VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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話を聞いて何を思う




己を見定め確立するのは至難、故に誰かの助け舟は甘味なる味がする

『私はリヴァイアサンのデータベース内に一切の容量を持ちません。私はリヴァイアサンの全権限にアクセス可能であり、リヴァイアサン内で起きた出来事の全てを記憶出来ます。が………其れでも、其れを記憶するのは『勇魚(ワタシ)』であって此の『リヴァイアサン』の容量は一切減らない………。私は私自身の自己を確立するのに随分と苦心しましたし、私という存在が受け入れられるのも随分と時間が掛かりました』

 

勇魚から語られた、重く重い長く遠き過去の話(苦労話)。神代人類が終焉(オワリ)の道を歩む中、其れでも尚も抗った一人の救世主(オトコ)の話に、ペッパー・サンラク・サイガ-0・ペンシルゴンは其れを唯静かに……………否、サンラクとペンシルゴンはあまりにも長過ぎる話に困惑気味になりながら聞いていた。

 

(何か『ル・アラバさんとネレイスさん』みたいな感じがするなぁ……………)

 

長い時間を掛けてリヴァイアサンが『擬人化した存在』、其れが勇魚という存在の『正体』。そして自分達神代人類が滅びれども、新たなる人類たる一号人類と二号人類の未来を紡がんとしたジュリウス・シャングリラとの『惚気話』というか、何方かと言えば『ラブロマンス』的な感じだろうか?

 

『当時は、気付かなかったんです。ただ何も気付いていないなりに彼を止めて、拒んで、其れでも説き伏せられて………。知性も、記憶も、何もかもを焚べて、地の底に消えたジュリウスに………私は、私は………』

 

第五殻層『叡智(エイチ)』で見た、6·6·6·計画の情報ファイルと勇魚の過去話(惚気話)の御陰でハッキリしたのは、ジュリウス・シャングリラとアリス・フロンティアという二人の神代人類によって『今日の此の世界(ゲーム)が存在して居る』という事、そして彼と彼女の名前を半分ずつ取る事でゲームのタイトルたる『シャングリラ・フロンティア』となった事。

 

そして此の話は誰かの物語である『ユニークシナリオ』や、開拓者(プレイヤー)達の物語『グランドシナリオ』とも違う、此の世界の物語である『ワールドストーリー』其の物とも言うべき話である事だ。

 

『だから、コレは『私の未練』なんです。ただの『抜け殻』でも、其れでもコレは『あの人』なんです………。だけど、だけれども……、私は『間違っているのでは』?………人間は『亡骸を弔う』ものです。…………此の場所に、こんな、標本みたいに飾って………嗚呼、正体すら知れぬ私が『誰かを想う事自体が間違いだったのでは』………っ!!』

(多分『此処だ』。此処から勇魚さんを『どう説得するか』が、俺達四人にとっての()で重要な『フラグ』だ)

 

リヴァイアサンの施設をスムーズに利用する為にも、他にも未だ見れていない情報を閲覧する為にも、此処で『仕損じる』事は何としても避けたい。

 

今回のロールプレイで成し遂げる事は、『勇魚自身が感じてきた事は間違いじゃないと認識させる』であり、其の為のキーワードは『愛』と『ジュリウス・シャングリラ』に『自分を信じる事』の三点。

 

今後の明暗を、ワールドストーリーの方向性を分け得る一幕へ、ペッパーは勇魚に対するロールプレイを展開しようとし──────

 

「いいえ。きっと、間違いなんかじゃ…………有りません」

「レイさん?」

「レイちゃん」

 

彼の言葉より早く、サイガ-0が勇魚に声を掛けたのだ。

 

「行動が正しいのか、其れとも間違っているのか………。きっと此の世界で………其れを証明出来る人は居ない、と思います………。──────でも、其れでも。其の想いを、(ほか)でもない貴女が『否定する理由』には、ならないと……そう思います」

『……………………』

 

此処は黙って様子を見るのが得策と感じてか、三人は彼女と勇魚の会話(やり取り)をモブキャラの心持ちの様に聞き続ける。

 

