勇者休息の其の頃
シャンフロに置けるプレイヤー目線で新大陸行きの船旅五日目……………四日目の深夜帯に
アナウンスを通じて広くプレイヤー達に知れ渡り、運営には『レイドモンスターとは何か?』やらの質問メールが絨毯爆撃めいて殺到し、運営も其の詳細は明かせぬが故に『ワールドストーリー進行によって開示されます』という文章で簡潔に、かつ明白に答えを返すしか方法が無かったのである。
「まぁ…………討伐メンバーの中には考察クランのリーダーが居たし、まとめ記事も出来上がるだろうしな…………」
ユートピアエンターテイメントソフトウェアのオフィス内にて、そう小さく呟いたシャンフロの調整神たる
討伐推奨人数の半分より少し少なく、しかしながらクターニッドの一式装備たる
ユニークモンスターの一式装備達は個々其々の搭載能力は違えど、其の一つ一つの能力を使いこなせば他のユニークモンスターや始源存在にも対抗出来、プレイヤー達が『詰まない為の救済措置』でも在る為に、始源相手にも『戦えるという実戦データ』は今後の調整に置いても大いに役立つ。
おそらくだが
「レイドモンスター関係は何れ、プレイヤー
想定よりも『ずっと早く』、旧大陸のバハムートがペッパーの手により発見・再稼働し、新大陸へ旅立った者達や今回は船に乗れなかった者達はレベルキャップ解放と、銃火器にロボット等の新要素を楽しめる。だが必然的に、新大陸の先行組の『ゲームに対するモチベーションを下げる結果』も招いているのも事実。
此のままジークヴルムのユニークシナリオが終了し、ワールドストーリーが第四段階に突入したならば、低下したモチベーションがプレイヤー達を苛む事は不可避だろう。
(ジークヴルムの『決戦フェーズ』開始前までに、新大陸のバハムート『リヴァイアサン』が再稼働すれば、少しは状況は変わる………か)
そしてペッパーが持つユニークモンスターの一式装備には、リヴァイアサンの最奥の地に赴く事で『ある物』を解放出来、其れを『軍隊レベル』でプレイヤー達が揃えれば、一式装備に比肩する力を発揮可能になる。
(まぁ
第四段階と第五段階の調整含めて、やる事はまだまだ多い。運営として、調整者として、律はシャングリラ・フロンティアというゲームを『神ゲー』とし続ける為に、今日もまた激動に身を投じていく……………。
同じ頃、ユートピアエンターテイメントソフトウェアの地下十階に在る『原典閲覧室』。社内でも極一部の、其れも『限られた者』にのみ足を踏み入れる事を許された、謂わば『聖域』の様な場所。
「………………………」
其処にはシャンフロの世界を作り出した創世の神、天地 律とは犬猿の仲で有る『
赤竜ドゥーレッドハウルは上澄みの廃人プレイヤー達+
ただし、創世にとって一つだけ…………たった一つだけ『御見事』と同時に、『納得いかない』という二つの感情が混同していたのだ。
「鉱人族、赤系竜人族。ヴァイスアッシュファミリーのヴォーパルバニーに、契約済み
貪る大赤依は接敵時に『条件』を満たしていない場合、鎧袖一触の四字熟語に相応しい『即死』が襲い掛かり、先ず大前提として無犠牲は針の糸を通すレベルで難しく、出来る出来ないで言えば『途方も無く難しい』というのが彼女の見解である。
一応貪る大赤依自体は、条件を逆手に取れば『誘き出す事は可能』で、今回の戦いは其の条件によって赤竜討伐メンバーの元に出現・突発的な遭遇戦になった訳だが、第一形態時点での貪る大赤依の特色を『ペッパー』がほぼ突き止め。
初手の『NPC即死の捕食攻撃』を単身でヘイトを奪取・別の場所に移し替え、他のプレイヤー達がNPCを安全圏に逃がし切る行動を協力して行ったというのが、レイドモンスター相手に無犠牲という『快挙』を成し遂げたのだと、彼女は解ったのだ。
初見で貪る大赤依の特色をよく見抜いたという驚愕が。
始源眷属の力は生半可では断じて無いという自信が。
クターニッドが力を分けた鎧を託しただけの事は有るという感心が。
鎧込みでもより苦戦して欲しかったという不満が。
彼女の中で、正と負の螺旋を描いて回り続けている。
「………………赤竜や貪る大赤依の前の、海中での戦闘データもオルケストラには送ってある。選出は『ランダム』だとしても『順序』を少し弄るべきかしら?」
邪悪な感情を抱きながらも思考し、軈て『其れはまだ良い』という結論を下した創世は、残り四体の色竜に着目する。
「……………白竜は巨人族と戦い、緑竜と黒竜は時に備え、青竜は海中で暴れている。此の中の『二体が倒れる』か『全ての竜が一同に介した』ならば、其の時こそが──────」
世界に訪れんとしている『運命』を知るが故に、創世の神は静かに見守っている。
世界の歯車は未だ動き続け、止まる事を知らない…………。
調律と創世の神の思惑