チュートリアルから本番へ
「うぉぉぉぉぉりやぁぁぁぁ!」
千紫万紅の樹海窟、其の奥地に天を貫く様に聳える、二本の大樹が在る。其のフィールドの上空━━━正確には『円状に造られたコロシアム』の様な場所の空で、翡翠と黄金、空色の光が瞬き、輝き合い、幾重の線を描く。
ペッパーが目覚めたレディアント・ソルレイアの操作に慣れるまでの訓練を行い、そうして始まったティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスとの戦闘から、此の時およそ30分が経過しようとしていた。
『勇者ヨ…!既ニ空ノ戦イヘ、適応シテイル…カ!』
『何トイウ、成長…ダ!我等トノ戦カラ、此程マデ…!』
「俺はこう見えて、やられた事は根に持つタイプなんでね!リベンジ出来る此の時まで、じっくり色々培って来たんです……よッ!」
戦闘機を操作するゲームや超スピードのレースゲームで、何度も何度も三半規管をやられては、乗り物酔いに潰され、時に思い切りゲロを吐いたトラウマに苛まれながら、必死で出力を調整し続ける。
「ッ…今!
『ヌグゥ…!?此程トハ…!素晴ラシイ、ゾ……勇者ヨ!』
ティラネードギラファの放った風刃攻撃を、自身の速度・相手との位置調整で合わせて吸収。迫るカイゼリオンコーカサスの角に、三連式『バックフリップ』を叩き込み、其の巨体に後ろ回転蹴りを直撃させる。
蹴られた箇所からは、ダメージによるポリゴンが溢れ落ち、此の籠脚こそが2体に対するギミックウェポンだと、ハッキリと証明された瞬間で。
「七艘跳び!クライムキック!そんでもってストレングス・スマッシャーにジェットアタックのサービスと、バンデージドリルもおまけだ、ありがたく受け取ってけぇ!」
『グオォッ…!?幾多ノ技ヲ、惜シム事無ク…重ネ合ワセル…カ!』
コーカサスの角を足場代わりに、エネルギーを節約。自分とティラネードギラファの位置関係を、脳内で直ぐに更新。跳躍力強化の七艘跳びとクライムキックでコーカサスを下に蹴り飛ばし、背面蹴り以上のノックバックを与えるストレングス・スマッシャーを、ジェットアタックによるモーション加速で昇華し、バンデージのドリルで『膝蹴り』を行い、ギラファを更に上空へと打ち上げる。
タッグ系のボスの攻略は、常に『相方の引き剥がし』が肝になる。何れだけ長く分断出来るか、如何にして合流させないか。其れを意識するだけで、攻略難易度はグッと変化するのだ。
「天に煌めく三ツ星…二つは一つの星を、一つは二つの星を落とさんと、命を燃やして煌めき迸る……のさ」
其の様子を場外で見つめ、其の戦いを紙に筆を走らせ、綴り行くはヴォーパルバニー・トラベラーのアイトゥイル。
双皇樹の周りを飛び交い、幾度も幾多もぶつかり産まれる輝きは、英雄譚として申し分無しの演出であり、自然と筆先に力が籠る。
「す、すごい……。ペッパーさんが、空を翔んでるなんて……」
そして其の戦いに見惚れる様に、青の魔法使いの衣裳を纏ったプレイヤー・レーザーカジキが、風と雷で構築されたフェンスの近くまで歩いて来ていた。だが、レーザーカジキは空を見上げて歩いていたので、目の前にフェンスが張られている事に気付いていない。
「あ!レーザーカジキはん、危ないのさ!」
「えっ、アイトゥイルさん!?わあっ!?」
アイトゥイルが押し倒す形で、レーザーカジキをフェンス激突から守り、一先ずは事無きを得る。
「あ、ありがとう…ございます」
「レーザーカジキはん、何故にこんな所に居るのさ?確かファイヴァルに行ったはずさね?」
「あ、えっと…あの後にまた栄古斉衰の死火口湖に登って、ブルックスランバーと戯れて……火口湖に放り込まれてしまって………」
どうやら彼は懲りずに、悪辣ペリカンダチョウへ突撃したらしく、落下死を経験したらしい。しかし其の後、レーザーカジキはアイトゥイルが、自分の耳を疑う様な言葉を放ったのだ。
「其の時に……僕ブルックスランバーの事で頭が一杯で、ファイヴァルの宿屋で『リスポーンの更新を忘れて』しまいまして……。またサードレマからやり直しに……仕方無いので、千紫万紅の樹海窟を探索してたら綺麗な蛍さん達が見えて、其れに付いていったら此処に着いて、ペッパーさんが居た……という感じです」
リスポーン更新、自分達とは
偶然が重なったのか、其れともペッパーの持つ不思議な引力に誘われ、導かれたのか……何にせよ彼が居る所に、レーザーカジキもやって来るらしい。
