戦の終わり、そして継承の刻
在る刻に、三つの勇姿が樹海の空にて、閃光を描きて舞い踊った。
一つは樹海の緑より、尚も深く静かに美しく、翡翠に染まりし、クワガタの皇。
一つは樹海の影よりも黒く、木漏れ日よりも煌めく黄金を持つ、コーカサスの皇。
一つは神代の時代に産まれ、蒼天を舞う為の答えを受け継ぎ、果敢に世界を拓く二号計画の小さな人。
三つの輝きは双皇の樹にてぶつかり合い、二対の皇は一人の人が真に夢を受け継ぐに相応しい者か、己等の命を糧に確かめ、最後は一片までも悉くまでをも、燃やし尽くして散った。
其の人は、今はまだ小さな。しかし其の者は、世界を動かす人に成る…………。
「ティラネードギラファ!カイゼリオンコーカサス!」
『見事……ダ、勇者……ヨ。蒼空ヲ、舞ウ…答エ、其ノ…輝キ……見届ケタ……ゾ』
『オォ…オォ……ヨクゾ、此処マデ……至レ、タ…今ナラバ…己、ニ……託セル…』
半身を砕かれ失いながらも、2体の皇は残された半身を制御し、其の死に体の身体を立ち上がらせる。砕かれた場所からはポリゴンが溢れ落ちて、美しい甲殻は色を喪失して、段々とくすんでいく。
「お、おい!無茶するな!」
ペッパーが止めようとするも、彼等は双皇樹の間に出来た、皇樹琥珀へ其の脚を進めて行く。
『我等ノ命…ハ、モウ……当ノ、昔……ニ尽キ、果テタ……。ダガ……』
『勇者ガ…蒼空ヲ、舞イ……。輝キヲ、示ス……マデハ……倒レヌト、決メテ…イタ』
崩壊する身体で彼等は、皇樹琥珀を両脇から挟み込む形で、己の残された獲物を用い、巨大結晶塊を地面より引き抜いていく。
『勇者………我等ハ、此処デ……終ワリ、輪廻ハ、…巡ル…………』
『シカシ…、我等ノ……子等ガ……此ノ樹ニ、来タリ…守護者、ニナル…ダロウ』
最後の力を振り絞り、彼等は皇樹琥珀の結晶塊を掘り返し、根本より地面に薙ぎ倒した。
『蒼天ノ夢ト……願イヲ、神代ヨリ、紡ギシ……勇者………ヨ』
『其ノ道ニ…幸ト、数多ノ……出逢イ…在ランコト……祈ル』
2体の甲虫皇達は、ペッパーに言葉を遺して。終には其の身体は完全に崩壊。掘り返された皇樹琥珀の周りには、彼等のドロップアイテムが大量に現れる。散り行くポリゴンは風に揺られ、聳える双皇樹の合間に見える、青空へ昇って行くかのようだった。
「ティラネードギラファ。そしてカイゼリオンコーカサス。風神と雷神に相応しい力と勇姿、俺にレディアント・ソルレイアの━━━━
偉大なる甲虫の皇達よ。どうか其の御霊が、安らぎに満ちる事を。
中世時代に騎士が王族へ謁見し、頭を垂れるようにして挨拶をしたのと同じように、ペッパーは自身と戦い、最後にレディアント・ソルレイアの扱い方を伝授した、強き皇に深く、強い祈りを捧げたのである。
風と雷で造られたフェンスが消え、ペッパーは彼等が遺したドロップアイテムを、唯の一つとして残さずに回収していく。
「ペッパーはん!」
「ペッパーさん!」
「アイトゥイル!と…何で此処に居るの、レーザーカジキ!?」
激戦を見届け、駆け寄ったアイトゥイルとレーザーカジキ、彼女ならば納得だったが予想外の珍客に、ペッパーは当たり前の問いを投げ掛け、少年は事情を話していく。
「うん……まぁ、こういう事はあるよね………。セーブ忘れはゲーマーあるあるだから………そうしよう」
「あ、あの…御迷惑を御掛けしたなら、僕…其の……直ぐに離れて、見なかった事に………」
