仕事を知る事の意味
シャングリラ・フロンティアというゲームに置ける鍛冶とは、
NPCが作り出す傑作も在るならば、自分だって傑作を作りたい──────そうなるのは人間が持つ『自己顕示欲』だったり、他者よりも優れているとドヤ顔やマウントを取りたい『不純な理由』だったり、或いは
シャンフロの鍛冶は現実世界の鍛冶と同様に必要な物が幾つか有るが、大きく分ければ『より良くより上質な素材』・『使い熟した上質な鍛冶道具』・『超高熱の熱にも耐えられる熱加工を施す為の高性能な炉』、そして最後に一番重要な『鍛冶師本人の技量や技術』という、四本柱を用いる事で理論上は『己が望む武器を創り出す事は可能である』という結論が、シャンフロ鍛冶師プレイヤーの間で『暗黙の了解』として認知されている。
だが──────鍛冶師含めた生産職は、其れを究めんとする程に攻略の最前線から外れていく事になり、必然的に上質な素材を他のプレイヤーに採取か狩猟を
此迄は鍛冶師達の一つの
神代の遺物より其の時代の技術を紐解き、旧き時代の技術を現代の鍛冶にて証明する、鍛冶師系であり考古学系の隠し最上位職業『古匠』。
そして其の名匠と古匠………………二つの匠の名を冠する最上位職同士を掛け合わせて、初めて其の領域へと至れる『真の到達点』。
凡百の鍛冶師達の『頂点』にして『極致』、神代と現在の鍛冶の大いなる御業を以って、過去の英雄達の武器を蘇らせる者──────其れが『神匠』なのだ。
「………………という訳じゃ、解ったか?」
「とても勉強になります、ビィラックさん」
「まぁ要は『滅茶苦茶時間やら労力やら掛かるが』、最終的に神匠になっちまえば『勝確』って訳だ」
「そうですね………」
「奥が深いねぇ、鍛冶師って」
8/13、午後八時半。兎の国・ラビッツの兎御殿。
現時点で六人しか足を踏み入れていない此の場所で、ペッパー・サンラク・サイガ-0・ペンシルゴンは各々のパートナーのヴォーパルバニーや
理由は先日、此の国の大親分たるヴァイスアッシュ……………不滅の名を戴く最強種から託され、受け取った一式装備『
何より自分達の後ろではビィラックの父親たるヴァイスアッシュ其の人ならぬ其の兎が、まるで『授業参観』でもするかの様に立ちながら此方を見守っているので、
「おぅ、オメェさん等。ちょいとオイラに『付き合ってくれ』や、そう時間は取らせねぇよ」
ビィラックの話が一通り済んだ所で、ヴァイスアッシュが口を開いた。一体何が始まるんだと思いながら、彼が移動を開始したので付いて行けば、辿り着くは彼の鍛冶場であり。
「おぅおぅ、久し振りだからなぁ………。ちゃあんと動くかな、っとぉ………」
其処でヴァイスアッシュは『何か』を探し始め、最終的に引っ張り出して来たのは、見た目が『金属製の筆』と言うべきか、『蟹の足の様に開くギミック』を搭載した不思議な代物。
世界を知り得し旅兎王装の専用武器(?)たる『
唯一つ問題が有るとすれば──────
「「おご、おごごごごご……………!!?」」
「ブビビビ、ビビビビビ……………!?」
「ビィラック!?此の時点で気絶するの、メンタル弱過ぎじゃねーか!?」
「ビィねーちゃん!?エクシス!?泡噴いて倒れてますわ!?」
「ウォットホッグさん…………!」
其の摩訶不思議な筆を見たビィラックとエクシスにウォットホッグが引っ繰り返って、ボコボコと泡を噴き出し始めた光景に一式装備を受け取った時がデジャヴとして重なり。
「そうさな……………サンラク、ペッパー。おめぇさんが『此れぞ』ってェと思う奴の素材を出しなァ」
「ウッス、兄貴!!」
「はい、先生!!」
