VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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挑戦者達




既知なる知識を以て鍛冶の未踏に挑む、或いは未知なる発想より鍛冶の革新を起こす。其れ故にこそ進化への扉拓かれ、道は出来上がる

「リーダー…………『とんでもない事』になりましたね」

「まぁ、そうだな………」

「「「「「「「ペッパー(さん)さぁ………」」」」」」」

 

現実世界と遜色無く、物理エンジンしかりリアルと同じ現象が働く神ゲーのシャングリラ・フロンティアに在る、武器防具の生産や修繕に研究等を始め、鍛冶師プレイヤーの橋渡しを担う大手クランの一つ『ウェポニア』。

 

武器狂いと呼ばれる頭の螺子が外れた男『SOHO-ZONE』を首魁とする其のクランは現在、新大陸出張所という名の別拠点を構築し、他プレイヤーからの鍛冶や修繕依頼やらを受けていたのだが、今の彼等彼女等は『溜息混じりの驚嘆の声と雰囲気』が室内に染み込んでいた。

 

事の発端は昨日の深夜帯、日付も変わるまで後一時間近くの辺りに伝書鳥(メールバード)のフクロウによってSOHO-ZONEの元へと届いた一通のメール、差出人は此のシャンフロの世界で今現在最も名が通っている、彼の古い友人である『ペッパー・天津気(アマツキ)』からであり。

 

其の内容が──────

 

 

 

『A・B・C・Dの四つの選択肢から一つ選んで下さい。被りは無しで御願いします。其れと此のメールはイムロンさんとラピスさん、ホルヴァルキンに居る鉱人族(ドワーフ)のガンタックさんにも話をしています。何時も自分が御世話になっている古匠持ちの鍛冶師以外の、皆さんの最高の自信作を是非見てみたいのです』

 

 

 

──────という物だった。

 

古匠………シャンフロの数多の情報網の中で確認されたのは、イムロン以外に存在しない鍛冶師最上位職業・名匠の先に存在する、神代時代の技術を鍛冶の技として用いれる者。

 

シャンフロを初めて以降、様々な情報通との取引やら噂が流れて出回って以降からも集め続けて来た、土錆気た銃という遺機装(レガシーウェポン)の修繕と再稼働を可能にし、ペッパーとサンラクが手にしている甦機装(リ·レガシーウェポン)を製造可能な『隠し職業』たる其れは、武器防具を研究し解明をこそ好むSOHO-ZONEやウェポニアのメンバー達を始めとして、様々な鍛冶師プレイヤーに少なく無い影響を与えたのは記憶に新しい。

 

暫く考えたSOHO-ZONEは此れと思うアルファベットを選択(チョイス)して、其れから十分後にイムロンとラピスが新大陸出張所にやって来た所でペッパーが来訪、其々が選んだアルファベットを伝えた所、シャンフロ内の無限インベントリというべきアクセサリー『格納鍵(かくのうけん)インベントリア』から、其々に素材を。

 

イムロンには『帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)の素材一式にツァーベリル帝宝晶』、ラピスには『水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)金晶独蠍(ゴールディ·スコーピオン)の素材一式』、SOHO-ZONEには『トレイノル・センチピード種達の素材一式』が丸々手渡され、全員漏れ無く頭から引っ繰り返る結果となったのだった。

 

「しかもペッパーさん、よりにもよって『渡した素材で武器や防具にアイテムを作って、鍛冶師達で性能比べをしましょう』的な事言ってましたもんね………」

「ウェポニアの実力を改めて知りたいのか、其れとも別の意図が有るのか。………リーダー、ペッパーさんは何を考えてるんでしょうかね?」

「うーん………。ゲームの事になると『真剣(マジ)』というより、『本気(ガチ)』に近い感じでプレイするんだよね。後はジークヴルムとの戦いに備えたいんだろう」

「…………其の結果がトレイノル種の素材達だったと」

「因みに鉱人族のガンタックさんは、フォルトレス・ガルガンチュラの素材だとか」

「タンク職人権装備の原材料じゃん!?」

「良いなぁ…………人権タンク装備の素材で色々やりたいなぁ………」

「トレイノル・センチピード・ドーラの炉心酒臓………えっ、うそ、リソースが………、リソースが『650』も有るんだけど………?!」

「「「「「「「「「「「マジで!?」」」」」」」」」」」

 

