VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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レアエネミー対黒染め胡椒




致命の御業よ、首無しの騎士に終止符を

喪失骸将(ジェネラルデュラハン)━━━━━此のモンスターを一言で現すならば、此程までに『人馬一体』が当て嵌められるモンスターは、そうは居ないだろう。

 

人と馬が共に在る事を意味する言葉で、此のデュラハンの強さは今まで戦ってきたモンスター達の中でも、リュカオーンを除けば、現状の自分の中にある格付けでは、上位に相応しい存在だった。

 

移動手段として、馬の機動力が加わっており、スピード勝負に持ち込まれたとしても、競り勝つ事が容易になる。そして機動力を馬に任せられるという事は、自分は攻撃に集中する事が出来るという副次性を生み出す。

 

そして長剣と馬に股がる事で発生する、攻撃範囲の拡大。何よりも此れが厄介極まりなく、長物武器と騎乗は古来より最強に等しい相性を誇り、右手がリュカオーンの呪い(マーキング)で潰されたペッパーは、両手系統の武器を装備出来ない。

 

幸い投擲スキルは有るにせよ、超至近距離と中距離のリーチ差という根本的なハンデを抱えたまま。つまりはデュラハンと馬を分断しなくては、一対一(タイマン)の勝負すら出来ない領域に在るという訳だ。

 

(さて…此の人馬一体を、如何にして切り崩すか!)

 

振るわれる両刃の長剣を回避し、ペッパーは此迄以上にワクワクしていた。アイトゥイルとビィラックが居ない中で、己が身一つで強敵を打ち崩す。ゲーマー魂が高鳴り、挑戦心が大きく奮え、戦闘の意欲が湧き立つ。

 

自分の持つ手札、新たに手にしたスキル。其れ等を総動員して、此の瘴気満ちる谷を闊歩する、デュラハンを倒してみせると。

 

「なら此れで行くぞ!」

 

長剣の刺突を、黒鉄丸の峰で弾いて進行方向を反らし、スライディングで後ろに回り込む。デュラハンの股がる馬が、騎馬と同じ様に旋回挙動を取った其の瞬間を狙って、ペッパーは『あるスキル』を点火、黒鉄丸の刀身で素早く『×の字』を誰も居ない空間へなぞった。

 

直後、馬に股がるデュラハンの背中に『×の字の斬撃』が襲い掛かり、未知の攻撃(・・・・・)にデュラハンは、己の背中へ不意討ちを行った者に向け、長剣を振るう。

 

『…!?』

 

しかし其所には何も無く。

 

水面(みなも)に写る月に、目が眩んだかな?」

 

既にペッパーが、自身の最も真髄を発揮出来る、決殺距離(キリングレンジ)に飛び込んだ瞬間だった。

 

致命刃術(ヴォーパルじんじゅつ)水鏡(すいきょう)(つき)】。斬撃並びに刺突属性武器を用い、繰り出す事が出来る此のスキルは、繰り出された攻撃判定だけを『敵の背後に移し変える』という、異色とも呼べる特徴を持っている。

 

実際にはダメージは無いものの、其のスキルの真価は敵の注目(ヘイト)を背後へ、自分という存在(・・・・・・・)を相手から隠す事にあり。其れ即ちリーチの有る武器を振るった場合には、少なからず再攻撃の為に武器を構え直さねばならない。

 

そして何よりも、リーチの有る両刃の長剣は中距離下では無類の強さを持つものの、超至近距離下では己の足を引っ張りかねない武器でもある。

 

「歯は無いだろうが、食い縛れよデュラハン!」

 

甲皇帝戦脚(エクスパイド.ウォーレッグ)を装備したペッパーが吠え、スキルを次々と起動する。超至近距離下での格闘ダメージに補正を掛ける『インファイト』、蹴りでの攻撃に相手への気絶効果を付与する『フルズシュート』、自身よりレベルが高くステータスが勝る相手との戦闘時に体力とMPを除いた上位3種のステータスに強力なバフを追加する『羨望合炙(せんぼうがっしゃ)』。

 

そして筋力を参照とした、強力なノックバックを叩き付ける『ストレングス・スマッシャー』の四種スキルによる超打撃が炸裂。

デュラハン━━━━━━では無く、デュラハンが乗っていた軍馬の横っ腹に、鎧の上から渾身のドロップキックを御見舞いした。

 

重ねられた攻撃・補助スキルによって、達磨落としの様に吹き飛ばされた軍馬は、ピンボール玉の様に飛んでいって渓谷の岩肌に激突、デュラハンは背中から地面に落馬する。フルズシュートによる気絶効果が付与され、更にストレングス・スマッシャーによる遠方への蹴り飛ばし(ノックバック)で、軍馬の方は暫く起き上がる事も出来ないだろう。

