VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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準備は何時だって大切である




決戦前には細心にして、最大限の備えを

「ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスに敗れた日から随分経ったが………漸く此処まで来たって感じだな」

 

レアエネミー・喪失骸将(ジェネラルデュラハン)との戦いで、レベルが40へ到達したペッパーは改めて、経験値がロブスター並みに美味しく、そして自分と戦ってくれた、首無し騎士に感謝と黙祷を捧げる。

 

そして近くの地面に突き刺さった両刃の長剣を拾い上げ、アイテムインベントリに仕舞いつつ、其の内容を確認してみた。

 

 

 

 

 

喪失骸将(ジェネラルデュラハン)の斬首剣

 

喪失骸将(ジェネラルデュラハン)が持つ、かつては強き力を持っていたのだろう長剣。今は朽ち果て、ただ力任せに肉を断つことしか出来ない。

 

記憶を、誇りを、愛すらも忘れた骸は己の首すらも失った。故にこそ、取り残された胴体は生者のみならず死者の首すらも狙うのだ。

 

対象への首に対する攻撃時、ダメージに補正が入る。

 

 

 

 

「自分は首を失ったから、お前も首を失えと?八つ当たりにも程が有るでしょコレ……」

 

錆び付き刀身がボロボロになっているものの、武器として存在しているならば、直してやる事が出来るかもしれないと、ペッパーはくすんだ刃を見つめながらそんな事を考えた。

 

「ビィラックさんに相談して、斬首剣の修復を御願いしてみよう」

 

オーバートップビートのデメリットが解除されるまで、暇になった彼は、試しに渓谷の地面や岩肌を、呪いを刻まれた右手で撫でてみる。掌にはヌチャリとしたスライムのような感触が伝わり、凄まじい不気味さで思わず手を離してしまった。

 

「うぇつ、滅茶苦茶やな感じ……臭いが残らなきゃいい……ん?」

 

フルフルと右掌を地面に振り、ふと真上を見上げた時、深い瘴気の霧の中で『何かの影』が、ペッパーの視界に映る。

 

「見間違い…か?でも動いたよな、今」

 

奥古来魂の渓谷の上に一体何が在るのだろう。ゲーマーとして、開拓者として、不変の興味が湧いてきた。しかしペッパーは知っている……未知に飛び込むには、相応の覚悟と慎重さも、必要不可欠な要素だという事を。

 

「………危険と感じたら、直ぐに逃げよう。あくまでも、己の安全が第一なんだから」

 

深呼吸を調えつつ、オーバートップビートのデメリット解除、並びに全スキルの再使用時間超過を待つ間に、エンハンス商会・フォスフォシエ支部で購入していた簡易食糧を食らってスタミナを回復し、持ち物と武器の耐久値をチェック。

 

解除と同時にペッパーは、ムーンジャンパーと七艘跳びを起動して、真上へと跳躍。岩肌をクライミングし、瘴気満ちる霧を抜け、登った先で彼が見たのは今まで見た事もない光景だった。

 

「何じゃこりゃ…………」

 

空を見上げれば雲一つ無い蒼天が、眼前に広がるは小さい物で人間の胴体、大きい物に至っては高層ビルサイズの、様々な太さと大きさの水晶が地面から生え、地表全てを覆い尽くしてしまう程の数で出来た、豪華絢爛に等しい煌美やかな絶景。

 

名を『水晶(すいしょう)巣崖(そうがい)』……奥古来魂(おうこらいこん)渓谷(けいこく)の真上に存在している、美しさ及び危険度MAXの隠しエリアであった。

 

「綺麗な場所だな……」

 

普通ならば探索をする所であるが、ペッパーのゲーマーセンサーが先程よりずっと、厳重警戒のサイレンを鳴らし続けている。崖を登る前に見えた影の正体も判らぬ状況に、完全初見の未知なるエリア。

 

ゴクリ…と固唾を飲み込み、アイテムインベントリより最後の投擲玉:炸音(試作)を取り出し、スキル:握撃で握って空に放り上げ。左手にギルフィードブレイカーを装備、野球ゲームの豪快フルスイングで近くの水晶にブチ当てた。水晶巣崖全域に天地を揺るがす轟音が鳴り響き、ありとあらゆる水晶を震わせる。

 

直後━━━━━あちこちの水晶地表が皹割れ、顔を出したのは透き通る白晶に包まれ、研ぎ澄まされた針にデストロブスター以上の鋏、鋭利な錐角の足達。成長途中の水晶であるかのような意匠が全身に施された、身体が半透明な全長10mは有ろう、巨大な蠍達が数十匹同時に現れた。

 

「よし、逃げよう!!」

 

レトロゲーマー・五条(ごじょう) (あずさ)。彼は此の日、ゲーマー人生史上最速の判断を下し、此方に雪崩の如く迫る水晶の蠍を前に、オーバートップビート・ボディパージ・羨望合炙(せんぼうがっしゃ)・ライフオブチェンジを同時起動。己の命を削りに削り、スタミナと敏捷を高め、更に耐久力を削って敏捷を高め、一目散に来た道を引き返し、渓谷の谷底に降りて、フォスフォシエのエンハンス商会まで逃げ帰った。

