VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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エリュシオンの答え




原理と現象と結果を紐解きて、答えを示す鍵を見定む

「サンラク君。君の身体に付いているリュカオーンの刻傷(こくしょう)…………三分経過で対応した部位の装備破壊という『デメリットの無効化』、或いは『デメリットを許容した上で破損を回避する』、そんな防具(メイド服)を作れるかも知れない」

 

嘘や口八丁を感じない、至極真面目な雰囲気で話を切り出したエリュシオン・オートクチュールの其の言葉に、此の場に居たプレイヤー全員の視線が向く。

 

「話を聞こうか」

 

何よりサンラクにとっては、三分経過による装備爆散という刻傷の効果のせいで、装備を一時的なバフとしてしか着れなかった(切れなかった)。はいノルマ達成といこうか、おのれリュカオーン。

 

ともなれば、だ。破損を踏み倒して着る事が出来れば、半裸覆面の変態プレイから卒業出来る『チャンス』が転がって来たなら、其れを掴まない手は無い。

 

材料やマーニに関しては水晶群蠍(マブダチ)水晶巣崖(友達の実家)に相談する事だって出来るし、無理難題じゃない限りは事に当たるのはアリであると、そんな事を頭の中で考えていれば、エリュシオン・オートクチュールが話を始めた。

 

「此の世界では百万の宝石が、理解を得た唯一つの石に負ける事も有る。そして其れは『実例』が在るならば、必ず『再現性』も存在していると言って良い。現実的か非現実的か…………其れはさておきとして、即ち『理論上』は可能だと言う事でも有る」

「…………随分と哲学的な事を言ってるが、要するに何だ?」

黒き死に捧ぐ嘆き(レクィエスカト・イン・パーケ)──────使用したプレイヤー達は名前が長いから『R·I·P』呼びしている者も居るが、彼等彼女等の話では其のアイテム………いや黒いクリスタルは装備している防具をコストに特殊な防具を生成するという、シャンフロの中でもかなり特殊な逸品であると」

 

だが、重要なのは()()()()()()んだ──────そうエリュシオン・オートクチュールは断言する。

 

「クリスタルの力で生成された防具は『通常の破損の一切を無効化する』という点。エリクサーを掛けると破損するが、重要なのは『破損無効』であり、私が着目した点だ。其れは『防具が破損を免れる現象』が、此の世界(ゲーム)に存在するという事だ」

 

エリュシオン・オートクチュールが着眼したのは破損無効という一点。シャンフロというゲームは基本、耐久値が0になる=データロストという原理の他に、刻傷の三分累計蓄積による強制破壊現象が働く。

 

故にこそ彼は『設計図』を、コンセプトとなる図面をインベントリから引っ張り出して、サンラクや他者に示しながら説明を行う。

 

「私が考えたのはラピス君が持つ『宝石織』の技術を用い、繊維化した『ラピステリア星晶体』を使ったマナの供給という『外的要因による干渉』を行う事で、メイド服其の物を『再生させて破壊を防ぐ』…………というのがコンセプトでも有る」

「随分ゴリ押しな破壊阻止だな…………。仮に出来たとして、どのくらい持つんだ?」

「フフフ…………其れは作ってみなければ、私にも解らない。だが約束しよう、エリュシオン・オートクチュールの名に誓い、君とサイナにウィンプ、そして遍くメイド服スキー達に自信を以って示せる、そんな『最高のメイド服』を仕立ててみせると」

 

図面を含めて確信と自信を持たなければ出来ないだろう、エリュシオン・オートクチュールの『笑み』に、サンラクもまた『賭けてみよう』という気を起こさせるには充分な要素であり。

 

「解った、協力しよう」

「取引成立で」

 

唯二言の後に握手は交わされ、此処にエリュシオン・オートクチュールによるメイド服作り計画は、静かに動き出したのだった……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、えっと………サンラク君、大丈夫………でしたか?」

「んまぁ、有名になると色々大変だからなぁ………」

 

蛇の林檎・新大陸支店を出たサンラク一行は当初の目的である『バハムートの二番艦・リヴァイアサン再稼働』を果たすべく、西側の海岸線を進んでいた。

 

「其れで、リヴァイアサンは…………多分、海の何処か………に居ますよね?」

「えぇ。別のゲームのリヴァイアサンは『魚として扱われるドラゴン』であり、此の世界では『巨大な象』でも有った。ヴァッシュの兄貴は『バハムートを呼び出す為の座標が在る』と言ってたが、おそらくは『前線拠点の東西どっちかの海岸線の何処か』に、其の座標が在るんだと思う」

 

外れたなら外れたで、東側の海岸線を進めば良いだけの話なので問題は無いだろう。そんな時である、突然サイナが「契約者(マスター)サンラク、貴方に渡す物が有ります」と言って歩み寄り、鎧を纏った其の手に『一通の封筒』を持っている。

 

「…………何だこりゃ、封筒?」

「みたい、ですね………」

「解説:個体名ウィンプ及びサミーちゃんの引っ越し、並びに就職等の状況を加味して渡せずにいましたが、契約者はFM's(フォッシルマイヤーズ)クリサリス"戦災孤児(ウォールフェン)"を討伐した事により、プロトコル『オルケストラ』における設定条件を満たしました。其の為、征服人形(コンキスタ・ドール)の暫定規約に基づき、契約者(マスター)へ『コンサートへの招待状』が進呈されます」

 

オルケストラ…………其れはペッパーが纏っている名前隠しのコートを授けた存在にして、七つの最強種たるユニークモンスターの一柱、そして未だに其の全容が掴めていないとされる『冥響(めいきょう)のオルケストラ』だ。

 

 

 

『───(コレ)は、貴方を待っています。どうか、貴方の為に歌を』

 

 

 

封筒を開いて中身を確認するサンラクと、頭に乗ったエムルに隣に寄り添ったサイガ-0、ぴょいんぴょいんと跳ねていたが、イクサに抱えられた事で見る事が出来たエクシス&ウォットホッグ、そして頭上から覗き見る様に緋鹿毛楯無(ひかげたてなし)の視線が向く。

 

書かれた文章は簡潔なれど、其処には強い感情が込められており。そして封筒を開く事が条件(トリガー)であった事、何より()()()()()()()()()。其れも『ユニークモンスターのシナリオウィンドウ』が表示された事で、サンラク達は状況を理解する。

 

 

 

 

 

『ユニークシナリオEXの条件を達成しました』

『ユニークシナリオEX【あなたに捧ぐ旋律(ウタ)】を開始しますか?【Yes】or【No】』

『称号【七つ星の観測者】を獲得しました』

 

 

 

 

 

「……………ユニークモンスターのシナリオコンプリートしちゃったかぁ……………」

「補足:オルケストラの招待状は個体名ペッパー・天津気も贈呈されており、ライブラリに情報を渡しに行ったとヒトミから聞いています。オルケストラが居る場所に向かいますか、契約者(マスター)?」

 

サイナが問い掛け、暫く考えたサンラクは結論を出した。

 

「…………いや、先ずはリヴァイアサン探しだな。気にはなるが、当初の目的から離れちまう」

「了解:時が来ましたら御伝えを」

「あいよ」

 

ユニークシナリオ含めてやる事は多いが、先ずはリヴァイアサンの再稼働こそが最優先課題だ。故にこそ彼等彼女等は前へと進む、此の巨大なる始源の鳥の骸の地に在る神代の宇宙船を呼び起こす為に……………。

 

 

 






招待状を受け取り、リヴァイアサン探しへ


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