VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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帰還してやる事




黄金の血脈は届き、黒兎は神の領域に迫る

地下都市ホルヴァルキンにて黄金のマグマを入手し、サイガ-0が隠し最上位職に転職等のイベントを終えて。帰る直前にミダス28世から『我等鉱人族(ドワーフ)と赤系竜人族(ドラゴニュート)は、貴方方に救われた。もし有事が有れば、我等はペッパー・天津気(アマツキ)殿達に力を貸すべく、野山を越えて馳せ参じる』と確約してくれた。

 

イムロンと火酒夏は黄金のマグマや鉱人族に興味が有るらしく、暫く滞在するが其の内にティアプレーテンまで戻る為、砂漠の大横断を開始するのだと言う。

 

二人が無事に砂漠越えが出来る事を祈りつつ、ペッパー・サンラク・ペンシルゴン・サイガ-0は各々の付きNPCや緋鹿毛楯無(ひかげたてなし)を連れてゲートを潜り抜けてラビッツへと帰還から、緋鹿毛楯無は兎御殿の庭先に待機させつつ其の足でビィラックが居る鍛冶場へと向かい。

 

其処で鍛冶道具をピカピカに磨き上げている彼女を発見する。

 

「ビィラックさん、黄金のマグマを採って来ましたよ」

「おぅ、ビィラック。コレが其のマグマだぜ」

 

インベントリアから取り出したビィラック謹製の皇金桶(おうごんとう)カイザーバケット、地下神殿のマグマの泉より掬い上げて採取した金色の熱泥は、時間が経って冷め固まると思われていたが、其の中に納められて居たからか今尚『熱々の状態』に在る。

 

おそらくインベントリアの中に入れたアイテムや食材等はインベントリと違って『経年劣化や変化が起きない』可能性が有り、アクセサリー枠を永続で一つ潰すだけの凄まじいメリットを搭載していると染み染み思う。

 

「…………ワリャ等に任せりゃ、何時かは『月の石』でも持ってきそうじゃな…………」

「宇宙空間で動ける服装が無いと酸欠で死にますって……」

「此の手の届く場所までの(もん)しか、俺等は持ってこれねーよ」

 

逆に条件さえ整ってしまえば其れすら採って来るという宣言でもあり、ビィラックも苦笑いを浮かべながらも黄金のマグマを前に、其れをジッ………と見つめてから言った。

 

「…………此れならあの黄金の蠍の皇帝の聖剣や剣鋏を、武器を含めて加工出来る。水晶の蠍は大地の赤子、そんなら大地の血潮こそが幼年期に終わりを告げる『最後の鍵』じゃけぇ。あの聖剣と剣鋏をどんな感じに仕立てたいか…………、ワリャの注文を聞くけぇ」

「でしたら……………尻尾の聖剣は『片手剣』に、剣鋏は『弩弓剣(アーチブレイド)』で。ただ弩弓剣には他の素材も必要だと考えてるので、使うとしたら『水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)』と『帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)』の素材を使った、そんな弩弓剣にしたいと思ってます。なので後日採ってきます」

 

水晶の蠍と二極に変色する暴君、そして蠍達の皇帝たる存在が織り成す弩弓剣………ビィラックに作って貰うにしても、設計図に書き起こして彼女に見せてからの方がイメージも掴みやすい筈だ。

 

そんな中、彼女は再び黄金のマグマを見つめており。其の視線は静かで有ったが、軈ては瞑目から細々とした声を喉から鳴らして唸り出したので、心配したペッパーが声を掛ける。

 

「………………?ビィラックさん、どうしました?」

「…………………ペッパー、サンラクよ。ワリャ等に折言って『頼み』が有るんじゃ。だが…………此の依頼は、受けても良いし、断ってもえぇ」

「断っても良いだと?」

 

