VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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獅子の物語




覇成る御雷(みかづち)討ち取るは、小さくも止まらぬ勇者

レオ・ネメアレクス"覇雷業封(サンダルダイン)"が此の大陸で産まれ、数多の死線と修羅場を越えて生態系の中でも最高峰に辿り着いた彼にとって、蓄えた赫黒雷による電撃エネルギーで全身を満たす時は此れ迄に『三度』有り、其れは決まって『己の存在を懸ける』時だった。

 

初めてはまだ若かりし頃に、最強なる夜の帝王(夜襲のリュカオーン)との遭遇し、生命の危機に晒された中で其の身に初めて黒雷を纏い、天に覆われた曇をも吹き飛ばして、月光を地上に齎し、結果としては痛み分けという形になったが生き残り。

 

次は白亜の皮膚に業炎を纏いし巨軀なる亜竜(ジュラ・ヴァルカンレクス)との死闘に置いて、一日にも迫る死闘の末に己の生命を切札として賭けた其れを用い、亜竜の首を食い千切りて勝ちを茂木取り。

 

そして此れを最後に繰り出したのは、此の大陸の最強なる『龍蛇の一柱』との死闘で、山を砕きて丘陵を均せし、此の世に居る全ての命を憎悪する、大いなる蛇を前に死の淵にまで追い詰められながらも使った赫と黒の雷纏いに、最後は龍蛇側が何を思ったか退いた事で決着した。

 

龍蛇との戦闘以来、獅子皇は赫黒雷を放ちては、長く多くの怪物や生命と死闘を演じ、戦い続けて。そして何時からか、覇雷業封は『黒雷の白獅子』と呼ばれる様になった。

 

だが幾千の戦いを越えて、夜の帝王や最強の龍蛇をも退けた獅子皇も、生物達に平等に迫り来る『老い』からは逃れる事は叶わず、余命まで後幾許という所で彼は自らの意志で放浪の旅に出たのである。

 

戦い勝ち取って来た彼にとっては、最後に最高の勝利か敗北を以て己が歩みに幕を引きたいという、些細な願いで有ったのかも知れない。

 

そうして彼は冷寒地帯に辿り着き、獅子皇は『彼女達』と巡り合った………………嘗て己が黒雷を纏うに至った『小さき夜の帝王』、そして『夜の帝王の特別な気配を纏う者』に。

 

一人と一匹の前に降り立ち、夜と残雪が残る戦場で死闘を演じ、小さき者が命を賭けた首への一撃を食らい……………獅子皇は『覚悟』を決めたのだ。己の生涯最後の死闘に『此の者こそが相応しい』と。例え勝利しようとも、敗北しようとも、其の選択に後悔は無い。

 

其れが獅子皇の『覚悟』でも有り、そして『決断』だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎょべぇええええええええええええええ!?!ノワ、兎に角俺の身体に確りくっ付いてて!!噛み付いてでも絶対に離れるなぁぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?」

『ワゥ!』

 

発狂モード思わしき赫黒雷を全身に張り巡らせるという特殊行動を行った、覇雷業封の攻撃モーションに移動速度やらが段違いレベルで『跳ね上がった』。

 

サキガケルミゴコロやフューチャー・ヴィジョンによる敗北や死亡の瞬間の先読みして回避から、僅かな接触で死ぬならばと窮極致超越(アレフ・オブ・トランジェント)で体力をミリまで削り捧げて神経伝達を底上げし、おそらくヘッドギア型では足りなかったチェア型の出力補強を受ける形で獅子皇の速度に対抗出来ている。

 

そして何より此の状態に突入した覇雷業封にペッパー本人は『強烈なデジャヴ』を覚えており、此処までの戦いで接触による痺れを経験した為に、記憶の中から『封雷の撃鉄(レビントリガー)(ハザード)を起動して暴れまくったサンラク』の姿と重なったのだ。

 

故にこそ、シャンフロで見てきた『撃鉄使用中のサンラクのモーション』と、此処まで得てきた『覇雷業封のモーション』を掛け合わせ、更には記憶内にインプットした『有りと汎ゆる四足歩行肉食獣の動き方』を引き出し、今の覇雷業封モーションに肉付けする事によって、ノワを守りながらも弓モードの金弓宝剛剣(ゴルト・ヴァーシュ)で弦を引き絞り、カウンター射撃を放ち続ける。

 

空中を駆け走り、迸る黒い雷の残光と肌身に刺さる静電気からペッパーは、覇雷業封の残した動きを『見てから』動くのでは無く、動物であるからこそ出来る動きを『己の持つ五感』で感じ取り、脳内で得て来た情報を一刻でも速く『身体に反映させ』、高次元の予測と思考の連動による反応の時差(ラグ)を減らす様に動きを研鑽していく。

 

((むさぼ)大赤依(だいせきい)相手に出来た、脊髄反射の要領でのスキル使用…………!アレを『普段の戦闘』や『別のゲーム』でも出せる様に、常に意識し続けて『身体に馴染ませろ』!反射神経で劣る俺はそうでもしなきゃ、速度に秀でた連中に対抗出来ない!!)

