VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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第五殻層に何が在る




叡智に眠る、数多の情報

第一殻層は重力とタイルトランポリンに、輸送用コンテナとゴーレムパラダイスによる『迷宮』。

 

第二殻層は種類を問わない人工食肉が闊歩し、適切に調理加工すれば非常に美味なる食料補充も可能な『草原』。

 

第三殻層はイカサマ裏技何でも有りの、人の欲望渦巻く娯楽と集金施設の『カジノ』。

 

第四殻層は数多有る武装やパワードスーツにロボット達が立ち並び、買い物した物が門番と化して立ち塞がる『ショッピングモール』であった。

 

恒星間航行(バハムート)級アーコロジーシップの二番艦・リヴァイアサン、第五殻層たる『叡智(エイチ)』はマトリョーシカ型の超巨大鋼鐵宇宙船鯨の最奥であり、此迄の殻層とは一線を画す程に『不思議な空間』というのが、辿り着いた全てのプレイヤーとNPCが共通して抱いた感想で。

 

頭上には『丸い大きな球体』、フィールドは青白く穏やかな光が心地良く、中心地点の『六角形タイル』が怪しく在りながら、広さも第一から第四の各殻層で断トツで狭いながらも、一流スポーツ大学の体育館に匹敵する広さを持ち、サッカーコートよりも小さいが十分だと断言出来る大きさだ。

 

「勇魚さん、此処では何をするのですか?」

『此処で出来る事は、貴方達が此迄の歩みの中で見聞きし、そして得て来た『情報の閲覧のみ』。そして『五十の情報を閲覧した時』に、貴方達は『最後のアンバージャックパス』が与えられます』

「つまりは『新しい情報を得る事も可能』、という訳だね。此れはライブラリの面々にも…………特にベヒーモスに永住を決め込んでいる者達には、確りと伝えなくては…………」

「要は『ノルマ付きの図書館』って訳だ…………多分ベヒーモスの所だと、二と七と八階層の融合みたいな奴かな?」

 

ペッパーのストレートな質問に、試練を乗り越えて殻層へと招いた勇魚は答え、考察クラン:ライブラリのリーダー・キョージュは早速Eメールでライブラリの本拠地や出張所のプレイヤーに事情を伝え、サンラクは自分なりに答えを導いた。

 

そうして居る間に勇魚は中心部のタイルを指差せば、其処からタイルが競り上がって六角形の柱となり、彼女は説明を続ける。

 

『尤も、貴方達が閲覧出来るのは知っている事柄のみ。『全く知らない情報を見る事は出来ない』のです』

「じゃあ取り敢えず俺からやってみ──────」

 

ガガガガガガシッ

 

「へ?」

「あん?何で俺まで止めた?」

「ペッパー君。君が一番最初にやると、参考にならないのだよ」

「あーくんとサンラク君は色々情報を溜め込んでる訳で。ベヒーモスの時と同じく一旦ステイよろしく」

「「えぇっ………」」

「なら自分から行きましょう、実験ならば慣れているからね」

 

ベヒーモスの第六階層で、サンラクとペッパーのマギバイトを目撃しているペンシルゴンの発言に、オイカッツォ・京極(キョウアルティメット)は無言でコクコクと頷き。

 

そんな中で一番槍として武器狂いことSOHO-ZONEが名乗り出て、利き手を六角形の柱に翳して触れれば、彼の掌から光が柱へと吸い込まれ、柱から地面へと伝い消えて。

 

同時に光は地面から柱へ、柱から彼の掌へと逆流し、そして彼の周囲に『無数のウインドウ』が出現して、彼を取り囲んだのだ。

 

「おう、武器狂い。一体何が起きた?」

「此れは…………『情報を纏めたファイル』だね。おそらく六角形の柱に触れる事でリヴァイアサンに存在する『データベース』に、自分が見聞きした情報を反映して『纏まったデータをファイリングした』…………そんな感じかな?」

『其の通りです、SOHO-ZONE様。因みに貴方のファイル総合計は『八十一』ですね』

 

彼が此迄に培った武器や防具関係の情報を含めて、ベヒーモスで機装に関する勉強をした事も有ったか、かなり多い様だ。其れからルストにモルド、サバイバアル等の他プレイヤー達が挑戦し、其々が歩みて得て来た情報のファイルを見つめ、漸くサンラクとペッパーの番が巡って来た。

 

「じゃあ………………サンラクから、どうぞ?」

「んじゃ、御言葉に甘えて…………って何撮ってんだペンシルゴンにオイカッツォと京ティメットにキョージュ」

「いやさぁ…………。サンラク君とあーくんの場合は、一体どうなるのかな〜って」

「面白い光景期待してるよツチノコ」

「脱皮するんじゃない?ツチノコだけに」

「よし、後で覚えとけ」

「相変わらず喧嘩腰ですわ…………」

肯定(まぁ):せやな」

 

やり取りしつつサンラクが柱に触れ、光がズゾゾゾゾゾゾ……………と大量に、リヴァイアサンのデータベースに読み込まれていく。既に此の時点でサンラクとペッパーは猛烈に嫌な予感を抱き、およそ『一分半』掛かってウインドウが爆ぜる様にサンラクの周囲に吹き出した。

 

「うわキモっ」

「何か明らかに多過ぎない?」

「………………システムウインドウの妖精?」

「ぶぶっふ!?」

「サンラク、君…………大丈夫、ですか!?」

『えーと、サンラク様のアンロックファイル数は…………『二百十一』ですね』

「──────そんなにぃ?」

 

もう此の時点で周囲の視線がヤバい。何せ色々と情報を見聞きして抱えているサンラクの時点でコレなのだ、『ならば此奴は一体どうなるんだ』となるのは、最早既定路線と言えるだろう。

 

気が滅入りながらも、恐る恐る手を柱に伸ばして触れたペッパーの掌へと光は集約され、柱に次々と取り込まれて。全てが取り込まれるまでに『二分半』が過ぎ、漸く彼の掌に戻って情報を纏めたファイルが一挙に溢れ出す。

 

「ちょっと待って、どれくらい在るのコレ?!」

「全然見えないんだけど!?」

『驚きました………ペッパー・天津気(アマツキ)様のアンロックファイル数は『三百三十八』。保有している情報量だけならば、今此の場にいらっしゃる開拓者の皆様の中で『断トツ』の総量を誇りますよ』

 

勇魚が宣ったペッパーの其の圧倒的なファイル数に、当の本人は目眩と立ち眩みを覚え、頭を抱えた。

 

同時に彼は悟る──────間違い無く、此の場に居るプレイヤー全員からの『オハナシ』不可避の運命が、此の時此の瞬間を持って『確定』したという事に。

 

 






大量の情報



※ペッパーが此れだけの情報を持っているのは、通常の情報以外にも『単体の情報の中から派生する情報』と『複数の情報を組み合わせる事で初めて閲覧可能な情報』が有ったからです。

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