 

「さぁ、此れでタイマンだ。斬り結び合おうぜ、デュラハン!」

 

互いに体勢を立て直して即座に立ち上がり、己の獲物を用いて斬り合う。刃と刃がぶつかり合い、鳴り響く金属の音色が、嘗て此の地で行われた戦いを、記憶を思い出させるかの様であり。

 

そんな斬り合いの最中、デュラハンの剣先がペッパーの首を狙い、一点集中による刃の切っ先が、彼の首筋に届かんとした時。突如ペッパーの身体がゆらりと揺れて、剣筋の閃光を回避。直後に首無し騎士の胴鎧に、十字の斬撃が迸った。

 

「はははっ…ヤバいわ。まさかのスキルだ、コイツはよ……!」

 

ペッパーは先の斬り合う流れの中で、スキルを1つも使用していない。にも関わらず、あの時の首を狙ったデュラハンの攻撃に、ペッパーはレペルカウンターが間に合わず、そのまま貫かれると思った。

 

しかし其の瞬間、致命舞術(ヴォーパルまいじゅつ)月光円舞(げっこうえんぶ)】が、ペッパーの意思とは関係無しに自動で発動(・・・・・)。デュラハンの刺突を前に、月下に舞う踊り子の様な、可憐な身体捌きで刃を躱わして移動。相手にクリティカルを叩き込める、絶好の位置に陣取れたのである。

 

自身の体力を全損させる攻撃に対して、自動発動する此のスキルは、謂わば『オート回避スキル』━━━反射神経の優れていないペッパーにとって、スキル自動発動&120秒の再使用時間(リキャストタイム)、多大なデメリットを抜きにしても、1回は『確実に避けられる』神スキルに等しい物だった。

 

「スゲェな月光円舞!十字斬とかにも繋げたりしやすいし、気に入ったぜ!」

 

大金を払った価値が有ったと、エルクに心の中で感謝しつつ、デュラハンとの戦いに終幕(フィナーレ)をもたらすべく、スキル:オーバートップビートを起動して、最後の仕上げに取り掛かる。

 

デュラハンの両刃長剣が横に振り翳される。狙いはやはり首、そして解った事は此のモンスターの筋力は、自分よりもずっと高い事。まともに剣撃を受ければ、幾ら耐久力が高い黒鉄丸でも、折られないとは言い切れない。

 

「レーザーカジキから教わった事、やりますかね」

 

呟き、ペッパーがインベントリから取り出すは、エンハンス商会・フォスフォシエ支部で購入した、対アンデット特効消費アイテムの聖水。其れをスキル:ドライブスローでぶん投げ、十字斬に切り裂いて『裂傷状態』が付与された場所に直撃させたのだ。

 

傷口に塩を塗り付ける所か、裂傷を負ったアンデットに聖水をブチ込む諸行無常の一計に、デュラハンは苦しみ始めて攻撃行動(アタックモーション)が解除される。

 

「デュラハン。お前との剣撃対決、凄く楽しい時間だった。次に会う時は聖水無しで、お前を斬り倒してみせるぞ」

 

黒鉄丸を逆手持ちへスイッチ、十字斬によって出来た裂傷箇所と聖水で更に脆くなった胴体に、ラダースラッシュと致命剣術(ヴォーパルけんじゅつ)半月断(はんげつだ)ち】の重ね掛けで切り裂き、胴体を横一閃で真っ二つに両断。

 

直後に漸く気絶状態から復帰した軍馬が、己が主人を殺された事に怒り狂い、突撃を仕掛けてくる。

 

「案ずるな。せめて一撃で逝けるよう、全力の足技を食らわせてやる」

 

インファイト・フルズシュート・デュアルフリップ、ボディパージとストレングス・スマッシャーの、重ねに重ねた二連式回転蹴りで、宣言通りに軍馬を粉砕したペッパー。同時に、彼のレベルは2つアップして、様々なスキルが進化を行い、新たなスキルも並行して開眼していく。

 

「やっぱりレアモンスターだったのかな、あのデュラハン。まぁ、何にせよ…だ。遂に来たぜ、レベル40に!」

 

ユニーク籠脚たるレディアント・ソルレイア。設定された規定練度(レベルキャップ)へと到達した事で、彼は遂にティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスを相手取れる、其の領域に踏み込んだのであった………。

 

 

 






到達するは、レベル40の境地


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