勇気は、道を拓く
──────コレ、玲さんとのデートじゃね?
シャンフロに置ける
新発売のVRゲーム等を話しで盛り上がって、近くのハンバーガーショップで少し遅めの昼食を取っていた最中、シャンフロプレイヤー最速こと
対して自分と向かい側の席でハンバーガーを食べている玲はと言えば、食事とは違う意味で『ポワポワ』とした雰囲気を漂わせながら、『此の瞬間世界で一番幸せなのは私だと』彼女はそんな状態に在った。
「あー……………玲、さん?『此の後の予定』って何か有ったりします?」
「ふぉふえ!?あ、えっと、其のッ…………!少々、御待ちを……………!」
慌てた様子で手持ちのバッグを漁り、小さく折り畳まれた『紙』を玲は取り出す。天井の照明で楽郎から透けて見えた其れには、丁寧かつ優美な文字で綴られた『プラン』が有り、此の日の為に念入りな準備をして来たのだと解る。
「えっと、ええっと…………」
「あぁ、大丈夫大丈夫………。玲さん、落ち着いて」
「は、ひゃい!」
嘗て味わった『ピザ留学のトラウマ』に、楽郎は脳が小刻みに軋みながらも待ち。此の機を逃したら『もう二度とチャンスは巡って来ない心持ち』で、玲は一世一代の大一番に臨まんとする。
そんなうら若き二人のやり取りを周辺で見ていた利用客の心境は、『どっちかさっさと告らんかァ!!!』と思う者と、『くっそ焦れってぇなぁオイ!!!』と毒吐く者と、『滅茶苦茶悶々するぅぅぅううう!!!』と蠢く者の、三つの派閥に分かれて混沌の様相を呈していたのだった…………。
昼食を取っている間に一雨降っていたらしく、手摺や青々と茂る木々の枝や葉先に雨粒の雫が溜まり、ピチャンピチャンと異なる速度や時間差により落ち、地面や水溜まりに滴り落ちる音が聞こえてくる様で。
時刻は午後五時、ハンバーガーショップで食事をして玲と楽郎がやって来たのは、二人にとって馴染み深い『GAME-SHOP ロックロール』の近辺。
夕焼けに空が染まり、楽郎にとっては『玲さんは一体何を仕掛けてくるんだ…………?』という、未だに抜ける事の無いピザ留学のトラウマによるクソゲー脳に支配され。玲に関しては『早く言わなきゃ………!早く言わなきゃ………!』と心で唱えながらも、全くと言って良い程に口火を切れない状況に内心頭を抱えていた。
其れはある意味で『千日手』…………何方かが先に話してしまえば、自分が不利になってしまうという『思い込み』により、話が進まない状況に陥ったのである。
「あー…………取り敢えず、ロックロールの方に歩かない?」
「へ、えっ、………あっハイ!ソウデスネ………」
自分が切り出さなければいけなかったのに、楽郎に口火を切らせてしまった事を玲は心で叱咤する。雨上がりの夕焼けに染まる西の空を見れば、オレンジに燃える太陽が眩しく輝いており。
(嗚呼、綺麗な夕空…………。私が陽務君を好きになった時も、こんな雨上がりの夕空でしたっけ──────)
横に並びに歩く中、彼女の記憶に蘇るは『楽郎を好きになった大切な日』。学校帰りに見掛けて、雨の中を傘を刺さずにロックロールに駆け込み。ゲームのパッケージという宝物を手に取って、レジに持って行って無邪気にはしゃいでいた彼の笑顔。
思い出が溢れる様に心が満たされ、隣で歩みを進める内に頭の中でゴチャゴチャに
「
「……………え、玲さん?」
学校やロックロールでは苗字で呼ぶ彼女が、初めて自分を下の名前で呼んだ事に、楽郎自身も戸惑いを覚える。
「ある所に一人の女の子が居ました。其の子は毎日習い事をしていて、文学含めて完璧な………けれど何も面白味も無い、錆色の様な人生を送っていました」
「…………………」
突然語り出した玲に、楽郎はツッコミを入れるべきか悩んだが、取り敢えずは様子を見る事にしてみた。
「けれどある時。雨の日に傘を刺さずに満面の笑顔で走って行く、一人の男の子を見掛けました。女の子は何故彼が笑顔で走って行くのか気になって、其の後を追い掛けてみたのです」
(……………………アレ?)
どうか気付いて欲しい──────嘗て私は、貴方の笑顔に『恋』をしたのだと。貴方と仲良くなりたくて、色んなゲームをプレイして。貴方が駆ける其の道を、隣で共に走れる様になりたいと願ったのだと。
「其の子は宝物を見付けて、無邪気に笑っていました。其の男の子の笑顔が………錆び付いて無機質だった女の子の世界に、鮮やかな色を与えてくれました」
(……………………いや、えっ、まさか…………?)
シャンフロをプレイしたのも、何時か『其の時』が来た時の為に。そして其の時とは、『今此の瞬間』なのだと。
夜襲のリュカオーンの影狼に出逢ったあの日と同じく、今度は自分が己の背中を押す。ロックロールが近付き、夕空と太陽光が射し込んだ雨粒が煌めく中、玲は楽郎の前に立って──────
「貴方の事が好きです、楽郎君。私の………恋人になって下さい」
斎賀家の女に掛けられた、呪いの鎖を断ち切る様に。
数年間心に秘めて、抱え続けた想いを打ち明ける様に。
今にも全身の血が沸騰し、爆発してしまいそうな感覚に襲われながらも。
彼女はやっと──────自分の想いを大切な人に打ち明けられた。
「……………玲、さん」
「──────あ、あぅ……ッッッ!?」
赤面と蒸気で今にも爆発不可避な状況で、楽郎が彼女の手を取り握る。心臓がバクバクと鳴り響き、数秒後にはブッ倒れると確信し。
「お、俺なんかで良ければ…………よろしく御願いします」
「………………ひ、ひゃい。御願い、しまひゅ」
耳や頬が赤くなって、若干照れながらも彼女の言葉に応じた楽郎を前に、玲もまた己の言葉を返したのであった。
尚、楽郎と玲は其のままロックロールに入店し、店主の真奈に報告を行い。女店主からは「やっとかッッッッッッッッッ!!!」と叫ばれた後に、思いっ切り抱擁されて号泣されたのであった……………。
関係一転