VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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天より見下されし大陸




既地を歩む者(フィールド・ウォーカーズ)

N.M.M.、正式名称『NAKED(ネイキッド)MAPPING(マッピング)MARKET(マーケット)』と呼ばれるクランが有る。

 

誰よりも先んじてシャンフロの未踏のエリアへと飛び込み、エリアの全貌を明かす事に熱意を傾ける其のクランは、此迄に旧大陸の大部分を無装備状態で冒険、エリアの正確な輪郭を記録したりと開拓者何たるかを証明してきた。

 

そして大型アップデートで新大陸が追加され、意気揚々と新大陸の調査に乗り出した彼等彼女等だったが、シャンフロで最も名の知れたプレイヤーたる『ペッパー・天津気(アマツキ)』が、レコード到達の証として賜った最大高度(スカイホルダー)の実力と共に撮影した、新大陸の空中写真によって先んじられる事となり。一部のプレイヤーはN.M.M.の役目は終わったのでは?──────と、そんな噂をする様になった。

 

御役御免となったクランは、其のままひっそりと解散したのか?…………其れは『否』、寧ろ『新大陸の大体の輪郭が判った』という情報は、クランメンバーに『新大陸の更なる細かい調査と解明』という新たなる役割を齎し、各地に散らばり樹海地帯を森人族(エルフ)達や、海岸線を魚人族(マーマーン)達と協力して、大まかな地図を詳細な地図へと作り直す事(リビルド)に心血を注ぎ。

 

彼等彼女等の努力と調査によって作られた、前線拠点周辺区域の地図は多くのプレイヤーへと渡り、其の中でも更に秀でた極僅かな精鋭達は、砂漠地帯へと足を踏み入れる事が出来たのだ。

 

そしてそんな精鋭の中の一つ………シャンフロ内の動物や生態調査を主な活動とし、動物型モンスターの良く言えば徹底的な、悪く言えば病的なレベルで熱意を燃やす『シャンフロ動物園』こと、クラン:SF-Zoo。動物狂いの園長(リーダー)・Animaliaを中心とした動物大好きなメンバー達は、三人一組の複数班に分けて樹海地帯を突破、一部のファストトラベル持ちのプレイヤーを除いて最も早く砂漠地帯を進んでいる。

 

「園長〜…………砂漠地帯もだいぶ進んだんですけど、目的地のキャッツェリアは未だ先なんですかぁ〜…………」

「昼間の砂漠地帯の特性を踏まえて、夕方から夜選んだのは良いんですけど………。最後のオアシス出てから数時間歩きっぱなしですよぉ〜………」

「そうね………、次の岩場を見付けたら休憩しましょう!水と食料の残りにはくれぐれも気を付けるように!」

 

現実世界と同じ現象が働く此のゲームでは、昼間の砂漠地帯は灼熱地獄の夜間は極寒地獄と化す、寒暖差の変動があまりにも激しい地域だ。其れこそ風が吹こう物なら熱砂や冷砂は吹き荒れ、旅人の行手を阻む自然の牙となって襲い掛かる。

 

SF-Zooの目標は、同盟を組むクラン:旅狼(ヴォルフガング)のリーダーたるペッパー・天津気が教えた、猫妖精(ケット・シー)の国・キャッツェリアに辿り着いてランドマークを更新する事。其れが出来れば、シャンフロ内では未だ数少ないファストトラベルの使い手に依頼して、前線拠点や自分達の拠点をキャッツェリアと繋ぐ事も夢では無い。

 

「園長!北東方面1km先に『二重螺旋のサボテン』と2.5km先に『岩のドームらしき物』を発見しました!」

「でかした!」

「ナイスぅ!」

「やったぁ………!此れで休める〜………!」

 

仲間の一人が双眼鏡で覗いた先に、休める場所を見付けた事でSF-Zooの面々の表情に歓喜の色が現れる。夜の時間帯の砂漠の風の冷たさが刺さる中、漸く休める場所を見付けた事に安堵しつつも、油断して死亡すれば此処までの進軍が水の泡に変わってしまう為、慎重さを消して捨てずに彼等彼女等は前へ前へと進んで行く。

