VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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激闘を終えて




三人揃えば文殊の知恵、数人揃えばファランクス

本気(マジ)で疲れた……………其れが今現在のペッパーの心に宿った率直な感想である。高速戦闘+高度な行動の読み合い+複数の腕を同時に使うという、普通の人間でも脳のオーバーヒート不可避な戦闘で『頭オカシイ』と言われても仕方無い事をやったと、時間差でペッパーは認識し始め。

 

其れは其れとして、激闘を戦い抜いた武器達をインベントリアへ収納し、ユニークシナリオのクリア報酬たる『歴戦のダンジョンアックス』と『迷宮牛頭人の積戦剛角』を拾い上げる。

 

「此れで色々出来る訳だが、果たして何になるのやら…………」

 

ビィラックは此のダンジョンアックスを用いる事で、アーテクレイブレイカーは大戦斧へと至ると言っていたが、一体どうなるのか気になる所。小鎚から大戦斧への武器種変更は彼女に任せるとして、戦利品達をリヴァイアサンで獲得したインベントリアに収納から、複数の気配を感じ取った出入口の方へ向く。

 

気配を殺して隠れ潜んで居る様だが、生憎其の手に対抗するスキルは保有済みに付き、さっさと使うに限る。黒狼の鋭眼(アーテオル・ガウス)闘心狼魂(ウルフェス・アーハン)清明界玉到観(クリスタル・アドバンテージ)界域を見定む眼(ターゲ・ザ・ワールド)の四種スキルで参姿翠冥(さんしすいめい)地底迷宮(ちかめいきゅう)内部を透視しながら見定めれば、壁沿いに背中で張り付いている『オルスロットや複数人のプレイヤーの姿』が、視界内にハッキリかつクッキリと映る。

 

「さて………。あーあー、其処に居るのは何方様で?えーっと…………『オルスロット』に『ケッチャム』、他にも『ラス』『ブランチ』『レミー』。もしかしてオルスロットのゲーム仲間?」

 

万が一に備えて封雲の撃鉄(タイタントリガー)(スペリオル)を鳩尾に叩きつけて起動し、彼等彼女等が居る方に視線を向け、一人一人プレイヤーネームを呼んで声を掛ければ、全員ビクッ!と驚きからか跳ねた。

 

おそらく『何で此方の状況判るの?!』とでも言いたげな表情をして居る事から、此方が何らかの方法で相手の様子を目視確認可能な事に気付いた様子……………まぁ発動した四つのスキルの半分は、暗闇に生きて夜を駆ける七つの最強種(ユニークモンスター)・夜襲のリュカオーンの寵愛から成る賜物なのですよ。悪く言えば一方的と言うか。

 

完全にバレて仕舞っては、折角の奇襲を仕掛けるアドバンテージも無に帰すし、元PKクランとして名を馳せた『阿修羅会のメンバー』で有れば、状況は尚の事理解出来る筈。此処で襲い掛かって来るなら全力で抵抗してやる…………と思っていれば、観念したのか暗闇からゾロゾロと姿を見せるプレイヤー達。

 

オルスロットは前回の貧相な格好から一新して『忍者らしき姿』を、残り四人はベヒーモスでリザルトを稼いで、第六階層の武装関連で身なりを整えただろう格好をしている様だ。

 

「久し振り、オルスロット。千紫万紅(せんしばんこう)樹海窟(じゅかいくつ)以来だね」

「あー………うん、久し振り」

 

身なりに関してはプライベートも有るのだろう事を踏まえ、彼には『とやかく』聞かない様にする。何せオルスロット………天音(あまね) 久遠(くおん)は自分の身の回りをしつこく聞かれたり、姉の事について言われたりするのが嫌いなので、其処には極力触れない様に言葉を選んで会話を繋げる。

 

オルスロットの反応に四人は「知り合いか!?」といった様子で彼を見て、当の本人は困った表情をしたので此方から話題を切り出す。

 

「五人は金策目的で?」

「あ、えっと、はいそうです」

「金塊拾ってたら、偶然『胡椒さん』を見掛けたので」

 

