VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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エリアボス戦&火山探索




怒れる山鹿羊が阻み、胡椒は火山の中を往く

「ほふぅ………無事ゲット出来て良かったぁ~」

 

火口壁面の絶壁の中に、人為的に造られた道を再び戻り、火口周辺まで帰って来たペッパーは、開口一番に大きな息を吐く。

 

あの中腹に在った終着点、乗った者の業を測るという台詞、可能性としては彼処に立ったプレイヤー及びNPCの『カルマ値』の合計を元にして、一定以下でないと扉自体が開かず、全員火口に真っ逆さまのガメオベラ不可避の罠と見て間違いない。

 

もし仮にペンシルゴンがあの場に居たなら、アイトゥイルとビィラックの死亡&二度とリスポーンしない可能性が考えられただけに、背筋がゾッとした。

 

(神代の鐵遺跡と言い、此処のトラップと言い……シャンフロ開発陣の中に、アドベンチャーゲームかそういうカテゴリーの映画が好きな奴絶対居るだろ………)

 

火口より下山し、シャンフロ第5の街『ファイヴァル』への道を阻むエリアボス、怒猛る山鹿羊(ディックホーン)が待つ場所へ、ペッパーとレーザーカジキ、ビィラックとアイトゥイルのパーティーは進み続ける。

 

「あ、あの…ペッパーさん。その…さっきからブルックスランバーが逃げてるのって、リュカオーンの呪い(マーキング)が効いてる…から、ですか?」

 

下山途中、またしても悪辣ペリカンダチョウが突進してくるものの、眼前で急速旋回をしながら去って行く光景を目の当たりにし、レーザーカジキが質問をしてきた。

 

「うん。マントで隠してるんだけど、気配が漏れ出してる影響か、登山時もあんな感じに逃げられてね。お陰で新しいスキルの検証や、レベリングが難しくなってる」

 

レベリングに関して見れば、其所に致命魂(ヴォーパルだましい)首輪(くびわ)の効力も重なっているが、此れのお陰でスキルの成長・進化、ステータスポイントも通常より多く手に入っているのは事実だ。

 

「ペッパーは夜の帝王相手に大立ち回りをしたからなぁ。呪いをフッ掛けられて当然じゃけ、くかか」

「ペッパーはんは、ギラギラに輝くヴォーパル魂を持っとるのさ」

「…ヴォーパル、魂?」

「俺にも解らないが…多分『魂の気高さ』とか『強者に挑む心意気』なんだと思ってる」

 

ヴォーパル魂なるワードは、ユニークシナリオを進めた先で、何時の日にか判明する時は来るだろう。其の為には先ず、クリア条件をアイトゥイルに聞かない事には始まらないが。

 

「…………っと。雑談してたが、全員気を引き締めて。エリアボスが御待ちかねだ」

 

ガゼルの頭にバッファローの角を持ち、山羊のゴワ付いた毛皮と胴体をキメラ合成にした、全長7m程の巨大獣。栄古斉衰の死火口湖のエリアボス・怒猛る山鹿羊(ディックホーン)が、登山ルートを通ってきたペッパー達一行を待ち構えていた。

 

白い鼻息を放出し、前足の蹄で地面を削り、唇を持ち上げ歯を顕にし、首を左右に太い角と共に振り回しては、此方を威嚇している。

 

「アレか…4人居る事だし、ヤギガゼルを苦しませないように手早く倒してしまおう」

「そやね、ペッパーはん。獲物は鮮度が大事なのさ」

「おう、其れに関しちゃワリャ等に同意じゃ」

 

小鎚を、薙刀を、ハンマーを振るい、あの獣を如何にして苦しませずに〆るかと、ペッパー・アイトゥイル・ビィラックは、三者三様の想を浮かべる。

 

が、そんな一向に向かって、レーザーカジキは先んじて前に躍り出るや言ったのだ。

 

「あのッ!こ、此処は……僕に、任せて貰えません……か?ブルックスランバーから護衛して、いただいたので……其の御礼をさせて下さい……!あと、ディックホーンは…『裏技』で倒せます」

 

━━━━━━━━と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━━って!!何だよ『アレ』は!?呆気無さ過ぎるだろ、あのヤギガゼル!!?」

 

怒猛る山鹿羊の戦いは、ペッパーが期待していた物よりも、余りにも外れた形で終わってしまった。というのも此のモンスターは、レーザーカジキが実戦した所、単にダメージを与えるよりも『全身に纏っている毛を火属性魔法で燃やして』、其所に直ぐ様『水属性の魔法で鎮火する』という方法。

 

そうした場合に限り、戦闘経験値は入らないが怒猛る山鹿羊(ディックホーン)恥辱(・・)で走り去って行き、討伐扱いとしてエリア突破出来ると言う、思わずツッコミを入れたくなるような、何をしたら製作陣はそんなギミックを思い付いたんだ的なボスなのである。

 

