VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦いの後に




蛇は竜の様相と例えられ、鳥頭は職場を目指して走る

「ぐへぇ……………」

 

暴血赤依骸冠(ブロード=クロゥネ)によるデメリットによって一分後に死ぬ運命が定められ、気怠さの中で大の字で腹から倒れた喪服状態女サンラクは、此の後の事を考えていた。

 

シグモニア前線渓谷に在った空洞は今回の戦いで潰れてしまい、周回するならばキャッツェリアかホルヴァルキンの何方かを経由しなくてはならなくなった上、今迄内縁側から戦地に乗り込んだ御陰で比較的事故は避けられた物の、此れ以降は外縁から侵入する事になるので、今迄以上に事故率が跳ね上がる事は避けられないと言える。

 

契約者(マスター)、回収を代行します」

「おー…………ナイス、サイナ〜………。俺は気にせず、回収終わったら離脱しなー…………」

「了解」

 

自身と契約しているエルマ=サイナが降りてくるや、迅速かつ手早い動作でFM's(フォッシルマイヤーズ)クリサリス"戦災孤児(ウォールフェン)"のドロップアイテムを回収。同期しているインベントリアへ収納から、即座に外縁部に建てたセーブテントの在る位置へと避難して行き。

 

そして体内時計が一分を経過し、遅れて齎された赤い髑髏のデメリット効果により、サンラクは死亡してリスポーンする事になったのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「使い切りだったが、まぁ充分過ぎる戦果は獲られたぜ…………」

「サンラクサンは笑ってる時って、大抵普通か悪い事考えてる時の二つしか無い気がするですわ」

「バカ言え、良い事考えてる時も笑顔になるよ俺は」

 

使用回数を超過して倒壊したセーブテントから、男の状態に戻ったのを確認して這い出つつ、エムルの言葉にサンラクはツッコミを返す。

 

「まぁだが目論見通り、エクゾーディナリースキルは獲得出来た。ちゃんと()()スキルになってるしな………!」

 

不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)──────不世出の存在(エクゾーディナリーモンスター)を打倒する事によって獲得可能となるシャンフロの要素の一つであり、対象のモンスターを打倒した状況によって攻撃属性の変更に、スキルの出力其の物に影響を及ぼしたりと、有志によって調べられてはいる物の其の全容は未だ把握出来ていないという。

 

今回サンラクが手にした戦砕誇示(ウォールフェン)は、FM'sクリサリス"戦災孤児"を倒した際の決め手が『拳撃』だった事も有り、当初の目論見通り『拳撃スキル』として所持スキル一覧に刻まれていた。

 

効果は『使用者の拳撃命中時の威力によって、ノックバックの威力其の物に影響を与える』という物。其の威力も小さい程にノックバックの影響が大きく、威力が高ければノックバックの影響が小さくなり、予想だが『極まった威力で殴れば敵の体内に鎧通しする』事すら、此のスキルならば可能に成るだろう。

 

「まぁスキルの性能は後で検証するとして、だ…………。ウィンプとサミーちゃんの『新しい住まい』を探さねぇとな…………」

 

ホルヴァルキンにはイムロンや火酒夏(カシューナッツ)がまだ滞在していそうなのと、鉱人族がゴルドゥニーネに騒ぎそうなのでアウト、同様にキャッツェリアもアウト。

 

新大陸の前線拠点やティアプレーテンは他のプレイヤーが居るので除外、何せユニークに飢えた連中とウィンプが鉢合わせれば『倒してみよう』の流れは不可避だ。

 

「…………あ、いや待てよ?なぁウィンプ、お前確か料理作れるよな?」

「へ?え、う、うん。あひーじょとか、はんばーぐとか、にものに、さらだ………かんたんなのなら、ひととおりはつくれるわ。にたり、やいたり、きったり………きほんは『サイナ』と『ヒトミ』からおそわったし」

 

料理の基本が出来るならば話は早い、早い段階から料理の事をサイナとヒトミが仕込んだのが、功を相したと言える。

 

