VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ジークヴルムとペッパーのオハナシ




龍王は英雄を問い、そして兎の国へと降りる

ドラゴンとは。中世ファンタジーや狩りゲー等でも、ポピュラーな存在であり、ゲーム内のラスボスだったり、居なければ華が無いと言われる程に、居て当然の存在と認識されているモンスターだ。

 

英雄の前に立ちはだかる魔王が真の姿として、龍に転身する王道シチュエーションがあったり、竜の力を其の身に宿したヒロインが、アイテムで変身した姿に成る等でも、ゲーム内ここすきシチュエーション上位に食い込む程に人気が高い。

 

そんなドラゴン………もとい、現在ペッパー達の目の前に降り立った龍こと、ユニークモンスター・天覇のジークヴルム。ライブラリのリーダー・キョージュとの話し合いで、リュカオーンのマーキングの仕様と取引して教えて貰った、七つの最強種の一角たる金色の龍王が、自分達の目の前に居る。

 

『さて……蒼天を舞う夢を紡いだ勇者は、果たしてどちらか?』

 

ドラゴン特有の長い首を此方に寄せ、細いキャッツアイに似た瞳孔がペッパーとレーザーカジキを見つめてくる。

 

耳に聴こえてくるのは力強い鼻息と呼吸、肌に古部り着く圧倒的な威圧感。夜襲のリュカオーンとはまた異なる、別ベクトルの覇気を放つ巨体。

 

此れが天覇のジークヴルム、空を統べる龍の中の龍であり、そして龍の中の王かと、2人は否応無しに理解させられる。

 

「あ、あわわわ……」

 

レーザーカジキは完全にビビり散らかして、バイブレーション鳴らしっぱなしの、一昔前の携帯電話みたいになっていた。

 

「あ、あの…!天覇のジークヴルム…さん!」

『む…?貴様……其れは…!』

 

少年を庇うように、ペッパーがジークヴルムに話し掛け、龍王の注目が此方に向けられた。と、ジークヴルムが彼の脚に装備された、レディアント・ソルレイアに気付く。

 

『そうか…!そうか、そうか!貴様が蒼空を舞う答えを受け継いだ勇者か!ハッハッハ!会いたかったぞ!』

 

ジークヴルムが高らかに笑う。とんでもない声量が放たれ、樹海窟の木々が暴風雨を受けているかのように、大きく揺れた。

 

『其れに…クックック!『忌々しい犬が刻んだ呪い』と『我が友の首輪』を共に身に付け、世界を拓いているとはな!面白い…実に面白いぞ!!』

 

忌々しい犬というのは、間違いなく夜襲のリュカオーンである。しかしペッパーは此の時、ジークヴルムの発言によって、ある1つの答えに辿り着く。

 

ヴァイスアッシュが『神代の時代に蒼空を舞う答え』について、自分とアイトゥイルに話した時、彼が『顔見知りに逢いに行っていた』という発言、先程のジークヴルムが言った『我が友の首輪』によって、点と点が線で繋がった。

 

「ジークヴルムさん。もしかして…先生が。ヴァイスアッシュさんが言っていた顔見知りって、貴方の事でしょうか…?」

 

ペッパーの問いに、ジークヴルムは頷き。

 

『……如何にも。貴様の言う先生……我と『ヴァッシュ』は、旧き時代よりの友である』

 

唯、事実と共に答えたのだ。

 

ヴァイスアッシュが、ユニークモンスターのジークヴルムと知り合いである。此の時点で既に、色々と頭がこんがらがりそうになるペッパー。

 

「お、おい!あれ!?」

「え、何!?金色のドラゴン!!?」

「やべーって、滅茶苦茶デカいぞ!?」

 

と、タイミングが良いのか悪いのか、騒ぎを聞き付けた他の開拓者達が続々と此方にやって来ている。

 

『む…他の開拓者達か。此処では窮屈だ。ペッパー、そして我が友の娘っ子よ、我の手に乗れ』

「えっ!?」

「ぴょえ!?」

 

まさかの展開に思考が追い付かない状況で、ジークヴルムの『早く乗らんか』という眼力による無言の圧力に、ペッパーとアイトゥイルは「アッハイ」と従うしか無く。龍王の左手に乗った1人と1羽は、巨龍の羽ばたきと共に双皇樹の合間より空へと脱出し、高く高く飛んで行った。

 

尚、其の場に置き去りにされたレーザーカジキは、口を開けたまま気絶してしまい、駆け付けた開拓者達のパーティーによって保護され。其の際にメンバーの1人が、空に飛び立とうとするジークヴルムを、強烈な風圧の中に居ながら、気合と根性のスクショを行った事によって、此れが大波乱を巻き起こすキッカケとなるのである…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャングリラ・フロンティア、上空。

 