 

SF-Zooは知らない…………其の二重螺旋のサボテンと岩のドームこそ、シャンフロに置ける究極の偶像(アイドル)、或いは予言という名の公式アナウンスを行えるユニークNPC、慈愛の聖女 イリステラが言及していた『力を持てど争いを嫌う(むし)の人』──────即ち蟲人族(バグマン)の隠れ里たる『スナノキ』だった事を。

 

其の事を彼等彼女等が知るのは、其れから数十分後にスナノキに到着したSF-Zooが敵対される形で出迎えられ、最終的にはAnimaliaと蟲人族の実力者による拳と拳の殴り合いの果て、友情を築いた後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって樹海地帯。

 

聖女ちゃん(イリステラ)によって予言(アナウンス)された種族、三つ巴に争いし(けもの)の人という表現ながらも、プレイヤー達によって四つの派閥に分かれていると判明し、樹海を捜索した者達によって発見され。

 

樹木を利用し作った森人族の故郷(ティアプレーテン)とはまた異なる趣を宿す『獣人族(ビーストマン)の集落』は、改宗(コンバージョン)によって獣人族になった開拓者が獣人族のNPCと交流を交わし、情報や取引を行っては身形を固める等、各々の目的の為に動いていた。

 

「いや何、改宗した獣人族って『其の派閥に基本的に従うらしい』じゃん?結構ダルくない?」

「聞いた聞いた。何でも『改宗の代わりに色々御使いしたり』するみたい。本格的に属さなければフリーで良いんだが、派閥に属すと色々な恩恵が在るのも事実なんよな」

「勢力争いしてる暇が有ったら、ジークヴルムとの決戦に備えた方が良いのにね」

「わかる」

「それなー」

 

一つは力による繁栄を掲げ、腕自慢の者達から強い支持を集める、獅子の獣人族レラールを頂点とする『獅子心衆』。

 

一つは知による繁栄を掲げ、様々な知略や策略に情報網を張り巡らせる、狐の獣人族ノネを頂点とする『狐火の会』。

 

一つは富による繁栄を掲げ、独自のルートで食糧等の供給・独占を足掛けとする、象の獣人族ダッドダッドを頂点とする『豊象軍』。

 

そして最後に犬と狼の獣人族のみで構成された、七つの最強種(ユニークモンスター)・夜襲のリュカオーンを畏怖し、旗に其の身姿を絵として刻みて戦いを望む、狼の獣人族ウォーアを頂点とする『戦狼隊』。

 

プレイヤー達は此の四つの派閥の中から、己の気に入った獣人族へと改宗を行い、其処から二回から三回の御使いを行う事で『フリーの獣人族』になれる。

 

其の過程で良い評価を出せた者は、其の派閥の幹部や幹部に近しい者から『派閥のリーダーへの謁見』を許され、本格的に派閥の戦力として加われば、場合によっては『其の派閥のユニークにも関われる』──────との事だ。

 

一方で派閥に属する為、基本的に其のプレイヤーは新大陸側に釘付け&リーダーの許可無しに遠出不可となるので、旧大陸側の施設やエリアにバハムートを利用するのが難しくなる欠点も有り、どちらを選ぶにせよ一長一短である。

 

「戦狼隊所属のプレイヤー達曰く、『サンラクかペッパーを連れて来た者に褒美を取らせてる』らしいが…………、コレぶっちゃけ無理くさくね?」

「わかる。片やプレイヤー最速のスピードホルダー、片や空中と水中のデュアルホルダーだもんな………」

「其処なんだよ、一番の問題なのは。機動力関係の称号持ちも有ってか、あの二人どうやって捕らえるの?から話が始まるし…………」

「ツチノコさんさぁ………」

「ペッパーさぁ………」

 

大半のプレイヤーは、他プレイヤーより抜きん出る為に『ユニーク』を求めるのが大抵だ。

 

