VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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獅子皇へ挑め




電撃は脳裏に焼き付く、しかし其れは強いだけでは無い故に

赫黒い雷を迸らせながら、其処に佇むだけでも様に成るモンスター、レオ・ネメアレクス"覇雷業封(サンダルダイン)"。

 

差し詰め『赫黒雷の白獅子』とでも呼ぶべき其の皇は、深海の王たるアトランティクス・レプノルカの素材で作った一式装備で身を固めても尚、放たれる電気に全身が痺れる感覚を与え、圧倒的な威圧感でユニークモンスターとの遭遇を彷彿とさせる覇気(放電)を放つ。

 

おそらく通常やら生半可なの防具では、そもそも獅子皇に謁見する事すら許さず、雷で痺れた所を頭からガブリと持っていきそうな予感が有る。一口おやつじゃ有るまいし。

 

『ゴォオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

「ぬぐぉお!?」

『グルルルッ!』

 

戦闘開始から一時間弱経過時点で、ペッパーは覇雷業封の行動や攻撃には『原種と異なる』特性と特色が、幾つか存在している事を突き止めていた。

 

先ず自身の移動した足跡に『時間差の通電』を齎す、攻撃及び移動を一つの行動下で同時に行う『二回行動』………仮称『通電波走』とするが、原種の蒼雷が『雷属性によるダメージを与える能力』を持っているのに対して、覇雷業封の通電波走は赫黒雷が通った場所を敵対存在が通過した場合に原種同様ダメージを与えてくる。

 

だが一番の問題は、通電波走の残った場所に何らかの形で此方の身体の一部が『接触』すると、ダメージに加えて『其の存在が習得しているスキルが一定時間ランダムに使用不能になる』という反則側の能力を搭載しており、おそらく『魔法』にも反応する可能性が無いとは言い切れない。

 

次に今繰り出した『咆哮』、覇雷業封を中心に半径30m程度を射程距離とする其れは、自身が蓄積し帯電している電気エネルギーを放出、通電波走とスキルや魔法封印を『解除』する代わりに『封じられたスキルの数×秒の確定スタン』に晒され、雷耐性:極を搭載するマクティスシリーズ一式装備効果でも『防げない』という能力。

 

また通電波走に触れていなくとも、咆哮自体が聴覚・触覚・感覚へ『耐性無視のダメージ』を叩き付ける他、此のダメージ自体が『体力への割合ダメージ』の為、ノワや自分を含めて回復ポーションやリジェネ手段で対抗する事で、何とか敗北を防いでいる。

 

近接戦闘では飛び掛かりや噛み付き、前肢の薙ぎ払いに叩き付けと、ライオン型のモンスターの持つ特色を踏襲しつつも、其の攻撃にはデフォルトで『雷属性』が付与され、覇雷業封の場合は別枠で『威圧』というべきか、攻撃を受けた対象の『メンタル』にデバフを掛けているらしい。

 

此の威圧によるメンタルへのデバフ攻撃は、リュカオーンの愛呪の御陰で影響を受けずに済んでいる為、赫黒雷を放つ白獅子皇の苛烈な攻撃行動の中では『数少ないデレ行動』なので、咆哮のタイミングと発射間隔が判れば『接近戦』を掛けるのも悪くない。

 

そして最後に一番厄介な点が、覇雷業封は『金属製の武器を用いて攻撃すると、通電して逆に攻撃側がダメージを受ける』という…………世界の理をほぼ再現したシャングリラ・フロンティアというゲームに置いて、単純明快で厄介極まる能力を宿しているという事。

 

純白の鬣や毛皮にも電気が帯電している場合に金属製の武器で殴れば、得物を通じて莫大量の電気エネルギーが流れて来るので、雷耐性持ちの防具一式装備で身を固めてダメージを何とか微弱に出来ている。

 

