VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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彼女が感じた事




力戦奮闘のポワソン 〜正悪の放つ躍動〜

(何だ今の速度は!?)

 

第一ラウンドでA-Zが操りしミーティアスの速度を見、彼をメタる為の重装甲装備に御召替え。接敵から完全に見切っていた速度が、いきなり『加速』した事による連撃を受け、膝を着かされた事にカースドプリズン………アメリア・サリヴァンは驚愕する事になった。

 

(A-Z)が操るミーティアスは確かに『部分的』に、空中での挙動と速度に関しては『確信』とも言える、自分が越えんとする全米一位(シルヴィア・ゴールドバーグ)の速度に比肩して。あの流星とは全く異なる、バースト時代に使った拳を絡めたグラップルで、攻撃のバリエーションを持たせているのも『悪くは無い』。

 

だが自身が倒したいと願う流星に届き得るだけの其の速度が、限られた回数しか繰り出せない事を知った時、アメリア・サリヴァンは『こんなもんか』という失望の、或いは『期待外れ』の感情に満ちた。

 

第二ラウンド開始と共にスタート地点付近に在った車販売店を襲撃し、駆け付けた警察官や逃げ惑う市民を殺さない程度に痛め付け、車やバイクの装甲にエンジンを取り込み終わった所でA-Zが到着。

 

会話でのやり取りを経て加速接近したミーティアスを叩き潰さんと、完璧なタイミングで振るったカースドプリズンの攻撃は、更なる加速を行った流星により虚空を切り…………外装を砕かれバランスを崩し掛けた中、背負ったエンジンの一つが蹴られて曲がった事で膝を着かされ、見上げた先に輝く『煌星』をカースドプリズン──────アメリア・サリヴァンは見たのだ。

 

「完全に見切った割に、盛大に空振ったなカースドプリズン。知ってるだろう?俺の速度が『こんなもんじゃない』って事くらい…………さっ!!!」

「ッ!?ぐおっ、ぬぐ…………!!」

 

見上げた先の空中に居た、ミーティアスが一瞬で加速した。気づいた時には目の前に、視界に広がる膝がカースドプリズンに刺さり、其処から繋がった右アッパーで搗上(かちあげ)られ、体勢を立て直さんと上半身を戻した所に左側頭部にミーティアスの肘が入るや、直後に繋いだ後ろ回しの三日月踵蹴りが、カースドプリズンの纏う装甲を歪ませ、衝撃が身体を襲う。

 

(『此の動き』は何だ!?アイツのミーティアス、いや今迄戦ったミーティアス達とは……………『攻め方』がまるで()()!!)

 

拳と蹴り、四肢と速度を利用しながら、しかして響く様な攻撃。ミーティアス使いが出せる火力をアメリア自身が『よく知っている』からこそ、A-Zの操るミーティアスの『不気味さ』を犇々と感じ取れた。

 

「どうした、カースドプリズン。そんなんじゃ『其の鎧』は脱げないぜ?」

「こんの…………良い加減にしやがれ!!」

()()()()()()()()、何回此のシチュエーションを『想定した』と思ってる」

「がっ!?」

 

踏み込み殴らんとして、足刀蹴りで太腿を止められた。自ら倒れ込みながらもスターロードで空を踏み、サッカーボールキックで胸部を叩いたミーティアスが、凄まじい速度で空中に逃れてガトリングキックを御見舞し、再び拳と脚に膝や肘を絡めた猛攻を叩き付ける。

 

だがアメリア・サリヴァンは揺すぶられ様とも崩れない。ボコボコにやられっ放しは彼女自身が許さない。そして何よりA-Zというプレイヤーに負けたくないという、産まれてから人一倍の『負けず嫌い』で有名な格ゲーマーたる女の。

 

『絶対に勝つ』というスイッチが、A-Zのミーティアスによるサッカーボールキックの衝撃でバチンッ!と入り。ハッキリとした音と共に、乱打を受ける中で『ドス黒いエネルギー』を伴って彼女を衝き動かしたのだ。

 

「うおぁあああああ!!!」

「ッ!」

 

ゲージ技・凶星引力(フォビドゥン・グラビティ)で瓦礫を引き寄せ、其れを殴って砲弾に変えて吹っ飛ばす。距離を取れば回避可能な距離。

 

(だが其れは『ヒーローじゃない奴の思考』だ!)

 

瓦礫砲弾の先、マンションの中に取り残された市民が居る!其の場所まで走れ!砲弾の軌道をドロップキックで変えろ!

