決戦の日
遂に此の時がやって来た。
グローバル・ゲーム・コンペティション──────GGCの二日目、ギャラクシアヒーローズ:カオスのエキシビションマッチと、ルインズ・ウォー・ハウンズ6の世界大会決勝戦を含む、年に一度のゲームの祭典が最高潮に高まる日である。
朝食は軽めに済ませて歯磨きを済ませた後、届いた荷物を持ってホテルから移動、午前八時に関係者のみが入れる会場裏口で五人揃って最終確認を行う。
「…………ある程度プランニングしたが、まさかアメリアが『一番手』で来たか………!」
「オマケにシルヴィは『四番手』…………あーくんにサンラク君、私で色々考えたけど『悪いパターン』に近い順番だ」
スターレイン側の出場順はアメリア・サリヴァンが一番手の、シルヴィア・ゴールドバーグが四番手という、およそ『ドベ』では無いにしても作戦遂行に影響を与えて来た。
「其の為に策を講じたし、順番も調整したんだ。慧、お前は世界大会でチームを優勝させる事に頭を回してくれ」
「俺達もミスれなくなったが、其の為に色々準備もした訳だしな」
「慧、私も私でやれるだけの事をやる。だから貴方も貴方の戦いを頑張って………!」
キャップ帽とサングラスを着けた梓が、ガスマスクを着けた楽郎が、そして恵が慧に言う。
「解った………。其れと皆に御守り代わりに『コレ』を渡しとく」
そう言って彼がバッグから取り出したのは『エナジードリンク』、バイトで冷蔵庫の商品棚に並べた事が有り、何より楽郎がリピーターとして購入していく、違法な様で合法な成分でエナジードリンクを製造と販売している『ガトリングドラム社』のメイン商品を飾る『ライオットブラッド』だ。
「ライオットブラッド…………しかも最新作じゃん、よく手に入ったね」
「まぁね。一週間前に販売されたばかりの
ライオットブラッドを飲み過ぎによるガンギマりの暴徒と化したなんてニュースが出たら、其れこそ回収案件になるんじゃ無かろうか?と、掌に有るライオットブラッド・トゥナイト(米国産)を見た梓は不安を覚える。
彼は『たった一度だけ』、ライオットブラッド(日本産)を飲んだ事が有るのだが、あまりにも強烈なカフェインの津波に飲まれ、長らく更新されなかったレトロゲームセンターの最高難易度のシューティングゲーム…………其の最高スコアを『大幅に塗り替え』。
其の反動と言わんばかりに、彼は『気怠さと倦怠感のサンドイッチに頭痛と腹痛と下痢の三点パンチを一週間食らい続ける』という、およそ地獄めいた大惨事に遭った過去を持つ。
故に梓にして見ればライオットブラッドは『効果持続時間中は無類のパフォーマンスを引き出せる劇薬』であり、同時に『効果切れで数日間は使い物にならなくなる毒物』という認識によって、苦手意識が染み付いている代物なのだ。
其の上8/31にはシャンフロで『天覇のジークヴルムとの決戦』が、慈愛の聖女イリステラによって
「うーむ………。数日は影響出そうだから、本当に御守りとして持って行くよ」
「私は普通のが良いかなぁ………」
「貰っとくわ」
「ありがとう、慧」
「其れじゃあ皆、エキシビションマッチの会場でまた会おう」
思い想いに言葉を述べ、ライオットブラッド・トゥナイトを受け取り、慧はルインズ・ウォー・ハウンズ6の決勝戦に向かい、四人もまた時間稼ぎの策を実行するべく行動を開始したのだった。
「顔隠しさんと名前隠しさんに恵さん。此処で謎掛けを一つ」
「いきなり何さ、A-Zさんよぉ」
「なになにー?」
「え"っ、いきなり何?!」
「えー………『敵軍に完全囲まれた城』と掛けまして、『大人気コスプレイヤー』と解きます」
「「「其の心は?」」」
「『逃げ場が無くて大変です』、御後が宜しい様で」
慧と別れてエキシビションマッチの会場入り後、コスプレ衣装に着替えて移動したまでは良かったのだが、コスプレがコスプレ故か道中にて来場客から『写真良いですか?』と言われたのが今の状況に繋がっている。
「あ、あの!此の銃持って下さい!」
「えー、あ、はいはい………こう?」
「そうそう、とっても良いですね!」
「レプリカの剣です!決めポーズを!」
「はいはーい、こんなのでどぉ?」
「素晴らしい!
己の顔を最後の最後まで誰にも晒さず明かさ無かった上に、ゲームの仕様によってプレイヤーにもバグ技諸々込みで、顔の解析が『絶対に出来ない様』にされたという、ゲーム内の名脇役で人気投票でもトップスリーに入る、顔無しの傭兵『ジャック』というキャラなのだ。
一方の
其の攻略難易度的にゲーム内でも上位に食い込み、プレイヤーによっては『ラスボスよりも凶悪なボスキャラ』という評価が下された、ある意味で永遠に相応しいとも言える。
其れも含めれば自分のコスは、永遠が注文した物を使うべきかと最後まで悩んだ物の、時間稼ぎの観点から見た梓は『最強のレトロゲーマー・A-Zの衣装』を選択、こうして着替えた訳なのだが──────
「レトロゲーマーのA-Zさんのコスですか?!」
「あー………まぁ、はい」
「すごっ、本物そっくり………」
「同じ衣装調べたんですか?」
「そうですね、類似品からアタリを探して………結構大変でしたね」
思った以上に名前が知られていたらしく、一部のコアなファンから伝播して他の来場者もスマフォで撮影し出したりと、今になってコスを変えるべきだったかと後悔したが、着替えに戻って帰って来る時間を含めると、エキシビションマッチ開催時間に間に合わなくなると暗算で導き出され、泣く泣く諦めるしか道は無かった。
「あ、そろそろ時間だし、私達此れから向かわなきゃいけない場所があるから!」
「すいません、此れで失礼します」
至極丁寧に断りを入れて、そそくさと
「皆。慧が到着するまで、俺達は不利な戦いを強いられる事になる。だけど此処でキッチリ任務を果たして、各々が望む報酬を手にしよう!」
「人様の奢りで、焼肉を味わいてぇ!」
「特上寿司を此の手に!」
「フレンチフルコースを掴む!」
「えっ、あ、えっと…………山盛りのフライドポテトとパスタの為、に………で良いのかな?」
「よし、じゃあ行こう!」
「「「応ッッッ!!!」」」
決意と覚悟と食欲を胸に、四人は大将到着の時間稼ぎをするべく、戦場へと赴いた。
出陣