VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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次鋒戦




原作へ忠実に、即ち其れはリスペクト

『ギャラクシアヒーローズ:カオス、スペシャルエキシビションマッチ!此れより第三戦、Nu2meg(ナツメグ)選手 対 ルーカス選手の試合に移ります!』

 

A-Zが初っ端からアメリア・サリヴァンを相手に大激闘を繰り広げ、ルーカス相手にも立ち向かい戦い抜いた姿により、会場のボルテージが高まりに高まった中で進行する、慧不在のエキシビションマッチ。

 

昨日と一昨日の作戦会議、スターレインのルーカス・ガルシアについて事前調査によれば、前作のギャラクシアヒーローズ:バーストでチームメンバーのジェイソンとアレックス、アメリアやシルヴィを含めて世界ランキングでトップ20を維持し続け、彼は其の中でも一時期五位に入った事も有る実力者。

 

爆薬分隊内での作戦中の呼び名(コードネーム)は『スケコマシ』で、出先の地で女を口説く事で知られ、噂では女のパパラッチすらも口説くという『チャラ男』……………其の内誰かに刺されそうな人間関係がチラ付く中で、彼が選んだのは前作からの持ちキャラ『Dr.サンダルフォン』、対する恵が選んだのは『ユグドライア』という、第一戦と同じくレーベル内のヒーロー対ヴィランの構図だった。

 

『ルーカス選手はDr. サンダルフォン!Nu2meg選手は…………ユグドライア!此れは第一戦と同じく、同レーベルのヒーロー対ヴィランの原作対決だーーーーーー!!』

『Dr.サンダルフォンは前作でルーカス選手が持ちキャラとしていた中でも、一番の勝率を誇っていたキャラですね。バーストと勝手が違う中、一番安定したキャラを選ぶのも一つの選択肢でしょう。Nu2meg選手もバーストでの勝率が高いキャラを選んだので、勝負はどうなるか解らない所が有ります』

 

解説の浅間(あさま) 絢斗(あやと)が中間の視点で話をする中で、此の状況を爆薬分隊(ニトロスクワッド)側のメンバー二人は静かに見守りつつ、各々の想いを語る。

 

「よしよし、取り敢えず対ルーカスの第一関門は突破だね」

「A-Zが原作対決でかなり『盛り上げた』からな。合計で五十分くらい稼いだ御陰で、だいぶ良い流れが作れてる」

 

目を閉じて視覚情報を意図的に遮断する事により、脳のリソースを回復しているレトロゲーマーを見つつ、顔隠し(No Face)名前隠し(No Name)は巨大スクリーンに映り、第一ラウンド開始からの準備時間(ヴィラニックタイム)に入ったユグドライア(Nu2meg)に注目した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何で私が全米最強に近いプロゲーミングチーム相手に舐めプしなきゃいけないのよ…………!)

 

夏目(なつめ) (めぐみ)はプロゲーマーである。爆薬分隊の一員として、そして一軍として戦う彼女は心の内に渦巻く感情を吐露していた。

 

練習と称した総当たり戦で、ガスマスクの男は自分の事を嘲笑う様に煽り散らかし、カリスマモデルは平気な顔でビルを爆破してジェンガ遊びを行い、オリジナルコーデをしたレトロゲーマーに至っては此方の手の内を透視してるのかと言わんばかりの読みと共に詰ませ、彼女は三者三様ながら『全員が頭のネジが外れたイカレポンチ達』と認識したのだった。

 

自分はプロの中ではあまりにも凡庸………そう認識しているからこそ、プロでも無い奴等にボコボコに打ちのめされ、自分自身の非力さを痛感しているからこそ、彼女は自分自身に怒っていたし、理不尽な運命に対して『責任転嫁』を敢行していた。

 

(上等よ………!神様が嘲笑おうが、仕組まれた運命だろうが、叛逆してやろうじゃないのッ!)

 

怒りの感情とは時として、其の人間の限界点を砕く力を発揮する。理不尽への叛逆、逆境を乗り越えんとする意志、そういった要素は人や生物に未知なる進化を促す。

 

ユグドライアの設定、サンダルフォンとの関係、外道二人の作戦、先鋒のレトロゲーマーが実践したシャンフロエンジンの特色と、其れを活かし切る為のロールプレイ。

 

其れ等を踏まえた『新生ユグドライア』としてNu2megがビルのガラスを脚の根を突き立て、次から次へと破壊しながら向かう先の視線には、ケイオースシティ随一の『巨大病院』と道中にオブジェクトとして配置された『ある物』の位置を確認し、ヴィラニックゲージを使用したユグドライアのゲージ技『罠種子(トラップシード)』を仕掛け。

 

「邪魔するわよッッッ!!!!」

 

伸ばした植物の腕で病院の外壁引っ掛け、窓ガラスを蹴り破って病室の一室に突入。入院中の患者や見舞いに来た関係者が、唐突なヴィランの強襲で悲鳴が悲鳴を呼ぶカオスが巻き起こる。

 

「ウフフフフ…………!アーッハッハッハッハ!!!(あーもー恥ずい!コレ思った以上に滅茶苦茶恥ずい!あーもうどーにでもなーれー!?!?)」

 

彼女は辿々しく、羞恥心に駆られながらの高笑いで入院患者の中から子供を人質に取り、御年寄と若い者達を次々と生け捕りにヴィラニックゲージを高めていく。

 

恋人同士を引き裂き、ぶん投げて窓ガラスから外に放り出し、人質を抱えて外の様子を見て見れば、携帯電話を持つ何処か草臥れた風貌を醸し出す、サンダルを履いた三十代程の白衣に袖を通すアロハシャツにアロハズボンの医者が、自分の投げた市民を地面に激突前にキャッチして降ろす姿を目視。

 

「おーおー、随分派手に暴れてるじゃないか『ユグドライア』?」

「来たわね、ナンパ大好き()()()()()!」

「ナンパ大好き中年オヤジ……!?………いやまぁ、此のキャラじゃあ否定はしないが、あとナンパは余計だろ!?」

「うっさいわ、スケコマシ!」

「スケコマシ!?」

 

ルーカスは相手やゲームの本質を研究し、理解する程に強くなる頭脳派(インポスター)であり、慧やA-Zに自分と『同じタイプのプロゲーマー』だ。A-Zがアメリアとの激闘で示した『ロールプレイ』──────其れが此のゲームに置ける『攻略法』と知ら占めた事で、相手も其れを意識して動いて来る。

 

(よし、会話でルーカスの『動きを』止められた!)

 

相手がロールプレイに少しでも意識を割くならば、其処を突くロールプレイを絡める事で、相手の思考に『揺さぶり』を掛ける。例え効果自体が小さく微弱であろうとも、其の揺れが大きくなる事で、決定的な隙を産み出す為の『畝り』に成る。

 

何より外道組の片方たるカリスマモデルと思考深度が化物じみた怪物の、恋人同士の関係に在る二人から()()()叩き込まれた『技術』は、大将戦までの時間稼ぎという点と相手を研究し勝つ為の手札として、恵に『新たな力』を齎した。

 

ヒーローとヴィランの接敵から、ロールプレイによる揺さぶりと足止めが、魚臣(うおみ) (けい)到着までの時間を刻一刻と繋ぎ。彼女は自分に降り掛かった、諸々の理不尽に対する『八つ当たり』でルーカスをブッ飛ばすべく、植物となった腕に力を込めるのだった。

 

 

 






魅せろ、お前のロールプレイを


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