打開策を探れ
「エキシビションマッチに参加出来ない、だと…………?」
「壮絶なドッキリか何かか?」
「そうだったらどんだけ良かったか………」
慧から告げられた言葉に梓・楽郎が問うも、真実で相違無しと答えた彼は頭を擡げた後に、後頭部を搔く。
「ルインズ・ウォー・ハウンズ6………確かFPSで明日大会が有るんだっけ?カッツォ君、格ゲー以外でそういうの得意なの?」
「…………実は格ゲーの次に、FPSやシューティング系が得意なんだよ。少し前にスポンサーの前で『ちょっと派手に暴れまくった』事が有ってね。多分其の時の事を覚えてたっぽい」
「成程ねぇ〜、中途半端に目立ったせいで大抜擢されちゃったと」
「世界大会にお前を招集する辺り、スポンサーはガチだな」
「スポンサー命令にシルヴィアと戦うから無理だとかで、我を通せ無かったのか?慧よ」
「…………そうしたかったんだが、スポンサー曰く『世界大会は日本のプロゲーマー達の悲願であり、半端な試合で機嫌を損ねるのは避けたい』とか何とかで方便を垂れてたよ…………」
「ホント、何でこんな時にこうなるのよ…………!」
慧がエキシビションマッチに出場出来ないという、対スターレインの為に組み立てたプランの大部分が崩壊し、取れる手段も削ぎ落とされた。
「………明日のタイムテーブルだと、ルインズ・ウォー・ハウンズ6の世界大会は午前九時の開始で、私達のエキシビションマッチは午前十時から始まる事になってる」
「カッツォ、お前が出るFPSの試合時間はどんくらい掛かる?」
「一試合大体三十分を五試合、休憩込みでおよそ三時間は拘束される………!クソッ、何でこんな事になるんだよ…………!?」
永遠がスマフォで調べ、三時間オーバーという慧の不在状況と、アメリアにシルヴィというアメリカのプロゲーマー達が相手という事実が、五人に重く伸し掛かる。
だが
「…………慧。一応確認したいんだが、今回のエキシビションマッチは『勝ち抜き戦』なんだよな?」
「あ?あぁ………『1ラウンド10分で2本先取の勝ち抜き戦』だ、其れがどうしたんだ?」
「勝ち抜き戦………なら『間に合うんじゃねぇの』?」
梓が問い、慧が答え、そして楽郎が更に問う。
「え、どういう…………」
「明日のエキシビションマッチは二本先取の勝ち抜き戦、要するにカッツォが最後の五番手で出場するまでに、俺達四人で『一勝一敗をコントロールして30分フルに戦って行けば』、総対戦数は八回。理論上は『最大で240分』を算出出来る計算だ」
「もし万が一にもルインズ・ウォー・ハウンズ6の決勝戦が『エクストララウンドに突入しても』、流石に三十分より短い時間で決着を付ける可能性が高いだろう。とすれば、慧がルインズ・ウォー・ハウンズ6の決勝戦を早く終わらせれば、確実にエキシビションマッチに間に合う事になる」
あくまで理論上であり、相手のプロチームがシルヴィアもしくはアメリアを初手でぶつけて来た場合、より厳しい戦いを強いられる可能性も残っている以上、出場順も見直さなくてはならなくなってしまったが、何もしないよりはやっておいた方が良い。
「ッ…………本気で言ってるのか!?」
「あくまでも理論上だ。やれない訳じゃない。寧ろ其れをやらなきゃ、可能か否かの土台にすら乗れん」
「む、無茶苦茶…………」
慧が声を上げるが、細過ぎる可能性を掴む為に戦うのもゲーマーなのだ。恵も表情が固まる中、永遠が口を開く。
「──────相手はアメリアとシルヴィの、全米一位と二位含めた最高峰のプロ。此方はそんな相手に『三時間以上を作り出す』戦いをしなきゃならない。正直言えば『四人でプロチームを全員倒すプラン』の方が、まだ現実味は有る……………私
永遠からしても此の激難難易度の『クソゲー』は、別プランでやる方がまだ
「だけど、エキシビションマッチってさ…………大体が『先行プレイ』であると同時に、興行と言う名の『エンターテイメント』──────つまり『観客を楽しませる事』こそが至上なんだよね。だから其れを利用すれば、三時間以上の算出は不可能じゃないよ…………!」