 

ペッパーは此の時の判断を、後にこう語ったという。

 

『あの日、水晶巣崖に突っ込んでいたならば、間違い無く俺は奴等に。『水晶群蠍(クリスタルスコーピオン)』にトラウマを植え付けられていただろう』━━━━━と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンハンス商会・フォスフォシエ支部でオーバートップビートのデメリット解除を行い、アイトゥイルと約束した高級葡萄酒と口直し用に濁り酒を併せて購入し、裏路地へと移動する。

 

「アイトゥイル~居るかー?」

「はぁ~い、ペッパーはん。ワイは此処に居るのさ~」

 

彼が呼び掛ける声に対し、風と共に現れて、何時の間にか肩に乗っかっていた風来兎は、クンクンと匂いを嗅いでいる。

 

「ほぉ~此れは此れは…前に買ってくれた葡萄酒と、濁り酒の匂い…どちらも良い香りなのさ」

「エンハンス商会で購入したんだ。兎御殿に戻って、ビィラックさんに渡したい物があってね」

「解ったのさ、ゲートを繋ぐのさ」

 

アイトゥイルがラビッツの兎御殿へ続く扉を開く。今一度辺りを確認して、素早く入って扉を閉じ、其の足でビィラックの仕事場へと向かった。

 

「ビィラックさん!両刃長剣を直して下さいッ!」

「おういきなり話をスッ飛ばすなやペッパー」

 

金床を研き、道具をメンテナンスしているビィラックが、飛び込んできたペッパーにそう言った。其処で彼は、彼女に解るように事情を事細かに話し始める。

 

自分は先程まで奥古来魂の渓谷に居た事、其処でリュカオーンの呪い(マーキング)が谷底に満ちる瘴気を無効化した事、喪失骸将(ジェネラルデュラハン)と新しく手に入れた黒鉄丸を使って戦った事、そして谷底の真上に在る水晶地帯に赴いて蠍達に追われ、フォスフォシエに直ぐに引き返した事を語った。

 

「ペッパーワリャ……本当に命知らずか。いや寧ろ直ぐに帰ったのは、慎重故の最善行動だったと言えるか……」

「ビィラックさん、あの蠍達は一体何なんですか?モンスターのように見えましたけど……」

 

ううむ…と唸るビィラックに、ペッパーが問い掛けると、彼女は溜息と共にこう答えた。

 

「はぁ………そりゃワリャ、水晶巣崖に住んどる水晶群蠍じゃけ」

「水晶群蠍?」

「そうじゃ。音や振動を感知して現れる、水晶纏った巨大蠍。見付かったら袋叩き所か挽肉にされて、わちとて漏れ無く死ぬ」

 

レベル98のビィラックが言い切り、ペッパーは目を丸くする。

 

「………もしかして、無茶苦茶強いのです?あの水晶蠍達って」

「オヤジには到底及ばん………が、其れでもエードワードの兄貴や、わちにシークルゥ、そんでアイトゥイル等で束になって掛かっても、1匹なら何とか成らんくも無いが、数十匹出て来られたら数の暴力で木っ端の様に、押し潰されるだけじゃな」

 

つまりレベル100以上に加えて、軍団による数的暴力で押し潰すモンスターだと判り、あの瞬間の判断に狂いは無かったのだと、ペッパーは心の中で思った。

 

「んでじゃ…本題の両刃長剣じゃたか。見せてみぃ」

 

アイテムインベントリから喪失骸将の斬首剣を取り出し、御願いしますとビィラックに手渡す。

 

「………成程な、コイツは『まだ』死んどらんけぇ」

「死んでいない?……じゃあ、治すことって出来ますか?」

「あぁ、炉と金床使ってやればな。で、どうするペッパー?コイツを『元の姿』にするか、もしくは『ワリャの扱いやすい』方に直すか。どっちにする?」

 

此処に来てまさかの二択が持ち込まれた。元の姿にしても良い、だが今の自分に見合った形にするのも捨て難い。少し悩んだ果てに、ペッパーはビィラックに向けてこう言った。

 

「自分に見合う姿にして下さい」と。

 

「うむ、承った。1日くらい経ったら受け取りにくるけ」

「あ、あとビィラックさん。此の太刀の修繕に、以前手に入れた機構を預かって欲しいのと、預かっていたレディアント・ソルレイアを持って来て良いですかね?」

 

アイテムインベントリから喪失骸将との戦闘で耐久が削られた黒鉄丸に、ビィラックとアイトゥイルにレーザーカジキと共に見つけた、空を翔ぶ為の答えの分かたれた3つの要素の1つたる機構を取り出す。

 

「……そうか、行くんじゃなペッパー」

「はい。ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスに、今の自分が夢を受け継げる事を、確りと証明してきます」

