時間が来て
着せ替え隊の質問地獄に対応したり、途中で物凄く面倒になったので逃げ出したいと思ったり、最終的に我慢ならなくなったので青い聖杯使用から、サバイバアルに耳元で囁き入れてノックアウトしてから脱出、スカルアヅチに戻ってエムルを回収し。
新大陸でモンスターハントしていたプレイヤー達が、出現したスローターオシオキモンスターの
其れは其れとして他のプレイヤーが全滅してフィールドに残った黒死の天霊を相手に、街を駆け回ってインベントリア内に数グロス分備蓄した回復ポーションを投げ付け討伐し、ドロップアイテムを獲得したりしながら、休憩を挟んで時間を潰して。
時は流れて午後八時──────サバイバアルが派遣した着せ替え隊の斥候の一人が、『王様と王女が騎士団を連れて動いた』という情報が齎された事で、
「エムル、サイナ。此処からだと俺の
「はいなっ、アタシに御任せですわっ」
「
傍受対象や追跡対象の歩きや動きが遅いという点は、時として潜入ゲーや追跡ゲーに置けるイライラポイントなのは、ゲーマーあるあるに当て嵌まったりする。
「聞こえたですわ、サンラクサン。『なんで前王や王女をわざわざ奥地で殺す必要がある?』、あと『新王様は新大陸の亜人共が敵対したという事実が欲しいのさ』。そして『ウチの団長は王認勇士サマを超えるくらいの手柄を欲しがってる、だからこんな仕事も請け負った』……と言ってるですわ。全部ボソボソ会話で、多分王様と王女様には聞こえてないですわ」
「報告:騎士団の団員数は十五」
「ありがとよ、エムル、サイナ。御蔭で『一連の背景』が大分ハッキリと見えてきた」
今回の一連の騒動…………新王側は前王と王女を新大陸の亜人種によって殺された事にして、自分達が憂い無く軍勢が攻め入る為の大義名分を作り出す事が目的であり、最終的に
そして前王と王女を護衛(暗殺)する騎士達の団長は、王認騎士なる存在よりも偉くなりたいと邪な想いか、或いは『嫉妬』を抱いているらしく、前王と王女を殺して其の足掛かりを作る為に行動しているのと予測出来る。
「エムル、アクティブソナーを使って周囲にバレる可能性は有るか?」
「アタシ以外に効果が及ぶ魔法は、流石に微妙な所が有るですわ」
「オーケー、なら使って探査してくれ。モンスターと鉢合わせちゃ世話無いからな」
「はいなっ」
「サイナは王族の護衛を頼むぞ、死なれちゃ困るからな」
「
周辺のモンスターの存在を探知する魔法【アクティブソナー】を使って警戒するも、周りにはモンスターが居らず。何より身体に張り付いたリュカオーンの
「サンラクサン、サンラクサン、そろそろ『開けた場所』に出るですわ」
「『イベント進行』って所だな………。エムル、準備をするぞ」
カルマティール・フロートを起動して空中を滑走移動、開けた場所の近辺に有る樹木の中の枝に乗り、息を潜めて騎士団と王様のやり取りをサンラクは頭装備の正眼の鳥面と共に、イリステラから渡されたアイテムを使って暗闇の中、証拠を押さえるべく静かに進行を見守る。
「お前達は…………余を、余達を殺すつもりか………」
「えぇ、先王陛下。御身には『新王アレックス陛下』の、偉大なる未来の為の『礎』となっていただきます」
サンラクが見つめる先に、少し腹が出始めた齢五十代の王様キャラの『先王トルヴァンテ』と、其の近くに顔を俯かせて震えている女子『第一王女アーフィリア』が居た。其の二人を護衛し、前線拠点に在る三神教の教会まで連れて行く事が、イリステラより依頼されたクエスト【
「ユリアンよ…………どうか考え直すつもりは無いか。此の大陸に生きる者達とて、『一つの命』である事に変わりは無い。そして其処には、貴賤も優劣も有るまい………」