気不味くなったのか、去ろうとするレーザーカジキ。しかしペッパーは、此の時点で彼がレディアント・ソルレイアの情報と、双皇樹の位置に出現する2体の昆虫達の攻撃パターン、更にはドロップアイテムの事を知った事で、まぁやらないだろうとは考えつつ、万が一に解放して情報を拡散されるよりは、このまま最後まで突っ走ってしまう方が良いという、ある意味で大正解の結論に至った。
「あー…其の事なんだが。さっきの戦いを観てたなら、最後まで見届けてて欲しいんだが……」
「えっ…良いんですか?」
「良いよ、良いよ。乗り掛かった宝船なんだ、乗らずに後悔するくらいなら、乗り込んで楽しんじゃえ」
「ペッパーはんの言う通りさね、人生楽しんだ者が一番の勝ちなのさ」
レーザーカジキも巻き込んで、ペッパーは甲虫皇達が死の際に崩壊する身体で掘り返した、皇樹琥珀の巨大結晶塊の下を捜索する。
掘られた事によって、柔らかくなった土をペッパーが手で掻き分けてみると、一昔前に流行ったタイムカプセルの様な、其れでも外面を含めて一切の錆び付きが無い長方形の箱が在り。
器たるレディアントシリーズ一式と籠脚を、機構たる
「綺麗な物…ですね、それ」
「本当さね…」
「あぁ…確かに」
ペッパーは早速、アイテムインベントリに仕舞い、其の内容を確認する事にした。
一度稼働すれば、如何なる状況や環境下であったとしても、莫大なエネルギー生産・発生を可能とした神代屈指のエンジンであり、溢れ出る生命の奔流は、他の生命体にも影響を与え、地層や木々の成長を凄まじい勢いで書き換える程の力を持つ。
魂と成る
其の名を
(神代指折りのエンジンって…相当ヤバい代物じゃん。しかも植物や地質に影響与えるって、双皇樹と此のデカい結晶塊も、コイツが要因って事になるんだよな?
というかレディアントシリーズ、君本当の名前在ったのか。滅茶苦茶格好良いんですけど、何で金の龍王?もしかしてライブラリの言ってたユニークモンスター、天覇のジークヴルムに何か関係有ったりするんです?)
「う~ん…此れは流石に先生やビィラックさんに聞かないと、扱い方は解らないか……。でも、遂に此処まで来た訳だ」
器たる、レディアントシリーズ一式装備。
機構たる、
魂たる、
此処に神代の時代に世界へと示された、蒼空を舞う答えを構成する三大要素の全てを、ペッパーは手に入れたのだ。
が、しかし。突然空が、黒く━━━影で染まる。
「えっ!?何で、す……これ…………!?」
「あ、あぁ……ペ、ペッパー……はん…!」
「皆、どうし……た………」
見上げた双皇樹の合間に、天の光を遮るようにして降り立つ其れは、2人と1羽に絶大過ぎる衝撃を与える。
空へ広げし、黄金の四翼の膜が羽ばたく度に、吹き荒れる風は嵐の如く。
頭に生えし五つの角は、太古の時代より権威と力を示す王冠の様に煌めきを放ち。
巨体に纏いし黄金の鱗は、誰がどう見たとしても、絢爛豪華だと豪語するに相応しき美しさ。
逃げ道を塞ぐようにして、頭上を越え、其れは天より樹海窟の大地に降り立った。彼は龍の中の龍にして、龍の中の王である。
『さて……蒼天を舞う夢を紡いだ勇者は、果たしてどちらか?』
空を舞う答えの最後の1つ。そして龍王降臨。
ジークヴルムの創造時に産まれた副産物だが、小型ながらも神代最強クラスの稼働効率を誇った、超高性能エンジンとされている。
モチーフは『アイアンマン』のパワードスーツを支える動力源『アーク・リアクター』。