VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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対決、戦災孤児




揺り籠をブチ抜き、混沌(カオス)が極まる

「だあああああああああ!?!」

 

カチコミを掛けると息巻いたは良かったが、状況が余りにも最高で最悪過ぎる。其れが戦闘開始から打ち合いつつも、敵が飛び回る中で家具を粗方回収してから三分が経過した事で、サンラクが行き着いた答えであった。

 

FM's(フォッシルマイヤーズ)クリサリス"戦災孤児(ウォールフェン)"──────長いので戦災孤児としておくが、其の馬力………もとい『推進力』が此方とは余りにも違い過ぎる事も原因で。

 

シャンフロのシステム上、プレイヤーが『適切な角度と挙動』でパリィ出来れば理論上は『巨獣の爪牙でさえも弾ける』が、ジェット機レベルの出力・リニアモーターカー級の速度・モンスタートラック並の質量で突っ込んで来る其れを、真正面から受け止めるのは流石に無理が有る。

 

次に戦っている場所はシグモニア前線渓谷(フロントライン)内の空洞だ、サミーちゃんが構築した此の空間はそんじょそこらの衝撃で崩れる訳では無いが、ズゴンバゴンとぶつかっては荒削りする戦災孤児によって壁にヒビが入り、排出機構を備えた角から『ビーム』をブッ放している状態なので、何時崩落してもおかしくない事態だ。

 

そして何より此の空間というのが、サンラク達からすれば『最高で最悪な』シチュエーションであり、端的に言えば『有刺鉄線の金網で囲まれてチェーンで繋がれたデスマッチ』と言うべきフィールドに等しく。狭っ苦しいからさっさと出せや畜生!と暴れまくる戦災孤児も相まって、まさに地獄の一丁目に等しい。

 

「くっ………!」

 

何度も打ち合って解ったが、出力含めて相手との馬力が違い過ぎる。此の手の『脳筋ゴリ押しタイプのモンスター』は、自分の『やりたい事』を理解しているだけあり、並大抵の事では歯止めが効かない。

 

現に此の空洞も既に限界一歩手前、再び掘り出すにしても、列車砲百足と要塞蜘蛛が戦争している最中にやるのは危険だ、生命が幾つ在っても正直足らな過ぎる。

 

「エムル!サイナ!ウィンプ!サミーちゃんさん!脱出の準備だ!俺が時間を稼ぐ!」

「は、はいな!」

「了解」

「わ、わかったわよぉ………!」

 

向かってくる戦災孤児を相手に両手で握った傑剣への憧刃(デュクスラム)を振るってウツロウミカガミを起動し、其の場にヘイトを切り離して置き去りにしていると、サミーちゃんの口の中にエムル・サイナ・ウィンプが入るのを見て、いや其れで脱出すんの!?と彼は驚愕。

 

ウィンプが「はやく!はーやーく!」とぎゃいぎゃい喚き散らしながら言ったので、サンラクも剣をインベントリアに収納からスイッチして取り出したのは、ベヒーモスでリザルトを消費して手に入れた『手榴弾』であり。

 

其れを徐ろに全部のピンを抜き取って、ポイポイポイポイと投げ捨てた後、口の中にバッと飛び込んだ所でサミーちゃんが透明化からの、出入り口を突き抜けてドーナツ状に刳り抜かれた擂り鉢の戦場に躍り出た瞬間。

 

手榴弾が盛大に爆ぜ、サンラクが置き去りにした残像(ヘイト)と戦災孤児に熱波と衝撃が襲い掛かり、其の威力によって限界を迎えていた空洞の天井が崩落して、サイボーグヘラクレスオオカブトを生き埋めにしたのである。

 

「あたしのねどこ……………、ぴぃ………!?せいきまつ……………」

「こ、怖いですわ…………」

「わぁお。百足と蜘蛛は相変わらず、バチクソドンパチやってんなぁ」

 

