決着の後に
『ログアウトします』
まさかの最終局面でコンバットキックによる反撃。ミーティア・ストライクの影響で姿勢が固定されたのも有るが、あの状況からアメリア・サリヴァンの最後まで諦めなかった姿勢は、プロとしてもゲーマーとしても素直に敬服する。
仮想世界に融けていた意識が現実世界の己の身体へと戻り、システムが身体を起こしてA-Zが立ち上がれば。
────────────!!!!!
まるで地震でも起きたかの様な大歓声に、会場全体が震えた。
「凄かったぞ、A-Z〜!!!」
「お前、プロゲーマーか?!」
観客席から響く、見物客の声の数々。激闘を終えてドッと疲労感が襲い掛かる中、軽く手を振ってファンサービスをすれば更に声は大きくなる。
「いや凄いな…………」
『当たり前だ。アタシ相手に引き分けまで持ち込んだんだからな』
振り返ればアメリア・サリヴァンの姿が有り、其の表情は何処か清々しい物で。
『お前のミーティアスは確かに、シルヴィが操るミーティアスに匹敵していた。アイツとは別の意味でモンスターな点も含めてな』
『はぁ………ありがとうございます』
全米二位からモンスター扱いされながら、そう言えばダブルノックアウトの判定はどういう結末になるのか?と、疑問を抱けば進行役の
『只今のラウンド3でアメリア選手とA-Z選手の対戦は、両者ダブルノックアウト判定により、ラウンド奪取数は二対ニとなりました!よって此れより五分間の休憩を挟み、エクストララウンド…………即ち延長戦を行いたいと思います!』
延長戦決定という形になった事で、取り敢えずは休まなくてはいけないと、アメリアとA-Zは各々の陣営の控え席に戻って行き。
全米二位相手に引き分ける程の大接戦を繰り広げた男は、仲間達にドン引きやらニヤけを含んだ雰囲気と共に、生温かく出迎えられた。
「やぁやぁ、A-Z君。合計二十分の激闘でアメリアとのエクストララウンド突入とは、初っ端から素っ晴らしい時間稼ぎだねぇ〜♪」
「おぅおぅ、A-Zさんや。お前さんの読みがエグ過ぎて、
「えっと………貴方って未来予知者、だったの?アレを常にやってるってホント?」
「えぇ………」
普通の事を普通と言っても、イカれてるのはお前だよと言われても仕方無いと、そんな無慈悲な宣告された気分になりながら、A-Zは此の戦いで得られたプリズンブレイカー時のアメリアの挙動を思い起こし。目を閉じる事で集中力を高めつつ、カースドプリズン時の挙動も含めた反映と精査を脳内にて行い、対アメリア用の戦術のアップデートを行う。
『A-Z選手!インタビュー良いでしょうか!?』
「んぉあ?!?」
が、此処でカメラマンを連れてやって来たエイトとカメラマンにより、唐突なインタビューがエントリー。会場全体にコスプレをした
「えっ、えっ?インタビュー??」
『簡単な一言でも頂ければと!』
「あ〜…………えっと…………」
其の時、A-Zの脳裏に浮かんだのは自分にとって大切なゲームのリメイクが来た事で。
「──────ギャラクシー・ブレイダーズは…………良いぞ、最高だ。リメイクが来る前に是非とも体験してくれ。あと知り合いが
『はいっ、インタビューありがとうございました!』
「さらっと自分の好きなゲーム言いやがったなぁー」
「良いでしょ、其処ん所は………。少しでもギャラブレが知られれば、俺は嬉しいんだよ」
取り敢えず大好きなゲームと、新作で狂乱してるだろうルスト&モルドの応援にもなったろうと思いつつ、突発的インタビューを越えたA-Zは再び対アメリア戦術構築と、エクストララウンドでの立ち回りを思考しては答えを導き出さんと、無言の戦いを続けて。
『──────さぁ、御待たせ致しました!此れよりA-Z選手とアメリア選手のエクストララウンドを開始したいと思います!』
インタビューも含めた五分間の休憩が終わり、エクストララウンドの開幕を告げるエイトの声が響き、観客の声もまた会場を揺らしていく。
『エクストララウンドは特別ルールとして、制限時間五分のバトルエリア縮小状態、そして両者共にゲージは超必殺技発動可能ラインまで貯まった状態でスタートとなります!勝利条件は第一から第三ラウンドまでと同じです!』
「取り敢えず頑張ってくるわ」
「いってらっしゃーい」
「頑張れー」
慧がシルヴィアを倒す為にも、彼女の意識から『ある物の存在』を忘却させる事──────先鋒としての己の仕事を果たしつつ、作戦のバトンを後ろに続く三人へ繋ぐ為と想起した、彼の大仕事が始まる。
結論から言うと、A-Zはアメリア・サリヴァンというプロゲーマーを『かなり重く見ていた』。
全米一位のシルヴィア・ゴールドバーグ、ギャラクシアレーベルのミーティアスの作者から直々に『リアルミーティアス』と太鼓判を押された彼女、そんな彼女の操る流星を捉えらえ、追い込める程の実力者。
第一・第二・第三のラウンドを通じて己の抱いた感想は、確かに間違っていなかったという
「そうさ!あぁ、そうだとも!ゲームは何時だって『
組み立てた戦略を!構築した対アメリアの戦術を!!蓄積した自分の経験の全てを!!!此の戦いで全身全霊と全力全開で昇華しろ!!!自分が悔いを残さぬ為にも!!!
「行くぞ、ミーティアス!
「来いよ、プリズンブレイカー!」
脱獄中のカースドプリズンは、ミーティアスよりも性能は上だ。
成程、確かに良い判断だ。
速攻で潰せば、戦略も、戦術も。
初手から最高の手札でさえ、全て無に帰し台無しに出来る。
だからこそ────────────
「らぁっ!」
「此処でしょ?」
「ぐっ!?」
速攻をカウンターされた時の『ショック』は、実行した人間の心に際立って響くのだから。
A-Zというレトロゲーマーは、元々は『カウンターを得手とするプレイヤー』…………此れ迄シャンフロでは高機動と高火力を両立する、そんなスタイルとスタンスを取っているが、彼の元来のスタイルは『打たせて学んで逆襲から討ち取る』事だ。
思考をアーケードゲーム・ビルディファイトの持ちビルドキャラ『ノブ=ナッシュ』とし、プリズンブレイカーの攻撃を対アメリア用に調整し続けた『ヒット&アウェイ戦法』で凌ぎ、超必殺で高まったステータスの連撃を捌いてカウンターを叩き込むという、およそ高機動低耐久キャラが実行する事自体『間違っている』と思わざるを得ない戦法。
しかし…………第一から第三のラウンドを通じて証明された、A-Zというプレイヤーの『底が見えない思考』によって、アメリアのプリズンブレイカーは少しずつ
そうして此の日、此の戦いを観ていた観戦者の一人は、後にこう語った。
『A-Zは…………、あのプレイヤーは…………『底無し沼』。いや………もっと言うならば、『ブラックホール』の様な男だった』──────と。
もう一踏ん張り