「誰かを想う気持ちに……種族とか、正体とか、………『関係無い』です。もう返事を、聞く事が出来なかったとしても……、其れでも貴女自身が、見聞きして………感じた思い出は………きっと『嘘でも間違いでも無い筈です』」

『………そう、でしょうか』

「はい」

 

勇魚に対するロールプレイの『完全回答(パーフェクトアンサー)』を見せたサイガ-0。そして此処こそが、彼女の話をより補強する場面だと察知し、ペッパーもロールプレイを開始する。

 

「──────勇魚さん。貴女は今でも、ジュリウスさんの事を『愛していますか』?」

『…………………はい。今でも、私は彼を『愛しています』。彼が『どんな姿』になっても、例え『亡骸』になったとしても』

「ならば、勇魚さんは『勇魚さん自身を信じて下さい』。ジュリウスさんが『貴女を信じた様に』…………。貴女は貴女の『心で感じた事』を、彼と共に過ごしてきた『確かな時間』を。其れがきっと、ジュリウスさんが『貴女に望んでいる事』の筈です」

 

蛇足かも知れないが『ちゃんと言うべきだ』と思った事を、己の言葉に乗せて勇魚へと放ったペッパー。果たして其れを聞いて何を思ったか、勇魚は朗らかな──────『自然な笑顔』でこう言ったのだ。

 

『………ふふ、長く存在し(生き)てきましたが、やはり誰かと言葉を交わす事以上に、知見風情を広める方法は無い物ですね。感謝します、サイガ-0様、ペッパー・天津気(アマツキ)様。そしてサンラク様、アーサー・ペンシルゴン様。何か『揺らぎの様な物が収まった』気がします』

「いえいえ、そんな…………」

「どういたしまして」

 

取り敢えず勇魚の闇堕ちルートだけは避けられた様で、ほっと胸を撫で下ろす。万が一にも仕損じていたなら、最悪『八体目のユニークモンスター誕生』なんて事も有り得る予感がしたので、サイガ-0のパーフェクトロールプレイはマジナイスだった。

 

「流石レイさん、見事なロールプレイでしたね」

「………ちょっと、気取りすぎたかな………なんて………。私自身も指導出来る、様な()()が有る訳では、無いです……から…………」

「いやいや、ロールプレイ(ああいうの)は『気取ってるくらい』が丁度良いんですよ。其れに俺としてもさっきの返し方…………結構『好き』だな」

「ヒュッ──────!?」

 

ボスンッッッッ!という水蒸気爆発に似たSEを立てたサイガ-0が、真っ赤な完熟林檎めいて赤面し。其れから数秒してサンラク本人も『自分の発言』に気付いたのか、頬を指先で掻いて明後日の方角に視線を向け、ちょっとばかり『照れていた』。

 

「………………ねぇねぇ、あーくん。サンラク君もシレッと爆弾発言してるよねぇ〜???」

「あまり茶化してやるなよ、ペンシルゴン…………」

 

こういう二人だけの世界は、邪魔をしない方が良かったりする。遠くで静かに見守って、タイミングを見計らい祝福するのが、サプライズの基本中の基本だ。

 

其れは其れとして、サンラクとペッパーが此のリヴァイアサンを一夜で踏破した理由は、『ある物を手にする為』に最奥の地を目指す必要が有ったからこそであり。

 

「勇魚さん、聞きたい事が有ります」

『ええ、何なりと御聞きください。ペッパー・天津気様とサンラク様が持っている『エドワードレポート』も、此方で既に閲覧可能状態にして有ります』

 

エドワード・オールドリングが地下ラボに遺した破損ファイルだったアレの事かと思いながら、ペッパーは前に出て『一枚のスクショ』を勇魚に見せながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バハムートの三番艦・ベヒーモスの第八階層に在る、アンドリュー・ジッタードールさんのラボ……………其処に置かれていた、此の鋼鐵の箱(タイムカプセル)を開ける為に必要な『鍵』を、『アンサーコード・トーカー Type アンドリュー・ジッタードール』さんから、彼はリヴァイアサンの第五殻層に其れを置いて来たと言っていました。……………其の鍵を頂けないでしょうか?」

 

────────────と。

 

 

 






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