VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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勇気は、道を拓く




インパクト・オブ・ザ・ワールド 〜人よ、其の一歩に幸有らん事を(後編)〜

 

 

 

──────コレ、玲さんとのデートじゃね?

 

 

 

シャンフロに置ける最大火力(アタックホルダー)、同じクランのメンバーたるサイガ-0こと斎賀(さいが) (れい)との約束で、近く買い換える予定のVRヘッドギアに付いてのレクチャーを家電量販店でしながら、売り出されているヘッドギアやチェアを見て回り。

 

新発売のVRゲーム等を話しで盛り上がって、近くのハンバーガーショップで少し遅めの昼食を取っていた最中、シャンフロプレイヤー最速こと最大速度(スピードホルダー)を持つサンラクこと陽務(ひづとめ) 楽郎(らくろう)の脳内にてそんな考えが過る。

 

対して自分と向かい側の席でハンバーガーを食べている玲はと言えば、食事とは違う意味で『ポワポワ』とした雰囲気を漂わせながら、『此の瞬間世界で一番幸せなのは私だと』彼女はそんな状態に在った。

 

「あー……………玲、さん?『此の後の予定』って何か有ったりします?」

「ふぉふえ!?あ、えっと、其のッ…………!少々、御待ちを……………!」

 

慌てた様子で手持ちのバッグを漁り、小さく折り畳まれた『紙』を玲は取り出す。天井の照明で楽郎から透けて見えた其れには、丁寧かつ優美な文字で綴られた『プラン』が有り、此の日の為に念入りな準備をして来たのだと解る。

 

「えっと、ええっと…………」

「あぁ、大丈夫大丈夫………。玲さん、落ち着いて」

「は、ひゃい!」

 

嘗て味わった『ピザ留学のトラウマ』に、楽郎は脳が小刻みに軋みながらも待ち。此の機を逃したら『もう二度とチャンスは巡って来ない心持ち』で、玲は一世一代の大一番に臨まんとする。

 

そんなうら若き二人のやり取りを周辺で見ていた利用客の心境は、『どっちかさっさと告らんかァ!!!』と思う者と、『くっそ焦れってぇなぁオイ!!!』と毒吐く者と、『滅茶苦茶悶々するぅぅぅううう!!!』と蠢く者の、三つの派閥に分かれて混沌の様相を呈していたのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食を取っている間に一雨降っていたらしく、手摺や青々と茂る木々の枝や葉先に雨粒の雫が溜まり、ピチャンピチャンと異なる速度や時間差により落ち、地面や水溜まりに滴り落ちる音が聞こえてくる様で。

 

時刻は午後五時、ハンバーガーショップで食事をして玲と楽郎がやって来たのは、二人にとって馴染み深い『GAME-SHOP ロックロール』の近辺。

 

夕焼けに空が染まり、楽郎にとっては『玲さんは一体何を仕掛けてくるんだ…………?』という、未だに抜ける事の無いピザ留学のトラウマによるクソゲー脳に支配され。玲に関しては『早く言わなきゃ………!早く言わなきゃ………!』と心で唱えながらも、全くと言って良い程に口火を切れない状況に内心頭を抱えていた。

 

其れはある意味で『千日手』…………何方かが先に話してしまえば、自分が不利になってしまうという『思い込み』により、話が進まない状況に陥ったのである。

 

「あー…………取り敢えず、ロックロールの方に歩かない?」

「へ、えっ、………あっハイ!ソウデスネ………」

 

自分が切り出さなければいけなかったのに、楽郎に口火を切らせてしまった事を玲は心で叱咤する。雨上がりの夕焼けに染まる西の空を見れば、オレンジに燃える太陽が眩しく輝いており。

 

(嗚呼、綺麗な夕空…………。私が陽務君を好きになった時も、こんな雨上がりの夕空でしたっけ──────)

 

横に並びに歩く中、彼女の記憶に蘇るは『楽郎を好きになった大切な日』。学校帰りに見掛けて、雨の中を傘を刺さずにロックロールに駆け込み。ゲームのパッケージという宝物を手に取って、レジに持って行って無邪気にはしゃいでいた彼の笑顔。

 

思い出が溢れる様に心が満たされ、隣で歩みを進める内に頭の中でゴチャゴチャに矜羯羅(こんがら)がっていた思考や悩みが青と橙の空に溶けて消えていった事で、彼女の唇は自然に言葉を紡いでいた。

 

()()()、歩きながら………少し話をしませんか?」

「……………え、玲さん?」

 

学校やロックロールでは苗字で呼ぶ彼女が、初めて自分を下の名前で呼んだ事に、楽郎自身も戸惑いを覚える。

 

「ある所に一人の女の子が居ました。其の子は毎日習い事をしていて、文学含めて完璧な………けれど何も面白味も無い、錆色の様な人生を送っていました」

「…………………」

 

突然語り出した玲に、楽郎はツッコミを入れるべきか悩んだが、取り敢えずは様子を見る事にしてみた。

 

「けれどある時。雨の日に傘を刺さずに満面の笑顔で走って行く、一人の男の子を見掛けました。女の子は何故彼が笑顔で走って行くのか気になって、其の後を追い掛けてみたのです」

(……………………アレ?)

 

どうか気付いて欲しい──────嘗て私は、貴方の笑顔に『恋』をしたのだと。貴方と仲良くなりたくて、色んなゲームをプレイして。貴方が駆ける其の道を、隣で共に走れる様になりたいと願ったのだと。

 

「其の子は宝物を見付けて、無邪気に笑っていました。其の男の子の笑顔が………錆び付いて無機質だった女の子の世界に、鮮やかな色を与えてくれました」

(……………………いや、えっ、まさか…………?)

 

シャンフロをプレイしたのも、何時か『其の時』が来た時の為に。そして其の時とは、『今此の瞬間』なのだと。

 

夜襲のリュカオーンの影狼に出逢ったあの日と同じく、今度は自分が己の背中を押す。ロックロールが近付き、夕空と太陽光が射し込んだ雨粒が煌めく中、玲は楽郎の前に立って──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方の事が好きです、楽郎君。私の………恋人になって下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斎賀家の女に掛けられた、呪いの鎖を断ち切る様に。

 

数年間心に秘めて、抱え続けた想いを打ち明ける様に。

 

今にも全身の血が沸騰し、爆発してしまいそうな感覚に襲われながらも。

 

彼女はやっと──────自分の想いを大切な人に打ち明けられた。

 

「……………玲、さん」

「──────あ、あぅ……ッッッ!?」

 

赤面と蒸気で今にも爆発不可避な状況で、楽郎が彼女の手を取り握る。心臓がバクバクと鳴り響き、数秒後にはブッ倒れると確信し。

 

「お、俺なんかで良ければ…………よろしく御願いします」

「………………ひ、ひゃい。御願い、しまひゅ

 

耳や頬が赤くなって、若干照れながらも彼女の言葉に応じた楽郎を前に、玲もまた己の言葉を返したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、楽郎と玲は其のままロックロールに入店し、店主の真奈に報告を行い。女店主からは「やっとかッッッッッッッッッ!!!」と叫ばれた後に、思いっ切り抱擁されて号泣されたのであった……………。

 

 

 






関係一転


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