VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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激突の後先にて




夢境を謳い、無法を駆ける

「むぅううう…………」

「済まんて、永遠。俺もちょっとやり過ぎた」

「…………此のホテルのパフェ、あーくんの奢りで食べさせて」

「──────はいよ」

 

頬を膨らませながらに『むすくれた』、何処か不機嫌なカリスマモデルの恋人に、元凶となった青年が謝罪する。

 

「其の感じだとボコボコにやられたか、ペンシルゴン」

()()は初見殺しにも程が有るっての〜………。そういうカッツォ君はどーなのよ?」

「部分的とはいえ、フルスロットルのシルヴィに匹敵してた」

「アレを捉えろってのが既にムズいわ」

「確かにあのスピードは、シルヴィアのミーティアスに並ぶ位に疾かった」

 

総当たり戦の末に慧の宿泊部屋にて改めて集まった五人は、早速話し合いを始めた。

 

「取り敢えずギャラクシアヒーローズ:カオスについての感想は有る?」

「対民衆シミュレーションにバトル要素を追加したゲーム」

「ヴィラン側が箱庭タワーオフェンス、ヒーロー側が箱庭タワーディフェンス」

「自由度が途轍も無く高い上、同時に広い視野と状況に応じた立ち回り………即ち『ロールプレイ』がプレイヤーに要求されるゲームだな」

 

楽郎、永遠、梓の順番で述べられたギャラクシアヒーローズ:カオスの感想だが、どの感想も確かにゲームを経験した者であるからこそ出せる、確かな感想でもあった。

 

「…………ねぇ慧、コレ私も『捻った感想』言わなきゃ駄目な流れ?」

「サンラクとペンシルゴンの二人は、思考回路に『消せないバグ』が付いてるだけだから気にしないで。其れに、メグはメグのままで良いんだよ」

「そ、そう………()()私が良いんだ………」

 

意識してか、そうではないのか。慧の発言に恵の頬は仄かに赤らみ、彼女の彼に送る視線は『惚れた女』特有の其れである事に三人は気付いたが、当の本人は全く気付いていない様子で。

 

「ねぇねぇねぇねぇ、感じましたかぁ?サンラクさんにあーさんや?アレは正に『鈍感系の主人公がヒロインの好意に気付いて無いパターン』じゃないですかねぇ???我々どーしましょうかぁ???」

「笑顔で中指立ててやればいんじゃね?」

「普通に見守ってやろうよ、そういう時はさ」

「あ"?何か悪意有る言い方だな」

 

気付いた時は遅いパターンなんて、恋愛シミュレーションゲームでは良く有る攻略失敗フラグの一つだ、早く気付けるか否かは本人と乱数の女神次第なので、煮詰まる様なら此方から助け舟は出すが、其れを生かせるか否かは其の人自身に掛かっている。

 

其の後に慧は全員にマッチョマン三人衆とアメリア・サリヴァンの公式戦の戦績とバトルデータを纏めた映像ファイルを渡し、改めて『片手間で片付けられる相手じゃないから必ず一通り目を通してくれ』と述べ、明日は出場時のプレイヤーネーム・相手チームの出場順の予測・自分チームの出場順の決定といった運びとなり、此の日は解散となったのであった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜〜♪」

「パフェ一個で数千円飛ぶとか、やっぱ最高峰ホテルのスイーツは此方の価値観を越えてるわ…………」

 

グランドスプリーム内に有るスイーツ専門店で、季節のフルーツパフェと紅茶を御満悦の表情で味わうカリスマモデルを見ながら、最強のレトロゲーマー・AZから普通の大学生の姿に戻った梓は彼女と対面しつつ、一番リーズナブルなバスクチーズケーキとホットミルクを御共に其の様子を眺めていた。

 

店員も天音 永遠が来店した事に気付いたのか、気付いても敢えて一客として対応しているのか、最高級ホテルとして当然の対応と共に、注文したフルーツパフェとバスクチーズケーキに紅茶とホットミルクを運んで来てくれた。