此方の任意に委ねる…………其れ程までに重大な事柄なのかと、ペンシルゴンにサイガ-0や彼等彼女等のパートナーたるヴォーパルバニー、そして征服人形(コンキスタ・ドール)達も状況を見守る中、ビィラックの口から『衝撃の言葉』が出たのだ。

 

「ワチはな──────『()()』になる機会を得たんじゃ」

「マジで?」

「本当ですか?」

 

鍛冶師の隠し最上位職業『神匠』、其れは現時点で七つの最強種たる『不滅のヴァイスアッシュ』以外に確認されていない職業であり、鍛冶師最上位職の『名匠』と太古の神代の技術を扱う『古匠』を組み合わせた、鍛冶に携わる者達の『頂点』とも呼ぶべき極致たる御業を振るえる者。

 

其れに就職可能という事は、サンラクが主導で進めてきたビィラック育成計画も、いよいよ大詰めの段階まで来たという事に等しいのである。

 

「神匠…………って何さね?あーくん、サンラク君」

「気に、なります………」

「鍛冶師職の隠し最上位職、要するにレイ氏が今日転職した、ケット………あれケトラフ?」

追月の竜騎(ケトゥラフ・ドラグーン)だね」

「そう、其れだ。其の職業と同じく複合した条件を達成して、初めて到れる最上位職って奴だ」

 

ともなれば彼女を神匠にしたいが、今はジークヴルムの事を含めて予定が立て込んでいる。サンラクからすれば、明日はいよいよ『慈愛の聖女イリステラ』から前々より依頼された王族の護衛任務、此処でヘマをする訳にも行かないので一先ずは『就職に必要な条件』を聞き出す事にした。

 

「んで、ビィラックよ。神匠に成るには何が必要なんだ?」

「──────必要なもんは唯一つ……そう、唯一つなんじゃ。…………神匠(しんしょう)……………否、『神匠(ザ·ブラックスミス)』の(かいな)現在(いま)より未来(さき)へ進める者なんじゃ…………。其れは其の身に重ねた偉業を称え、其れを形とする者なんじゃ…………」

 

随分と哲学的にも聞こえる言葉だが、ペッパーとサンラクにペンシルゴンとサイガ-0は、まるでビィラックとは『別の誰か』が話しているかの様にも聞こえていた。

 

「サンラクは()()()()()()、ペッパーは()()()()()じゃ」

「何?」

「アスカロン?」

「…………神匠は英傑武器(グレイトフル)達を『唯一()()させられる存在』なんじゃ。其れが出来て初めて鍛冶師は神匠へと至り、逆に言えば神匠とは神化(其れ)を行えん(モン)は神匠に()()()()のじゃ。そして今のままではアラドヴァルも!アスカロンも!何方も『充たされておらん』のじゃッッッッッッッッッ!!!!」

 

要するにビィラックは神匠に至るだけの実力は備えたが、最終試練と言うべき壁として英傑武器の神化を、彼女自身の手で行わなければならない。

 

だが今のままでは、アラドヴァル・リビルドとアスカロン・リペアはリビルドかリバースの状態になって神化するにしても失敗する可能性が高く、シャンフロwikiでは鍛冶や真化に失敗した場合は文字通り武器が砕け散って修繕不可能、所謂データロストと同じ扱いとなる。

 

即ちアラドヴァル・リビルドもアスカロン・リペアも、何方も更なる強化を行って武器の器を強靭な物として、先々に待ち構えている神化へと備えられる状態にしろと、そう彼女は言いたいのだろう。

 

そしてビィラックはサンラクとペッパーに、其々此の様な言葉を放つ。

 

「サンラク、アラドヴァルで『竜』を狩れ!ペッパー、アスカロンに『冥王の血』を注げ!」

「竜を狩れ?ユザーパードラゴンを狩ってこいって事か?」

「冥王…………深海関係のモンスターなのか?」

「そげん木っ端に用は無いッ!五色の竜だろうと、天を覇する龍であろうと、アラドヴァルは()()()()()!アスカロンの()()は深海の揺り籠より出で、深き深き底に居る『奴の血』を求めちょるんじゃ!!」

