VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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途轍も無い光景に




意気衝天のサラダ 〜第一戦のクライマックス〜

『ヒロイックゲージが回復し続けてる!?こ、此れは一体…………!?』

 

第三ラウンド開始から数分経過、アメリアのカースドプリズンが脱獄(プリズンブレイク)発動の数十秒前、其れに気付いた笹原(ささはら) エイトは声を上げた。

 

普通ヒロイックゲージは、救助活動等の行動で無ければ増えないのが『常識』。そうで有るならば、一体何が起きれば此の様な事態になるのかと、彼女が驚愕するのも無理は無い。

 

『成程、そういう事でしたか…………!』

 

そんな中で唯一人、解説の浅間(あさま) 絢斗(あやと)が事態の真意に気付いた。

 

『ど、どういう事でしょうか………?』

『第三ラウンドでA-Z選手が報道ヘリ墜落時に、キャスターやカメラマンを助けていましたが、おそらく救助後にケイオースシティに『自分が戦っている映像を流す様に頼んだ』のだと思います。原作のミーティアスも市民からの声援を受けて立ち上がる場面が有り、此の現象をシャンフロエンジンが『ヒロイックゲージのリジェネ』という形で算出したのだと。まさか彼は最初から、コレを狙っていたのでしょうね…………!』

 

彼の解説にエイト含めて、ほぼ全員が度肝を抜かれた気分になった。誰も彼もがA-Zというプレイヤーを『怪物(モンスター)』だと認識するには無理も無く、シャンフロエンジンによって齎されたNPCの行動の自由度、其の要素すらも利用したヒロイックゲージのリジェネという無法に近い、しかしヒーローだからこそ出来る(許された)合法たる御業に、言葉すらも失ってしまう。

 

「……………えぇ、ナニ、それ…………」

「いやぁ〜アイツとんでもないですなぁ、名前隠し(ノーネーム)殿に夏目(ナツメ)氏」

「そうだねぇ、顔隠し(ノーフェイス)殿。良い物見せて貰っちゃいましたねぇ〜♪」

「いや、いやいやいや…………えぇ…………あんなん有り、なの………?」

「残念だけど、此れ現実(リアル)なのよね〜」

「A-Zはシャンフロシステムとの相性自体良いんだが、此処まで来ると流石に笑えてくるわな。ただ…………全米二位の方はどうやら『諦めちゃいない』らしい」

 

スターロードで消費したゲージを回復からのラッシュを叩き付けるミーティアスに対して、カースドプリズンはダメージを受けながらも瞳の奥で燃える炎が更に激しさを増したと、顔隠しは画面越しに見ていた。

 

『い、イカれてやがる…………!』

『ルーカスの言う通りだ。だが『ヒーロー』として見りゃ、あれ程の『ヒーロー』に相応しい奴はそう居ない』

『此のゲーム、新次元の『格ゲー』と見せ掛けた、本当のジャンルは『シミュレーションゲーム』だね。こりゃ今迄と見方がガラッと変わるな』

 

スターレインのマッチョ達もA-Zというゲーマーのイカれ具合、思考深度から導き出し作り出す盤面構築を含めたコントロールにも長けていると、そう確信するのにも充分で。

 

『さいっこうだよ、AZ………!今の君は最高にミーティアスをしてるね………!』

 

ヒーローは声援を受けて立ち上がる。人々の願いや声がヒーローに無限大の力を与えて、ヴィランを撃滅する其の光景は正しく『ヒーローとは何たるか』を示す事に等しい。

 

リアルミーティアスとまで呼ばれた、自分だからこそ理解出来る。AZは確かに自分に比肩し『リアルミーティアス』と呼ばれ得るに相応しき、凄まじいゲーマーなのだと。

 

だが、アメリアも…………カースドプリズンもまた、此のまま指を咥えて終わる事は決して無い。

 

脱獄(プリズンブレイク)ッ!!!』

 

装甲が弾け飛び、緋色の凶星が鼓動する。カースドプリズンがプリズンブレイカーと化し、限られた僅かな時間の中でミーティアスの体力を削り切るべく、賭けとも言える博打ながらも最も有効な一手に出た。

 

ヒロイックゲージがリジェネしようと、ミーティアスの完全上位互換という圧倒的なアドバンテージで、体力をゼロにしてしまえば其れで完全に決着が付くのだという、アメリア・サリヴァンの答えがA-Zに襲い掛かる。

 

同時に全員が確信した──────此処から三十秒、瞬きの一つすら厳禁な戦いが起きると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼黒い光と緋色の光が、ケイオースシティを走る。

 

空中や地上、建物の壁を含めた場所でぶつかり、光り、輝き、瞬いて、迸る。

 

「っく、早いっ……!」

「もうオマエにチャンスは、渡さねぇッ!!!」

「ごっふ!!…………そう簡単にヒーローが沈むかァ!!!」

「ぬがっ!!まだだぁ!!」

 