サミーちゃんの口の中から外を見れば、騒音にブチギレたトレイノルとフォルトレスの大戦争が、現在進行系で展開されている。目覚めた矢先に宿敵が居たなら、お前が原因か死ねぇ!とでも言わんばかりに殺し合い、今日も今日とてシグモニア前線渓谷の日常は相変わらずの様子。

 

ユニークシナリオのNPC達が居るので、必然的にメンバーを外縁部に避難させてから、件の戦災孤児を討伐する。あのサイボーグヘラクレスオオカブトが、唯の『生き埋め程度』で簡単に死ぬとは思っていない。

 

寧ろ這い出して貰わなきゃ困る……………そんなサンラクの予測に応えるかの様に、サミーちゃんが渓谷外縁部まで登頂し切った瞬間、空洞への出入り口をブチ破った戦災孤児が此の地獄絵図の戦場にて降臨した。

 

手榴弾の爆発と崩落による生き埋めを受けて尚、其の全身を覆う甲殻にはヒビ一つ入らず、飛翔を支える前後の翅には傷も無く、そしてビームを撃ち放つ角もノーダメージで健在と言った所。やはりそう簡単にくたばる訳が無いと睨んでいたが、実際を見せ付けられると恐怖より感嘆が勝るのは『ゲーマーあるある』の一つだろう。

 

そしてサイボーグヘラクレスオオカブトの唐突な降臨という演出に、此の狭いバトルフィールドで戦っていたトレイノル・センチピード・グスタフとフォルトレス・ガルガンチュラ、其の双方の動きが止まる。何せ見慣れた種族同士で喧嘩していたら、見慣れない初見の存在が現れたのだから無理も無いだろう。

 

静止時間にして僅か五秒足らず、だが其の五秒程度の間に滞空していた戦災孤児は、此の場に居た全ての存在に対し『鏖殺』という二文字の──────余りにも単純明快(シンプル)な答えを以って、列車砲百足と要塞蜘蛛を含めた全てをブチ殺さんとし、戦闘形態になった状態から百足の顔面に其の体躯から繰り出される突撃を敢行。

 

完全に不意を突かれたトレイノルの顔面に直撃し、全長五十メートルは優に超えた長い巨躯の『五分の一』を吹き飛ばして、擂り鉢状のフィールドに打ち倒したのを目撃した事により、フォルトレスもまた戦災孤児を明確に『敵』と見定めて動き出し。

 

巨体に備えた無数の砲塔からアーミレット達を砲弾として撃ち出す『対空砲撃』を開始するが、戦災孤児は其の砲弾が飛び交う中を危なげ無く回避からの、加速を乗せた質量タックルでフォルトレスの顔面に体当たり。其の『衝撃』たるや、素材の性質からして物理的な『ノックバック』に滅法強い筈のフォルトレスの巨体を揺らして、僅かながら後退りさせる程に強烈な一発であった。

 

そんな中、吹き飛ばされたトレイノルが戦線に復帰して戦場を駆けながら、戦災孤児と要塞蜘蛛を纏めて狙い撃てる射線に毒液砲弾をブッ放し、更には上層階にて君臨する帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)がブチギレてビームを放ち始めるという、傍から見て地獄絵図だったのが更なる地獄絵図で塗り潰されて、危険度合いが爆発的に高められていく。

 

「よし、あの地獄ん中でサイボーグヘラクレスをブッ飛ばして来るわ」

「正気ですわ!?」

「残念だが、俺は至ってマトモなんだよなぁ…………」

「疑問:自分の事をマトモという人間が、一番マトモでは無いのでは?」

「実例が一人居るんだよなぁ…………」

 

思考深度のオカシイ奴の顔が浮かんだが、サンラクは其れを虚空の彼方に追い遣った。其れは其れとして、外縁部に避難させたパーティーメンバーを置き、セーブテントを建てた彼は単身『戦災孤児討伐』に挑むのであった…………。

 

 






戦 場 究 極 混 沌


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