ペッパーの発言
「俺は『ノワルリンドとエルドランザを生存させた状態で、天覇のジークヴルムさんを打倒したい』です。しかし其れをするという事は、必然的に『ノワルリンド討伐派との全面衝突』を意味します。
だからこそ──────此の新大陸の何処かに在る、
ペッパーの大胆とも言える宣言。其れは此の新大陸側に先着したプレイヤーのマジョリティと言える『ノワルリンド討伐派』との全面衝突であると同時に、新大陸先着組が未だに手に入れられずに居る『銃火器やロボットにパワードスーツ』を手にする為の手段、神代の宇宙船・バハムートの稼働による『討伐派陣営其の物の足止め』だった。
「………………相変わらず、発言が鋭いな君は」
「ノワルリンドとエルドランザを守り、尚且つジークヴルムを打倒する、か……………。で、リヴァイアサンを起こす理由を教えてくれるかしら?ペッパーさん?」
サイガ-100がペッパーを見、続く形で問い掛けたのはSF-ZooのAnimalia。彼女は件のプレイヤー………エルドランザと接触して、打倒ジークヴルムのユニークシナリオを発生させた、レーザーカジキの姉である。
「理由としてはノワルリンド討伐派…………もとい『新大陸先着組』である事が、大きな理由です。シャンフロの掲示板や情報を調べていた所、彼等彼女等は『バハムートで入手可能な銃火器やロボットに飢えている』部分が有ります」
新大陸に先んじて辿り着き、恐竜と恐竜キメラのサバイバルを生き残り、此の瞬間も戦い続けてきた歴戦の勇士達は、ペッパーが売り出してライブラリと午後十時軍が流した新大陸の空中写真により、レベルキャップを解放するティアプレーテンまでの最短のルートを敷き、ノワルリンドとの決戦に備えんと躍起になっている。
敵に塩を送るとは、そんなプレイヤー達に銃火器やロボット等を齎せば、戦力差は確実に埋まる事を意味している他、高められたモチベーションが更に高まってしまう事に等しい上、リヴァイアサンを稼働させた事で『ジークヴルムや他の色竜がフィーバーから前線拠点にカッ飛んで来そうな予感』も在り、かなりのリスクが付き纏っている。
だが、其れを含めても………………ペッパーがリヴァイアサンを稼働させるべきと考える理由は『幾つか』有るからだ。
「ジークヴルムさんは『英雄』を求めています。自分という存在を越えられるだけの、強い者達を」
「英雄を?」
「えぇ。此処からはあくまで『自分の予測』でしか無いので、信じ過ぎない事を御留意下さい」
呼吸を一拍、ペッパーは此の場に居るクランの長達に向けて言う。
「おそらくジークヴルムさんは『五体居る色竜を一定数打倒する』か、もしくは『残っている色竜が一同に介さない限り』は、出番が来るまで『動かない気がします』。尤もリヴァイアサンを稼働させたらどうなるかは解らないので、確約は出来ませんが…………」
初めてジークヴルムと邂逅し、彼の手に乗ってアイトゥイルと共に蒼空を飛んで。其の中で感じたのはジークヴルムが『魔王ムーブ』を好んでいる事。キョージュから話を聞いてはいたが、実際に言葉を交えた事でハッキリと知覚するに至れた。
「要するにペッパーさんが言いたいのは、ジークヴルムは『今の段階で戦える状態には在る』。でも其のジークヴルムは『特定の条件を満たさなければ、まともに攻撃が通らず戦う事が難しいユニークモンスターの可能性が有る』……………そう言いたいのね?」
「はい。他にも理由が在り、其れが『世界の真理書』…………今回は【天覇編】になるのでしょうし、アレはユニークモンスターを打倒しないと出ない疑惑が在り、ユニークモンスターや『ある物』の出自を紐解く上で『必要不可欠』かと思います」
ペッパーが言う『ある物』、其の発言に此の場に居た者達全ての視線が、彼一人に注がれる。彼等彼女等はペッパー達のクラン:
