VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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第二ラウンドを見届けて




一念通天のソルベ 〜次戦へ更なる熱を焚べて〜

(こっわ)ッ…………』

 

実況及び進行を兼任担当する笹原(ささはら) エイト、アイドル人生史上初の、有りの儘の心情を実況で吐露した瞬間だった。

 

第一ラウンドでカースドプリズンに敗れたミーティアス、其のミーティアスが第二ラウンドで人が変わった様に、まるで『気持ち悪いレベル』でカースドプリズンの挙動を読んだ行動は、彼女からしても『恐怖』の感情を憶えるには充分な異質さで。

 

『──────はっ!?だ、第二ラウンドの勝者はミーティアスを操るA-Z選手!七分の息付く間も無い戦いの中、アメリア選手の動きをほぼ読み切って勝利を掴みました!!』

『そう、ですね。私も仕事で色々なゲーマーと対戦したりしますが、あのレベルの読みの深さを持つゲーマーは経験上、片手で数えられる程度しか知りません………』

 

気を取り直した彼女から話を振られた解説席の浅間(あさま) 絢斗(あやと)でさえも、A-Zというプレイヤーの『底知れなさ』に冷や汗が額に滲む。

 

()()は時間経過と共に、相手の挙動や無意識の癖を学習し、自身の戦略に組み込む事で進化して、其の相手に合わせた攻略法を導き出すというのが、A-Zという怪物(プレイヤー)の強さなのだと。

 

もし仮に戦うとすれば、『あらゆる手を尽くして速攻を仕掛け、戦略を構築する前に倒し切る事』が単純(シンプル)ながらも、一番の最適解になると()()する程度には『警戒』している。

 

 

 

「やっべぇわ、アレ…………」

「アメリアがボコボコにされたのって、シルヴィ以来じゃない………?」

「あぁ………。というか、普通にヤベェとしか言えない………」

「アメリアがAZって言ってたけど、もしかしてバーストでシルヴィと戦ったミーティアス使いだったりする?」

「そういや、そんな情報が出てたな」

 

疑念はざわつきへ伝播し、衝撃は興奮か畏怖へ変わり、会場内はどよめき出し、人々の注目が蒼と黒の流星へと向けられる。

 

 

 

『──────アレは『モンスター』か?』

『読みの深さが尋常じゃねぇ………。ハッキリ言って『ドツボ』にハマったら、抜け出すのは俺でも厳しい』

『アメリアの動きをほぼ完璧に『把握してるね』。此れはかなりの強敵だ』

『良いねAZ、バーストよりもずっと強くなってる…………!けど彼女も『スイッチ』が入ったみたいだよ』

 

アメリアを相手に大立ち回りを繰り広げたA-Zの動きに、スターレイン側の出場者達もまた各々の言葉を口にし。しかし視線の先に映るカースドプリズンの、アメリアの背中には闘志が業火の如く燃え上がっているのを感じ取る。

 

彼女はまだ諦めていない──────何よりやられっ放しで終わる程、全米二位にまで上り詰めた女が甘くないと知るが故に、彼等と彼女は此の戦いから目を逸らす事は無い。

 

 

 

「……………何、アレ…………」

「ウチの先鋒がギア上げた結果」

「相手の情報を仕入れて、戦略が組み上がったらこうなるって実例」

 

そして爆薬分隊(ニトロスクワッド)側の参加者達もまた、A-Zの開示された実力に動揺する者とそうでない者の両極に分かれ。

 

恵は恐怖やら畏怖やらを含む声を強張らせ、顔隠し(No Face)名前隠し(No Name)は其の実力を知るが故に、画面の中に示された結果を受け入れている。

 

「………いや、いやいやいや、だとしても相手は全米二位(アメリア)よ!?其れをあんな…………」

「信じらんないと思うが、此れがアイツの『強さ』なんだよ、夏目(ナツメ)氏。仮にやり合うなら『初見殺し』やら『速攻』とかで勝負しないと駄目な訳さ」

「そーそ。()()あーくんはバースト時代に、シルヴィちゃん相手に手を読んで攻撃を届かせた。カッツォ君があーくんの攻略に苦心してる程の『読み』、アレを突破するには彼の『読み以上の一手』じゃなきゃ崩せない」