「毛が無くなって逃げ出すなんて…ブフッ」

「ビィラック姉さん、あんま笑わな…フフフ」

「昔の子供向け番組の悪役が、火炎放射で服ごと真っ黒に焦がされて、全裸で逃げ去ってくヤツじゃねーか…」

「あはは…実はコレ『姉さんのクラン』が、怒猛る山鹿羊(ディックホーン)の生態調査をしていたら、偶然発見したらしくて…教えて貰ったんです」

 

改めて思うが、シャンフロの世界モンスター達は『世界観』から推測して、倒せるタイプが多いように感じる。謂わば『発想』の転換……生物系統のモンスターに関しては、様々なレトロゲームに実際の昆虫・動物の映像等で学びはしたが、ある意味で自分は其の考え方に『凝り硬め』られているのかも知れない。

 

レーザーカジキの姉のクランが見付けた、怒猛る山鹿羊の裏技攻略法も1つのやり方で。そう考えるならば、自分はもっと『自由』に戦っても良いのだろう。

 

「因みに其のクランの名前を聞いても?」

「姉さんが……『オーナー』を勤めてるクラン、『SF-Zoo』は。シャンフロの『モンスター』や『動物』に関する、様々な事を調べて……。あとは……写真を撮ったり、モンスター…に噛まれたり、首チョンパされたりする事、前提の……『ふれあい』……してます」

 

どうやら想像以上に『動物狂い』の面々が多いようだ。そして同時にペッパー、其のSF-Zooにビィラックとアイトゥイルの存在を知られよう物なら、間違いなく撫でさせろとか、果ては彼女達を仲間に出来る方法を聞き出す可能性が高い。

 

いや━━━━━━━━確実にやる(・・・・・)

 

「まぁ、なんだ……レーザーカジキ。其のお姉さんとやらにはビィラックさんとアイトゥイルの事、黙っててくれると助かるんだが…」

「は、はい。えっと………」

「また会話がしたいって言うんだろ?面白い話を揃えておくから、次に会う時を楽しみにしておいて」

「……ありがとうございます!」

 

僅かな時間だったが、モンスターの倒し方等に関する有意義な情報や、時間を過ごす事が出来たのは事実だった。

 

レーザーカジキはこのまま、第5の街ファイヴァルでブルックスランバーの生態調査結果を報告するそうで、ペッパーは火山内部に在る『炎水剛岩(ブルレットロック)』を採掘する為、此処で解散する事となったのである……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーザーカジキと別れ、栄古斉衰の死火口湖の内部に入ったペッパーは、此処から炎水剛岩の在る鉱脈を目指してひた走った。アイトゥイルをマントの中に、ビィラックをファーコートに擬態させ、坑道途中で襲い掛かるモンスターを、呪い刻まれた右手を見せ付ける形で追い払い、其の行く先を邪魔させない。

 

入り組んだ坑道を縦横無尽に走り抜け、数十分程の疾走探索の末に、ルビーの如き赤とサファイアの如き青に彩られた鉱脈と、熱と冷気が入り交じり合った不思議な空間に辿り着く。

 

「何だ此処…ジメジメはしないけど、滅茶苦茶変な感じがする」

「熱くはないし、逆に寒くもないのさ…」

「こんだけの寒暖が働いとって湿気の1つも無いとは、随分けったいな空間じゃけ」

 

各々が感想を述べた後、ペッパーはビィラックが作ってくれたマッドネスブレイカーで、採掘を開始。鉱脈を叩くと、赤と青のマーブル食パンに似た紋様を描く鉱石がドロップ。

 

アイテム名には『炎水剛岩』と書かれていて、マッドネスブレイカーの成長派生に必要となる鉱石だ。触れると、赤からは携帯カイロに似た熱を、青からは冷えたペットボトルコーラに似た冷気を感じ、早速其の内容を確認してみる。

 

 

 

 

炎水剛岩(ブルレットロック):栄古斉衰の死火口湖の鉱脈から採れる鉱石。水のように冷たく焔のように熱い其れは、二律背反の証とされた。

 

火山は生きして鼓動を続け、地脈と地表の熱の寒暖より産まれた岩は、其の生き様を証明出来る者を、ひたすらに待ち続ける。

 

 

 

 

(んんんん……?確かネット情報だと『火山は既に死んでいる』って書かれてたのに、此の鉱石には『火山は生きている』って説明されてる……。どうゆう事なの?)

 

炎水剛岩に疑問を抱きつつも、ある種のフレーバーみたいな物だと思い、採掘ポイントを掘り尽くして、マッドネスブレイカーの成長に支障を来さないだけの量を手に入れたのだった。

 

此の時のペッパーは、火山の中に潜む『存在』を知らなかった。後に『あるプレイヤー』がヴァイスアッシュの言伝ての下、此の地を訪ねる時までは。

 

そうしてペッパー達一向は、来た道を再び疾走。エリアボス討伐扱いで通れる様になった場所を越え、シャンフロ第5の街にして、外気すら吸い込む底無しを大穴を抜ける為の備えを行う街・ファイヴァルに到着したのであった…………

 

 






相対する属性の鉱石は、山の秘密を示す


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