VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

845 / 1073


此れが彼の戦い方




雲外蒼天のコーヒー 〜選択と決断と結果のマリアージュ〜

「チィッ………!」

「うん、其処だね」

「馬鹿が、其れを………」

「読んでない、と思ってた?」

「がっ!?」

 

第一・第二・第三のラウンドを通して戦い、そして此処までA-Zの掌で踊らされ、転がされている感覚をアメリア・サリヴァンは抱いていたが、此処に来て其れがハッキリと知覚出来る程度には追い詰められていた。

 

(コイツ、何処まで読んでやがる…………!?)

 

日本の武術の達人には相手の呼吸や姿勢、体重移動や足の置き方に置き場所から、相対した相手の次の一手や数十手先の一手が解る者が居る。

 

特に百戦錬磨のジャパニーズチェスプレイヤーともなれば、其の読みは最新のAIで作られたチェスプレイヤーですらも、対局の果てに『自ら投了してしまうレベル』の読みの深さに、打開の一手を見抜いて叩き付ける事に長けた存在。

 

そして今…………自分が対面している此の男もまた、そんなジャパニーズチェスプレイヤーに匹敵、いやおそらくは『其れすら上回る読み』を以て、プリズンブレイカー状態のカースドプリズンに対抗していたのだ。

 

「こんの………!」

「其処、そして時間切れ」

「っぐ………!」

 

三十秒という時間制限(タイムリミット)が来て、プリズンブレイカーが再び鎧に封じられる。其の瞬間を皮切りに、ミーティアスが三次元を味方に付けた挙動で天地を掛け、カースドプリズンを殴り蹴りの反撃に転じる。

 

(こんな奴が居るとは…………。世界にゃあ、まだまだ知らない強い奴が居るってこった…………!)

 

インファイトを食らいながらも、アメリアはA-Zの読みを越えて打撃を掠らせ、勝利を勝ち取る為に其の瞬間を待つ。ミーティアスが蹴りを打ち噛まし、カースドプリズンを踏み台に空中へと逃れた、此の瞬間をアメリアは待っていた。

 

(今!)

 

ヴィラニックゲージはゲージ技が一発放てる状態まで貯まった。後はタイミングを合わせる事。狙うは脱獄使用時に吹っ飛んだ鎧の回収、そして組み付きからエンジン全てのオーバーヒートによる『自爆』。

 

正直言えば『もうこれくらいしか勝ち目が見えない』という、詰みの一歩手前にまで追い込まれた、彼女自身の最後の悪足掻き。其れでもカースドプリズンの耐久ならば耐えられると、そう踏んでの行動と選択で有り。

 

「──────()()()()()()()()()()()()()()

「………………なっ、にぃッッッ!?!?」

 

見上げた先の空中で、規定のポーズを決めながらの超必殺技(ウルト)を発動したミーティアスの姿が在って。

 

「自爆覚悟でエンジンのオーバーヒート、其れがカースドプリズンが最終局面で狙うと踏んでいた『逆転の一手』。だから其処にミーティア・ストライクを()()()()。…………エクストララウンドに突入するとは自分でも予想外だったけど、戦う前から『想定して置いて正解だった』し、こんなに『楽しくてヒリ付いた戦いは初めてだった』よ」

「ッ──────この、バケモノめ…………!!!」

 

相手を知り、進化を止めず、ありとあらゆる可能性を綿密に備え、そして戦いの中で敵を攻略する。A-Zはおよそ人間の領域では無い、人の形をした思考と学習を高次元で両立する、ホラー映画の『侵略者(エイリアン)』じみた怪物(モンスター)だとアメリア・サリヴァンは悟るに至り。

 

「今日の所は俺の勝ちだ、カースドプリズン!」

「……………認めてやるよ。だが、次はオレが勝つ──────ミーティアス!!」

 

流星が電脳の街を、カースドプリズンを貫き、注ぎ込まれたエネルギーが溢れ大爆発を起こし、爆炎を背に地面を擦り削りながら、ブレーキを掛けて停止したミーティアスの姿が画面一杯に映った瞬間、システムが『WINNER!! ミーティアス』という結果を提示した事で、エクストララウンドまで縺れ込んだ三十分に近い激闘と激動の先鋒戦は、此処に幕引きとなったのである………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『決着ーーーーーー!四ラウンドにも及ぶ大激闘の末、最期に勝利を掴んだのはA-Z選手!アメリア選手を相手に一歩も引かずに戦い抜き、会場を盛り上げた両選手に拍手が送られています!!!』

 

システム側からのログアウトを受け、仮想世界から現実世界へと戻った身体に重ったるい感覚が伸し掛かる。耳に響く大歓声と拍手の雨霰を聞きながら、A-Zは自分でも成し遂げた事の重大さを感じ取った。

 

「あ〜…………。兎に角、御疲れ様だな俺…………」

『ヨォ、AZ』

 

システムチェアに寄り掛かったまま居る彼を、一足早く立席したアメリアが覗き込む様に見つめてくる。

 

『どうも。アメリア・サリヴァンさん、戦って頂き…………ありがとうございました』

『あぁ。良い試合だった』

 

重い体を起こしながら英語で話し、真正面から向かい合って利き手を差し伸べれば、彼女もまた利き手で握手を返してくる。

 

其れを見た観客達も大盛り上がりで歓声や拍手がより高まったが、蓄積した疲労や重圧からの解放の反動でA-Zが振ら付いたのをアメリアが見、背中を支えて爆薬分隊(ニトロスクワッド)陣営の控え席まで送ってくれた。

 

「やぁやぁ、A-Z君。勝利おめでとう、大金星の大激闘だったね」

「良かったなぁ〜、A-Zさんよぉ〜。お前が普通じゃねーって事が、世界に証明されたぞ〜?」

「えっと、御疲れ様………!」

 

名前隠しに顔隠し、恵からも祝辞の言葉を受け取りつつも、今の自分の状況を簡潔に伝える。

 

「ありがとう、皆。…………正直言うとアメリアさんとの戦いで、俺は『限界が近い』状態だ」

 

アメリア相手にエクストララウンドまで戦いを持ち込み、彼女を攻略する為に思考をフルスロットルで回し続けた代償は、三人から見ても目に見えた彼の声色や立ち姿から『疲労』を感じ取るには充分だった。

 

『アンタの状況、アタシがあっちの連中に伝えておく。座って休んでな』

『………………ありがとう、ございます』

 

もっと体力を付けなくてはと新しい課題を見付けた彼は、控え席に座って息を吐きつつ、両目を閉じて脳を休めて。アメリアが実況進行役の笹原(ささはら) エイトに状況を伝え、彼女の情報から運営は協議を行った結果、五分のインターバルを挟む運びとなった。

 

そうして五分後、ギャラクシアヒーローズ:カオスのエキシビションマッチは次なる戦いへ──────A-Z 対 ルーカス・ガルシアの試合に移行する運びとなったのである……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚A-Zは此の後、ルーカス相手に最高とは程遠いコンディションの中で、何とか第三ラウンドまで縺れ込ませる大健闘を見せるも、最終的に敗北を喫し。

 

しかしながらプロを相手に、合計算出時間『四十五分』という、先鋒として充分過ぎる大役を果たし切ったのだった。

 

 






後詰をやり切り


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。