VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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続く戦い




英雄に必要なのは、栄光よりも苦難や苦戦

「いやはや、参姿翠冥(さんしすいめい)地底迷宮(ちかめいきゅう)で金塊拾ってた時に胡椒さん見付けたのは僥倖だったけど、まさかルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体ってのが居たとはね……………」

「そんな事よりさっきから変形してる、あの金ピカ武器何なの……………???」

「此処までで判明してるの、雑種剣に双斧と双銃、魔法弓に大長剣…………あ、糸が生えて今度は弓に変わった」

「可能性無限大かアレ………?」

「なぁ、()()()()()()。アレどう見るよ?」

「……………見立てだけど、アレは多分『魔力を消費して変形してる気がする』。で、ペッパーが視線で右手の撃鉄シリーズ…………、だっけか?其れを確認してる辺り、アレが変形武器の『肝』の可能性…………って何だよオマエ等其の表情」

「…………お前随分『変わった』よな」

「前の頃とじゃ大違いだよ。見る目がだいぶ『肥えてる』って思うわ」

「何が有ったんだ?」

「…………対人戦の醍醐味を『漸く理解出来た』、そんだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体との戦闘開始から、約一時間近い時間が経ちましたが………相手方は未だにピンピンしています。

 

此の歴戦タウロス自身の体力と肉体耐久其の物が『とんでもなくタフ』なのか、其れとも致命傷に成り得る攻撃を『ピンポイント』で避けられているからか、はたまた『其の両方』の要素で成り立っているのか。

 

何れにしても決定打となる攻撃は回避され、多少ならば受けて良い攻撃は力技で変形加工した鎧の肩当てや肘当て、毛皮を纏った部位で受けつつ反撃に繋げる、所謂『高性能高耐久のタンク』とも言えるモンスターだろう。

 

此の手の相手を切り崩すのは一筋や二筋、或いは三筋縄でもいかないのが厄介極まりない。

 

(此の感じ…………アレだ、深淵のクターニッドさんの最終形態(想像態)金晶独蠍(ゴールディー·スコーピオン)"黄金世代(ゴールデンエイジ)"を彷彿とさせる、高レベルの『ダメージコントロール』の使い手だ)

 

最終形態でプレイヤーの戦闘スタイルをコピーするといった行動と、其の前の形態で取り込んだモンスター達の影響で『兎にも角にも強靭』だった七つの最強種(クターニッド)。鋏の形状を状況に対応する様に切り替えて、全射程下に置ける無数の攻撃手段を保有する、水晶群蠍(配下)達を総べし金晶独蠍の不世出個体(皇帝陛下)が脳裏に浮かぶ。

 

(其れに此のバトルフィールドの出入口で此方を見てる『複数の気配』、一つは…………『クオン』か。新大陸行きの船に乗れなかったのか?)

 

そんな事はどうでも良い、重要なのは此の歴戦タウロスに仕掛けた『釣り餌』を如何なるタイミングで切るか……………である。一時間近い戦闘が続けば、自ずと相手の挙動や癖も判る。そして其の要素が揃えば、攻略に繋がる糸口も見付かるという物。

 

「じゃあ、やるかぁ!!」

『!』

 

雲の羽衣を纏い、何度目かになる加速と接近。こうも『しつこく見せていれば』、相手も大振りの武器で当てるタイミングを掴めるという物。歴戦タウロスが振りかぶった大斧に、右手をガッチリと固めて拳の耐久を爆発的に高めるアルテア・メダリオンフィスト、窮極致超越(アレフ・オブ・トランジェント)で体力を5%まで減らして肉体耐久を強化。

 

そして駄目押しとばかりに、肉体耐久を三倍にして破壊属性の影響を三分間受け付けなくする不世出の奥義(エクゾーディナリースキル)守示貫鐵(ファースリィオ)を点火し、幾時の修業によって至った(いわお)をも砕く超硬化が施された右拳を、歴戦タウロスが渾身のパワーで振るった歴戦の戦斧の刃へと当てに行く。

 

ゴギャリ!と鐵と鐵がぶつかり合う鈍い音が鳴り、ペッパーの右拳が歴戦タウロスの戦斧を受け止めて。

 

「い!まっ、だぁあああ!!!」

 

右拳を引っ込め、其の威力を受け流しながらに変流式回転防衛(ブレイヴ・コークスクリュー)で回り、雑種剣形態(バスタードモード)とした宝鍠趙弩剣(シャガル=ニュア)で歴戦タウロスの手首を僅かに斬る。

 

しかし其の斬撃を受けど、手首に纏った防具が守って斬り分かれ、僅かに薄皮を裂く程度に留めたのを見た歴戦タウロスは、其れを軽症と断じて空いた腕を振るい裏拳を叩き込まんとし──────

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()、歴戦タウロス」

 

 

 

 

 

 

 

──────其の回転が突如として『静止』から、爪先が地面に接触しての『逆回転』へ変わるや、歴戦タウロスの裏拳がペッパーの顔面に減り込みながらも、剣を逆手に持ち直した彼女()がダメージを是として繰り出した、逆回転による逆手一閃が手首を斬り裂いた傷口をスルリとなぞって。

 

次の瞬間に歴戦の大戦斧を握った手首はズッパリと斬り飛ばされ、ルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体は驚愕からなる目を丸くし、時間差を以て襲い掛かった斬り落とされたという事実を味わい、苦痛と憤怒に顔を歪めたのだ。

 

行ったのは変流式回転防衛による回転エネルギーを、神律燼風(しんりつじんふう)のスタミナ消費による相殺を用いた急停止、片足が地面に設置し着いた瞬間に高複臨機脚撃動(トリップリング・エース)による逆回転へ移行。

 

裏拳の直撃を回転して威力を弱め、封雲の撃鉄(タイタントリガー)(スペリオル)の物理攻撃耐性とリジェネ効果、窮極致超越及び守示貫鐵のスキル効果で得られた肉体耐久を信じた『ダメージコントロール』。

 

そして再使用時間(リキャストタイム)を超過して再使用可能になった速秀界心眼(クロック・フィルム)で制御した超速度回転と、致命秘奥(ヴォーパルひおう)【タチキリワカチ】改備(あらためぞなえ)で手首に作った斬傷に重ねて斬る事で、ルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体の手首を斬り落としたのである。

 

「っぐ………結構『クるな』………!」

 

だが此程までの行動を取ったペッパーも、何の代償も無いとは言えなかった。敵の攻撃を確定パリィにする程の回転から発生するエネルギーをスタミナ消費で止め、其処から逆回転へと繋げた事で身体の各所や三半規管が悲鳴を上げている。

 

スキルで肉体耐久を高めて居なければ、着地次第では足首を挫く所か身体中の関節が捻れて外れたり、最悪の場合に回転エネルギーに関節が耐えられず『引き千切れる』事態も置きていただろう。

 

守示貫鐵はあくまで『敵の攻撃による破壊属性や装甲破壊を受けなくなる』のであり、自分の自傷行動による破壊には意味を成さない上にリジェネで回復するのは原則『体力のみ』で、関節等のアバター関係は『専用の回復薬』や『復活アイテムで復帰する』以外に方法は無いのだ。

 

片や利き手を斬り落とされながら、もう一方の手でダンジョンアックスを握り締める、ルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体。

 

片や突発的な回転加速や逆回転へのシフトチェンジで、アバターの節々が悲鳴を上げながらも、無限の可能性を宿した皇金の弩弓剣(アーチブレイド)を握り締める、ペッパー・天津気(アマツキ)

 

両者のボルテージは高まり、戦局は大きく動こうとしている……………。

 

 

 






決着へ向けて


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