ヴァイスアッシュの好感度が高い事が理由か、突発的なイベントが発生。一先ずはビィラックとエクシスにウォットホッグを気付けして起こし、二人はインベントリアの素材達を吟味。
サンラクは以前シグモニア前線渓谷で回収した『トレイノル・センチピード・ドーラの素材』を、ペッパーはビィラックに頼んだ武器強化を踏まえても余った『アトランティクス・レプノルカの素材』を、其々取り出し抱えて彼に見せる。
其々を見て、先にトレイノル・センチピード・ドーラの素材に目を付けたヴァイスアッシュは、其の筆に力を籠めて握りながらも、軽く『スナップ』を効かせて振い。次の瞬間には素材達は独りでに『浮遊』し始め、彼の元へと集って行く。
「人は火ィは吹けねぇし、爪は丸っけぇ。軽く炙りゃあ悲鳴を上げ、呼吸が切れりゃあ溺れて沈む。つまりぁ武器や防具ってぇのは、持ってる奴等に『近付く為の物』だぁな」
筆を振るう度に筆先は虚空を舐め、トレイノル・センチピード・ドーラの素材達が『加工され始めた』のだ。
列車砲百足の巨大で強靭な甲殻や脚に砲塔を含めた素材達が、消しゴムで鉛筆汚れを消すかの様に削られながら、細かなパーツの一つ一つへと洗練され。
削れて砕けた破片達は小さな螺子へと変わり、パーツ達を繋ぎ合わせて武器という名の『器』を形作る。
「だが、遺機装ってぇのは『逆』だ。人が人の身で、獣の力を使える様にした
そう言いつつも、ヴァイスアッシュは其の手を止める事はせず、生物の有機的な形を持ったエンジンとも言うべきドーラの心臓部分は、粘土が捏ねられて別の形に成ったと思えば、先んじて作り出された器の中へと入っていく。
持ち手を、繋ぎを、そして機能を──────古匠の極致たる技術、
神なる鍛冶の御業の一端は、此の場に居る者達の前にて示され。出来上がった其の逸品の見た目たるや、『サンラクの背丈程の長さの奇妙な棒』という第一印象を抱く、赤と青の光のエネルギーラインが分けられ走る武器であった。
「サンラク、出来たぜぇ。此奴の
「ムカデシキタウゼント」
和風な名付けを主体とするヴァイスアッシュだが、此の武器のネーミングは一味違う様だ。続いて筆を走らせれば、ペッパーが抱えたアトランティクス・レプノルカの素材達が、彼の元にフワフワと移動しながら加工され始めた。
深海の猛者を噛み砕く下顎と骨は
かと思えば中程で分かれ、別の骨と炎雷器官が中間に畳まれるギミックを作り、斬撃を容易く弾く剛皮は繊維へ転じ、繊維は織られて糸と成り、糸は結われて強靭なる弦と変わって組み込まれる。
そうして完成した武器は、ビィラックが鍛冶師として新たなる境地に至らんとし作り出した、弓と剣のハイブリッドウェポン『
「完成だ、ペッパー。此奴はぁ暗き常闇の底に
「シャドウコウケンリヴィアタン」
サンラクの百足式 8-0.5もそうだが、鯱弩燈剣 RE:Vil∀=TAMなる弩弓剣もヴァイスアッシュが作り出した逸品の様で、ビィラックは二つの武器を其々直視から、ペタペタと彼方此方を触り始め、仕舞いには舐めるという奇行に走り出さんとした為、サンラクがチョップを加えて正気に戻させた。
其のビィラック曰く『神代製
「ジークヴルムとの決戦は、そう遠く無い内に『起きる』ぜ。オメェさん等──────確り『備えなァ』」
仕事を終え、そう述べたヴァイスアッシュに全員の背筋が震える。激励とも警告とも取れる声に、四人と四羽と三機に二匹の心に響いたのであった。
こうしてヴァイスアッシュによる一連のイベントを終えた後、サンラクはビィラックに
一同はエムルが開いたゲートを潜り抜けて、リヴァイアサンを目指す…………。
見聞きし記憶に刻む