとして、今から私達と『オハナシ』しようか?」

「え、やだよ。疲れたし眠たいんだが?」

「いやぁ、凄かったよぉ。サンラクくぅ〜ん」

「最大速度を取った感想を是非とも聞きたいのだが………」

「其れよりもあの巨大な剣について話を!」

 

廃人プレイヤーがわぁわぁと騒ぎ出し、収拾が付かなくなりそうな予感を抱いたサンラクは、さっさと此の場から逃げ出す方法を考えていた所、声を上げた人物が一人居た。

 

「まぁまぁ、オハナシは後日でも出来るから……………皆さんで一先ず『アレ』を確認しません?」

 

装備を何時もの見慣れた状態に戻して、武器やら一式装備やらをインベントリアに入れたペッパーが、貪る大赤依が崩壊した場所を指差しながらに言う。

 

其処には途轍も無く巨大な『血溜まり』が出来上がり、其の血溜まりの中に光るエフェクト達は、まるで『此処にアイテムが在るよ!』と言わんばかりに主張し(光っ)ており、其の数も貪る大赤依との戦いに参加していたプレイヤーの数と同じであった事からも、人数分の報酬なのだと理解するには充分だった。

 

「貪る大赤依は『血』なのだろうな………」

「嘗て存在し、クターニッドさんが警告した『始源の存在』──────そう見て間違い無いかと」

 

空き瓶を取り出したペッパーとキョージュが、赤溜まりを掬い上げてみれば、硝子の中でドロリとした半固形液体に黒みを帯びた色合いをしているのが見えた。

 

此れは果たして何だろうかと、フレーバーテキストをチェックする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左方始源血液(エレボス・ブラッド)

 

黒き神の血は黒へと行き着き、暗闇は万象に通じ、混沌にこそ覇道は在り。

 

白は隷属を説くが、黒は一体化を説く。大いなる黒き闇の脈動は、安寧と安泰への道を示す。

 

黒い神の血は始源眷属の性質をより強靭(つよ)くし、濁り深まる五色の力は、神と深く繋がる印である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テキストを読み終えた二人は、静かに視線を合わせた。

 

オールフレーバーテキストかつ圧倒的な情報量だが、此の新大陸は『黒き神エレボス』という存在であり、貪る大赤依は『始源眷属』というカテゴリーに属し、同様の存在が新大陸には『五()』居るという事に気付くには充分で。

 

同じ答えに行き着いたか、無言で瓶入りの血を収納してたのである。仮に直接飲んだ場合、絶対にロクな事にならないと予感したので、此のままインベントリの奥底で眠っていて居て貰うとしよう。

 

「……………で、誰から取る?貪る大赤依の報酬」

「全員でコレと思う物を選んで、全員で引っこ抜けば差別はねぇだろう」

「サバイバアル、良い事言うじゃん。其れで良いかな?」

「良いと思う」

 

そんなこんなで自分はコレと思う物の光が在る場所に行き、両手で血溜まりに手を突っ込んで。中に在る物の感触を確かめ、ペッパーの『いっせーのーせ!』の掛け声で引っこ抜けば、各々の手には貪る大赤依の報酬が握られていた。

 

ある者は赤い宝石型のアクセサリー、ある者は猛禽類の鉤爪が付いたレッドメタリックのブーツ、ある者は血管を線維として編み込んだ様なマフラー、ある者は牙獣の牙を混ぜ合わせた様な歪な形をする片手剣、そしてある者は肉食系モンスターの頭蓋であった。

 

「見て見てぇサンラクくぅん!長杖(ロッド)二本持ち出来るってヤバくなぁい?コレ『渇望の手(ハンド・オブ・クレイブ)』って名前なんだって!」

「ブーツは『屍肉喰らいの鉤爪(ネクロファジィ)』……………消える直前のモンスターに蹴り攻撃を叩き込めば、別枠のドロップアイテムが出るのか」

「『活性血再構築(ブラッディ・リヴァイヴ)』。ダメージを受けたり部位を欠損している場所を、他のモブを撃破する事で再生可能と…………。明らかにヤバイ奴では?」

「『盈たされぬ飢牙剣(コルフィンソード)』………持ち主の体力かMPを削る事で、剣其の物の耐久と攻撃性能にステータスを高めるか。逆境覚醒の体力調整と能力強化を一本で出来るとはな…………」

「『暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ)』、ねぇ………。随分とまぁ…………っうかコレ、R.I.Pと思いっきり効果が被ってるじゃねーか!?!?」

 

背中から利き手が生えた者、ブーツを履いて蹴りの感覚を試す者、赤いマフラーの能力に驚愕する者や、牙の剣を振るう者に、能力が被っていると悲嘆する者と、三者三様十人十色の反応が沸き起こる。

