一投炸裂
強者という存在は『動じない』というのが条件の一つという、ある種のルールがゲーム製作のプログラマー達の間では定められている、そんな風な『伝統』か『節』が有る。
小さな夜の帝王より影の棘が脇腹に刺さり、剰え小さな小人に思いっ切り投げられた赫黒雷の白獅子皇こと、レオ・ネメアレクス"
纏う覇気もまた戦闘開始時よりも数段階跳ね上がり、猫科特有の瞳孔はより細く鋭く、四肢の置き方も『狩猟』の其れから『闘争』の構え方になった事で、あちらは自分達を『獲物』から『倒すべき敵』として認識を改めたと予感させる出で立ちとなった。
『グルルル…………!』
『ルゥウウウ…………!』
「良いね、そう来なくっちゃ面白くない………!」
両足の重量籠脚を解除から敏捷を元の数値に戻しつつ、相手と常に対極の位置を意識しながら移動して、地面に落ちた盾に触れてインベントリアに回収すれば、覇雷業封が地面を蹴って接近戦を仕掛ける。
金属製の近接武器は獅子皇相手には尽く相性が悪い、回避してポーションを迅速に胃袋に流し込んでいれば、ノワが覇雷業封の片目を狙って影の棘を伸ばして注意を惹き付け、ターゲットが変わった所にインベントリアからビィラック謹製の片手の籠手たる
夜の時間帯でのみ使える
肉食動物の視界は狩猟に特化したが故に、獲物を見定める『集中視野』となっている構造上、草食動物の『周辺視野』特化と異なり、明確に死角が存在している。其れは人間も同様で、必ず『首を動かさなければ』見えない場所の情報を得る事は不可能──────だからこそノワが動き、覇雷業封が動き、戦場に出来た死角の隙間を
「とっ!?──────なっ、嘘だろ!?おわっ!?」
だが白き獅子皇は此方の持つ『攻撃の意志』を感知したのか、はたまた空気中に放出している雷によって『レーダー』を展開しているのか、もしくは『其の両方』なのかは知らない物の、此方の攻撃よりも『先んじて動き』尚且つ後ろ足で馬の様にキックする事で、此方の攻撃に対処したのだ。
籠手を
「全く──────頼りになるね、本当にっ!」
シグモニア
予測でしか無いが、シャンフロのNPCやテイムモンスターの『ステータス配分』は、
「最速で!最短で!追い付く!!」
同調連結スキル・
『グォオッ!?』
「だぁぁらっしゃああああい!?!」
雷による感知より早く到達した飛び蹴りが、獅子皇の電撃を発生させ、首周りの装甲の役割も担う鬣に直撃。
マクティスシリーズ一式装備でも痺れる程の出力の源流に脚を突っ込んで、ペッパーの身体にダメージが入るも其の蹴りは鬣を貫き、足裏が首に接触したと理解した瞬間に
速度による威力重視、かつ衝撃貫通の鎧通しと言わんばかりの一撃を食らった覇雷業封は、一点集中で首を蹴られてダメージが喉にも影響が及んだか、呼吸が封じられた様な苦しみ方で悶え始め。
片や電撃の源に突っ込んで痺れ、超速の反動で疲労硬直を負ったペッパーをノワが帯電に痺れながらも、鎧の襟首に噛み付いてズルズルと引き摺り、一生懸命に距離を取った。
『グルルル…………!』
「す、すまんノワ、助かった…………!」
痺れで操作が普段より難痒い中で、何とか状態異常回復と回復ポーションを取り出し、
『グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』
此の地域一帯に轟く様な雄叫びと、此迄の比ではない出力で赫黒雷の放出。
空気が轟々と震撼し、残雪が有る冷寒地帯にも関わらず『熱い』と感じる其れが襲った先、一人と一匹の視線の先で純白の毛並みは
其の様たるや、両腕の剣鋏と種族の象徴たる聖剣を破壊され、破壊者を『命を懸けてブチ殺す』と決意した
だが雷のエネルギーを全身に纏い、尚且つ高出力を維持し続けている影響か、全身の毛皮や鬣がキャパオーバーによるオーバーヒートでチリチリと『焼き付き始めて』、表情にも確かな『疲労の色』が見え隠れしている事からも、相手もまた『死に物狂いで仕留めに来た』と判断するには充分で。
「もう一踏ん張りだ、ノワ!油断せずに行くよ!」
『ワン!』
命を削りて雷を纏う覇雷業封に、風雷皇の御手から
戦闘開始から一時間を越えた中、体力切れて覇雷業封の死亡という明確な『勝利条件』と、接触か直撃で自分とノワの死亡という明確な『敗北条件』の提示で、戦局は遂にクライマックスへと転換していく。
そんな彼等を遠くより見定め、此の戦場へとやって来る『大きな影が一つ』在る事を、獅子皇や勇者に分け身は知らない。
戦いは続く
タイムリミットは己の象徴たる鬣が、自身の雷刻兆武放形態による過剰電力のオーバーヒートで焼き尽きるまで。そして鬣が燃え尽きてしまえば、原種同様に電撃攻撃が出来なくなる上に、電気エネルギーを失った反動で自身のステータス全てが大幅に弱体化する、まさにハイリスクハイリターンの行動と言える。