ニヤリと。別のゲームを支配して、プレイヤー達からラスボスとまで云われた魔王は笑みを浮かべる。
「つまりは、だ…………。俺達一人一人が主軸となり、役割を果たす事によって、最終目標の『シルヴィと慧のマッチを実現する』に繋げるんだな?」
「そゆことさ、あーくん。でも其の為には、メグちゃんにも是非とも協力して貰いたいのさ」
「えっ、私も…………?」
「うん。一人一人の頑張りが、不可能を可能にするんだ。どうする?」
ニッコリと、されど自信に満ちた笑みを浮かべるカリスマモデルの誘いに、恵もまた覚悟を決めた。
「解った、やるわ………!慧の為なら、無茶振りだってやる!」
「メグ!?」
「さて、後はカッツォだけだ。乗るか反るか………どっちだ?」
不可能を可能にする為に、戦ってくれる者が居る。
其処に繋げる為に、策を講じてくれる者が居る。
嬉しくも、後々にデカい借りを残す事になれど、其れでも巡って来たチャンスに手を伸ばす為、彼は両頬をピシッと叩いて思考をクリアにする。
「わりぃ、想定外の事態にパニクってた!…………ペンシルゴン、説明を頼む。サンラク、ペッパー、メグ。俺に力を貸してくれ」
「へっ、言うじゃねーか」
「三年の研鑽が無駄じゃない事を、全米一位に教えてやらなきゃな」
「任せて!」
「…………じゃ始めようか、作戦会議と言う名の悪巧みを」
ペンシルゴンによる『時間稼ぎのエキシビションマッチ』に向けた会議が始まり、ペッパーがペンシルゴンの策に対する敵チームの対策を含む骨組みと血肉を付け、改めて複数のプランを作り出して出場順を決定したのであった………。
夕食はホテルのレストランで食べ、ホテル内の大浴場で温かい湯船に浸かってリフレッシュし、永遠から荷物を受け取り、一時間半程ギャラクシアヒーローズ:カオスでキャラを動かした後、午後十一時前では有るが昨夜は一徹してしまったので、今日は早く寝る事にする。
「アメリアが何番手に来るかは解らないけど、ある程度の事態に対応出来る順手にした。後は俺自身がプロ相手に『何処まで通用するか』……………だな」
件名:何故
from:ブシカッツォ
to:A-Z
なんで、そこまでしてくれるんだ?
「何でって………そりゃあ
簡潔な問い掛けには、簡潔に返すのがセオリーだ。文章を打ち込み、返信ボタンを押して慧へと返す。
件名:Re何故
from:A-Z
to:ブシカッツォ
二年もアーケードゲームで対戦してシルヴィに勝つ為に努力してる話や活動を知ったら、友達として力を貸してやりたくなっただけだよ。
シルヴィがシャンフロ始めたり、アメリアが緊急参戦したのも、元々俺が原因な訳でも有るしな…………。
取り敢えず明日のエキシビションマッチ、必ずお前をシルヴィにぶつけさせる。作戦成功したら、報酬でフレンチフルコースを奢ってくれ。
件名:Re何故
from:サンラク
to:モドルカッツォ
わざわざ俺たちを呼ぶくらいマジなイベントなんだろ?華を持たせてやるって言ってんだよバーカ。
上手くいったら焼肉で、当然お前の奢りな。
件名:Re何故
from:鉛筆戦士
to:モドルカッツォ
シルヴィアちゃんとの対戦、カッツォ君にとっては大事な事なんでしょ?おねーさんが一肌脱いであげようって事さ♪
まぁ実際は、コスプレ衣装を着込むんだけどね!
上手くいったら特上寿司食べたいなぁ、勿論カッツォ君の全持ちでネ?
三人に同時に送ったメール、時間差を置いて返って来た返信に慧は苦笑する。
「どっちにしても全部俺の奢りじゃん…………」
一時は絶望しそうにもなったが、今は友達やチームメイトの御陰で希望が繋がった。後は自分が覚悟を持ち、ルインズ・ウォー・ハウンズ6の決勝戦を早く終わらせる事と、シルヴィに勝つ為の最終調整をする事。
「上等だ…………!速攻で終わらせて、直ぐに戻って来てやんよ!」
決意を胸に秘め、残された時間で自分に出来る事を成すべく、彼は電子の世界へと飛び込んで行く。
そして、決戦の朝は来た。
戦いの時は来た