VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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打倒せよ




戦火の最中に赤き獣は吠える

取り敢えず解った事が一つ有る。其れは()の『対シグモニア前線渓谷(フロントライン)戦術』では、相性が悪過ぎると言う事だ。

 

「成程、良く解ったわ。今のままじゃ駄目だわな」

「サンラクサンは相変わらずですわ」

同意(せやね):契約者(マスター)の諦めの悪さは一級品ですので」

「きょうじん…………」

『シュ〜』

 

ウィンプが何言ったがサンラクは華麗にスルーを決めて、改めて現在の戦況を確認する。

 

先ずシグモニア前線渓谷での狩りは、基本的にトレイノル・センチピードとフォルトレス・ガルガンチュラの双方が自分に敵意(ヘイト)を向けていない事、そして何方かの種族に味方をしつつサポートをする事が大前提のフィールドだ。

 

双方に喧嘩を吹っ掛けてヘイトを集めて双方共にブチのめした奴が居るが、アレはクターニッドの鎧の権能と思考深度からなる併せ技が上手く噛み合った御陰の部分が大きく、早々真似出来る技術では無い。

 

何より今の戦場は帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)が下層の騒音にキレ散らかして、上からレーザーレインを降らせている流れ弾ならぬ流れビームの被弾がランダムにバラ撒かれ、普段より体感『五倍』近いレベルまで跳ね上がった究極鬼畜難易度仕様なのである。

 

「挑んでから四回、今迄の傾向からして『切札』の温存は悪手だ。突貫工事にゃあなるが、後先考えずに持てる手札を全部切って、今回の挑戦で戦災孤児をブッ飛ばす」

「疑問:何か考えが有るので?」

「さっきのグスタフ君相手に試したからな。んじゃ行ってくる」

「いってらっしゃいですわー」

 

エムルとサイナが手を、サミーちゃんは尻尾の先っちょを振って見送り、サンラクは五度目となる戦災孤児討伐戦に突撃していく。

 

先ずは青色の聖杯で女体化からビィラックに頼んで複数作って貰い、インベントリアに保管した水晶輝装(クリスタルドレス)シリーズ一式装備を一つ取り出し纏い、同時並行で手に取った黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト·イン·パーケ)を握って『変身ッ!』と叫べば、水晶の鎧が砕け散って其の身を喪服が包み込む。

 

其の最中にスキル:刀剣大神(とうけんだいしん)を起動、此の戦闘中限定で両手斬撃武器を片手で可能状態を構築から、左手に甦機装(リ·レガシーウェポン):煌蠍の尾鞭剣(ギルタ・アドラスカ)を、右手に別離なく死を想ふ(メメント・モリ)を装備して、双武連接撃(デュアルドライヴ)の補助を加えながら突撃。

 

大質量かつ特大サイズの墓標大剣と同族喰らいの金蠍の蛇腹大剣を振るい、スラッシュ・イグニッションから剣舞(けんぶ)無尽紡(むじんつむぎ)】に繋ぎ、空隙を埋める様にダブルアップ・エッジを絡めた斬撃武器や斬撃攻撃スキルを行い、道行く先のアーミレット・ガルガンチュラを八つ裂きに斬り裂きつつ、自爆を促して戦場の中心地を目指し駆け進む。

 

黒き死に捧ぐ嘆きと別離なく死を想ふには、斬ったり叩いたりした敵対存在が『死亡』した瞬間、強化や回復が持たせられる特性が有る。要するに此のスローター防具と武器は、敵に危害を与える事をトリガーに、其の存在が死亡すれば効力が発動するという『一連のプロセス』を踏んでいるのだ。

 

そう、例えば。今此の瞬間──────戦災孤児にアッパーカットタックルを叩き付けられた、トレイノル・センチピード・グスタフが倒れ込み、自分が斬り裂いたアーミレット・ガルガンチュラが超大質量に押し潰されて爆発すれば。

 