「成程なのさ…。レーザーカジキはんも、ペッパーはんの不思議な因果に引き寄せられた、そんな人間…なのさ」
「……?」
「ワイの独り言なのさ。気にしなくて良いのさ」
「は、はぁ……」
アイトゥイルは語り、レーザーカジキと共に天を仰ぐ。翡翠と黄金と空色の輝きはぶつかり合い、煌めきは閃光となって樹海を迸る。
戦いは続く、されど2体の身体から溢れるポリゴンは、更に多くなっていく……。
彼等は知っている、己等の命はもう少しで尽き果てる事を。双皇樹の根本に出来た皇樹琥珀の力で、繋がれていた命も、既に風前の灯に有る事を。
彼等は決めたのだ。世界に示した蒼空を舞う為の答えを、真に正しく受け継ぐに相応しい勇者が現れた時、己の命を全てを燃やし尽くし、其の使い方を伝えてみせると。
其れ故に彼等は、命が尽きる瞬間まで。勇者たる者に、其の籠脚の使い方を伝授するのだ。そして、ペッパーがカイゼリオンコーカサスの頭を、渾身のフルズシュートでサッカーボールキックを叩き込んだ時。
『時ハ………此処ニ、満チタ!今コソ……ガ、其ノ…時デ、アル……ッ!』
『勇者………ヨ!此ヨリ…我等ガ、答エノ宿シタ……必殺技ノ、発動…ヲ伝エル…!』
「うぉわ!?何だ、発狂モードか!?」
ペッパーが吹き荒ぶ風と出鱈目な落雷に驚き、回避しつつ合い言葉を述べつつ、エネルギーをチャージする中、ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスは、彼に向けて言葉を発する。
『レディアント・ソルレイア…其レニハ、最大マデ…エネルギーヲ蓄積スル、事ニ……ヨリ!
『我々ノ攻撃ニ、超過機構……ト、叫ビ…!唯、ヒタスラ……ニ、真ッ直グニ…!蹴リ砕ク……ノダ!』
ティラネードギラファが前に、カイゼリオンコーカサスが後ろへ移動し、2体の甲虫皇は生命エネルギーの全てを1つに束ね、巨大な嵐を作り出す。このまま発射を許すか、待っていては彼等の命は尽き果てて、束ねた力は暴発。此の辺り一帯を吹き飛ばしてしまう。
止めるには伝授された、レディアント・ソルレイアの超過機構を使い、彼等へトドメを刺す以外に道は残されていなかった。
「ッ……いくぞ、レディアント・ソルレイア!お前の魂を燃やせッ!甲虫皇達に、お前の力をぶつけてやるんだッ!」
ペッパーも覚悟を決める。彼等の命懸けの一撃に、此方も全力全開で応えてこそ、彼等への手向けに成ると信じて。
エネルギーは先程の落雷と突風を食らい、フルチャージ済み。相手が繰り出すは、強大な暴風雷嵐の破壊の奔流。成れば、此方もやるしかない。必殺技に対し、此方が示すは唯一つのみ。
「
遺機装達が共通して内封している必殺技。各々種類によって異なるが、何れもが強力な力と多大な代償を背負う。レディアント・ソルレイアも例外ではなく、繰り出される此の技は、落下による物理エンジンを用いた速度を参照にした、謂わば『
発動すれば、168時間の
「
レディアント・ソルレイアの金色の爪が、戦闘爪の如く自分の脚と同じ真っ直ぐに向けられ、太腿辺りに組み込まれたブースターが完全に解放。
同時にペッパーの身体がグンッと、爪先の指す方向へ凄まじい速度で引っ張られていき、2体の甲虫皇達が撃ち放った先程の比ではない風雷融合攻撃に、真正面からぶつかり合い。
「おおおおおおおおお!!!!貫ッ━━━━けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
竜巻の中心部、眼となる場所を走る様に、黄金色の流星は煌めいて。強靭な甲殻を
ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスを象徴とする鋏と角を減し折り、頭部と胴体を右半身も纏めて穿ち貫き。
地面に突き刺さる翡翠色の鋏と、漆黒色の雄角と共に、天に舞い上がる武具を纏った勇者は、大地を滑るようにして、決戦の大地へ滑走着地したのだった。
〆はやはり必殺技に限る
其の際に爪先と足裏には特殊なフィールドが形成され、敵の攻撃を弾き飛ばし、自身に対する空気抵抗を弾き、着弾時に装備や装甲に干渉して、一時的に耐久を無効化。
自分は高所からの落下による、高低差での物理エンジン及び速度による威力増大+敵は鎧の下の生身状態でのダメージが適応される、装備並びに装甲貫通能力持ちの大技。
代償として、発動後より