 

「あーくんはパフェ食べないの?」

「慧にフレンチフルコースを奢らせる為にも、ちょっと我慢するのも大事さ。其れにやろうと思えば、シャンフロの中でも食材を購入して自力でパフェを作ったりとか、料理人のNPCに作って貰ったりとか、色々やりようは有る」

「ふぅん…………よし、すいませーん」

「はい、御注文を御伺い致します」

 

何を思ったか永遠が店員を呼んで、メニュー表を持ちながらこう言った。 

 

「此の季節のフルーツパフェを彼に。あーくん、トッピングは何にする?」

「えっ、あ、え?……じゃあ、バニラアイス一個付きで………」

「畏まりました」

 

注文分を加えて会計に追加して、店員は一礼の後に厨房へオーダーを伝えに行ったのを見送り、梓と永遠は視線を合わせる。

 

「あーくんは紅茶とホットミルク、私がパフェ二つとバスクチーズケーキの会計で」

「俺が奢った意味無いじゃん………」

「良いの良いの。私が好きでやってるんだから、気にしない気にしない。こういう時は、おねーさんにどーんと胸を借りなさーい♪」

 

単に一緒にスイーツ食べるデートの口実だったのかと思ったが、おそらく其れを聞かないほうが良いのだろうと心の内にて留める事にし。

 

其れから暫くしてやって来たフルーツパフェ(バニラアイス一個付き)を、永遠に『あーん』したりして甘々な空間を作りながら有意義な時間を梓は過ごしたのである………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ある程度だがギャラクシアヒーローズの最新作には触れた。アメリカが躍起になって再現に挑んで『紛い物』になった理由も判る程度には、クオリティが段違いだな…………』

 

ホテルグランドスプリームの某一室、シャワーを浴びて髪を乾かした一人の女性が英語を喋り、先行プレイを通じて身体に染みた感覚に想いを馳せる。

 

褐色の肌に黒と藍色が混じった髪、身長180cmで筋肉によって生み出されたモデルにも引けを取らない、抜群のプロポーションを誇る鷹の目の様に鋭い視線を宿す女性──────『アメリア・サリヴァン』はそう呟く。

 

今回はアメリカのプロゲーミングチームでも特例中の特例を以て、Star(スター) Rain(レイン)からの援軍要請の名目でDinoscu(ダイナスカル)より助っ人(ゲスト)参戦という形にして貰い、昼間にホテルに到着からシルヴィと其のチームメイトとの実機先行プレイを通じ、実力やキャラの手触りを把握したのだ。

 

炭酸水を飲み、シャワーによって火照った身体を程良く冷まし、パジャマ姿に着替えた彼女はフルダイブVRシステムのチェアを見る。

 

『確かあの中には『件のゲーム』をプレイ出来る筈だ』

 

機材に座り、コンソールを指先でなぞれば、確かに其のゲームはダウンロード版ながらプレイ出来ると解った。

 

世界に其の名を轟かせ、世界中のゲーマー達の話題を掻っ攫い、今も尚『新しいコンテンツ』が解放された事で、今以上の盛況を見せていると知り合いが口を揃えて言い張る、おそらく此の先の歴史に名を刻むフルダイブ型VRMMO『シャングリラ・フロンティア』。

 

『シルヴィの奴がコイツにハマった理由………。アタシもプレイすりゃあ、何か掴めるかもしれねぇ』

 

リアルミーティアスと謳われる全一が、其の神ゲーの世界で一体何を掴んだのか。神ゲーの世界でリアルミーティアスと言われたプレイヤーが、其の極致に至った道筋や理由が知れるのか。

 

リアルカースドプリズンに最も近い女は、其の答えを探し求める様に、混沌の摩天楼から果て無き理想郷へと旅立ったのだ。

 

そして同じく、理想郷へと降り立つ物が数人──────。

 

 

 

 






ダイナスカルの猛禽、神ゲーに挑まんとす


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