崩壊するポリゴンと共に、黒いエフェクトが喪服と墓標に吸い込まれ、自身のステータスは爆増と墓標の剣が片手で軽々と背負えるだけの重量に至った事で、サンラクの準備と『あるアイテム』を使う条件は整った。

 

別離なく死を想ふを投擲スキルのスロー・オブ・タービュランスでフォルトレスの脚に向けてブン投げれば、空気を吸い込む様に引き寄せ効果が発生し、巻き込まれたアーミレット達が爆発するのを見ながら、インベントリアをブラインドタッチで操作。

 

取り出すは赤い髑髏にして、レイドモンスター・(むさぼ)大赤依(だいせきい)の討伐報酬たる暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ)。其れを颯爽と頭に被るや、女体化状態の声で高らかに叫ぶ。

 

「短期決戦!五分で決めてやらァ!【血解(ブラッドハート)】ォ!」

 

髑髏が震え、噴き出した『赤』が走るサンラクに覆い被さった其れは、流動しながらも喪服に纏わり付いてきて。軈て其の頭と身に、腕に脚を含めた全てを覆い、赤色へと生まれ変わり──────現れる。

 

巨樹を切り倒した丸太の如き太さを誇る両腕、女人の華奢な指と手は肉食獣の様相を呈し、ハイヒールを履いた以外は猫科特有の後ろ脚、背中や肩や腰も含めて肘に膝に棘が生え。

 

俗に言う特撮怪獣の着ぐるみをも上回る巨大な尻尾と、人間の顔立ちは狼じみた顎に変わって、左右に三つの計六眼と額に一眼の計七眼の『真紅の獣』へと変貌したのだ。

 

「さa、ハーべstの時間daaaaaaaaaaaaa!!!」

 

蛇腹大剣を握り締めてアーミレット・ガルガンチュラを斬り伏せながら、フォルトレス・ガルガンチュラの脚に突き刺さった別離なく死を想ふの場所を目指して爆走。

 

巨大ながら振り抜く事でリーチが伸びる蛇腹剣がアーミレットを殴り裂き、刺さった別離なく死を想ふを引っこ抜いてフォルトレスのフェロモンに操られて脚を攀じ登るアーミレットを、大剣二刀流で倒して暴血赤依骸冠による更なる強化と暴走判定を回避しながらに砲塔部を目指す。

 

駆けながら十数体のアーミレットを斬って殴って吹っ飛ばし、自爆に数体が巻き込まれてゴロンゴロンと転がりながら他のアーミレットをドミノ倒し、フォルトレスの身体より転げ落ちる其れを赤に染まったハイヒールで踏み付け、上へ上へと進んで辿り着く。

 

(とo)(tyaく)ゥ!」

 

見上げる先にはトレイノル・センチピード・グスタフの毒液砲弾と、帝晶双蠍のレーザーレインの事故死超高確率の激戦地帯を高速機動で抜ける戦災孤児の姿を見る。

 

「こんna姿deも狙撃出来nのか…………?まa、やれるんnaら関係ねeな」

 

二本の大剣をフォルトレスの巨体に刺し、インベントリから取り出すはSOHO-ZONE達の依頼でペッパーが預かり、ビィラックの手によって修復された果て、ベヒーモスにて分配された対戦車ライフル形状の狙撃銃『グェン=サーシャ』。強化によって増えた魔力(MP)を銃弾として装填し構え、備え付けのスコープを覗き込み。

 

「ヘッショoッ!!」

 

獣の如く曲がった爪で引き金(トリガー)に引っ掛け、戦災孤児の目の周辺を狙って撃ち続ける。シャンフロに置ける銃は大まかになるが『初級レベルの魔法攻撃』という認識が有り、実際に魔法耐性が低い相手に大きなダメージ()期待出来ないという実態が在る。

 

