ペッパーがやる事は
8/8、午後九時。新大陸・前線拠点──────ラビッツにアイトゥイル・ノワ・ヒトミを置いてペッパーが単身やって来たのは、『クラン:ライブラリwith新大陸出張所』だった。
「こんばんわ、ライブラリの皆さん。ペッパーです、キョージュさんはいらっしゃいますか?」
「あぁ、ペッパーさ………ん!?は、ぺ、ぺぺぺ………!?!」
『『『『ペパ子ちゃん!!!???』』』』
ドアを数回ノックし、入場して来たペッパーは青い聖杯で女体化しており、更には『水晶の様な美しい生地で作られたウェディングドレス一式に身を包んだ姿』でやって来た為、漏れ無く全員の視線を奪い取った所か、ライブラリの一部のメンバーの性癖にブッ刺さったり崩折れさせたりと、其の破壊力は凄まじく。
「……………何というか、君はアレかね?人の性癖を無自覚に破壊するのが趣味なのかね?」
「クターニッドさんの産物なので、其処はどうにも言えませんよ。性癖趣向が深淵なのかも知れませんが…………」
「此れは一本取られた、確かに深淵ならば話が通る………のか?」
「全てはクターニッドさんのみぞ知るのでしょうね」
軽口ながら激渋ボイスで喋るライブラリのリーダー・インテリジェンスネカマのキョージュと話し、ペッパーは早速と言うべきか本題に移る。
「キョージュさん、今日は『オルケストラ』の件で来ました」
「君からのメールバードでも確認した、では早速始めよう」
そういう事になり、ペッパーとキョージュ含めたライブラリのメンバーを含めての話し合いが、今宵室内にて静かに開幕したのだ。
「さてと、先ず
「はい。自分が挑んだ時の状況も正に其の通りで、対戦者以外のパーティーを組んでいたプレイヤーとNPCは、二階の観客席へ『強制的に移動させられてました』。此れは四度戦ったので間違い有りません」
キョージュとの話の中でペッパーもまた己が経験した状況を述べて、話や内容を補強していく。だが其処はライブラリ、ペッパーの放った発言を彼等彼女等は聞き逃さなかった。
「ちょっと待ってペパ子ちゃん、其の発言からして貴女は四回の試練を『ノーコンクリア』をしたって事!?」
「出て来る影法師って近況の奴が出て来ると、滅茶苦茶苦戦するし下手したら負ける場合も在るくらい強いんだよ?!」
「いやペッパーさんの思考深度なら、戦闘中に対自分を想定した戦略構築は可能だろう」
「となると複数の武器による戦闘スタイルの切替なら、対影法師戦は何とかなるのか…………?」
「でも当時の自分のスキルや魔法は愚か、装備やアクセサリーを『コピー』するんだよ?」
「だったら戦わずに翌日に持ち越してから飛び込んで、其の時の影法師の様子を観察してみるのが良いかも!」
意見を出し合ってワイワイガヤガヤするライブラリ。成程、此れが考察ガチ勢クランのパワーかと思っていれば、キョージュが「やはりか……………」と呟いて。
「ペッパー君。君はオルケストラの戦闘は『何人』で行うと睨んでいる?」
「…………『
「其の通り、
キョージュの投げた質問にペッパーが答えた事で、両者共に見ている物が同じであると、そう判断するに至り。ペッパーはオルケストラとの四戦の中で感じた『ある事』を、ライブラリやキョージュに言った。
「そう言えば一つ、気になった事が在るんですよ」
「ほぅ。では聞こう」
「影法師との四戦目、俺は『
そう言って首元に煌めくネックレス………確りと見れば球体の中に複数の羅針盤らしき装飾が宿る其れを提示し、ライブラリの面々に見せる。
「其れって対抗戦の時に使ってた、真っ白に輝くアクセサリー…………!」
「フォッシルマイナーズ…………確か化石掘りのクランですっけ?」
「そう言えば胡椒さんがベヒーモスで
「というか、真っ白な姿にどうやって移行したんですか!?」
「いやいや先ずは入手経路の確認でしょう!再現性が有るか否かって重要なのは目に見えてる!」
「まぁ待て。今一番大事なのは此のアクセサリーを使った時に、影法師との戦闘で何が起きたかだろう?」
