此のゲームの本質
ギャラクシアヒーローズ:カオスに置ける『勝利の定義』は色々存在するが、其の中でも一番とも言える物が『ロールプレイ』だ。
ヒーローならばヴィランを倒して市民の平和を守る事、逆にヴィランならば平穏をブチ壊して己の存在を証明する事と、要するに『キャラの生き様』に準ずる事によってヒロイックゲージ、或いはヴィラニックゲージを効率良く高めてMAXまで持っていける。
一昨日と昨日の練習に作戦会議を通じて、楽郎が此のゲームの事を『ノートと鉛筆と消しゴム』と例えていたが、其の例えは的を得た物であり。ヴィラン側がノートを汚しまくってゲージを貯めるが、余白が無くなれば貯める事が難しくなり、ヒーロー側は鉛筆汚れを消しゴムで綺麗にする事で、ゲージを貯められるという点。
前半はヴィランの、後半はヒーローが優位に立つ状況──────其れから導き出される答えは、ヴィランはヒーローと『接敵しない方』が良いという、謂わば『鬼ごっこ+かくれんぼ』の複合に加えて、シャンフロシステムによって自由の幅が更に利かせた市民や警察等のNPCとの交流や、或いは敵対を絡めて現れる『特殊な部隊やオブジェクト』を利用する事こそが、此のゲームに置ける『必勝への鍵』なのだ。
「はぁあああああああ!!!」
「こんのっ…………、バカスカ蹴りやがってなァ!!」
「ぅぉ"ぶねぇ!?」
流石アメリカのプロ格ゲーマー、もう此方の脚撃や蹴りに対処し、モーションの『ギア』が入りつつ有る。
カースドプリズンというキャラは、元々が鈍重な代わりに攻撃の重さと馬力は通常時でも、此のゲーム内で最上位に位置する。何せミーティアスが十数発叩いてやっと減らせる体力のパラメーターを、カースドプリズンは一発で削り取っていけるのだから、パワーキャラの面目躍如と言えるだろう。
おまけに破壊したオブジェクトを取り込んで各部を強化すれば、高機動仕様や重装甲仕様にも変貌する事を踏まえても、対カースドプリズン相手にミーティアス側は別ゲーで言う所の『的確なクリティカルを常に出し続ける』という技術が、
「エンジンが掛かったか、カースドプリズンッ!!」
「最高速度で蹴り込んでみろ、全力で叩き落としてやるよッ!!」
「上等だッ!!!」
省略式クラウチングスタートから直線加速を絡め、ゲージ消費を対価としてミーティアスの技・スターロード起動、其の刹那にミーティアス加速したと思えば、五度の衝撃が都市の空に響き渡って蒼黒い閃光が戦場を迸り──────
「ぐぬっ!?」
「ギリッちょぐぶぇ!!?」
クロスカウンターの要領で『天地逆転ラリアット』がカースドプリズンの顔面に刺さり殴り倒したが、勢い余って自分も下手なプロペラブーメランみたく、地面にぶつかって数回バウンドから体勢を立て直す。
此れこそ対スターレインに備えて用意した『三つの刃』、其の第一たる『
完成度成功率共に45%、やり過ぎれば三半規管が大ダメージを受け、下手にスッ転んで吹っ飛んで乱数の女神にゲラゲラ嗤われるので、今の時点では『ラウンド毎に二回まで繰り出せる』と自らに回数制限を課した技、此れで此のラウンドはもう使えない。
「今のはかなり効いた………!」
「そりゃどーも!」
接近、加速、交錯、脚撃、拳撃。機動力を活かして此れまでに培い、研鑽し続けたヒット&アウェイ戦法を『対アメリア・サリヴァン用』に再調整しながら、彼女が操り振るうカースドプリズンへと対抗する。
だがバカスカ殴られ蹴られども、元よりノーダメ勝利は捨てているアメリアにとって、多少の被弾は必要経費として割り切り、己の攻撃を軽くても着実に叩き込む事を意識し、決定的な隙を作るべくA-Zの攻撃を少しずつ『パリィ』し始めた。
「チィッ………!」
「ハッ、さっきの『変則挙動』は回数制限付きか?
「何の事かな、とぉ!!」
気付かれてる。プロゲーマーともなれば此方の一挙手一投足から、アタリを付けてくるのも早い。冷静を取り繕い、ロールプレイを崩さず、全力で叩け。蹴ろ、殴れ、手と脚と思考を、此の一瞬とて止めるな。
「防戦一方じゃないか、カースドプリズン!」
「よく吠える!そら、其処だろッ!」
「な、ごぁ!?」
バックステップからの再度接近に移行する刹那、其処にカースドプリズンのゲージ技・
対カースドプリズンに置けるゲージ技の奇襲は『想定していた』が、其れに対処出来なければ『対策した』とは言えないのは自明の理、背中からのダウンにカースドプリズンの重い一撃が腹部を貫く。
「くふっ………!」
「オラッ!」
「負けねぇ………よぉ!!」
肺を含めた臓器に衝撃が走り、フルダイブVRシステムを通じて身体と脳にアバターを通じてダメージが、追撃の一発が顔面に迫り来る中で脚パリィで腕を弾いて、鳩尾を思い切り蹴る。
「効かねぇなァ!」
「チィッ………!」
「オカエシ、だあああッッッ!!!」
「うぐおおおおおおおおお!?!」
対するカースドプリズンは鳩尾の蹴りを、己の膝を曲げる事で衝撃を緩和、自重を利用する
柱が崩れて瓦礫という『オブジェクト』と変わった其れを逃さず、カースドプリズンは再びゲージ技による『引き寄せ』を行い、ダウンによって寄り掛かったミーティアスごと自分の得意とする距離へ引き摺り込む。
「取っ──────『コレを待ってた』ぐっ!?」
引き寄せられる瓦礫、身体を後ろに反らしたミーティアスが空中で回転するや、スターロードの音が鳴りて瓦礫がいきなり『加速』し、カースドプリズンと激突する。
瓦礫の裏側でミーティアスの衣装の膝アーマーに守られた飛び膝蹴りが、カースドプリズンの引き寄せの速度を上げた事で吸収時の反動が乗算、其の為に起きた物理的衝撃による『硬直』が僅かに発生して巨体が止まった。
「必殺、首切りコンバットォ!!!」
「ぐっらああああ!!!」
真上から落ちる死神の鎌が如きミーティアスの右脚振り下ろしと、硬直解除が一瞬間に合った事で左裏拳によるカースドプリズンの迎撃が交錯。
「アタシのッ──────勝ちだッ!」
「えぇ。此のラウンド
監獄に囚われた者の左肩に爪先が着弾するが、破壊し取り込み纏っていた乗用車フロントパーツが守り、剛腕の一撃が蒼黒の流星の顔面を捉えて振り抜き、地面へと叩き落とした。
残された僅かな体力が尽き果て『ミーティアス K.O.!』と、ヴィランの勝利を告げるアナウンスが響き、ケイオースシティの情景はキャラクター選択後の空間へと書き換わり、次なる『ラウンド2』へと繋がっていく。
第一ラウンド、決着まで八分三十四秒の出来事であった。
全米二位は伊達じゃない