誰もが一度は夢に見る『ナンバーワン』や『オンリーワン』の称号──────夢に破れて、夢が叶わずともゲームならばと希望を抱く者達は、表では勢力故に『敵対』という関係ながらも、裏では『権力に縛られぬ者』であるが故に、こうして会話を交わし合い情報を共有出来るのだから。

 

そんな天覇のジークヴルムとの決戦に備える彼等彼女等の元に、五色の竜にして緑の老獪と恐れられる『緑竜ブロッケントリード』と、木々の間にて居住を構える全身が羽毛に覆われた、飛べずとも()を持ちし種族の『鳥人族(バーディアン)』の情報が舞い込むのは、もう少し先の話になる──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うんうん、良い感じ良い感じ。かなり良くなってきた」

 

ドラクルス・ディノケラスを相手取って晴天流(せいてんりゅう)の居合斬りで仕留めた所で鳴った、レベルアップを告げるSEを()()()で挟んだ京極(キョウアルティメット)は、刀を鞘に納めてドロップアイテムをインベントリアに納める。

 

「ベヒーモスでレベルキャップを解放して、基礎的な能力値にレベルを振り込んだけど………。獣人族の種族特性とのシナジーが噛み合ってるか」

 

獣人族に改宗すると魔法適性が下がる代わりに、改宗した獣人族の特色が色濃く反映され、狐の獣人族は聴覚・視覚・嗅覚といった感覚や、敏捷のステータスに補正が加わる。

 

元々『技量剣士』としての側面が色濃い京極にとっては、如何にして耐久値の低い刀武器で敵を征するかという、自身の剣術をベースにした戦闘スタイルを持つので、視覚と敏捷の補正が入る獣人族は京極的に見て『相性が良かった』。

 

「…………御狐様の御付きの人かい?」

「流石、京極殿。既に気付いていたか」

 

狐の耳が動き、横目を向けて声を掛ければ、木の後ろより姿を晒すは一人の狐の獣人族のNPC。其の衣服は『黒子』の其れで、胸元には『狐火の会の刺繍』が付いている。

 

「数分前に木々の間から、僕に視線が向けられてたしね。気配を殺す方法教えようか?」

「此れは手厳しい。私もまだまだ未熟だな………」

「──────で?御狐様から『御使い』かな?」

「ウム。戦狼隊が御触書きで開拓者を呼び寄せ、未だ所在を掴めぬ『蒼空を舞う勇者』を探している………というのは知っているだろう?他の開拓者によれば、京極殿の『知り合い』でもあるとか」

 

蒼空を舞う勇者………ペッパー・天津気の異名の一つで、NPCの間では此の名前が広く浸透しているらしい。

 

「まぁね。もしかしてペッパー御兄様を御狐様の元に連れて来てくれと?」

「可能で有れば、との事。もしくは其の情報を、此方に流してくれと」

「…………成程」

 

狐火の会の頭目たるノネは、ペンシルゴン程の悪辣さは無いが、頭のキレ具合は獣人族の中で『頭一つ』抜けている上に、誇張では無いがペンシルゴンに匹敵する『策士』とされている。

 

おそらくペッパーの情報を戦狼隊に流して、其の見返りとして狐火の会に協力を持ち掛け、二つの派閥を持つ勢力として獅子心衆と豊象軍を一気に手中へ収めてしまおうと、そう考えているのだろうか。

 

「解った、此方でもやってみるよ」

「頼みましたぞ、京極殿」

 

忍びの如くサッと消えたのを確認し、京極は己の神経を研ぎ澄ます。次なるモンスターが此方に接近しているのを察知し、再び彼女は鞘に納めし刀に手を添え。

 

其処にワラワラとやって来た、掌サイズの小型恐竜モンスター『ドラクルス・ディノトリアシクス』達を相手に、抜刀一閃と共に首を刎ねる形で、再びレベリングと晴天流の熟達に勤しむのだった…………。

 

 

 






決戦に備えて


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