 

強く、そして揺るがない意思を宿す目を見て、ビィラックもまた機構と太刀を預かり、仕事場の奥へと赴いて。数十秒後にピカピカに磨かれた、レディアント・ソルレイアを持って来て、ペッパーに言った。

 

「解った…。じゃが、決して無茶はするなよ?」

「………はいッ!」

 

二体の甲皇虫のギミックウェポン、レディアント・ソルレイアを受け取ったペッパーは、ステータス画面を開いて、レベルアップによって獲得したポイントを振り分ける。

 

筋力と技量はレディアント・ソルレイアに装備出来るまで、器用と余った分は敏捷へと振り込み、準備は整った。と、アイトゥイルが肩に乗って来て、ペッパーに懇願するように言う。

 

「ペッパーはん。ワイはペッパーはんの戦いを、あの決闘場の外で見届けるのさ。だから……連れてって欲しいのさ」

 

仮に彼女を説得しても、きっと付いてくるに違いない。此迄共に色々な場所を冒険し、探索し、共闘して、何となくだが、アイトゥイルの気持ちが解ってきたペッパーは、彼女に向けて言った。

 

「あぁ、解った。俺と甲皇虫達の世紀の一戦、然と見届けて、先の時代に語り継いでくれ」

「!………解ったのさ!」

 

我ながら少し格好を付け過ぎたかと思ったが、上手くいったようである。アイトゥイルをマントの中に隠して、ビィラックの鍛冶場を後にし、兎御殿の休憩室からフォスフォシエへと繋がる扉を開く。

 

時は此処に満ちる。あの日に戦い、そして敗れた、風雷の化身達へのリベンジの刻が訪れる。意志は強く、心は熱く、ペッパーは決戦の地へと走り出した………。

 

 






夢を受け継ぐ勇者よ、風雷の化身を超えていけ






ペッパーの現時点のステータス


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PN:ペッパー


レベル:40
 

メイン職業(ジョブ):バックパッカー
サブ職業(ジョブ):無し

 
体力 15 魔力 10
スタミナ 90
筋力 85 敏捷 95
器用 45 技量 70
耐久力 61 幸運 25

 
残りポイント:0



装備

左:無し

右:リュカオーンの呪い(マーキング)

両脚:無し


頭:蒼零のヴォージュハット(耐久力+13)
胴:ブラッディスカーの長ラン(耐久力+18)
腰:ブラッディスカーのベルト(耐久力+12)
脚:蒼零のスートズボン(耐久力+15)



アクセサリー


・鎖帷子(耐久力+10)
・旅人のマント(耐久力+2) 
致命魂(ヴォーパルだましい)の首輪

 

所持金:1,035,400マーニ


致命極技

致命極技(ヴォーパルヴァーツ):太刀型(たちがた)晴謳(ハレウタイ)】……未解放
致命極技(ヴォーパルヴァーツ):闘撃型(とうげきがた)那由多(ナユタ)(ワダチ)】……未解放


致命武技

致命剣術(ヴォーパルけんじゅつ)半月断(はんげつだ)ち】→致命剣術【半月断ち】参式
致命鎚術(ヴォーパルついじゅつ)満月押印(まんげつおういん)
致命刃術(ヴォーパルじんじゅつ)水鏡(すいきょう)(つき)】→致命刃術【水鏡の月】弐式 
致命柔術(ヴォーパルじゅうじゅつ)三日月巴(みかづきともえ)
致命舞術(ヴォーパルまいじゅつ)月光円舞(げっこうえんぶ)】→致命舞術【月光円舞】弐式


スキル


・ラダースラッシュ→サイスオブスラッシュ
命尽突(めいついとつ)
・レペルカウンター
・ドライブスロー→ブーメランスロー
・アルゼイドエッジ
・メイアスワーク
・ボルベルグストライク
・グラシャラスインパクト
・ストレングス・スマッシャー レベル1→レベル5
・オーバートップビート
・インファイト レベル1→レベル4
・七艘跳び
・スケートフット
・ジェットアタック
・十字斬 レベル1→レベル3
・バリストライダー
・アクタスダッシュ レベル5→レベル6
・ステックピース レベル4
・握擊 レベル3
・投擲 レベル4
・クライムキック レベル5→レベル7
・首断ち レベル3→レベル5
・ムーンジャンパー
・ボディパージ レベル3→レベル5
・ライフオブチェンジ
・ストレートフィスト
・背面蹴り レベル4
・デュアルフリップ→トリスフリップ
・フルズシュート レベル2→レベル5
・オプレッションキック レベル3
命撃鐵破(めいげきてっぱ) レベル1
一撃絶壊(いちげきぜっかい) レベル1
羨望合炙(せんぼうがっしゃ)
・挑発 レベル1
壱心(いちしん)()(ざん) レベル1
深斗(しんとう)()(すい)
連刀(れんとう)()(じん)
(ばつ)()(ざん)重連(ツラネカサネ)
 

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