だが銃という武器は、相手に『効かない』という事以上に、相手に『当てる』という事が大事であり、最低1ダメージしか出せなくても『遠距離から常に当てられる』事が重要なのだ。何故なら目に映る敵対存在を片っ端からブチ殺しに掛かる戦災孤児のAIからすれば、今のサンラクは『滅茶苦茶ウザい存在』と認識されるのには充分で。

 

「シャア(ki)たぁ!!」

 

自身がレーザーや毒に小蜘蛛の砲撃を受けない立ち回りで飛ぶ戦災孤児が、熱々な視線(殺意)を乗せてサンラクに迫り来る。グェン=サーシャを収納、刺した墓標と蛇腹の二つの大剣を引き抜き、✕字に重ねて構えて見据えて武身極威(ぶしんごくい)点火と共に、自前の動体視力+喪服と髑髏の二重強化による筋力及び肉体+クリティカルタイミングでの押し出し(バッシュ)パリィで迎え撃つ。

 

「ふんgiiiiiii!!!DaraシャアアアAAA!!!」

 

戦災孤児の推進力と質量の突撃は、下手な巨大モンスターのタックルの比では無い程に重く、そして強い。そんな存在と真っ向からの押合いで、勝てる見込みは限り無く低いだろう。唯一つ……………、戦災孤児が見誤った部分が在るとするならば。自身と真正面から激突したサンラクが、自身の想定を上回るパワーと共に大質量の大剣の重ね掛けで、其の巨体を吹き飛ばした事であり。

 

「Aa其処、(Hiかり)no(あme)降るze。天気予報っteヤtuさ」

 

吹き飛ばされてフォルトレスから落ちながらも、空中を踏み締めながら滑走した赤い獣が呟いた刹那、体勢を立て直さんと減速した『僅かな瞬間』に、真上から落ちた光の雨が戦災孤児を襲う。

 

シャンフロの蠍達の思考(AI)はどんな進化を辿ろうとも、共通して『弱みを見せた敵にド畜生レベルの追撃を行って来る』。其れも爆撃砲撃が飛び交う戦地で飛行し、機動力で他を圧倒しながら突貫して来ていた奴が、体勢立て直しに減速なんぞすれば当然狙いに行くのは明確。

 

其れはトレイノル・センチピード・グスタフとフォルトレス・ガルガンチュラ同様で、グスタフの巨体によるビンタで地上へ叩き落とし、其処にアーミレット・ガルガンチュラによる絨毯爆撃が戦災孤児共々巻き込んで炸裂する。

 

「俺mo居るzo!!」

 

道行くアーミレットを剣でブツ斬りにして暴走判定を解除しながら向かうサンラクだが、其処で彼女()が目にした光景は、全身にダメージを受けて甲殻に亀裂が入った戦災孤児が舞い散る爆炎と砂塵の中から再び飛び立ち、回転を加えた機動でトレイノルの脚を斬り飛ばしながら、フォルトレスの複眼の一つを潰した瞬間だった。

 

そして其のヘイトはサンラクに切り変わり、先程以上の速度で此方に突っ込んで来た戦災孤児を相手に、此の状況でアイディアを閃き──────先程同様に二本の大剣を交錯状態で構えて、敢えて『真正面から其の突撃を受けた』。

 

「yoし、良i感じda…………!」

 

サイボーグヘラクレスオオカブトの体格は元のモンスターに準拠している。そして其れは戦災孤児も同様で、現在のサンラクは上下の角の間………即ち胸殻部分に張り付いて、強化されたステータスと共に獅噛み付いている状態に在る。

 

即ち今のサンラクは戦災孤児に張り付き、共に戦火の空を飛んでいる状態に在り。

 

「サイboーグヘraクレス、o互い『覚悟』wo決めyoうぜeeeeee……………!」

 

獣は愚か、肉食獣すら尻尾を巻いて逃げ出す獰猛な視線と笑み、そしてエコーが掛かった声と共に張り付いた赤獣は、戦災孤児に向かって言ったのである……………。

 

 






油断せず、最後まで


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