 

「横から蹴りィ!!」

 

スターロードの挙動に、シャンフロで得て来たスキル・一歩目限定の超加速を齎す『シューティングスター』及び、同調連結スキルの超速(マッハ)を組み合わせてギャラクシアヒーローズの世界で再現した第二の刃『疑似(エセ)超速流星(シューマッハ)』で回り込み、建物を利用した跳躍と回転で補強したドロップキックで砲弾瓦礫の横っ面を蹴り、軌道を逸らす。

 

「隙を見せたな!」

 

適当を乞いてブン投げた瓦礫の先、逃げ遅れた市民が居たのは予想外で有り、同時に奴が市民を助ける為に走ったのも予想だにしなかった。

 

だが御陰で繋がった、脚部のエンジンを稼働させて両腕のタイヤを更に投げ込み、フリーになった両手を用いたボルダリングの要領でマンションの外壁を登り、射程距離に飛び込んだ。

 

「取っ……「『助かった』よ、御陰で足りた」っあ!?」

 

ダンク体勢で叩き潰さんとしたカースドプリズンの前で、ミーティアスが空を駆け走り、前のラウンドで二度見せた『五回変則空中殺法を三回に絞った挙動』で上を取った刹那、背後に回り込んだミーティアスがカースドプリズンの後頭部を蹴り飛ばして、マンションの外壁に顔面を叩き付けさせる。

 

「テメッ、やってくれたな!」

「ッ、外装が分厚い………!?」

「ッオラァ!」

 

体力はミーティアスがほぼノーダメ、カースドプリズンが二割を切る。取り込んだ車の装甲が此処までの連撃で犠牲になるが、蹴りから離脱せんとしたミーティアスの僅かな硬直を、脚のエンジンをオーバーフローさせて顔面と上半身前面部を紅葉卸にする勢いで振り返り、カースドプリズンの左腕がミーティアスの足首を掴まえ。

 

「やっべ………!?」

「ブッ潰す!!!」

 

パン職人がパン生地を専用の台へ叩き付けるが如く、エンジンのオーバーヒートによる爆発が齎すブーストに、カースドプリズン自身の腕力が加わった渾身のスイングが放たれ、両腕を差し込んだミーティアスをマンションの外壁に叩き付け、建物の中をブチ抜きながら外壁すらも突破し、別の路地まで投げ飛ばした。

 

「くっ、やっぱ効くな………!」

「おあああ!!」

 

マンションの一階ロビーをブチ破り、複数のバイクを取り込んで脚部のみを武装したカースドプリズンが迫り来る。勝機を逃したく無いとの判断か、最低限の装いをしなくては主導権を奪い返せないと判断か。

 

A-Zはアメリア・サリヴァンが『リアル・カースドプリズンに最も近い』と呼ばれる理由は成程こういう理由(コト)なのかと思いながらも、接近する宿敵の大質量タックルを前にクラウチングスタート体勢より、真っ直ぐに迷う事も無く更に加速し。

 

 

 

 

 

 

「潰れっ……………ろぉ!!」

「──────(ここ)

 

 

 

 

 

 

カースドプリズンという壁が、ミーティアスを押し潰さんとした………………ほんの僅かな隙。カースドプリズン──────其れを操るアメリア・サリヴァンという格ゲーマーが持つ、自身にすら気付かない『無意識の癖』を過去の公式戦の動画から導き。

 

『タックルの瞬間にほんの少しだけ首が上に向く』事を、第一ラウンドと第二ラウンドの中で確かめたA-Zによる、乾坤一擲の『爪先蹴りによる貫脚』が、カースドプリズンのタックル直撃よりも速く、隕石着弾に似た衝撃と共に自身の加速をも乗算された一撃が突き刺さって。

 

「ぎっ、ぐぁ………──────」

「負けに直結する分の悪い賭けに勝った感覚は、ゲームの醍醐味だな………。やっぱり心臓に悪いや、うん………」

 

体力が一割強まで削られるも、序盤で蓄えたリードによって生き延びたヒーローと、終始ヒーローの掌の上で踊らされていたと後ろに倒れながらヴィランは悟り。

 

「良いぜ『AZ』、此のラウンドはテメェにくれてやるよ」

「次のラウンドも、俺が貰う」

 

カースドプリズンの仮面が笑い、其の奥底に見える瞳が『猛禽類』の如く、自分をロックオンしたのが見えて。

 

最後は重量キャラの十八番たるカウンターによってヴィランが背中から崩れ落ち、両脚のタイヤによる暴走をしながら店舗に突っ込んで、ガスが引火したのか大爆発を起こして勝者の姿を映し出す。

 

仮想の電脳都市(ケイオースシティ)に『カースドプリズン K.O.!』を知らせるアナウンスが響き渡った。

 

 






星は燃えている


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