何処に居る
「何処だよ、ルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体ッッッッ!!!」
ユニークシナリオ【太古を知る小鎚、迷宮の闇を裂く戦斧】クリアの為に訪れた、
嘗て味わったレトロ探索ゲームの『妖怪一足りない』や『乱数の女神』に嫌われまくって、目当ての物を出すまでにリアルタイム換算で『およそ一週間』要した苦い記憶が蘇り、脳を震わせ始めている。
「いや落ち着け、こういう時こそ落ち着くんだ………。イベントフラグ出て来ないなら一回脱出して、乱数をリセットするんだ………。うん、そうだ、そうしよう、其れが一番大事なんだ………」
元来た道を舞い戻って再び迷宮内へ足を踏み入れれば、確かに先程入った時とは全く違う雰囲気を漂わせる迷宮へと変わっている。再び踏み出し、迷宮内のルートを一つ一つ確実に潰す様に探しながら、何処にフラグが存在するかを探し続け。
「……………もしかして遭遇条件、ルートエンドミノタウロスの持ってる武器全種入手か?或いは一定数の撃破?其れとも両方だったり…………?いや、ランダムエンカウントって可能性も有る、よな…………?」
『思考が混濁し始めているならば、一度思考を置き換え直すべし』──────其れがゲームをする時に、梓が心掛けている格言でも有る。
ミノタウロスと言えば御伽噺でも有名な存在、神の怒りによって産まれた牛頭の人間にして、ラビリンスに閉じ込められた怪物、そして勇者によって倒された悲しき者。
「…………『女状態』か『勇者武器装備状態』で、遭遇率が上がるとか、かな?取り敢えず試してみよう」
青の聖杯で性別反転し女アバターへ、取り出した
『ブォルルルルルル……………!!!』
見付からない時は盛大にグダるのに、見付かる時はアッサリ見付かるって、所謂『ゲーマーあるある』だと思う今日此の頃。
迷宮の行き止まりの最奥に辿り着いたペッパーの前には、身体中に痛々しい傷痕が無数に刻まれ、右側の角が根元から折れて左目は刺突武器で潰されたと思われる、一匹の『ルートエンド・ミノタウロス』が居り。
然して此の迷宮内に存在するモンスター達の骨で作った肩当てや、急所となる首や心臓に股間周りを毛皮、嘗て此の迷宮に挑んで倒されたNPC達の鎧を『力技で曲げて』、膝や肘に装備し其の身を守る、今まで遭遇した個体の中でも『頭一つ抜けて』デカい個体だった。
其の手には此の牛頭人と共に、数多の強敵や幾度の死線と修羅場を越えたと解る、血濡れて黒ずんで尚も色褪せる事の無い巨大で鈍重な『ダンジョンアックス』が握られて、相対した者を一撃で屠る事すら容易だと、そう此方に告げている。
『ルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体に遭遇しました』
ユニークモンスター・エンカウントとは異なり、されどユニークシナリオ攻略必須の存在との邂逅を報せる、システムウィンドウの表示がペッパーの目の前に現れる。
おそらくルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体との遭遇条件は『ユニークシナリオを受注後に参姿翠冥の地底迷宮に赴き』、『女性状態で行き止まりルートの最奥に辿り着く事』が此のシナリオを進める為に必要不可欠なのだろう。
男性アバターの場合は『クターニッドのユニークシナリオを突破して青い聖杯を入手する』か、ベヒーモスで『アバターリビルドで女アバターに改造する』かの二つのルートが存在。
前者は早い者勝ち&七日間の拘束&ユニークモンスター撃破という難題になるが、ユニークモンスター撃破時のポイントや報酬の確保が可能で、後者は入場条件としてレベル50以上が必須な代わりに、第一階層で確実にリビルド出来るという速さ的なメリットが有る。
何方も一長一短だが、ユニークシナリオ受注と女アバター状態になれば『確実に遭遇』出来るという一点が在るので、やろうと思えば誰にでも可能な点を踏まえれば、此のユニークは『再現可能』との見方も出来るのだ。
『ゥブォオオオオオオオッッッッ!!!』
「ッ、咆哮………怯ませる気か?!」
先手はルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体──────長いので『歴戦タウロス』とするが、初手に繰り出したのは『赤いエフェクトを纏った咆哮』を叩き付けてきた。
どうやら此の咆哮は『デバフを搭載している』らしく、リュカオーンの愛呪で其の影響は相殺されてたが、歴戦タウロスは元より怯ませられれば上等とばかりに『割り切って』、闘牛じみたモーションと共に三足突進を開始からのダンジョンアックスを振るって来る。
「受けるのは悪手ッ!」
ゆっくりと流れ出した世界の中、一撃受ければ消えてしまう脆弱ながらも『実体の感触と遜色が無い残像が切り離され』、ペッパーは其の場から退避しつつイーディスを収納した直後。
歴戦のダンジョンアックスが振り抜かれて残像は消え去り、歴戦タウロスが地面をガリガリと削りながらにUターンを挟みつつ、ペッパー目掛けて再び接近してくる。
「ハァッ!!」
ダメージを負ったが此の程度ならばと割り切った歴戦タウロスは、振り返り様に己へと挑んだ女が持つ『其れ』を──────一見すれば『通常の剣の作りとは異なる』何処か大剣に近しくも片手で持てるギリギリを追求し、まるで『自分の知らない秘密を隠し持っている』と思しき、黄金の大剣を左手に握って構えて居たのを。
そして右手には黒々とした美しい光沢を含む、六角形の…………己の記憶の限りでは『此処では見た事の無い未知なる鉱石』と見抜いてか、警戒心の元にダンジョンアックスを構えてフォームを取る。
「さぁて、
右手に持った鉱石を左手に握った剣に翳し、其の剣の持ち手たる柄と剣身の間に在る、
ゴリッ!ゴリッ!と──────。まるで『捕食される』様に音が鳴ったかと思えば、同時に剣の黄金の輝きは『黒大理石』の如く染まっていき、軈て『美しい黒に澄んだ剣刃』へと変貌を遂げたのである。
「ビィラックさんが作り出した、超逸品の
そうして空いた右手、其処に装着された革手袋を己の鳩尾に叩き付けた瞬間、全身からモクモクと──────真っ白な『雲』が産み出されて、其の身をふっくらと纏われた事で『鎧』の様に変わる。
「其れじゃあ……………始めようかァ!!!」
美麗なる黒の大剣へと変貌した其の鋒を向け、背中より生えた『二本の雲の腕』が大剣を支えながら握る。此れよりペッパーと歴戦タウロスの戦いは、熱を帯びて苛烈へと転じていく。
見せるは皇なる弩弓剣