女アバターのラスが答え、続いて男アバターのレミーが答える。目の動きから『嘘』を言っている訳では無いのが解るが、大柄な男性アバターのケッチャムとブランチは、脚の置き位置や肩の上がり方から、何かしらの『アクション』は取れる様にして居るので、此方を『警戒以上の心持ち』で臨んでいる様子。

 

「……………ペッパー、さっき使ってた『多重変形の武器』って何だ?何か話し掛けて変形してた、みたいだが………。あ、いや、………『気になるだけ』、なんだけど…………」

 

下手を打てば一触即発不可避の状況で、オルスロットが口火を切った。言葉遣い含めて年相応と言うか、素直な問い掛けに対して四人は目を丸くし。ペッパーは微笑しながらも、現物を取り出して語り始めた。

 

「………そうだね。さっきルートエンド・ミノタウロスの歴戦個体相手に使った武器の名前は宝鍠趙弩剣(シャガル=ニュア)って言う。此れを作る為に必要な物から言っていくと──────」

 

 

 

 

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ペッパー、説明中…………

 

 

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「……………という事なのだけど」

 

新大陸の地図を含めて事細かに、相手に解る様に説明を続けていたのだが、案の定というべきかオルスロットと四人のゲーム仲間全員は、脳のキャパオーバーが生じてフリーズし、唖然やら驚愕に彩れた表情になっていた。

 

「えっと、大丈夫………?」

「………コレの何処が大丈夫に見えるん?」

「まぁ、少々やり過ぎた。だが言った事は()()なんだよね」

「………マジカヨ」

「マジだよ」

 

そう言われても仕方が無いのは事実だろう。

 

『宝鍠趙弩剣の原材料として必要となる三種の蠍達と、加工する為に必須な黄金のマグマは何れもエンドコンテンツレベルの入手難易度を誇り、鍛冶師最上位職:名匠以上のプレイヤーかNPCを揃えられれば、誰にでも再現可能である』という事だ。

 

ペッパーの話の内容は超々々々難易度からなる、普通に考えて道程があまりにも険し過ぎると、五人が断ずるには充分過ぎたのだから。

 

「………よし、ちょっと待ってて。ポポンガさーん!」

 

彼等彼女等を改めて見て、一つアイデアを閃いたペッパーが其の名を呼べば、空間内に魔法陣は生まれて一匹の老ゴブリンが転移し現れる。五人にとっては初見、ペッパーにとっては見知った顔、他のユニークモンスター達と少なからず、しかして遠からず関わりを持つ『極星大賢者(スターラウズ)のポポンガ』である。

 

「えっ、何ソイツ!?」

「ゴブ、リン………?」

「おーおー、此処の若人達は反骨心が有るのぉ〜………」

 

杖を振って宙に浮かび、五人を品定めするかの様な視線を向けて淡々と言葉を紡いだポポンガに、ペッパーはインベントリアから『最高級の葡萄酒や熟成酒達』を取り出して、ポポンガへと献上しつつ彼へと願い出る。

 

「ポポンガさん、オルスロット達を『新大陸にファストトラベルさせてあげる事』って出来ますか?」

「「「「「え"」」」」」

「おぉ、良いぞ。任せんしゃい………其れとペッパーよ、もし此の迷宮から脱出するのであれば、少しばかり『気を付けた方が良い』。()()()()()()()()()………な」

 

言うが早いかポポンガは杖を振り翳し、ペッパーに()()を告げて。同時に彼を中心として、五人の足元に『特殊な転移座標移動門(テレポートゲート)』を展開する。オルスロット達が困惑して、ペッパーやポポンガに質問するよりも速く魔法が起動し、一瞬で目の前から消えてしまった。

 

(ポポンガさんの言葉…………。何かの『イベントフラグ』を、知らない内に踏み抜いているのか?)

 

一体何を意味するのかは解らずとも、一先ずは此処を脱出しなくては話にならないのは明白で。ペッパーは参姿翠冥(さんしすいめい)地底迷宮(ちかめいきゅう)のトゥエルレム側…………即ち自身が入って来た方角を目指して、移動を開始したのである。

 

 






大賢者が告げる


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