静寂を切り裂いて
樹海を閃光達が切り裂く。
数多の生命達が駆け走る。
そして拡張された
「ヴェアアアアァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァアァァァアアアァアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?!!」
其処にサイナとイクサの二人が持っていた、というよりは『持ち歩いている』マイク達を借りて、更に重ね掛けて
今は既に滅びて消えた
「い、いかれてる……………」
「うぉぉ!?と、鳥の人スゲー!けどうるせぇ!?!」
「ブルルルルル!?」
「み、みみがしぬですわ………!!」
「「同意」」
「ヴォルルルルル…………」
三者三様十人十色、されど聴覚に大ダメージを与えるイカれた大声量にマイクを用いた声量強化、そして使い捨て魔術媒体の補強を加えた声が夜の樹海に響いて轟き、そしてサンラクは一息付いて再び叫ぶ。
「ヴァアアアアアアアアアァァァァァァアアアアアアアアアァァアアアアアアアアアアァァアアァァアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァアアアアアアアアアッッッッッッ──────!!!!!」
他のゴルドゥニーネがウィンプと同じく『ヘタレ』という訳では無いだろうが、時に大声とは『他者に対する原初的な威圧方法』だ。発した声量で喉が枯れるという『純然たる結果』と『相応の労力は使う』が、其の効果は太古より『己の存在を誇示する事』に等しく、何より最も解り易い『イニシアティブの奪取』なのだから。
「オ"イゴラァ!!!!コソコソ覗き見してんじゃァねぞオラァ!!!!言いてェ事があるなら
喧嘩腰かつヤクザめいた口調と共にカルマティール・フロートによる空中滑走を行いつつ、サミーちゃんの上に乗るサイナと
ライブラリには既に『ゴルドゥニーネに関するユニークシナリオやらの情報』は流した、他のプレイヤーに何からしらの『ちょっかい』を掛けられる可能性は有るが、其れでも今は『一人じゃない』。現在共に前線拠点に向かっているのは、シャンフロ最高のアタッカーたるサイガ-0──────彼女が共に居る事がサンラクにとって一番『心強い』。
「此の御方を何方と心得るッッッ!原初の蛇より分かたれた八つが一、八番目のゴルドゥニーネ其の人だ!!文句があるなら言ってみろ!ブチのめしたいなら前に出ろ!!代わりに手ェ出したなら、地獄の果てまで追い詰めて一生後悔させてやるけどな!!!そうだろう!!?!!」
「………………!」
ロールプレイで盛り上げ、ウィンプも状況を察してかサミーちゃんの頭の上にて腕を組み、全てを見下す視線と表情で己を取り繕う。根本的に『ヘタレ』なのは否めない上、膝はガクガクブルブル震えている事を除けば、彼女なりに虚勢を張った『ガッツ』に応えてやらねば漢に非ずだ。
「コイツに挑むってんなら、先ずは俺とサイガ-0を通して貰おうかぁっ!!経験値とドロップアイテムに変えられたいってんならァ、俺達は歓迎するけどなァ!!!!!」
シャンフロプレイヤー最速と、シャンフロプレイヤー最大の火力の、二本柱が立ち塞がって相手になる……………字面だけでも相当のプレッシャーに加え、両者共に其れを成せるだけの実力が在る。其れに挑んで来るならば、余程の『死にたがり』か『秘策持ち』以外に有り得ないのだ。
反応を待つが、周辺から気配は感じない。まだ確信は出来ないが、一先ずは成功したと見て良いだろう。カルマティール・フロートの効果が切れて、地上へと落下する中で自身の尻尾をスロープに見立て着地地点を作ったサミーちゃんに評価が上がるのを感じながら、滑り込む形で彼は着地。
不機嫌そうにプンスコ顔のエムルや、やれやれ顔したサイナに、漸く終わったとヘナヘナと座り直したウィンプ、横には嫌悪感をMAXにしている
結果的に『デスボイスでイニシアティブ奪取&周辺のゴルドゥニーネに挨拶作戦』は功を相し、其のまま迅速に移動を続け。他のモンスターに絡まれたりしたが、サイガ-0が持ち前の大火力で一蹴して、日付が代わる前の深夜帯にこそなったが、午後十一時半にサンラク達一行は前線拠点まで辿り着いた。
夜影を縫いつつ、他のプレイヤー達に見付からぬ様に移動をして、蛇の林檎・新大陸支店の裏口に着いたサンラクは青色の聖杯で女体化から衣服を着付け、エムルとウィンプにサミーちゃんを連れて店内へ。
此方がゴルドゥニーネを連れて来たのを把握していたのか、何処からか見られていたのかは知らないが、彷徨う剣の頭領とルティアにティーアス、そして酒場のマスターという錚々たる面々が出迎え。サンラクはウィンプの事情説明と彼女の料理の事を述べ、実際に『トルマドを使った簡単な料理を作って貰う』という実践試験をする事になった。
「お前がやっている様にやれば良いさ。自信持ってやんな」
「や、やってみる…………」
手と俎板とトルマドを洗いつつ、包丁を用いて八等分に切り分け、彼女は「ちーずにとおいる」とサンラクに言い、数拍置いて「…………だしてください」と御願いし、サンラクはインベントリアに仕舞った冷蔵庫の中に在る、チーズとオリーブオイルを取り出して渡し。
「おさらにのせて、ちーずをおいて………。しおと、こしょう、ぱらぱら…………。おいるで…………さいご──────!」
切り分けたトルマドを円状に乗せ、其の間にチーズを添え。一摘みの塩と胡椒で円を描いて、仕上げにオリーブオイルを垂らせば、ウィンプの手作り『トルマドとチーズの簡単おつまみ』が完成した。
「ど、どうぞ……………」
緊張しながらも自らの未来を掴まんと作った一品を、そっ………と皿とフォークを共に前へと出す。頭領が上品に、ルティアとマスターは普通に、ティーアスが最速挙動で、フォークを手に取り簡単おつまみを口へと運ぶ。
「ど、どう………です、か?」
「……………うん、良いわネ」
「まぁまぁ」
「………
「基礎は出来ている、と見て良いでしょう」
概ね料理の腕は好評の様で、暫く調理場に立って客を相手に料理を作る事になったウィンプは、早速明日からキッチンに立つ事に……………即ち『蛇の林檎・新大陸支店の料理人』として就職する事になったのだった。
其の後、ウィンプとサミーちゃんには住まいの部屋が与えられ、サンラクはインベントリアに避難させていた家具を移し、部屋を綺麗にリフォーム。
サンラクとサイガ-0はエムルのゲートを潜り抜けて、パーティーメンバー達と共にラビッツに帰還。緋鹿毛楯無は兎御殿の軒先に待機させ、自分達は休憩室にてセーブを行って、シャンフロからログアウトしたのであった……………。
就職