トレイノル・センチピードの素材達を見ていたウェポニア所属の鍛冶師プレイヤーが、一番のレア素材だろう車のエンジンを有機的な物にした心臓の搭載リソースに声を上げ、他の所属プレイヤー達もギョッ!と言わんばかりに注目する。

 

そもそもシャンフロに置ける武器や防具の製作には幾つかの要素が絡んでおり、其の内の一つが製作に使用出来るモンスターや鉱石等の素材が持つ『リソース』が関係し、搭載されたリソースの()()()()武器や防具の『見た目』や『能力』に『追加効果』等のパラメーターを分配していく。

 

見た目を重視すれば性能は底辺やら効果の搭載出来なかったり、逆に性能や効果を追求すれば見た目がショボい事になったりと、武器防具の製作は常にリソースの分配にも左右される。一応だが、他の素材で補強すれば見た目や性能を補助する事は出来る物の、やはり一つの素材の持つリソースが高ければ高い程に、完成した武器防具の性能は『跳ね上がるのだ』。

 

「……………取り敢えず、だ。武器や防具にアイテムを作って欲しいとペッパーさんに依頼されたが、別に『何種類作ってとは言われていない』からね。量は相応に有るが、クオリティを踏まえれば『二〜三種類が丁度良い』。意見を出し合って、最終的には多数決を踏まえて決める方針で行きたいが………皆良いかい?」

「「「「「「「「「「「「意義なーし!!!」」」」」」」」」」」」

「では………だ。此れより、何を作るかの『武器種決め』と参ろうか──────!」

 

SOHO-ZONEの声によって、ウェポニア所属のメンバーの気配が『殺気立つ』。其れはある種のルーティン………新しい物を作る際に、ウェポニアで行われる恒例とも言うべき『武器種や防具のデザイン担当決めの戦争』であり。

 

「蛇腹剣が良いと思う!」

「チェーンソーはアリですか!?」

「砲身が伸びる大砲!!」

「此処は敢えての双剣で!」

「ガトリングガンッッッッッッ!!」

「ガンスミスライセンス持ってるから、ライフルやら狙撃銃やら作りたい!」

「蛇腹大剣!!」

「鞭!!!」

「籠手!!!」

「炉心酒臓で作るエンジンブレード!!!」

 

意見を出し合い、他者と比べ合い、時に流血沙汰になる程にヒリ付いて。………そうした果てに繰り出される『答え』が、ウェポニアの『総意』となって形作られた作品として、シャンフロの世界に『証明』されるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)………。ツァーベリル帝宝晶を食した事で其の身を変質させた、水晶群蠍(クリスタル·スコーピオン)の亜種個体………か」

 

格納鍵インベントリア…………シャンフロの中でもプレイヤーのインベントリの上限を、アクセサリースロット一つの永久的に潰す代わりにインベントリの収納上限による鈍重化を取り払い、装着者もインベントリア内に退避を可能にするという、何処ぞの猫型ロボットのポケットに等しい性能を持つ、ブッ壊れアクセサリー。

 

其のインベントリア内の格納空間内で単身、フワフワと浮遊している数多の帝晶双蠍の素材達を一つ一つ吟味し、装着者にして数千万人のシャンフロプレイヤーの中では現状唯一、鍛冶師職の最上位たる名匠と神代の技術を鍛冶に転用出来る古匠、そしてリヴァイアサンにてガンスミスライセンスを所得したイムロンは、極上の素材達を見ながらに思考を巡らせ続ける。

 

(昼と夜とで『異なる性質の魔力を放つ特性』………此れ見方を変えれば、ツァーベリルと帝晶双蠍は『二つの属性を持っている』って捉える事も可能なのよね………)

 