 

其れはまさに戦闘を通じ、此の一瞬にすらも己を進化する姿勢を貫き、狙撃銃でやる『偏差射撃』を以てペッパーはノワを守りながらに対抗。

 

獅子皇のモーションが、視神経や筋肉に黒雷を流した事を引き金とする過剰強化と仮定し、先程から鬣が燃えている事からも『アレは長続きしない』と睨み、皇金世代(ゴールデンエイジ)のブチギレ発狂モードと同質の物と読んで、覇雷業封が死亡する前に絶対に決着を付けてやると決めた。

 

金弓宝剛剣を放り投げ、覇雷業封の攻撃を回避しながらに神律燼風(しんりつじんふう)で加速した指先でコンソールを操り、インベントリアから取り出すは灼骨砕身(シャッコツサイシン)焰将軍(ほむらしょうぐん)両刃長剣(ロングソード)

 

「決める、決めてやるッ!!!」

 

封雲の撃鉄(タイタントリガー)(スペリオル)起動!

 

雲の手を一つ作って右手に刻み付いた、リュカオーンの愛呪を相殺からのインベントリに収納からの獅子皇の飛び掛かりにコスモ・ネビュラでヘイトを置き去りに、雲の腕で両刃長剣の柄尻を支え持って落ちて来た弩弓剣(アーチブレイド)を左手に掴んで握る!

 

ノワは此方の動きに振り落とされない様に、マクティスシリーズの衣装のヒラヒラに噛み付き牙を立てている中、弦に柄尻を乗せて引き絞ると同時に真界観測眼(クォンタムゲイズ)の補助を加え、コスモ・ネビュラが獅子皇の接触で消え去った事で一瞬止まる瞬間に弦より指を放し、片手の両刃剣を戦砕琥示(ウォールフェン)の蹴りで出来た『鬣の空白』を狙い撃つ!

 

「ノワ、アレを使う!離れて──────!!!」

 

其の言葉にノワは直ぐ様離れ、獅子皇と自分から距離を取った。既にクリティカルを出し続けてた事で、混海覇印(アルカ・ク=リンゼン)(スペリオル)は起動し、条件は全て整った!

 

「いっ…………けッッッッッッ──────!」

 

轟天(ごうてん)射抜(いぬ)き並びに霊封(れいほう)一弓(いっきゅう)起動!レベルアップを通じ、進化による命中・飛距離・射出速度が強化された一射が、通電波走で残された電気の隙間を縫いながらに飛び。

 

だがほんの僅か、覇雷業封は此迄に積み重ねた戦いの経験からなる直感なのか、己の身体を『ほんの少し捩った事』で鬣の隙間を狙い飛んだ両刃長剣の鋒より逃れ、己の肩に深く刃が突き刺さって。

 

 

 

 

 

「ほぎにゔ」

 

 

 

 

 

此の時、黒雷の白獅子が()()()()()()のが、まるでヒキガエルが潰れた時に放つ断末魔の如き奇声と、()()()()()()()()()

 

そして己を『一度の斬撃と一度の絶大なる衝撃』が襲った事を理解した時、覇雷業封は己の生命の灯火が此の瞬間に、嵐の如く『一瞬で掻き消された感覚』を味わいながら、地面に倒れ伏した。

 

「レオ・ネメアレクス"覇雷業封(サンダルダイン)"。」

 

生命の終わりを、己の歩みの終幕を、噛み締め消える最中に響くは力強い声で有り。霞んで揺らぐ視線の先、月灯りに照らされて舞い降りるは、白い羽衣を纏った美しき『天女』が巨大な蟹脚の大鎚を抱えて居り。

 

「黒き雷を振るい、数多の死線と死地を越え、高みへと至りし強靭なる獅子皇よ。貴方の歩みを、貴方の強さを、貴方の気高さを、此処に生きる私は存在が消える其の刹那まで、決して忘れない。本当に──────『ありがとうございました』、そして『御疲れ様でした』」

 

数多の敵と鎬を削り、古強者へと至りし獅子に贈りし鎮魂歌(レクイエム)と共に、覇雷業封を構成していたポリゴンは崩壊し。

 

勝者のみが残された戦場には獅子皇の遺産と、高みへ昇った祝福の音色と、秘められた奥義が継承された事実を伝えられただけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『モンスター不世出(エクゾーディナリー)……解明(クリア)!』

『討伐対象:レオ・ネメアレクス"覇雷業封(サンダルダイン)"』

『討伐者プレイヤー名:ペッパー・天津気(アマツキ)

『エクゾーディナリーモンスターが撃破されました』

『称号【黒雷(こくらい)鎮魂者(ちんこんしゃ)】を獲得しました』

『称号【()する(おう)御神槌(みかづち)】を獲得しました』

『討伐者プレイヤー:ペッパー・天津気が、不世出の奥義(エクゾーディナリー·スキル)覇雷轟封(サンダルダイン)】を習得しました』

 

 

 






皇は此処に討ち果たされた



不世出の奥義(エクゾーディナリー·スキル):覇雷轟封(サンダルダイン)

習得条件:レオ・ネメアレクス"覇雷業封(サンダルダイン)"を討伐する。

効果:発動後より戦闘終了までの間、発動者の攻撃によって相手の体力及びMPを減少させた場合、敵対存在が習得しているスキル及び魔法、特殊行動を一定時間使用不能にする(システム上の能力は適応されない)。此の効果は防具及びアクセサリーの効果で軽減出来ず、あらゆる効果とは別枠で適用される。再使用時間(リキャストタイム)は一日。


歴戦の古強者の放つ覇なる雷、其の威圧は天をも轟き、世界を揺るがし、覇道を征く道を害する存在の悉くを一蹴する、至高なる皇の生き様其の物。

其れ故にこそ、不世出の奥義。

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