VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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梓の日常、そしてペッパーのリベンジへの最終準備



我、魂を鉄火に焚べ、復讐の一鐵と成らん

「ふぁぁ……ん――眠み………」

 

シャングリラ・フロンティアをプレイした翌日、梓は大学の講義の最中に大きな欠伸をして、眠気眼を擦った。

 

「特殊クエスト……か」

 

シャングリラ・フロンティアの特殊クエスト――彼が見つけた其れは、ログアウト後にゲームのwikiや関連ブログを片っ端から検索しても該当する物が一切見付からず、結局分からず仕舞い。

 

「…っといけない。講義を聞かなきゃ……」

 

『全部やりきってから後悔しろ』――――其れが梓の持つ格言である。ゲームの強制敗北イベントでも、梓はやれるだけの事をやりきって、胸を張って敗北しろのスタンスを取っている。

 

(クエストの先に何があるか知らないが、一つ一つこなしていけば、いつか答えに辿り着ける……其れを楽しめば俺の勝ちだ)

 

講義を聞き、時々ノートに記録し、大事と感じた場所に赤線を引く。至って普通に講義を受け、至って普通にキャンパスライフをエンジョイする。

 

其れが五条 梓の大学生としての生活である。

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

大学の講義が終わり、梓は大学近くのコンビニでバイトをしていた。

 

「梓君、新しい缶飲料届いたから商品棚に補充お願い」

「あ、はい!分かりました先輩!」

 

惣菜や弁当の売れ行き統計をチェックし、頼まれた物を冷蔵商品棚に補充していく。

 

「コーラ、お茶、カルピス…と。後は……『ライオットブラッド』、エナドリかぁ」

 

ライオットブラッド。一部のユーザー…もといゲーマーに爆発的な人気と根強いリピーターを誇る、ガトリングドラム社製の主力商品。

 

今自分が商品棚に並べている其れは、本家本元のライブラを薄めた物らしいのだが、どれくらいヤバいのか?と聞かれれば、一口で眠気は完全に吹き飛び、一缶で深夜労働さえ乗り越えられるという、明らかに違法だろうと思ってしまうレベルの代物だ。

 

しかし成分表示はしっかり合法であり、商品として通っている為、文句の付けようがない。と、コンビニの自動ドアが開き、開閉時のSEが鳴る。

 

「いらっしゃいませー」とだけ言い、アルバイトを続ける梓。と、此方に足音が近付いて、先程ライオットブラッドを入れた商品棚の前で足を止めた人物一人。

 

黒髪に整った美形の顔立ち、背は180に近い男の子で近くにある高校の制服を着ている。

 

「ちっす」

「いらっしゃい」

 

彼の名は『楽郎(らくろう)』。近くの高校に通っているらしく、時々来店してはスナック菓子や飲料を買っている。中でも特に彼のお気に入りなのが――――

 

「お、ライブラの新フレーバー出たんだ」

 

ライオットブラッド。まだ学生なのに、私生活大丈夫なのかと聞いてはみたいが、他者のプライバシーに関わる事ので、気になっても聞かないことにしている。

 

「好きだねぇ、ライブラ。俺も店長から一回飲んでみてって言ってくるんだけど」

「あ~…。滅茶苦茶キマリますよコレ、マジで最高」

「おぉ、そうなんだ……」

 

キマッた目で言ってくる彼が、少しだけ怖かったのは内緒。そして何時ものように買い物かごにライオットブラッドの缶を10本程入れて、レジへと歩いて行った。

 

「ありがとうございましたー」とレジを担当していた店員の声がして、開閉式の自動ドアが開き、彼は店を後にしていく。

 

「俺も頑張んなきゃな!」と再び集中し、梓もまたコンビニバイトに勤しむのだった。

 

 

 

 

 

 

翌日、梓は大学の講義を終えてバイト先のコンビニで飲み物とカロリーメイトを購入し、アパートへと帰還する。

 

「飲み物よし、カロリーメイトよし、トイレよし、水分補給よし。布団は敷いた、VR機材用意オーケー。準備万端、大丈夫」

 

周辺チェックと環境整備を整え、梓は2日振りのシャンフロにログインする用意を終える。

 

「ステータスの振り分けは頭に入れた。ログインしたらポイントを配分して、商店で素材の換金と『アレ』を購入。そして武器屋のおっちゃんに預けた武器を回収して、巌喰らいの蚯蚓にリベンジする…!」

 

頭に機材を装着、布団に寝転がった梓はシャンフロのペッパーとして、再び世界を開拓する者として飛び込んだのだった。

 

 

 

ログインし、ファステイアの宿屋の個室ベッドで目覚めたペッパーは、宿屋を出て自身のステータス画面を開く。

 

レベリングをしてからペッパーのレベルは12まで上がっており、ステータスポイントはレベルが3になってから1度も振り分けなかった事もあり、ポイントは45も残っている。

 

「さぁて、配分行いましょうか!」

 

自身の職業、バックパッカーの特性を加味しつつ、ペッパーはステータスを振り分けていき、最終的にこのようになった。

 

――――――――――――――――――

 

 

PN:ペッパー

 

レベル:12

 

メイン職業(ジョブ):バックパッカー

サブ職業(ジョブ):無し

 

体力 10 魔力 10

スタミナ 40

筋力 25 敏捷 35

器用 10 技量 20

耐久力 20 幸運 10

 

残りポイント 5

 

装備

左:無し 右:無し

頭:皮の帽子

胴:皮の服

腰:皮のベルト

脚:皮の靴

 

アクセサリー

 

・鎖帷子(耐久力+10)

 

1300マーニ

 

 

スキル

 

・スラッシュ

・刺突

・フラッシュカウンター

・ブームスロー

・スポットエッジ

・ステップワーク

・スイングストライク

・レイズインパクト

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「これでよしっと…」

 

ポイントを振り終え、ふぅ~とペッパーは息を吐く。今回彼は45あるポイントをスタミナと敏捷に15、技量に10振り分け、残り5ポイントを『万が一』に備えて残しておくことにした。

 

レベリングの最中、新しく覚えたスキルの『スイングストライク』と『レイズインパクト』は、対巌喰らいの蚯蚓(ガロックワーム)の切札となる打撃系統のスキル。

 

此等のスキルを如何に使い、ヤツを倒すかが鍵となる。

 

ペッパーは其の後、ファステイアの道具屋でモンスターの素材を換金し、物資を購入。其の足で武器屋を訪れた。

 

「おっちゃん、こんにちわー」

「おぉ、あんちゃん。よく来たな!ホレ、武器は直し終わったぜ」

 

耐久回復を頼んでいた白鉄の短刀と致命の小鎚が手元に戻り、アイテムインベントリに仕舞うと、店主は彼に問い掛けてきた。

 

「あんちゃんよぉ、もしかしてヤツに挑むのか?」

「!……はい、其の為の準備もしてきました。今度は勝ちます」

「そうか…なら俺ァ止めねぇよ。野郎にブチ噛ましてきな!」

「はい!行ってきます!」

 

店主の激励を受け、ペッパーはファステイア坑道へと向けて歩みを始めた。

 

全ての準備は整え、戦う為の策も用意した。

 

巌喰らいの蚯蚓(ガロックワーム)との一戦は、もう直ぐ其処に迫っている…………。

 

 

 




開拓者よ、己が死した過去を超えて往け
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