帝晶双蠍の最高レア素材・帝晶双蠍の双核宝を手に取り、イムロンは其れをジッ……と見つめ、徐ろに手放して浮かび上がった物を眺めて考えながら、頭の中で何を作るかを纏め始めた。

 

(サンラクさんからも『帝晶双蠍の素材で直剣・片手剣・双剣のどれかを作って』って依頼されてるのよね………。其れに『御抱の鍛冶師と性能比べをしたい』って話だから、どちらにせよ手抜きは許されない………)

 

ペッパーから依頼される数時間前に、サンラクからも同じく帝晶双蠍の核を使って武器を作って欲しいと頼まれたイムロンにとって、シャンフロプレイヤー最高峰の鍛冶師としての矜持と信念が試されていると、彼女はそんな予感を抱いているのだから。

 

(サンラクさんは『剣武器』で、ペッパーさんは『打撃武器』を多用するらしいし、ガンスミスライセンスを取ってシャンフロの銃の事を識った今の私なら、剣銃(ソーデットガン)を改めて作ってみるのもアリなのかも知れない………)

 

嘗てペッパーが齎した銃という武器の常識と発想、届けられたティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスの素材達を以て、ガンスミスライセンスを手に入れずともハンドメイドガンは作れると、イムロンは証明してみせた。

 

リヴァイアサンにて銃を識り、神代の銃製作技術に触れ、其の領域を理解した。ならば今の自分なりの『答え』を改めて示すというのも、鍛冶師たる己の責務ではないかと(彼女)は考えている。

 

「………何より『後付け刃精製武器』なんて物を見せられた以上、此方も鍛冶師として負けらんないわ………!」

 

()()が在るという事、其れ即ち()()()が在るという事。其れはサンラクとペッパーが持つ煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)冥王の鏡盾(ディス・パテル)が、イムロンの脳裏に浮かび上がる。

 

片や水晶弾を発射と必殺機構でレイドモンスターにさえ大出力と大打撃を叩き付ける籠手に、片や魔法の尽くを弾き返し、剰え吸収による自己強化に転用する円盾──────其れが『複数存在する』という事は、即ち理論上『量産可能』であり、其の領域に足を踏み入れて原材料を知る事が出来れば、プレイヤーでも『製作可能』という事実。

 

「…………逆に剣銃じゃなくて、銃の機能を備えた『別武器』を作るのも手かしら?銃+αで何か良い()()()()のデザインの奴が有った様な…………」

 

シャンフロ最高峰のプレイヤー鍛冶師・イムロン、本名を『隻口(せきぐち) 留華(りゅうか)』。

 

特撮鑑賞を趣味とし、其処で得られた知識を鍛冶技術として余す事無く活かす彼女が、様々な特撮武器の海の中から『答え』を見付けるまで、あと五分…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むむむむむ………………」

「何か師匠、凄く考え事してるよね………」

「ペッパーさんが何か『プレイヤー鍛冶師で新しい武器やら防具を作って、其の性能を比べ合いましょう』ってメールしたらしいんだって」

「…………其れで渡されたのが、水晶群蠍と金晶独蠍の素材達だったんだって………。ペッパーさん、太っ腹過ぎない?」

「「わかる」」

 

此処は新大陸・前線拠点に在る木造住宅の一つ、其処ではシャンフロ初の宝石匠(ジュエラー)となったラピスと、彼女の三人の弟子達のカット・ダイヤ・トッパの拠点でもあり、ウェポニアとは別角度で武器の修繕やアクセサリー製作を行い、日々腕を磨いていた。

 

(サンラクさん用の『メイド服』、其の原材料たるラピステリア星晶体はサンラクさんが用意して、私が繊維と布に仕立てた物をエリュシオン・オートクチュールに納品している。後は彼の『腕次第』では有るけど………さて此方はどうしようかしら)

 

ラピスにとっての目下の課題は、ペッパーから渡された水晶群蠍と金晶独蠍の素材達を『何に使うか』という一点。サンラクが持つ煌蠍の籠手は此の二種の蠍+水晶巣崖(すいしょうそうがい)のレア鉱石+隠し職業:古匠で製作可能だが、彼女は古匠や名匠の領域に足を踏み入れていない。