 

随分とボルテージが高まっているビィラックだが、彼女の話は此処から更にヒートアップし、文字通りマグマの熱にすら負けず劣らずの『熱さ』を帯びていく。

 

「サンラクよ、()()()()を討て!ペッパーよ、()()()()()()を採れ!」

「真……?」

「なる、竜?」

「深海の冷気を採れ?」

「何か随分と盛り上がってるねぇ…………」

「空想より産み落とされた真に(ドラゴン)たる翼持つ牙!五色の竜を焼くアラドヴァルの炎は『歪められた伝説』に過ぎん!アラドヴァルとは!輝槍仮説(ブリューナク)とは──────!!」

「ほぅら、壁がチーズの様にトロ~リ」

「おどりゃ何しとんじゃあああああああ!?!」

「取り敢えず落ち着け!次から次に情報出したって、理解する容量が無きゃ話が進まねぇんだよ!アラドヴァルとブリューナクくらいしか頭に入ってねぇわ!!」

「壁溶かして良い理由にはならんじゃろうがーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

此の後ヒートアップしたビィラックがハンマーをブン回し始め、ペンシルゴンは他のNPC達を守る事を最優先とし、サイガ-0が単身彼女のハンマーを受け止めた隙に、ペッパーとサンラクが彼女に組み付いて落ち着かせた事で漸く収まった。

 

最終的に彼女の話を纏めた結果──────

 

 

 

 

・サンラクの持つアラドヴァル・リビルドは神化させる事が出来、ペッパーのアスカロンは今のリペアからリビルドorリバースに派生すれば神化出来る状態に在る。

 

・神匠は英傑武器を唯一神化させられる存在であるが、今のアラドヴァルやアスカロンでは神化に失敗する可能性が極めて高く、安定させるには更なる強化が必要不可欠。

 

・鍛冶師の本懐は武器が望む事を聞き届け、持ち主に伝える事。そして望みを果たした武器を、更なる高みへ押し上げる事。

 

・アラドヴァルは竜を狩りし巨人の穂先、竜を狩る事こそが望みであり、竜の()()()()()など竜に在らず、祖なる龍の手本もまた竜に在らじ、其の望みは『真なる竜を討つ事』。

 

・アラドヴァル・リビルドは『輝ける槍の真理』に至らんとするもの。焔に眠り、がらんどうを灼けど未だ満たされない。主人(サンラク)よ、巨槍の骸より剣を見出せし狼の影を追う者よ。真なる竜を討て、真説に至らぬ我が身なれど、真説に相応しきは我を於いて他に無し。

 

・竜を討て、真なる竜を討て。空想の怪物は『世界が五に進みし』時、密やかに現れたり……

 

・アスカロンは海底の冷たさと地脈の熱さを宿す者。数多の海の覇者を狩りし大いなる牙、最強なる冥王の血こそ、我が身を『()なる姿へ至らしめる為の最後の鍵』である。

 

・再生を選べど、決別を選べど、()は今の担い手の意志を尊重する。故にこそ、故にこそ…………記されし二つの道より、担い手たる(なんじ)の望む道を選べ。

 

・道を選び、再び黄金の血脈と深海の冷気を喰らい、冥王の血を()に注げ。さすれば()は、其の身を『終なる領域』にまで至らせられる器と成れり。

 

 

 

──────と言った所で、ビィラックが正気を取り戻した。おそらくアラドヴァルとアスカロンの声を聞いて、其の意識が乗っ取られていた可能性が高い。

 

取り敢えずペッパーはビィラックに黄金のマグマを用いた、黄金世代(ゴールデンエイジ)の聖剣を武器として使える様にして貰う事を最優先に彼女に武器の修繕を御願いし、一同は明日に控えている新大陸上陸に備えて早めに休む事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

そして──────新大陸への大航海、其の七日目たる日がやって来る。

 

 






神なる鍛冶師に至るには


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