疑問が浮かべば話し合い、考察して答えを導き出す。考察クランらしく熱を帯びる中、キョージュが「静粛に」と一声掛けて皆を落ち着かせる。
「すまないね、続けてくれ」
「はい。四度目の戦いで超星時煌宝珠を使った後、コピーした相手の様子を観察していたのですが、相手は『一向に使う気配が無かった』事で。挑戦時からアクセサリーは付けていて、相手も『使おうと思えば使えた筈なのに』──────です」
ペッパー自身は『冥響のオルケストラには相対者の所持品の中で、コピー出来る物と出来ない物の二種類が有るのではないか?』と、そう予測を立てている。其の法則か何かが判れば、何れオルケストラに挑む際に勝利へと繋がる道筋は構築され、優位に働き得ると見ているからだ。
「使おうと思えば使えた……………?」
「至近距離で猫騙し出来そうだし、やらない手は無いと思うよな…………」
「仮にもユニークモンスターが派遣したモンスターだ、其れをやらないとは考え辛いぞ?」
「いや…………最初から『使わなかったんじゃなくて』、最初から『使えなかったんじゃない』?」
「あ、其れだ!其の考え方なら筋が通る!」
「もしや当時のプレイヤーのコピーすら可能なオルケストラにも、出来る事と出来ない事が有るという訳か………!」
「プレイヤーのアクセサリーや武器防具で、其の対象となる物を調べたい所だね」
「共通点や区分のラインは何なんだろう?特殊な物品って事なのかな?超星時煌宝珠は…………」
ペッパーが齎した情報がライブラリの考察意欲を沸き立たせ、話し合いの中で導き出された『仮説』はより固められ、輪郭に骨組みが加えられていく。
「つまりは、だ──────。冥響のオルケストラは『プレイヤーの持つ武器やアクセサリー、スキルに魔法を
「はい。後は『他人から借り受けた武器防具』も、コピーされるか否が判れば対策は取れそうでは有るのですが………」
『最終決戦で味方陣営の武装を集めて、フルアーマー&フルウェポンで出撃する』と言った描写は、ロボット物のアニメでは王道中の王道というべき『燃える展開』と同時に、一種の『ロマン構築』だ。
此れは完全に此方の予想でしか無いのだが、アンドリュー・ジッタードール…………いや『シャンフロの運営陣』の中には
「仮に他者の装備が『コピーされなかった』場合、問題は『如何なるタイミング』で受け取るかになりますね」
「じゃあ、旧大陸に今残っているメンバー達に連絡入れて検証して貰いましょう!」
「とすれば、検証の為に『幾つかのパターン』が必要になるな…………」
「はいはいはい!『武器を受け取ってセーブしてから挑戦』、『セーブせずに武器を受け取ってから挑戦』、あと『セーブした後に受け取って挑戦』の三種類なんてどうです?!」
「シャンフロのシステム上、リアルタイムでのセーブは基本的には行われない。つまりシャンフロ側が『プレイヤーのセーブデータが起動した時点の再現を行うか否か』を確認するという訳か」
「ベヒーモスの面々に御願いしてみよう!」
「でもまぁ、新大陸の我々は『ジークヴルム』よねぇ………。新大陸のプレイヤー達のモチベーションが、そっち方に向いてるみたいだし………」
『『『『『『『『だよなぁ…………』』』』』』』』と、其れは其れとして大切な事は見失わずにやるべき事を見定めている辺り、流石はクランというか集団行動に慣れているというか。
尚、最初に成すべき事柄だった『オルケストラについての話し合い』は、何時の間にか『ペパ子ちゃんの質問会』に発展し、ペッパー本人がある程度は答えた物の、途中から写真撮影やら何やらの方向にズレ始め。
ペッパーはライブラリの男性アバターのプレイヤーに詰め寄って壁ドン&顎クイからの「悪い子だ…………そんなに俺を困らせたいのかい?」と、見上げる形を取りつつ半目を向けて言った結果、ライブラリの男性陣は胸を押さえながら悶え、女性陣は黄色い歓声を上げながら崩れ落ち。
キョージュ含めた幹部組が唖然としている内に、
考えをぶつけ、謎を解け