「よし決めた。…………ウィンプ、今日からお前は『流浪の料理人ウィンプ』だ」

「は、はぁ?」

「前線拠点に其のまま連れて行ったら、お前の生命に関わるのは明白。だから『俺の職場』でコックとして雇って貰える様に、俺が頭領達に交渉する」

 

木の葉を隠すなら森の中、人を隠すなら人混みの中と格言が在る様に、蛇を隠すなら蛇の林檎の中と相場が決まっている。

 

「疑問:サミーちゃんはどうするのですか?」

「モンスターがモンスターを飼っちゃいけねぇってルールは存在しねぇ、だから問題もねぇ筈だ」

 

ペッパーにシグモニア前線渓谷の空洞が使えなくなったとEメールを送って、一同が目指すは蛇の林檎・新大陸支店。出来る限り素早く、砂漠地帯と樹海地帯を通るルートで迅速に目的地へと到達するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペッパーが撮影し、ライブラリを通じて数多のプレイヤー達の手に渡る事になった、新大陸の空中写真。シグモニア前線渓谷(フロントライン)が砂漠地帯のド真ん中に位置し、大陸の大部分が砂地である事を踏まえてもかなりの広さを誇る。写真で見ても『1/3』に迫る広さだとしたなら、解り易いだろうか?

 

そしてシャンフロのゲームクオリティからして、昼間〜夕方の砂漠地帯は熱された鉄板の上に等しい温度が再現されている上、長時間留まっていれば熱中症も不可避だ。エムルとウィンプはサミーちゃんに乗せて貰い、サイナとサンラクは空中を駆け走って、前へ前へと突き進む。

 

途中でサボテンがくっ付いた巨大な岩山の宿にしたヤドカリと遭遇して追い掛け回されたり、蛇みたいなワームが砂地から飛び出して強襲して来たりと道中ドタバタだったが、大きな怪我やトラブルも無く一行は新大陸の1/5を占める『ペンヘドラント大樹海地帯』に到達する。

 

「こっから先は恐竜パラダイスに加えて、プレイヤーとエンカウントする確率も跳ね上がってるしな…………」

契約者(マスター)。此の樹海地帯には疎らにこそなりますが、地下空洞が存在している事が姉妹機(シスター)達によって判明しています。休息を取るなら其処が宜しいかと」

「マジか。ナイスインテリジェンス、10ポイント贈呈。で、最短地点は何処だ?」

獲得(やったぜ):此れで20ポイント。此処からの最短地点は150m先に」

「よし。其処まで移動したら、少し休むぞ」

「やっ、やっときゅうけい…………」

「ちょっと休めるですわ…………」

 

夕焼けの空からして約二時間弱、シグモニア前線渓谷と樹海地帯の間に在る砂漠を越えた一行は、サイナが言った地下空洞(休息地点)を目指して進んで行き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感知(おや):先客が居ます。其れと此の反応…………どうやら『レイカ型の征服人形(コンキスタ・ドール)』と共に居る様です」

「誰か居るのか、んじゃあ別の場し「あ、サンラク君!」って、レイさん!?」

挨拶(やぁ):エルマ=317。随分久しいじゃないか、変わらずの様だな」

肯定(えぇ):レイカ=193。貴女も契約した様ですね」

「エムルねぇ!」

「ブルル!」

『ヴルルルルルッ』

「エクシスですわ!」

 

其れは偶然とも言うべきか、はたまた運命というべきか。樹海地帯に入り、休憩地に向かっていた最中にサンラク達が出逢ったのは、同じクランに属しシャンフロ最高瞬間火力たる称号を持つ『サイガ-0』。

 

そして彼女のパートナーのヴォーパルバニー・エクシス&ウォットホッグ、更には褐色系の征服人形と巨大鎧馬の緋鹿毛楯無(ひかげたてなし)と共に空洞から顔を出したのである。

 

 






樹海を駆けよ


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