VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

750 / 1076


土の中には何が有る?




掘り出し物は蛹ですか?

そもそもシャングリラ・フロンティアというゲームは、リアルを突き詰めた結果として現実にて働く、物理エンジンすらも忠実に再現した狂気の産物であると、サンラク本人は認識している。

 

例えば話し掛けて来た此方の事情を察し、ある程度の無理の無い応答を行う事を可能とし。

 

例えばフィールドにてドロップアイテムに土や泥が付いていたり、果ては雨水に濡れた状態で拾う事が出来たり。

 

例えば現実で働く重力や斥力、或いは引力が引き金となって起きる現象もバグが起きる事も無く発生したりと、其の技術は既に数世代先の未来を行っている。

 

であるならば、だ。仮に洞窟を掘り進めた場合、土に埋まった物を発掘出来るのでは無かろうか?──────そうサンラクは考えたのだ。

 

「と言う訳で、サミーちゃんさんと協力して此の空洞を広げようと思います」

理解(つまり):生活空間を無理の無い程度に拡張する事で、シグモニア前線渓谷で手に入れた資源置き場等のスペースを設ける、という訳ですね」

「其の通りだ、サイナ。インテリジェンスポイント+10点、1万点入ったらパーフェクトジーニアスの称号を与えよう」

「言質、取りました」

 

早々溜まる訳でも無いので、此れくらい有れば良いという認識からなる数字を提示し、本題の穴掘り発掘作戦は開幕。ペッパーから渡され、黄金のマグマを汲み上げてから空となった黄金桶(おうごんとう)カイザーバケットにサミーちゃんの溶解性の毒液を満たして貰い、其れをサンラクが壁に塗ってサミーちゃんと並行する形で掘削作業に入る。

 

溶解性の有るサミーちゃんの毒液で、カイザーバケットに穴が空くのでは?とサンラクは考えたが、黄金のマグマすら掬い上げて熱による変型の一切が起きなかったバケツは、溶解性の毒でも変型どころか穴開きすらも起きていない。

 

「流石マブダチ達の王様の素材で作ったバケツだ、毒液程度じゃ穴すら開かねぇな」

 

適量塗って掘り、適量塗って掘り、また適量塗って掘り…………そんな地味とも言える作業を繰り返し、掘り進めて行く事およそ三十分。

 

「ちょっとあんた!サミーちゃんがやばいのほりあてた!」とウィンプの叫びと共に、ヘタレ一匹&一羽を抱えてサイナが来た事で、サンラクは作業を一時中断。掘り進んだ道を戻り、サミーちゃんが掘った方向を進んで行くと、困った様な雰囲気を出している本人ならぬ本蛇と、土壁の中から一部が露出した『カブトムシ系の蛹』が其処には在った。

 

更に其の蛹自体は『生きている様子』で、色の付き具合も蛹から成虫に至る段階の『深いカラメル色』をしている事からも、だいぶ長い時間を土の中で過ごしているのが解る。

 

「何じゃコリャ…………」

「何ていうか、目みたいですわ…………」

「これやばいでしょ………」

「観察:形状から察するに、甲虫型のモンスターの蛹とほぼ同じです」

『シュ〜………』

「いや、サミーちゃんは悪くねぇ。寧ろこんな所にこんな厄ネタが眠ってるのがわr」

 

其の先を喋ろうとした其の時、サンラクの視線が蛹の目と交錯し、蛹の中に在る『其れ』とギョロッと()()()()()

 

「ッ!?」

 

ホラゲあるある『突如として視線が向けられると、周回じゃない限りはビビる現象』を体感した時、蛹の一部がパキリ…………と卵の殻を破る様に割れて、土の中で僅かに覗いていた蛹が『揺れ動き始めたのだ』。

 

「全員即退避ぃいいい!!!」

「ピィイイイ!!?」

「いわれなくてもそうするわよ〜〜〜〜!?」

「了解:行動開始」

 

サンラク達一行が退避して数秒、土壁と蛹がヒビ割れ砕け散り、ブチ破って『其れ』は現れる。

 

象徴とも言える胸角が大きく発達した二本の角は、形状からして『ヘラクレスオオカブト』の其れであり。だが其の角には『射出機構らしき物』を搭載し、大地を歩く六本の脚の先端は敵を物理的に断ち切る『鋏型』。

 

掘り進めた穴を巨体をガリガリと削りながらに飛び、其の飛行能力を支える前翅(まえはね)が『刃の形状へと格納変形』し、後翅(うしろはね)が『戦闘機の翼』の状態をしていた。

 

そして何よりも其の身体付きは、ヘラクレスオオカブトの様な『甲虫系昆虫』等では無く、どう見ても有機質な素材で身体を機械に改造したとしか考えられない、ある種の『サイボーグ』の状態に似ていて。

 

穴から退避したサンラクは、真っ先にブリュバスをインベントリアに収納し直した所で、サイボーグヘラクレスオオカブトが此の空洞内に現れ。同時にサンラクの目の前には、新たなる戦いを告げる画面が提示されたのだ。

 

 

 

 

 

『モンスター不世出の発見(ディスカバー·エクゾーディナリー)!』

『討伐対象:FM's(フォッシルマイヤーズ)クリサリス"戦災孤児(ウォールフェン)"』

『エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されます』

 

 

 

 

 

「ウォールフェン………ウォールフェン…………あぁ思い出した。ペッパーが脚撃のスキルで使ってた、其の大元になった奴か」

 

表示された画面から記憶を洗い出し、ペッパーが脚撃時に強烈極まるノックバックで数多の敵を蹴り飛ばしていったのを、サンラクは此の瞬間に思い出した。

 

少し前にベヒーモスにて調べたが、エクゾーディナリーモンスターから得られるスキルの中には、倒した時の『状況』によってスキルの属性や性質に影響を与えるのだと言う。

 

「ってこたぁ、コイツをブン殴って倒せば『拳撃スキル』として手に入る事になるか…………。よっしゃ、ブチのめしてやるかぁ!エムルとサイナは俺が家具類を回収するから援護、ウィンプとサミーちゃんさんは何時でも脱出出来るように準備ッ!岩を少しずつ退かして、ギリギリまでステイだ!」

「うそでしょ、あたしのねどこほうき!?」

「あくまで『最終手段』だ!家具やらは此方が出来る限り回収してやっから、お前はお前のやるべき事をやれ!此処で死にたかねーだろ!?」

「と、とうぜんよッ?!」

「シャア、カチコミだぁ!!気張ってこーぜぇ!」

 

安全地帯を壊させぬ為、唐突に始まったエクゾーディーナリーモンスターとの戦闘を越える為。サンラクは戦乱へ……………………己の意思で、サイボーグヘラクレスオオカブトたる戦災孤児に挑む。

 

 

 






混乱は加速する


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。