VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦いの後に




其れは遠い時代に生きた獣

地下都市ホルヴァルキンで鉱人族と赤系竜人族による、赤竜ドゥーレッドハウルの討滅による祝杯と宴は参加したプレイヤー達を巻き込んでドンチャン騒ぎとなり。

 

ペッパー・サンラク・ペンシルゴン・サイガ-0は上手く隙を縫ったり、他のプレイヤー達に頼んだりして其の場を離脱し、各々のパートナーや供回りと共にラビッツへのゲートを潜り抜けて兎御殿へ帰還する。

 

「なぁ、エムル。俺達そろそろ休みたいんだが、(むさぼ)大赤依(だいせきい)の討伐報告は明日とかでも良くないか?」

「サンラクサン、ワガママは良くないですわ?」

 

どうやらヴァイスアッシュにとっても、貪る大赤依は始源の存在として関係大有りであるらしい。そしてヴァイスアッシュはユニークシナリオ【兎の国からの招待】と、其の進展であるユニークシナリオEX【致命兎叙事詩(エピック.オブ.ヴォーパルバニー)】の受注者の『ヴォーパル魂』の数値が高まると見掛ける様で、もしかすれば受注者全体のヴォーパル魂の数値が低いと、そもそも現れないのかも知れない。

 

そんな中でエムルの案内で、ヴァイスアッシュが居る謁見の間に辿り着き。襖を開いて中に足を踏み入れると、ヴァイスアッシュとポポンガが居り、互いに升酒を楽しんでいる光景を目の当たりにしたのだ。

 

「まぁ座んな」と言われたので「失礼致します」と述べた後、赤竜ドゥーレッドハウルの討伐戦と、其の後に立て続けで発生したレイドモンスター・貪る大赤依との激闘、そして討伐に至った事をヴァイスアッシュとポポンガに語ったのである。

 

「他の皆さんや勇者武器所持者達、開拓者の中でも強者(つわもの)中の強者(つわもの)達の力を借りる事になりましたが、全員無事に五体満足で生き残れました」

「皆のヴォーパル魂も凄く上がっていたのさね」

「サンラクさんに関しては、物凄くギュンギュン来てたですわ!」

「おぅおぅ、そうかぁ………そうかぁ………」

「よう頑張ったなぁ、お前さん達や」

 

世界の真実に最も近く、此の世で最も旧く、そして最も強いヴォーパルバニーの大頭は天上を見上げ、其の大頭たる極道兎と友たる大賢者の小鬼は、何を思ったか瞑目する。

 

「貪る大赤依………。『知っとるさぁ』………()()()()、そして()()()()()だぁな………」

「ドゥーレッドハウルがジークヴルムに挑む為に、地中のマナを吸い上げたんが原因じゃな…………。彼奴め、自分が原因で恐ろしい物を目覚めさせた事を知らんまま死んだんは、幸か不幸か一体何方かのぉ…………」

 

一瞬ではあったが何かを悔いるヴァイスアッシュと、貪る大赤依が現れた理由を何かしらの方法で知ったポポンガは、苦い表情を浮かべる。だが此方が其の理由をロールプレイで聞き出すより早く、大兎と小鬼は笑みを浮かべてヴァイスアッシュはこう言った。

 

「ようやったなぁ、おめえさんらァ。………ありゃあ『始源の怪物』………神代よりも更に前、此の地に(たお)れた神の『血』って奴よぅ。…………勘の良いお前さん達なら、既に『大体の見当』は付いてるんじゃあねぇかい?」

 

新大陸を空中で撮影したからか、其れとも『左方始源血液(エレボス・ブラッド)』を採取したのがフラグか。ヴァイスアッシュの問い掛けに対し、サンラクとペッパーはこう答えた。

 

「旧大陸と新大陸……兄貴、つまりそういうことなんですかね」

「自分達が冒険している新大陸。其れは『黒き神エレボスの身体の上』であり………此のラビッツは『エレボスの翼の一部』、旧大陸はエレボスという()と対峙した存在の身体の上…………という事なのですね?」

「……………あぁ、そうだともよぅ。此処は黒き神『左方始源獣エレボス』──────其の()の先端ってぇ訳だぁ」

 