無論、其の受注プレイヤーが一体『誰なのか』は知らないものの、ユニーク一式装備の詳細が書かれていない真理書と、其の詳細が書かれている真理書とでは、付加価値含め一線を隠す程の情報が宿っている。
シャンフロという世界の真実を解き明かさんとするライブラリや、此の世界で作られた武器防具を調べ尽くさんとしているウェポニアもそうだが、深淵のクターニッドと力を分けた
「コホン。ペッパー君、私から意見を述べても良いかね?」
そんな中、挙手をしたのはライブラリのリーダー・キョージュで。一体何を述べるのかと思いながら、ペッパーは答える。
「キョージュさん?はい、どうぞ」
「済まないね。では単刀直入に言うが──────、世界の真理書は『ジークヴルムの打倒か色竜の全討伐』………其の何方を成し遂げても『報酬として渡される』と読んでいる」
席より立ち上がり、歩きながらにライブラリのメンバーと話し合った果て、導き出した答えを以ってキョージュは言葉を紡いで行く。
「根拠は何か有るのかな、おじーちゃん?」
「
ペンシルゴンの問い掛けに、キョージュは唯一言だけ述べる。しかし其の一言は、此れ迄二体のユニークモンスターを討伐して来たペッパーとペンシルゴン、そして其のアナウンスを聞いていた此の話し合いの場に居る、全てのプレイヤー達の注目を集めるには充分な物で有り。
「………此れ迄の情報からユニークモンスターの討伐が、アナウンスで流れた『ワールドストーリー【シャングリラ・フロンティア】』の
「あ〜…………キョージュさん、つまりどういう事で?」
「む…………。嗚呼、済まない。つい普段の癖が出てしまった」
SOHO-ZONEの問いに、キョージュは答え。そうして改めて、今後のシャンフロをプレイするモチベーションにも関わる話をし始めた。
「恐らくだが色竜を倒すにしても、ジークヴルムを倒すにしても、何方のクリア条件を達成した場合にも『ワールドストーリーは進行し、恐らく真理書も配布される』…………と、ライブラリは予測した。ただ強いて言うならば…………ワールドストーリーが次段階に進んだ時、プレイヤーがクリアしたルートによって『此の先のゲームの難易度』、もしくは『ストーリーが分岐する』と考えているのだよ。例えば…………」
『
レイドモンスター・貪る大赤依…………赤竜ドゥーレッドハウル討伐後に立て続けで襲い掛かった、己が喰らった存在を自身の身体に置換する、恐るべき能力を持つ赤い飛蝗の大群にして、始源の『血』たる存在。
あの時はシャンフロプレイヤー達の中でも上澄みの、シャンフロ廃人や実力者と位置付けられるプレイヤー達の力を集約して倒したが、アレが次回以降で『更に強くなる』ともなれば、対策必須レベルの心積もりで行かなくてはならない。
「とはいえ乗り掛かった船だ。リヴァイアサンがベヒーモスとも『異なる文化』が有るとするなら、其れを調べるのもライブラリの務め。此方も連盟クランや情報屋を介して、ノワルリンド討伐派の動きを探るとしよう」
要約すると『此方に協力する』とライブラリが宣言したのと同義であり、ペンシルゴン的には『一番面倒臭いプレイヤー』を先に処理出来たので、あーくんグッジョブと心の内でガッツポーズを決めていた。
「さてさて…………旅狼の目標は皆の衆に伝えたけど、まだまだ『やる事』は多いからね。決戦に備えて結束をより強固とする為に、私から『耳寄りの情報』を幾つか差し上げようかなと思ってね?」
其の笑みを浮かべた時のペンシルゴンは、少なくとも『碌でも無い事を考えている時の顔』であると、彼女と恋人関係であるペッパーに、悪友として付き合いが長いサイガ-100は知っており。
「じゃ『オハナシ』を続けよう。派手な花火を上げるなら、準備はコツコツが大事だからサ?」
黒幕の立ち位置としたならば、右に出る者はそうは居ない彼女は、其の主導権を以って話を進めるのだった。
話は続く