 

嘘では無く、淡々と本当の事実を述べる顔隠しと名前隠しに、恵の脳のキャパシティがオーバーして。最終的には「い、イカれてる…………」と述べ、コスプレイヤーの二人は「「だよね~」」と其々仮面の下に隠した目で、明後日の方角を見ながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(第一は八分半、第二は七分。準備分のカウントダウンを含めて、稼げたのは約十六分弱…………。あんまり良くは無いが、アメリア・サリヴァン程の実力者相手に頑張ってる方では有る…………とは思いたい)

 

第三ラウンド開始へのカウントダウンが始まる中、ミーティアスの掌を開いては閉じる行動を繰り返すA-Zは、第二ラウンドの決着の前にカースドプリズンが宣った事を思い出す。

 

(アメリアを、彼女を『本気にさせた』以上、第三ラウンドは今より苛烈で苦しい戦いは避けられない。場合によってはラウンドのギリギリまで時間を稼いで、勝利条件の『ケイオースキューブ確保』を達成も…………)

 

其の選択肢が浮かんだ時、A-Zは其れを脳内の奥底に置いたゴミ箱へ、キューブ確保の思考(プラン)を丸めるや、ダンクシュートの如く叩き付けて『リセット』する。

 

(…………彼女は俺を本気で倒す為に動く。何より全米二位の本気だ、下手な思考(ノイズ)は負けに直結する。何より──────本気の全米二位と戦える、こんな好機(チャンス)は『金輪際』来ないかも知れない!)

 

プロゲーマーとなって世界の強豪達と渡り合う…………そんな『未来』も可能性として有るだろうが、其れはあくまで未来の話でしか無い。なればこそ、彼はゲームをする時の己の原点に立ち返る。

 

「自分にやれる全力と本気で挑む…………!鎧に閉じ籠もった()()をブッ倒して!俺は偽物から本物になるんだ!」

 

流星は燃える、自らの存在をケイオースシティに、そしてギャラクシアレーベルの神・ギャラクセウスへ証明する為に。

 

 

 

 

アメリアにとって、A-Zが操るミーティアスはシルヴィア・ゴールドバーグが操るミーティアスと、まるで毛色が違った。

 

此方の行動の幾手も読みながら、全てを把握したかの様な挙動と共に、最適解では無くとも己の操るカースドプリズンの悪意と向き合い撃滅する姿は、アメリアからしても久しく感じた『圧倒的な不自由の押し付け』だった。

 

(此の感覚は………『懐かしい』。シルヴィ相手に完敗とも言えるくらいに、ボコボコにされた『あの日』以来だ)

 

アメリア・サリヴァンは全米のプロゲーマー達の中で、人一倍どころか下手をすれば三倍は下らない、とんでもなく『負けず嫌い』な性格である。

 

彼女と初めて激突し、自身が操るカースドプリズンを苛烈なまでに、そして圧倒的な力で叩きのめされた、あの日の感覚を呼び起こす。

 

(………負けたくねぇ………!………負けらんねぇ………!)

 

そして其れは、今の自分が操る呪われし監獄(カースドプリズン)が原作のコミックと同じ、力を出せぬままに鎧という枷に縛られ、何も出来ぬままに神に押さえ付けられているという状況(シチュエーション)と合致していた。

 

(A-Zに、ミーティアスに………『勝ちてぇ』!!)

 

内側から噴き出し、全身を巡るドロリとした感情が彼女に力を、カースドプリズンに力を与えてくる。思いのままに戦えと、己のままに力を振るえと、そう訴えかけるかの様に。

 

「絶対に倒す、そしてオレは……オマエを、ミーティアスを越える!」

 

縛られ封じられた監獄の中で、星は息をし威吹が渦巻く。己の()()()に本物は何たるかを()()らせるべく、鎧の内なる鼓動は脈を打ちて胎動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして運命の第三ラウンドが──────来る。

 

 






雌雄を決す


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