VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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君はどうやって採る?




マグマとは泥、黄金は地脈と同義

そもそもマグマという物は鉱人族(ドワーフ)曰く『地より出でて星を救う熱き泥』と言い伝えられており、実際にペッパーが泳いでみた感想は『半裸でも数秒で死に絶える超々高熱の半固形液体』である。

 

シャンフロのシステムでは耐久値が0になった装備や武器は修繕不可能となりデータロストする都合上、マグマを泳ぐ場合は熱耐性や融解耐性の高い物で無いと、そもそも話にならないレベルである程度には厄介なのだ。

 

「此の泉は勇者にしか超える事は出来ないのです」

 

ミダス28世が改めてそう言っていた。多分肉体自体の耐久以前に体力を増やすor炎熱耐性を付けた方が、まだマグマの中で持ち堪えられる気がする。

 

「フフフフ………。甘い、甘いぜぇミダス君………不可能や絶望ってのは『永遠』じゃあないんだ。止まない雨が有る様に………何時か不可能は可能へ、絶望は希望に変わるんだぜ?」

「其れは──────」

 

此処までやって来て解った事、其れは素肌の状態ではマグマから出る熱で『瞬間的』に焼き焦がされてダメージを負う事。即ちマグマによる熱が身体を焼く前に『移動』してしまえば、何の問題も無いという事。其れがサンラクが導き出した『答え』だった。

 

「ペッパー、例の『バケツ』は?」

「有るよ、コレがマグマすら掬うバケツだ」

 

ペッパーがインベントリアを操作、ビィラック作:皇金桶(おうごんとう)カイザーバケットを取り出し、灼骨砕身(しゃっこつさいしん)で刻傷を相殺して水晶輝装(クリスタルアーマー)シリーズを纏い。

 

藍色の聖杯で幸運と体力のステータス数値を入れ替え、採取の為の全ての準備を終えたサンラクに譲渡申請を飛ばし、所有権が移った所で全員の注目が彼に収束される。

 

「ヨッシャ、往くぜぇ!!」

 

スキルを立て続けに起動し、空を駆けて灼熱の赤い海の上をサンラクが渡る。水晶の鎧によって熱より身を守りながら、己の身体の位置と場所を調節しつつ、高度を下げて黄金のマグマが在る泉の中心地を目指す。

 

「見えたぁッッッ!!」

 

神秘(アルカナム):愚者(フール)はスリップダメージを抑える為に一時的に外している事で、スキルの再使用時間(リキャストタイム)は恩寵が消えて『従来の速度』まで戻っている。故にこそスキルの使うタイミングや時間制限、使う順番に関してミスは許されない。

 

何より後方で控えている他のプレイヤー…………特にペンシルゴンやオイカッツォの外道組と、ルスト&モルドの目の前で『頭からマグマダイブ&犬神家状態で焼き溶けた』なら、向こう数年はネタとして十中八九擦ってくる可能性が高く、そんな事は絶対にさせないという気持ちが強いのだが。

 

「バケツぅ、スタンバイ!」

 

赤い灼熱のマグマの中心地、其処に輝く黄金のマグマを目視で確認し、カイザーバケットを手に持つ。水晶の鎧が溶け始める感覚が襲い掛かる中、焦らず冷静にサンラクは速度を上げる。

 

カルマティール・フロートの効果時間持続中に接近し、マクセル・ドッジアーツの多重的円周運動(オービット・ムーブメント)による最小円周挙動と疾風連紲(しっぷうれんせつ)によるスタミナ消費の加速を乗せて。

 

「男子小学生に脈々と受け継がれた秘伝ッッッ!『高速回転で落ちない水』ぅうう!!」

 

回転しながらの滑走を真界観測眼(クォンタムゲイズ)による思考加速を乗せて、空中で三次元超回転する己の身を制御して回転を収めながら、星幽界導線(アストラルライン)でルートを導き出して総仕上げに掛かる。

 

一つでも間違えればバケツの中のマグマを頭から被ったり、マグマダイブする状態ながらも、サンラクは自らが培ったスキルを駆使して灼熱の海を越え。

 

