サンラク流のロールプレイ
傷だらけの撃退と聖女ちゃんの予言、そして海から
日時は8/7の午前九時、前線拠点に建つ城・装骨天守スカルアヅチ…………其の一室に在る王族の間に置いて、
「失礼致します」
「……おぉ!御主か、サンラクよ」
「まぁ!」
「我が身は此の通り目立ちますが故、見苦しい姿を御見せしてしまいましたが……。改めて陛下と殿下に別れの挨拶をと思い、馳せ参じました」
彼は開拓者の中で最速を誇りし者『サンラク』、開拓者達による『オハナシ』の後にエムルが開いたゲートでエイドルトの
「うむ……サンラクよ。此度の働き、本当に大儀であった。御主に褒美を取らせる事が叶わぬ余を、どうか許して欲しい」
真剣な眼差しと共に心からの感謝を伝えるトルヴァンテを前に、サンラクもまた仇討人としてのロールプレイを以って、トルヴァンテに答える。
「…………平和とは『良き王』が在ってこそ、初めて成り立ちます。であればエインヴルスの民として、王を救うは『当たり前』の事に御座います」
「そうか……。良き民に恵まれた事、余は誇りに思うぞ」
「──────ありがたき幸せ」
共産主義国家すら裸足で逃げ出す鉛筆王朝を知り、
「しかし、だ…………。報いに然るべき褒美を取らせねば、エインヴルスの血に連なる者として、余は先達に顔向けが出来ぬ。『夢想の宝に値は付けられぬ』と言うが………余が再び玉座に戻りし暁には必ずや褒美を取らせよう。サンラクよ、御主は何を望む?」
此の世界の諺か何かか?と内心思いつつも、彼は仇討人としてのロールプレイを継続。トルヴァンテの問いに対して、彼は此の様に答えを返した。
「…………『仇討の刃が握られる事のない良き国を』。──────と言いたい所ではありますが、其れは『陛下の望む答え』ではないのでしょう。であれば『剣』を…………仇討の刃は何者も手に入れる事叶わず。されども振るう刃に王威輝けば、其の光は何物にも勝る『誉れ』となりましょう」
「──────うむ。其の願い、確かに聞き届けた。余は其の約束を決して違わぬと、三柱の神へ誓おう」
王と王女、そして仇討人。三人の間に沈黙が漂う中で、アーフィリアが口を開くより早く、サンラクは立ち上がった。
「……………殿下。其の先の『御言葉』は、決して叶わぬ『願い』なのです」
「サンラク様………」
本当ならば、今直ぐに彼女の顔をブン殴りたい。そんな欲望に駆られども、彼は『フェアクソはフェアクソ』であり、そして『シャンフロはシャンフロ』という思考に切り替える。
確かに
「我等は『仇討人』であり、同時に『か細き願いにこそ応える者』。御無礼を承知で申し上げるならば…………我等は『権力争い』に手を貸す事は出来ないのです」
「ならば……!ッ……………いえ、分かりました…………」
ならば仇討人を辞めて、私の騎士に………!──────そう言わんとしたアーフィリアは、己の過ちに気付いた。
仇討人とは本来、此の世界に在る届けられぬ願いや成し遂げられない願いを叶える者達であり、其れは慈愛の聖女イリステラの要請が在ったとはいえども、目の前に居るサンラクが自分と父を救い出したのは、あの瞬間の自分達が『か細き願い』であったからこそだと。
故に其の『在り様』を歪める事は、過去の自分達を救った彼自身を『否定』する事と同じなのだと、そう気付くに至ったのだから。
「ですが──────」
内側に夜空を秘めた純白のマントを身に着け、灰色の鳥面を被った仇討人は其の背を向けたまま、彼女へとこう述べる。
「アーフィリア王女殿下。どうか御忘れ亡きよう………此の身は確かに『エインヴルスに在ります』。此の国の……そして新たなる地の人々も含めた、『あらゆる人の愛と平和の為に、振るわれる刃は確かに在る』のです」
「……はいっ!」
「では……。どうかエインヴルスにより良き未来を」
そう言い残して、サンラクは静かに部屋を退出する。そして此の場に残されたトルヴァンテとアーフィリアもまた決意を新たに、揺るがぬ覚悟を宿した眼差しで互いを見る。
「アーフィリアよ、余は息子を『手に掛ける』やも知れん…………」
「お父様、アーフィリアも共に参ります。此れ以上、御兄様の好き勝手をさせる訳にはいきません」
「そうか……」
世界が動く中で変化していく情勢と共に、エインヴルス王国の王と王女もまた変わらんとしている…………。
「さて、レイ氏との『約束』まで二時間半か…………」
アーフィリアを前にしたロールプレイを終えて、激烈に疲れたと思いつつ退室したサンラクは、メニュー画面を開いて時間を確認する。赤竜ドゥーレッドハウルからのレイドモンスター・貪る大赤依の連戦と最大速度を獲得した翌日は、眠気やら疲労やらで本当やばかったので休息に専念した。
オハナシによって其れも有ってかコンディションは良い方で、今日の約束で寝不足でポカをやらかす事は無いだろう。
「ロールプレイ上手いんだね、サンラク。家のクランでもやってけるんじゃない?」
「ん?あぁジョゼットと………そっちのちんちくりんは?」
「ちんちくりん…………」
「彼女は『
「……………よろしく」
聖盾輝士団特有の同一規格の装備で統一した少女サイズのプレイヤーと、聖盾輝士団団長の『そっち方面』疑惑を持つシャンフロ最強のタンクが声を掛けてくる。
「まぁ流石にリュカオーンの刻傷で装備が三分爆散するんじゃ、クランの資金が枯渇するんじゃね?」
「其処は
「む…………」
ジョゼットの言い分は御尤もで、あの地域に在る宝石や鉱石を売り払うだけでも破損した分を補填出来る。其れ所か余った宝石や鉱石で武器や防具のグレードアップも可能だろう。
「そう言えば水晶巣崖はタンクじゃ無理って話が有るけど、アレってホントなの?」
「タンクは無理、此れは真理。マブダチ達のバレーボールとかテニスの玉にされたく無いなら、ある程度の機動力とマクセル・ドッジアーツかパトリオ・ストイックのスキル必須」
「……………マジで?」
「マジで。或いはサッカーしようぜ、お前ボールな!になる」
「サッカー…………!?」
「まぁ、そういうこった」
思った以上に喋り過ぎたし、予定も有るのでオサラバしようとなり、サンラクはジョゼットと龍×4と別れてエムルと合流。ラビッツに帰還して、セーブ&ログアウトで現実世界に戻ったのである…………。
約束を果たす