勝つ為に
其れはまるで、御伽噺の一幕の様に。
其れはまるで、英雄譚のクライマックスを彩る様に。
其れはまるで、怪物同士の死闘を顕現するかの様に。
其れはまるで、暴威を振るい翳す巨大な戦嵐の様に。
其れはまるで………──────
『ヴォアアアアアアアアアアアアアア!!!』
戦斧が薙ぎて風を生む。
「ああああああああああああああああ!!!」
黄金の閃が斬り切り舞う。
片や重量と一撃必殺、片や手数と回転率。
両者異なる武器による、両者異なる戦闘方法の激突。
歴戦の牛頭巨人は多少の被弾を是として、致命に成り得る攻撃を受けぬ立ち回りの中で、虎視眈々と己の一撃を叩き付ける絶好の機会を伺い。
黒の衣装と帽子を被り白雲の羽衣と巨腕を生やし、女の姿へ変わっている勇者は敵に攻め入る隙を与えず、敵を絶命へ追い込む瞬間に備えて戦略を頭で練る。
(雲の腕の制御も良くなってきた!ダルニャータさんは良い仕事をしてくれた!後は俺自身が此れを確り使い熟して、歴戦タウロスを倒す!!)
何より此の手の相手に此れ以上の手札開示は悪手!故に此方も『初見殺し』を叩き付ける!
腕が四本に増えるというのは『武器を持てる数が増えたり』、空いた手腕で『別の行動を取れたり』と通常の挙動に+αを組み込んでの戦いを可能にするが、腕が複数生えた所で人間の脳は一つのみ…………其れを十全に扱うという事は脳がリソース処理に追われて『本来出来た挙動』が覚束無くなる所か、敵に明確な隙を晒し得る可能性も引っ付いて来る。
故にこそペッパーは其の対策として、最初から何をやりたいかを『最終目標』として定める。其の目標の為に『本命のプラン』と『リカバリーの為のサブプラン』を幾つか用意し、目標達成に『必要な道筋を戦闘中に構築して進む事』で、思考を邪魔する
「『今からお前を二射してブチ抜く』!『くっ付け』、『開け』、『糸を張れ』!」
左手でインベントリアを操作し取り出した
無論、其の進路上にはルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体、片手をペッパーの回転斬撃に斬り落とされて隻腕となりながらも、残った無事な手に歴戦の
「だがッ!俺はッ!速く──────なる!!!」
初手の咆哮を警戒して温存していた
更には加速による突撃が鳩尾に頭突きとなって直撃、自身の予測以上の超加速で完全に不意を突かれた事で、歴戦タウロスは矢の代わりに放たれた剣とペッパーのヘッドタックルで吹き飛び、ダンジョンの壁に叩き付けられて張り付けとされて。
「んぐぉおオオオアアアあああああアアアアアアアアアあああああアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああ!!!!?!?『閉じろ』ッッッッッッッッッッッッッッッッ!!??」
突貫頭突きによる吹っ飛びだが、反動による自傷ダメージは一定以上の幸運を所持している為に確定で食い縛りが発動、体力1で踏み留まりながらに空中でのモーション補助スキル
宝鍠趙弩剣を言靈で、金弓宝剛剣を雲の指で剣に戻すや、
空中で踏み留まり、世界に敷かれた最高火力を示す道筋をなぞって、一歩目の超加速でルートエンド・ミノタウロスの鎖骨の位置目掛けて、二振りの弩弓剣の鋒を
しかし其の一撃を受けて尚、歴戦タウロスは耐えて──────
「残念だけど…………此れでチェックメイトだ」
そう告げたペッパーの空いた両手は、己の胸部に突き刺さった二本の剣の柄を握り締め。グローイング・ピアスから進化して鋒を捻る事で剣を通じて回転エネルギーが増大する、アレクトール・ピアスが四箇所同時に炸裂。
時計回りと反時計回りの二転ずつ、計四転の回転エネルギーが迷宮牛頭人の体内で肺と心臓に骨を捻じ曲げ、万力に身体が轢き潰される感覚と共に、口と鼻に目や耳から赤い血の如くエフェクトを噴出させながら、其の巨体は遂に膝を突き。
其の手から戦斧は離れて、ダンジョンの地面に突き刺さり──────四本の剣が引き抜かれ、ペッパーが離れたと同時に雲の羽衣の鎧は消え、二振りの弩弓剣も地面に落ち。右手の呪い相殺のタイムリミットが切れ、雑種剣の装備も出来なくなった中で、ルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体は地面に倒れ伏して……………二度と動く事は無かった。
「……………ルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体。数多の挑戦者を屠り、己の武勲を唯の身一つで証明し続けた古強者よ。再び相見える事が有るならば、また最高の戦いをしよう」
ペッパーの御礼口上と同時、ルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体を構築したポリゴンは爆散、同時に歴戦個体が持っていた得物と、片欠けの角がドロップアイテムとしてドロップして。
彼の前にはユニークシナリオクリアを告げる、リザルト画面が表示されたのであった……………。
『ユニークシナリオ【太古を知る小鎚、迷宮の闇を裂く戦斧】をクリアしました』
『ユニークウェポン【歴戦のダンジョンアックス】を入手しました』
『アイテム【迷宮牛頭人の積戦剛角】を入手しました』
激闘決着