「フィニッシュ!!」

「救助します」

「ナイスだサイナァ!」

充足(むふー):」

 

インベントリアにマグマを収納、青い鎧を纏いフェイス部分のみを開けたサイナが、空中でサンラクの両手を掴んで地面に下ろす。

 

「な、なんという…………」

「悪いな、勇者諸君。一抜けさせて貰った」

「あぁ、サンラク君。まだ他の皆さんからの『オハナシ』が有るから待機しててねー?」

「えー」

「えーじゃねーよー、採って来たマグマをみせろよ〜、サンラクくーん?」

 

着地するや否や、近くに移動していたオイカッツォとサバイバアルが肩に手を置き、其処にSOHO-ZONEとキョージュ含めた一部のプレイヤーが、ニッコリ笑顔でサンラクを包囲する。

 

「さてと……………やるか!」

 

何れはアスカロンの強化の為にも必要になる可能性が高く、勇者武器(ウィッシュド·ウェポン)含めて様々な事に使えそうな予感がする黄金のマグマ、サンラクが先に採ったが此方も後に続かせて貰うとしよう。

 

左手指パッチンで封熱の撃鉄(ニュウショウ・トリガー)(スペリオル)、右手で鳩尾を叩いて封雲の撃鉄(タイタントリガー)(スペリオル)を起動。赤い炎と白い雲を其の身に纏って、ステータスポイントを体力にある程度振り込んだ後、最後に聖盾イーディスを構えてシンクロナイズドスイミングの演者の如く、下半身でマグマの中を蹴り泳いで進む。

 

「うごごごご!?!っ負けっかぁあ!!?」

 

スキルとアクセサリーで補強した下半身が熱とマグマに焼ける、封雲の撃鉄のリジェネ効果を使っても体力が削られる、聖盾イーディスが熱によって耐久値を減らしていく。

 

「だがぁ!!!」

 

あの火山の深層に居る『✕○君』の羽を広げた熱波や!深海深層の『巨大鯱』が放った光に比べれば!マグマの熱等、まだまだ生易しい方なのだから!!

 

「あちぃ?!っおおお、あつくねぇぇええ!」

 

嘘です滅茶苦茶熱いです、熱で熱を相殺と雲を纏って無かったら、今頃丸焼きから焼き溶けデスポーンしてました。

 

「あつ、あっつ!?あああああつぐねぇえええ!!?」

 

何時もなら空中疾走で簡単に確保出来るのだが、今回は勇者関連なのでそうはいかない。現実ならとっくに焼け溶けて死んでいるが、やはり此処はゲームの中だ。現実で体験出来ない死因を知る事も、試す事も出来るのが仮想現実の醍醐味なのだから。

 

「おごごごごごごぉ!?づいたぁあああああ!?」

 

体力にポイントを振っていなかったり、イーディスの食い縛りが不発や、封雲の撃鉄のリジェネが無かったならば、屍を晒して熔けたのは此方だった。黄金に輝き光る熱い灼熱の泥中を蹴りつつ、インベントリアに聖盾イーディスを収納からスイッチで『もう一つのカイザーバケット』を虚空に出して、マグマの中へと落とし込み──────掬い上げる。

 

「っしゃああああああ!?!?」

 

インベントリアにバケットを収納。後は戻るだけだが、此の際なのでアレをやってみよう。撃鉄を解除し、蹴り泳ぎを止める。身体が沈み、マグマの熱がペッパーの身を溶かす。

 

そして彼等彼女等が見たのは──────『某映画のラストにてサムズアップしながら溶鉱炉に沈むアンドロイドの最後』と同じであったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚リスポーンしたペッパーはサンラク共々、ペンシルゴン主導の『オハナシ』に巻き込まれ、色々と情報を吐き出される事になった事。

 

そして数回に渡って、黄金のマグマを汲み上げ運ぶという、文字通りの『バケツリレー』をする事になったのを、此処に記載しておく。

 

 






入手、黄金のマグマ


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