拳が蹴りが飛び交い、跳躍し疾走し、一秒が十秒とも言える戦いの中で、互いの打撃が入る。

 

腕を差し込み、ガードが空いた場所を晒し、ダメージ覚悟の誘い込みからカウンターという、攻めの後の先を取りながらもA-Zはゲージリジェネによって得た、ゲージ技の使用し放題というアドバンテージを活かしながらも、三十秒逃げ回るのでは無く、三十秒でプリズンブレイカーを打倒するという一番賢くない(燃える)選択を取った。

 

「ぐぬ、うらぁ!」

「おおおおッッッ!」

 

プリズンブレイカーの右フックによる顔面直撃を受けど、首を傾けて衝撃を回転で緩和して左の脇腹を狙いを偽装した、鋭いローキックで右脚を蹴る。

 

脱獄の猶予は残り二十秒、カースドプリズンの体力が残り一割、ミーティアスの体力は一割を切り、ゲージリジェネというヒーローの優位を得ながらも、戦局はカースドプリズン優勢へと傾き始めている。

 

(残り十七秒!届く!足りる!ブチのめすッ!!)

 

アメリアがギアを上げ、プリズンブレイカーの蹴りがミーティアスを捉え、地面に叩き落とす。アスファルトに激突する寸前、ミーティアスがスターロードを使って空中で鉄棒を用いた逆上がりでもするかの様に、体勢を立て直した。

 

残り十三秒、ミーティアスが腹部を押さえて膝を付く。動きが止まった、建物を利用しての挙動で一気に接近、そして其のままリーサ『パァン!!!』

 

「──────………………!?!?」

「とっておきってのは、最後まで取って置いてこそ、とっておき…………なんだよね」

 

プリズンブレイカーを、アメリアを襲った『突然の音』。A-Zが繰り出したのは、今の自分に繰り出せる最速挙動の『猫騙し』。

 

此迄一度も繰り出さず、アメリアが繰り出す速度を体感し、ミーティアスが窮地に陥ったと彼女に確信させた『最高のタイミング』で、意識外から音の爆弾を起動して決定的な隙を作り出す。

 

「条件は揃った!!」

 

脱獄猶予残り十秒、猫騙しで怯んだ刹那に両拳でアッパーを食らわせ吹き飛ばし、ミーティアスが素早くポーズを決めて空中に飛び上がれば、星のエネルギーが右脚に迸り、神々しいオーラが全身を包み込む。

 

当てる前に邪魔されれば敗北必至の決定的な隙を産み出し、放たれたならば星のエネルギーを流し込んで爆砕する、ヒーローキャラの中でも高い追尾性能(ホーミング)を誇し、ミーティアスの超必殺技『ミーティア・ストライク』!

 

ヒロイックゲージをほぼ使い切ったにも関わらず、もう大部分が回復している事からも絶対に修正されそうな予感を抱きつつ、殴られて空中に回るプリズンブレイカーの驚愕に駆られた表情が、ミーティア・ストライクで接近する中で走馬灯を見るかの様にミーティアスの瞳に映る。

 

殆どのゲーマーでさえも己の負けを確信する、ほぼほぼ王手(チェックメイト)と確信する絶望的な詰み盤面。ある者ならば恨み節を挙げながら倒されて、ある者ならば引き攣った笑みを浮かべながら最後の台詞を吐いて散る。

 

 

 

 

 

 

 

だがアメリアは…………プリズンブレイカーは…………最後の刹那まで『諦めてはいなかった』。

 

 

 

 

 

 

 

「まっだ、だぁアアアアア!!!」

 

プリズンブレイカーが身体を捻る。身体を乱回転させながら迫り来る己の敗北に抗い、第一ラウンドでミーティアスが繰り出した首刈りコンバットキックを、己の身体でヤケクソとも言える天地逆転状態から放ったのだ。

 

「ぐぉっ!?!」

「うごぁ!!?」

 

ミーティア・ストライクを帯びた右脚が、プリズンブレイカーの顔面に。プリズンブレイカーの首刈りコンバットキックが、ミーティアスの鳩尾に刺さったのは『同時』であり。

 

注ぎ込まれたエネルギーの爆発でプリズンブレイカーの、ヴィランが最後の最期に繰り出した足掻きの一閃がミーティアスの、残された体力を『0』にする。

 

そして互いに意識が暗転して、システムから告げられたのは──────。

 

 

 

 

 

 

DOUBLE KO(ダブルノックアウト)!』

 

『RESULT………DRAW!』

 

 

 

 

 

 

 

「…………何?」

「…………えっ、相打ち?」

 

 

まさかの引き分けという、誰もが予想だにしなかった決着であったのだ。

 

 

 






正悪の相打ち


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