ヴァイスアッシュの放った言葉、そして貪る大赤依という存在の特色、其れによって深淵のクターニッドの言葉の意味と、後に起き得るだろう『最悪の未来』が此の場に居た全員の頭を過る。

 

貪る大赤依は赤い飛蝗であり、同時に血であり、人間に例えるならば『赤血球』の様な存在だ。死体になった筈のエレボスなる巨大な鳥の血が動いていて、クターニッドが封印している『狂える大群青』と同じならば、ワールドストーリーが『第四段階に突入した時』に再び活性化する事になる。

 

始源の存在達が活性化すれば、開拓者達は少なくとも其れに対処しなくては取り返しの付かない事が起きる可能性が在り、クターニッドとの戦いを終えた後の去り際に言われた、『蛇と兎の鎧を探せ。白き神目覚める其の前に』からも、無関係では無いのは明白。

 

(……………『シャンフロの世界を崩壊させる気か』、此処の運営は……………!)

 

最悪の未来だが、墓守のウェザエモンのユニークシナリオに効率重視の攻略法(バッドエンド)を仕込んでいた運営だ、やるのかやらないのかと言われたら『確実にやる』のが目に見えており。

 

新大陸=左方始源という事は、必然的に旧大陸=右方始源という事であり、栄古斉衰(えいこせいすい)死火口湖(しかこうこ)の深層に居た『✕○君』は、右方始源の『赤』として情報が繋げられる。

 

そしてヴァイスアッシュが嘗て『先々代赤竜のクレプトクルムを、天覇のジークヴルムが物理的に押し潰して火山に蓋をした』という事、ベヒーモスにてアンドリューから『天覇のジークヴルムが始源達と戦う為に()()()()存在』と聞かされたペッパーは、此処に至る迄に得てきた情報達を精査して、着実に答えが構築されていくのを感じた。

 

「おぅ、そうだ……おめぇさん等。貪る大赤依に所縁あるものォ……得たんじゃあねぇかい?」

「えぇ、まぁ………。どうにも不気味、と言いやすか………」

「此方、なのですが…………」

 

そう言ったサンラクが報酬たる暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ)を取り出し。ペッパーもサンラクと同じ物を、ペンシルゴンは活性血再構築(ブラッディ・リヴァイヴ)、サイガ-0は盈たされぬ飢牙剣(コルフィンソード)を取り出して、ヴァイスアッシュとポポンガに見せる。

 

一品達をジッ………と、まるで品定めをするかの様に見定めたヴァイスアッシュは、此等をどう扱うかで難儀する者に道を示すかの様に言う。

 

「そいつ等はよぅ、切り離された自意識のねぇ『空の器』さぁ………。おめえさん等が()()となる事で、そいつぁ其の本質を行使する……。そして、使う程に力はおめぇさんに馴染んでいくって寸法だぁ」

「……つまりは『積極的に使っていけ』と、そう仰りたいのですか?」

「くかかか、其れこそ()()()()()の意思だろう!特にペッパーとサンラク、おめぇさん等は『あの犬っころが刻んだ傷が在る限り』、其の最後の一線を踏み越える事はねぇよぅ…………」

 

リュカオーンの刻傷や愛呪の力によって、現状ペッパーとサンラクは改宗(コンバージョン)が不可能になっているが、其の判定が暴血赤依骸冠の飢餓暴走(ハンガーピード)に置ける、強制的な『擬似改宗(デミコンバージョン)を無効にする効果』が発揮される可能性が高い。

 

『リュカオーンの刻傷や愛呪が消える前に、レイドモンスターからドロップした其の報酬を使い熟していけ』──────そう言いたいのだろう。ユニークモンスターの呪いの上位の物が無いプレイヤーの場合は、其のデメリットを許容して戦う必要性が在ると。

 

ノワがペンシルゴンにドヤ顔を噛まし、ペンシルゴンとバチバチと火花を散らし合うのを横目に見ながら、暴血赤依骸冠の力を検証する必要性が有ると考え、水晶巣崖(すいしょうそうがい)ならば迷惑が掛からず適地だと確信したのだった……………。

 

 






垣間見えた未来の一つ



※ペッパーが脳内で情報を繋げている時のイメージは『遊☆戯☆王5D's』で演出される、脳内ソリティアのアレです。無数のカードを繋ぎ合わせて、最後のカードへと導くアレが凄く好き。


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