西の空から夕焼けが情景を彩る中、天に舞い上がり、四翼を羽ばたかせ飛ぶジークヴルムは、左手にペッパーとアイトゥイルを乗せていた。

 

「………空、高い…………」

「風が、強いのさ……」

 

ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサス、今は亡き双皇とレディアント・ソルレイアを身に付け、遺機装の使い方を教えられる形で戦った時の比にもならない高さに上がったペッパー。

 

今までの人生で経験したことの無い高さから、此の世界を見たアイトゥイルもまた、壮大すぎる光景に言葉を失ってしまう。

 

『ハッハッハッハッハッハ!此れが我が見ている景色ぞ、蒼天を舞う勇者よ。其の気になれば貴様も、此処まで飛ぶ事が出来るのだからな!』

 

吹き付けてくる風の中でも、ハッキリと聞こえてくるジークヴルムの声。もし………こんな所から落ちよう物なら、間違い無く。例外無く。漏れ無く自分とアイトゥイルは死ぬ。

 

ならばジークヴルムが、自分達を此処に連れて来たのは何故だ?理由を思考しようとしても、既に色々と有り過ぎて、解らなくなってしまった。

 

と━━━━━━

 

『………蒼天を舞う勇者よ、貴様に問おう。貴様にとって『英雄』とは、如何なる『存在』であるか』

 

先程の笑い声は何処へやら、ジークヴルムが地平線の彼方を、そして更に上に在る宇宙を眼差し、ペッパーに問いを投げてきた。此処での回答はおそらく、自分達の運命に関わる。

 

此れはアレだ。失敗が許されない、一発勝負のQTEだ。ペッパーはそう判断して、今までのレトロゲームで培った様々な英雄像を思い浮かべ、言葉にして黄金の龍王へと話す。

 

「…………俺にとっての『英雄』は。『弱き者を守る者』だと、思います。例え報われなくても、誰かに後ろ指を指されても。己を曲げずに、使命を果たす存在だと」

 

汝は弱き者、牙無き者達の。

明日を開きし、剣と成れ。

 

アクションレトロゲームの、明らかに強キャラ感を演出しながら、序盤で死亡してしまったお爺ちゃんキャラが居た。其の人がプレイヤーの操作する主人公に向けて、そう言っていたのを思い出し。

 

「『ある人』は言いました。………『最後まで倒れない者が英雄では無い。最後まで諦めない者こそが英雄たりえるのだ』━━━と」

 

カスタムロボットゲームの中盤、折り返しとなるイベントで此処まで生き残っていた隊長キャラが、絶望的な状況下で新たな力に覚醒した主人公を逃がす為、たった一機のボロボロになった機体と共に、分厚い扉の前に居座って、孤軍奮闘の果てに死亡するイベントの中、主人公へ最後に贈った言葉を紡ぎ。

 

「そして━━━『取り零さずに居るだけでは、決して英雄には成れない』…そう思っています。俺が仮に英雄に成るのだとしたら…『自分の手の届く範囲を救い、誰かと手を取り合い、其の手の届く範囲を広げられる』。そんな英雄に…俺は成りたい」

 

某RPGのラスボスが、主人公とヒロインに犠牲を強いた世界の、業の深さと残酷さを説いた時に、2人が長い旅路の果てで、辿り着いた答えをラスボスに叩き付けた台詞で決める。

 

此れが正解なのかは判らない。そしてジークヴルムの考えている英雄像が、如何なる物かも定かでない。

 

最早ペッパーに出来るのは、自分の答えがジークヴルムにとっての大当たり(クリティカル)による生存か、大ハズレ(ファンブル)による死亡の二択で。

 

大ハズレになった場合は、アイトゥイルだけは見逃して貰えるよう、ジークヴルムに嘆願する事しか出来ない。

 

『フッ…フハハハハハ……!ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!』

 

ジークヴルムが笑う、此れはどちらだ、死亡か生存か。

 

「ジークヴルムさん!俺の事はどうなっても良い!せめてアイトゥ『合格だ!蒼天を舞う、神代の夢と願いを紡ぎし勇者よッ!』……ほぇ?」

 

嘆願した其の時、ジークヴルムが笑い声を上げた。大当たり(クリティカル)ですか、正直落とされると考えたし、まだ油断は出来ない。正解と見せ掛けて大ハズレの可能性も残っている。

 

『そうとも。あぁ、其の通りだ。我もそう『教えられた』のだ。英雄とは…何時の時代も、弱き者を守る事が仕事であると』

 

ジークヴルムが懐かしむように、天を見上げて語っている。教えられた?いや、えっ?どういう事?