仮に其れ以外の方法が有るとすれば、封雷の撃鉄(レビントリガー)やらで擬似的な帯電状態になったり、遠距離から魔法攻撃に銃撃や弓の射撃を叩き込む、非金属製の近接武器で攻撃する等の別の手段が無ければ、大抵のモンスターの討伐に至る大前提『ダメージを与える』という条件を満たせず、確実に喉笛を喰われてガメオベラ不可避だろう。

 

「ノワ、俺の後ろに!そして獅子皇はコイツで弾く!」

 

飛び掛かりにフェイントを加え、頭上を飛び越えながらの背後着地より強襲を掛けた覇雷業封を前に、ペッパーはインベントリアから蜘蛛城の重剛脚(ヴォーパン・ガッドルグ)を両脚へ、女帝城の顕壁盾(ヴォーバン・ガルガンチュラ)を左手に切り替え、ノワを狙いて振るわれた獅子皇の前肢へと城塞の如き超重甲の盾と、巨樹の太根の如き踏ん張りを可能とする籠脚(ガンドレッグ)を以て、真正面から受け止める。

 

「ノワッ!」

『ワウン!』

 

重厚なる盾と獅子皇の激突、雷光が輝き足元に生まれた『影』が蠢いた瞬間、覇雷業封が真後ろに飛んで。直後に伸びた黒い棘が突き出すも獅子には届かず。

 

「いや、ナイスッッッ──────ラァ!!!!」

 

覇雷業封が後ろに飛んで回避行動を行う様に盾で受け止め、ノワの攻撃位置をも念頭に入れたペッパーが、脚を踏ん張りながらに同調連結スキルの果てへと届く超投剛肩(イレイザー・ストレート)を点火し、砲丸投げの要領を以て質量兵器をストレートでぶん投げる。

 

『グォルオオ!?!!?』

「鼻や小指に角が当たると痛いよね、すっっっごく解るよ」

 

巨大で分厚い盾の角が獅子皇の鼻っ柱にガツン!と激突し、此処までじっくりダメージを与えた中で一番良い一撃が入った手応えは、相手の鼻っ柱の腫れ具合と怒り具合からも想像するに容易い。

 

果てへと届く超投剛肩のデメリットたる数秒間の疲労硬直が解けた瞬間に、ペッパー目掛けて怒り雄叫びと共に突進する覇雷業封へ彼はノワへ片手の指先で『円を時計回りで二度描けば』、ノワは其の意図を汲み取って即座に足下から離れる。

 

此の数日のパワーレベリングの中、ペッパーがアイトゥイル・ディアレ・ノワ・ヒトミとの絆を深め、次なる戦略構築の段階(ステップ)として組み込んだ『自分達にしか伝わらない合図による行動』の一つで、此れをした場合は『ペッパーかヒトミが敵の攻撃を止めるので、側面に回り込んで止まった敵を狙い撃て』の意味を持つ。

 

両手を広げて足腰に力を込め、真っ向勝負と言わんばかりに、大質量の突撃を真正面からタイミングを合わせ、噛み千切らんと閉じる(アギト)に並ぶ上下其々の犬歯を掴み、押さえ込む。

 

歯を通じて雷が身体に流れ込み体力が削られるも、ビィラックが作り上げたマクティスシリーズの雷耐性を信じて持ち堪え、動きが止まった隙を縫ったノワの鋭利なる影の一突きが、獅子皇の無防備な脇腹に迫り。

 

「逃がす訳、無いだろ…………!」

 

両脚の最小挙動で『震脚』を起こし、敵の筋肉の震動を一瞬だが相殺した事で発生した擬似的な『金縛り』を食らい、時間にして一秒程度止まった獅子皇にノワの影攻撃が脇腹に刺さり。

 

「ッ──────オラァ!」

 

すかさず繰り出した、投擲距離特化の晴天流【波】派閥たる「引波(ひきなみ)」で純白なる巨体を投げ飛ばし、残雪で固まった天然の硬い壁へとぶつけたのだった。

 

 






小さき夜の帝王と勇者のコンビネーション


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