 

そんな中でペッパーが手にしたのは、サンラクと同じ肉食系モンスターの頭蓋骨たる『暴血赤依骸冠』であり、彼曰く『黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト·イン·パーケ)と能力が被っている』らしいが、其の権能は如何なる物かとフレーバーテキストをチェックしてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ)

 

貪る大赤依を撃破した報酬にして、獣の上顎のようにも見える奇妙な赤い髑髏の冠。【血解(ブラッドハート)】の詠唱をトリガーとして全身を覆い、プレイヤーに『擬似改宗(デミコンバージョン)』効果の第一段階を発動する。

 

詠唱から三百秒間の間、此のアイテムを使用したプレイヤーは『赤い怪物の姿』へと変身し、プレイヤー・NPC・エネミーを問わずHPを持つMobをキルした数に応じて、最大HPと最大MPを増大し、自身の全ステータスを向上させる。

 

ただし三十秒毎に暴走判定が発動し、合計十回行われる暴走判定間に『最低三体以上』のキル判定を達成していない場合は『飢餓暴走(ハンガーピード)』状態となった後に、種族が『左方始源血属(エレボス・ブラッドルーツ)』へと変更され、アバターはAIによって操作される。また五分経過した時点でも強制的に『飢餓暴走(ハンガーピード)』状態となり、一分間暴れ続けた後に体力が0になる。

 

 

お前は誰だ!? 俺はお前だ! 違う! 俺は負けた! 俺がお前だ! 俺は血だ! 血だ! 肉だ! 俺は「赤」だ!! 魂はお前だ! 俺は飢えている! お前は俺だ! それは最後! 俺は飢えている! お前も飢える! だから………だから全てを喰らい尽くす!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンラクの言う通り、文面だけ見ればスローターを行う程に能力を高めていく、黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト·イン·パーケ)と効果が被っている様にも見えた。

 

だが、黒き死に捧ぐ嘆きは女性状態時専用であるのに対し、此方は男性状態でも使用可能な他、アイテムの扱いから『暴血赤依骸冠と黒き死に捧ぐ嘆きは併用可能では無いか?』と推測出来る。

 

何よりフレーバーテキストだけでも相当な情報量を持ち、デメリット効果に在る『左方始源血属』という単語からしても、此れを使い続けたら『ニンゲン ヤメマスカ ?』一直線な危険を孕んでいるのは間違い無い。

 

「重要情報が多過ぎる…………オマケに使い過ぎたら人間に戻れなくなるぞ、的な文脈だしよぉ…………」

「えっ、そっちもそんな感じなのぉ?私はダメージ受け過ぎるとオートでプレイヤーを殴り出すらしいんだぁ〜」

「此方はキル重ねてかねぇと、一定時間で防御と耐久がガンガン減って、最終的にどっちも1になるみてぇだ」

「要するにブッ壊れ性能とクソみたいなデメリットを同時搭載したアクセサリーやアイテム、防具や武器がレイドモンスターの撃破報酬って訳か……………」

 

色々思う事は有るが、全員の頭に過ったのは『取り敢えず御疲れ様でした』という言葉であり。

 

「えー…………赤竜ドゥーレッドハウル、及び貪る大赤依の討伐に協力していただき、本当にありがとうございました!皆さん、本当に御疲れ様でした!!」

 

ペッパーの音頭と共に、此処に赤竜討伐は完遂されたのであった……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉱人族(ドワーフ)と赤系竜人族(ドラゴニュート)達と共に開拓者達が再び戻って来たのは、鉱人族の故郷・地下都市ホルヴァルキン。時刻は午前三時手前、一徹近い大激戦と言える此の戦って重傷者は複数人出たが皆大事に至らず、本当ならば死者が出ても不思議じゃなかった。

 

乗り越えられたのは、勇者武器(ウィッシュド·ウェポン)聖杖(せいじょう)アスクレピオスの所持者でヒーラーの火酒夏(カシューナッツ)や、最大防御(ディフェンスホルダー)のジョゼットにSF-Zooのタンク五人衆の活躍も大きく、開拓者(プレイヤー)の中でもかなり上澄みの戦力を結集させた事で、何とか乗り越えられたと断言出来る。

 

「ペッパー・天津気(アマツキ)殿…………赤竜ドゥーレッドハウルは…………」

「ミダス28世殿、俺達は赤竜ドゥーレッドハウルを討伐しました。最後に決めたのはサイガ-0さんです」

「はい…………その、ラストアタック、しました…………」

 

都市で待っていたミダス28世に報告し、サイガ-0が前に出て。そしてホルヴァルキンには鉱人族と赤系竜人族の、狂乱と歓喜と祝杯の声に彩られたのだった。

 

 






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