 

『蒼空を舞う勇者よ。我を目指し、我を模した『神代の傑作』を継ぎし者よ。試練の時は必ず訪れる。其の時に我を越える力を、己の信ずる者達と共に、我に示して見せよ』

「ッ………はい!」

 

色々有ったが、残された僅かな思考を何とか働かせ、判った事は一つ。レディアントシリーズよ、とんでもなくヤベー逸品じゃねーか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジークヴルムと共に空を飛び、数十分が経過した頃。空は夕焼け色のオレンジから、段々と暗闇が空のキャンパスを塗り潰していく中で、突如としてアイトゥイルが叫んだ。

 

「あ、ペッパーはん!彼処見るさね!」

 

彼女が指差す先、見えてきたのは一つの島。自分達が先程まで居た千紫万紅の樹海窟が在った、巨大な大陸から離れた先にポツンと浮かぶ島が在る。

 

「アレは…?」

「ペッパーはん、彼処は何時もペッパーはんが拠点にしてる、ワイ等ヴォーパルバニーの産まれ故郷、兎の国・ラビッツなのさ!」

「………………マジで?」

 

という事はジークヴルム、まさかラビッツ目指して飛んでいたって事?後コレ、此のままラビッツの何処かに着陸するって事?大丈夫、他のヴォーパルバニー達がパニックにならない?

 

『ハッハッハッハッハッハ!蒼空を舞う勇者よ、我が友の娘っ子よ!此のままヴォーパルコロッセオに着陸するぞ!』

「えっ!?ちょ、大丈夫なんですか!?先生居なかったら、不法入国になったりとかしません!?大丈夫ですか!?」

『問題は…………無い!』

「え"、ぢょ、本当に大じょばああああああああああああああ!!?!?」

「ぽびぁああああああああああああ!!?!!」

 

ジークヴルムが一気に加速し、ペッパーもアイトゥイルは風圧で吹き飛ばされないよう、必死にしがみつく以外に方法が無く。

 

ものの数十秒、言い替えれば1分に充たない時間で、金色の龍王は天井が開けた、闘技場らしき場所に降り立った。

 

ペッパーとアイトゥイルは、ジークヴルムの左手から転がり落ちるように、実に何十分振りの地面の感触に感謝して。

 

不意に見上げると其処にはラビッツの王、ヴォーパルバニーの大頭・ヴァイスアッシュが、真正面でジークヴルムを見上げていた。

 

「あ!先生!御見苦しい姿を晒しました!」

「オカシラ!ただいまなのさ!」

 

1人と1羽が直ぐ様正座に姿勢を立て直し、同時に頭を下げる。

 

「おぅ、よく帰ったなぁ。ペッパー、アイトゥイル。しかしまぁ、ジークヴルム。…おめぇさんが、人を手に乗せて飛ぶなんてよぉ」

『フッハッハッハ!我が友ヴァッシュよ!我も数多の挑戦者を見てきたが、此処までの男はそうはおらんぞ!何せ英雄とは何たるかを、よく理解していたのだからな!』

 

グワッハッハッハッハッハ!!!と、またしても高らかに天に笑うジークヴルムは、ふとペッパーを見て、こう言葉を残した。

 

『蒼空を舞う勇者………いや『ペッパー』、だったな』

「えっ、あはい。ペッパーです」

『そうか……━━━━━』

 

 

 

 

 

 

其の名前━━━━━確と『覚えた』ぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうしてジークヴルムは『また逢おう!我が生涯の友、ヴァッシュよ!』とそう言い放ち、ジークヴルムは四翼を力強く羽ばたかせ、闇の帳が降りる空へと飛んで行った。

 

其の煌めきは、空に瞬く一等星の光より明るく。

 

其の速さは、天を走る流星より速かった。

 

「凄いな……ジークヴルムさん」

「はっはっは!そりゃあそうさ、何たってアイツは龍達の王なんだからよぉ。其れになぁペッパー、アイツが人の名前を『間違えずに覚える』のぁ、滅多にねぇんだぜ?」

「えっ、そうなんですか先生?」

 

無言で頷くヴァイスアッシュ。またしても変な方向で感情の矢印が向けられた事に、ペッパーは身震いし。

 

「あ…そうだ、先生!此方を!」

 

そう言って彼は、アイテムインベントリから千紫万紅の樹海窟の皇樹琥珀の下に埋められた、神代の箱型カプセルに納められている、頂星煌炉心(ビックバンピース)を箱ごと取り出して、ヴァイスアッシュに差し出す。

 

「おぉ…おめぇさん、クワガタとカブトムシの試練を超えたのかい」

「はい。双皇から『よくぞ此処まで至った』と『其の道に幸多からん事を祈る』とそう言われました」

「そうかぁ…アイツ等も、満足して逝けたって訳か……」

 

空を見上げ、ヴァイスアッシュは煙管で煙を噴かして。其の後、青年に向けてこう言った。

 

 

 

 

「ペッパー。おめぇさんが集めた3つの要素、1つに束ねて、蒼空を舞う為の『答え』を甦らせてやろう」

 

 

 

━━━━━━━━━━━と。

 

 

 

 






神匠が動く


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