加速する風に乗って
「…………なぁんか凄い事になってるにゃあ〜」
其の者は夜空を、天覇のジークヴルムとペッパー・
「
レーザーブレスが飛び交い、ジークヴルムが蒼い炎に焼かれている。造られた構造上の特性故に焼かれた箇所は『再生』されど、其れ以上の手数でペッパーが斬撃を浴びせて削っていくのを、彼女は『スキル』で目視していた。
其れよりも、彼女にとって『厄介な問題』が有るとするならば。
「………どうして此処に居るのかなぁ『リュカオーン』ちゃんは」
ランダムエンカウントする筈のユニークモンスターの一体、夜襲のリュカオーンが何故か此の場所に居る事、其の眼差しはペッパーを見上げていた事、そしてどういう訳か『御座り』の体勢でジッと戦いを見定めていた事。
彼女は記憶を辿り、確かペッパーにはリュカオーンの寵愛の証が有るとの情報を思い出し、続け様に何らかの理由で他のユニークモンスターと接敵すれば、ペッパーの元へとリュカオーンがスッ飛んで来る事を悟ったのである。
「スクショ出来てるのは良いんだけど、さてさてどうしようかなぁ………」
ジークヴルムの視線からして、おそらく此方の存在に勘付いているだろう。リュカオーンは夜になればあらゆる場所に現れ、やろうと思えば一瞬で此方を食い殺せるだろう。
其れを含めてもペッパーvsジークヴルムという、此の一大マッチをディープスローターは見逃すのは損だとして、要所要所のシャッターチャンスに備えるのであった………。
黄金にして天を覇する最強種と、其の龍王を模倣した遠く嘗ての神代に造られた鎧を纏う男が、夜天月下の元にぶつかり合う。
『マナに反応し燃える剣と、五つ星の力を込めた剣の連撃!まるで『我を討ち取らんばかりの勢い』ではないか、ペッパー・天津気よッッッ!!』
「此処まで来たら『ヤケクソ』と言うか、もうやれるだけやり切る所存なんですけどねッッッ!!!」
ジークヴルムの灼滅の威吹を飛び越え肉薄し、左第二翼膜を斬り傷を刻んだ勢いでカーブ落下をしつつも、スキルの補強を加えた回転と共に左太腿を双刃で乱れ斬る。
空中戦をしている視覚強化スキルが発動している時に、地上で影狼と思わる夜襲のリュカオーンが御座りで見上げて居た事にも驚愕したし、其の近くには赤竜ドゥーレッドハウルや貪る大赤依との戦いを乗り越えたディープスローターの姿を目視したのも、ペッパーがヤケクソと述べた理由でもある。
そんな中で天覇のジークヴルムは、一つの『決断』を下す…………『其れ』はシステム的に封印されていた、ある『特殊行動』を発動する事を決めたのだ。
其れは本来『ジークヴルムは元々最低百人以上』で戦う事を前提として設計され、更に言えば『数百人単位のプレイヤーを相手取る為』に用意された物。
其れは天覇のジークヴルムを構築するAI………延いてはジークヴルムの
そしてジークヴルムがプレイヤー
『ならば
ジークヴルムの頭部に在る五本の角が、
「嘘でしょ!?」
『さぁ、どうする!』
「やってやらぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
本物と大質量分身のジークヴルム達が殺到する光景に、リュカオーンの分身達の殺到が
「くっそぉ、負けたぁ……………!」
まぁ、知ってた。
ジークヴルム六体の連撃は流石に対処するにしても困難を極めたし、五分飛び回った所でジークヴルム(本体)に蝿叩きの如く撃墜された中、
『クハハハハ………此の我とてまさか個人相手に龍王機関まで使わされるとは思わなんだ。フフフフ、フハハハハハハ!!』
体力は0になったのに、死亡判定によるリスポーンが行われていない。此れもジークヴルムの能力による物か、はたまた特殊なイベントによる物かは定かでは無い。
唯一つハッキリと解るのは、視線の先に龍王機関を使用したジークヴルムの表情が明らかに『疲弊の色』が映っている事だ。アレは『体力を減少させ続ける』タイプの能力なのだろうか?──────其れを加味しても未だにピンピンしている辺り、流石はレイドタイプのユニークモンスターと言われているだけ有る。
『本来ならば『我の傷』を与えても良いのだが、貴様には彼処に居る忌々しい犬の寵愛が在る故、弾かれてしまうからなぁ』
ジークヴルムの双眼がチラッと御座りをして居るリュカオーンを見ていた。リュカオーンも男と男の決闘を邪魔するのは無粋と考えたのか、其れとも見守る事こそが最善策と判断したのかは解らないが、よく介入せずに待つ事を選んだと思いたい。
『フム………良し』
そんな折、ジークヴルムは思考の果てに『答え』を出した様で、自身の腕を動かして右側の三本在る角の内、既に左側で消失している位置と対極に在る角を『自らの手で折り』、地面に倒れ伏したペッパーに差し出したのだ。
『我を模倣せし鎧を纏い、我の期待以上の強さを示した。其の強さと心意気に対する、我なりの
狂騒領域や龍王機関しかり、自分の能力に関係大有りな部位を渡すって、王様は随分豪胆と言うか恐れ知らずと言うか、そんな感情が湧き起こる中、視界が暗転し始める。
『ペッパー・天津気よ。我を模倣した鎧を纏い、武を証明せし蒼空を舞う勇者よ。
ジークヴルムが問い掛ける。其れに対する答えならば、もう既に決まっている。
「………今回
『──────楽しみだ。其の時を、我は心から待ち望むぞ!ペッパー・天津気よ!!』
暗転しデスポーンの感覚が襲い掛かる最中、ペッパーの目の前にはリザルト画面が表示されたのだった。
『勇者は龍王との戦いで、彼の
『言葉と想いは遠い日と刻を越え、気高き黄金へと紡がれる』
『アクセサリー【
『称号【龍王の好敵手】を獲得しました』
『称号【届きし想い】を獲得しました』
『ユニークシナリオEX【打ち立てし誓い、交せし約束を果たす時】が進行しました』
『龍王に覚悟を示す時来たれり!』
『
『決戦フェーズに置いて、天覇のジークヴルムのペッパー・
『決戦フェーズに置いて、ペッパー・天津気がB.I.G.値を大幅に高めた場合、天覇のジークヴルムのヘイトが一定時間集中する様になります』
(ユニークシナリオが進行しちゃったよ……………というより決戦フェーズって何?ジークヴルムのユニークシナリオって二部構成なの???其れに此のB.I.G.って何???ジークヴルム専用のギミックか何かなのか???後、龍王の好敵手って何?ジークヴルムさんにライバルって認められたの???
何か色々解禁されたんだけど…………要約すると『決戦フェーズで使え』って事だよね?)
そんな疑問を抱きながら、ペッパーはデスポーンの感覚と共にリスポーン地点へと巻き戻されていったのだった………。
龍王からの贈り物
※尚ディープスローターもジークヴルムにターゲッティングされ、一応十数分単位で持ち堪えたがブレスに消し飛ばされた。ユニークシナリオやら何やらも発生しなかったが、ジークヴルムに良い印象を残す程度には敢闘した。