 

同時運用で真価を発揮する『インペリアルシリーズ』という片手剣達を作り上げ、鍛冶師として一つの到達点に辿り着いて以降は、アクセサリー職人として活動方針を転換していたが、実の所を言えば『鍛冶師最上位職の名匠まで後一歩の段階まで来ている』事を、三人の弟子達含めて多くのプレイヤー達は知らないのだ。

 

(…………寧ろ発想を逆転させましょう。SOHO-ZONEにイムロンが武器を注視するなら、此方は『防具やアイテム製作』に尽力すれば良いじゃない、と)

 

何もシャンフロ最高峰の鍛冶師に、武器防具作成研究の連中達と同じ土俵で戦う必要は無い。他者と性能やら出来栄えを比べるならば、此方は此方の持ち味を活かし切れる領分で勝負する──────其れがラピスが思考の果てに辿り着いた『答え』であった。

 

「さて、何を作るべきかなぁ…………」

「あの、師匠!少し良いですか?」

 

腕を組み、改めて何を作るかを考え出したラピスに、弟子の一人にして鍛冶師志望のトッパが、インベントリから自身が制作した武器を彼女に見せる。

 

「以前ペッパーさんが渡した水晶群蠍の針やらの素材を使って製作した『レイピア』が完成したので、師匠に見て貰っても良いでしょうか………?」

「…………見せて貰うわ」

 

レイピアをトッパより受け取ったラピスが拝見すれば、其れは水晶群蠍の素材の中でも『単純な硬度』ならば最強を誇るとされ、素材の名が『水晶群蠍の晃晶針』をベースとして作った物だと判る。

 

「名前は『スコリアト・レイピア』。能力は『空気抵抗軽減』のみで、残ったリソースは『武器耐久値に全ブッパ』してみました」

「フムフム……………成程、シンプル is ベストなレイピアね。王道ながら質実剛健、此れを使う人の技量が顕著に現れる良い出来だわ」

「ありがとうございます!」

 

トッパはイムロンと同じ『名匠』及び『古匠』、ダイヤは自分と同じ『宝石匠』、カットはエリュシオン・オートクチュールと同じ『至布匠(グランクチュリエ)』と、其々が其々の目指す道の先を見つめて努力を続けている。

 

(空気抵抗の軽減…………レイピアって片手剣の一種でも有り、剣聖のプレイヤーの間でもかなり人気なのよね。──────ん?空気抵抗、剣聖職、飛来、射出………ッッッッッッ!!?!)

 

レイピアという武器を見、空気抵抗を軽減するという能力を含め、彼女の脳内でパチリとスパークが走り。浮かび上がったワードが連鎖反応を起こし、ビッグバンの如く答えが形作られた。

 

「コレだッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」

「師匠!?」

「見えた、見えた見えた………見えた見えた見えた!!!」

 

言うが早いか、ラピスがインベントリから『水晶群蠍の甲殻』を手に取り、宝石匠の特権たる宝石加工の力を用いて魔力を込める。

 

甲殻は彼女の『脳内イメージ』を受けて変質し始め…………其の形状は細く長く、しかしながら強靭なる芯を残して、まるで『矢』の様に変わる。

 

「…………出来た。此れが私のッ、宝石匠として作り出した『新しい答え』ッッッッ!!!皆、ちょっと忙しくなるわよ!付いてこれる人だけ付いて来なさい!」

「「「は、はいっ!」」」

 

言うが早いか彼女は、水晶群蠍の甲殻や金晶独蠍の甲殻を手に取っては矢の形状へと変えていき。同時並行で二種の蠍達の素材達を糸・布・衣へと加工し、汎用的な糸巻きや布巻きに衣巻きへと巻いていく。

 

新たな境地を見出し、更なる飛躍を遂げんとするモチベーションが、ラピスというプレイヤーのポテンシャルを引き出し高めている。

 

生産職達の戦いは、熱を帯びる……………。

 

 






恐れず、怖がらず


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