「何を仰る。彼らは下賤で劣等な蛮族、我らとは比べるまでもない存在でしょう」
ユリアンなる騎士団を率いる長の発言は、ゲーム的な観点から見ればコッテコテの『差別キャラ』の其れであり、敵対したならば憂いや後悔も無くブッ飛ばせるキャラでもある。だがサンラクの心には今現在、言葉で言い換えられぬ様な『嫌な感覚』に襲われていたのだ。
何か──────そう、何か。自分の『最悪の記憶』の外縁周部を指先で、そっと撫でられている様な。コレを押されたら爆発するという爆弾のボタンの周りを、今尚弄ばれるかの様に在る状況に似ていて。
「──────とはいえ、私は新王陛下ほど亜人を嫌ってはおりませんよ」
「ならば………!」
「私が求めるは『新たなる戦い』、王城に磔られた
「彼等の命は、貴様の武功の為の『糧』では決して無いのだぞ……!」
トルヴァンテが『善い王』で在ると解る、良い台詞だ。仮に此処にペッパーが居たら、間違い無くトルヴァンテに味方していただろう。
「ユリアンよ……。儂はどうなっても構わん。だがせめて、せめてアーフィリアだけでも………助けてはくれぬか」
「御父様…………ッ!」
「申し訳ありません先王陛下。貴方と共に第一王女も葬った方が、
「ぐっ………!」
アーフィリアの声にサンラクの脳が震えた。まるで『記憶の奥底』に沈めていた記憶がサルベージの如く引き上げられて、再び己に襲い掛かるかの様な感覚を味わっている気分だ。
だが今はクエストクリアを成し遂げる事が先決。迷いを振り払い、イリステラから依頼された王族護衛を成し遂げる事が最優先事項なのだから!
「エムル、サイナ。此処からは『死地』と心得ろ。意志と心を強く持て──────行くぞ!」
「えっ、あ、はいなっ!」
「了解:防衛行動を開始します」
「すぅ……………待てぇい、不埒と我欲に塗れし騎士達よ!!」
「!?何者だッッッ!!」
「未踏の地に広まらんとする其の悪意!夜闇に紛れ
投擲スキルのスロー・オブ・タービュランスで第三騎士団団長ユリアンと、先王トルヴァンテ&第一王女アーフィリアの間を分かつ様に『
「亜人、では無い様ですね………。其の黒のヴェールの下に隠した眼差しは、正義を見ているとでも?名を聞きましょうか」
「外道に名乗る名等無い──────!我こそは彷徨える剣!聖女の願いに応えし、王と王女を守るべく振るわれる剣であるッ!」
現時点の別離れなく死を憶ふは、モンスター含めてキルスコアを重ねていない為に、レベルキャップを解放した身でも筋力系のバフを加えて漸く持てる程度、何よりも今の段階で此の大剣を振るえば、レベル差による即死がユリアンを襲う危険も付き纏っている。
尤も其れは別離れなく死を憶ふで『斬った』場合に発動するので、鈍器の扱いとして平面で殴れば問題は無い。即ち峰打ち(質量バット)をすれば良いだけの話、脳内出力による完璧な計算式の完成だ。
「彷徨える剣…………もしや、御主は……………!」
「御安心を、国王陛下。彷徨う剣の仇討人、及び三神教の聖女イリステラは、御身等の保護を目的として動いており……………ま、す──────!?──────!?!?!!??!!?」
トルヴァンテの声に振り向きつつ答えた矢先、黒のヴェールに隠した表情と、此の場に置けるロールプレイを行ってきたサンラクの表情が、絶対零度の息吹を零距離で食らった様に一瞬で凍り付いた。
そして二度見からの三度見を経て、己の記憶に深く刻まれた『トラウマ』が輪郭を成し、今再び蘇ったのだ。
何故なら、今自分が護衛するべき対象の第一王女アーフィリアは────────────
『フェアリア・クロニクル・オンライン〜妖精姫の祈り〜』の
蘇る記憶